磯野ワカメ

登録日:2023/12/14 Thu 20:02:00
更新日:2025/04/20 Sun 17:44:29
所要時間:約 13 分で読めます






お姉ちゃん、勝手にあたしの項目なんか作らないでよ恥ずかしい!

イヤね、そんなことしないわよ。
それより堀川くんがワカメの事探してたわ。
なんでもあんたに読んでほしいものがあるんですって。



磯野 ワカメとは、漫画・テレビアニメ『サザエさん』の登場人物。


●目次




【概要】

磯野波平フネの娘で、磯野家の次女。主人公・フグ田サザエカツオの妹。マスオからは義妹、タラオからは叔母にあたる。

おっちょこちょいな姉やいたずら好きな兄とは異なり、真面目な優等生タイプの女の子。
成績も優秀で控えめな性格だが、真面目過ぎるゆえに柔軟な考え方が苦手。ちょっとしたトラブルや悩みで落ち込みやすく、それをきっかけに家族を振り回してしまうことも少なくない。
これらの性格はアニメ版で形成されていったものだが、原作では大きく異なる気質を持っていた(後述)。

一人称は原作では「あたい」、アニメ版では「わたし(あたし)」。初期では自分の名前を言うことがあった。
両親や姉兄からは「ワカメ」、タラオからは「ワカメお姉ちゃん」、マスオや親戚・知人、友人などからは「ワカメちゃん」、担当の先生からは「磯野」と呼ばれている。

男子クラスメートのことは「くん」付け、女子は「ちゃん」付けで呼ぶ。

アニメ版では「かもめ第三小学校」に通う3年2組の児童(原作では学校生活の描写が少なく学校名も統一されていない)。

誕生年は原作で昭和17年と設定されている。


【原作におけるワカメ】

原作漫画で初登場した時には、5歳の幼稚園児という設定だったが、最終的に小学校に入学し1年生になるまでの成長が描かれた。

原作のワカメはかなりワガママで天真爛漫、すぐ怒りすぐ泣くハジけたキャラだった。『サザエさん』においてアニメ化および放送の長期化によってキャラクター設定が大きく変動することは珍しいことではないのだが、中でもワカメはその違いが著しく大きいことでも知られる。

登場回数も主人公のサザエに次いで多く、活発で感情表現の激しいお転婆娘として物語を引っ張る役割だった。また、カツオとコンビでイタズラを計画することもあり、波平に叱られる回数も多い。特に連載の途中まではカツオ以上にやんちゃな妹として描かれていた。

アニメ本編で原作ネタを使う際にも、ワカメのポジションだったのがカツオ(主にイタズラや波平の説教に関わる場面)またはタラオか幼少期の出来事(主にワガママ関連)に置き換えられる場合が多い。


【外見】

髪型はかなり短めのおかっぱに加え、耳の辺りの毛をカールしたようなスタイル。サザエが彼女を散髪する時には洗面器を使って形を整えている。
昭和気質あふれる髪型だが、若者の間では「ワカメちゃんカット」というひとつのヘアスタイルとして人気があるらしい。
一度長い髪に憧れて髪型を変えたいと言い出したことがあるが、家族からの猛反発を受けたため断念した。
ちなみにこのヘアスタイルは『サザエさんうちあけ話』で登場した幼少時代の作者・長谷川町子と同じ容姿でもある。

◆パンツ

もうひとつ特筆すべきは、非常に丈の短いスカートまたはワンピースを着用していること。そのせいで常時パンチラ状態と化している。
同じく国民的アニメのメインキャラでミニスカをよく履き声優も長らく同じだった某ヒロインもお色気ネタとしてパンチラをよく見せてきたが、上には上がいるものだ。

高視聴率長寿アニメ故に今やあまりに馴染み過ぎている事と頻度・描かれ方からしてパンチラとしてのありがたみがない事から視聴者に忘れがちなものの、
「小さい子供も観る国民的アニメにいかがなものか」「表現規制が厳しくなった昨今、なぜ規制対象にされない?」などと時々ネタにされがちである。

しかし、現在もなおこのスタイルが貫かれているのにはきちんと理由がある。

そもそもワカメのスカートから見えているのはただのパンツではなく、戦後多くの女児が履かされていた「かぼちゃパンツ」(『ズロース』または『ちょうちんブルマー』とする説も)であり、今で言う「見せパン」に相当するもの。よく見るとモコモコしたオムツのような形状なため、この一種であることがわかる。

まだ洋装がメジャーでなかった当時は、「パンツを人前に晒すのが恥ずかしい」という認識もあまり浸透しておらず、加えて丈の長いスカートを足の短い女児が履くのは野暮ったいと見なされていた時代でもあった。
連載当時の流行の先端を行く作風が特徴的だった『サザエさん』において、原作初登場時点で幼稚園児だったワカメも例外なく当時のトレンドだったかぼちゃパンツを履いていたのだが、そのまま成長・進級し小学三年生になってもそのままのスタイルが継承されていった。

原作後期では流行の変化に伴いズボンなども履くようになったが、アニメ化に際してはこのファッションがそのまま取り入れられることになった。現在に至るまでそのまま変更されることなく「キャラクターの特徴」として扱われてきたのである。
ワカメのパンツ描写が問題視されないのも、断じてお色気描写などではないことに加えむしろ見えてもいいからであると言える。

もっとも、作中でパンツが見えるほどスカートが短いのはワカメだけでなく、スズコやみゆきなどの同級生女子、タラオの友達のリカなども同様であるため、彼女だけの特徴というわけではない。

ワカメ自身知名度の高いキャラであることから、「立っているだけで見えそうなほど短いスカートを履いている人」あるいは「既に見えている人」の代名詞にもなっている。
さらにはワカメ本人も、美少女化された上で普通のパンツが見えてしまっているという趣旨の二次創作が多数作られている。


【性格】

アニメ版における、「家の手伝いを進んで行い、学校の成績も優秀なしっかり者」というキャラクターがよく知られている。ただし、放送開始からしばらくは原作の特色が強く残っていたことから、問題児的な立ち位置だった。

成績優秀で勉強好きな部分は、テストの点もイマイチで宿題よりも遊びを優先しがちなカツオとの対比として描かれたりする。ただし体育は苦手。
イタズラはもちろんだらしのない行動も少ないため、波平に叱られることも滅多にない。「叱られないのは家族から愛されてないのではないか」と思い込み、わざと怒られるような行動を取った時でさえ、カツオが叱られてしまうほどだった(作品No.7982『叱られたいワカメ』)

◆短所

普段は大人しいが、父に似たのか少々頑固な部分もあり、ひとつの物事に対し臨機応変に対応することは苦手としている。
いわゆる融通が利かないタイプであり、自分が本気で正しいと思い込んでいることが間違いであると他者から指摘されても、頑なに信じなかったりする。

こちらも同様に、「頭の回転が速く要領の良い兄」とは対照的であるとしばしば語られている。
たまに天然ボケっぷりを見せることがあり、「竹を割ったよう」を「タコを切ったよう」、「清水の舞台から飛び降りた気になって」を「死んだ気になって」と聞き間違えたり、双子の別名を「双生児」ではなく「ハム」と勘違いしたり、くしゃみをしゃっくりと混同して脅かして止めようとしたこともある。

生真面目ゆえに不正をよしとしない性格から、イタズラ好きでちゃっかり者のカツオに異論を唱えることも多い。時にはカツオを頼れる兄として慕うこともあるのだが、近年ではカツオをからかったりあからさまに下に見るような言動も見られる。普段は妹に優しいカツオも、こればかりは少し生意気に感じているようだ。

よく読書をすることから本の他、テレビの内容にも影響を受けやすい。

良くも悪くも道行く人に名前を覚えられやすい姉や兄と比べ、大人しく地味な印象のせいで周囲からの知名度が低いことにコンプレックスを抱いていたことがある(作品No.5853『ワカメもいますよ~』)
これ以外でもふとしたことがきっかけで気に病みやすいデリケートな性格でもあり、しばしば家族を巻き込んだトラブルの種を蒔くような行動を取ることがある。決して悪気があってやっているのではないが、不器用で要領が良くないが故の空回り的な結果が多い。
ワカメが主役のエピソードは、決心や心変わりを発端にして困難や挫折を味わい、反省と心の成長を描く教訓めいた内容が多い。

ワカメが決して優等生なだけではなく欠点らしい欠点も持ち合わせていることを裏付けるこれらの描写は、2005年に声優が野村から津村に代わった頃から特に強調して描かれるようになった。「原作でのお転婆なキャラを少しずつ復活させているのではないか」とこの変化を分析するファンも存在する。

◆長所

親想いなところがあり、休日すら休むことなく家事に勤しむフネの体を気遣い「お母さんを一日休ませよう」と一家に提案したことも。
小さい子供の面倒見も良く、他の家族がいない時でもタラオの面倒を見てやったり行動を共にする場面が多い。

動物の世話をするのが好き。
雄鶏が磯野家に迷い込んで来た時には、飼い主が名乗り出るまで積極的にかわいがっており、「捨てられた」と思われた時には本格的に飼うことを提案していた。
ある雨の日、道端で捨てられていた白い子猫を可哀想に思ったワカメは家の物置で世話をしようとするも、波平の反発を受け泣く泣く元の場所に返すことになった。しかしその後、猫の方からワカメに懐いてしまったことや、彼女が本気でネコを可愛がろうとする気概を理解した波平の許しもあって、無事磯野家に迎え入れられるのだった。
この猫に「タマ」と名付けたのは他でもないワカメ。「(お腹を空かせてあまりに痩せていたから)玉のように丸くなれるように」という願いが込められている。
今や磯野家に欠かせない一員がペットとして出迎えられた背景には、彼女の生き物を愛する優しさが強く関係しているのである。

芝居に出るのが好きだったり、想像力が豊かで童話や歌を創作したこともあるなど、芸術に造詣が深いと見られる。
特に、紫陽花を這うかたつむりの様子を思い描いた「かたつむりのおでん屋さん」の一節で始まる詩は、その独創性から家族からも「才能があるのではないか」と絶賛されていた(作品No. 5724『ワカメ雨の詩集』)


◆将来の夢

一つの物事に夢中になれるタイプではないらしく、先述したように左右されやすい性格から色々な物に気移りしがち。そのためか将来の夢も「ウグイス嬢」「服飾デザイナー」「寿司屋」「花屋」など頻繁に変わっている。
なお原作では「お嫁さんになりたい」と発言していたが、サザエに「女性の地位を下げるな」と反対されている。

ちなみに未来の磯野家を描いた『OTONA GLICO 〜25年後の磯野家〜』では大手百貨店のエレベーターガール、『磯野家の人々〜20年後のサザエさん〜』ではアパレル企業に就職しデザイナーの仕事をしている。後者については子供時代から夢見ていた美術への道が開いた形と言えるが、自分のアイディアがなかなか採用されず苦労しているようだ。


【人物関係】

ワカメのクラスメート。
かつては彼女にとって憧れの男子として描かれていたのだが、堀川くんのキャラが「少し天然だが紳士的なイケメン」から暗転「サイコパスのマジキチ少年」へと変貌してからはそのような描写はなくなった。実際、ワカメ本人も堀川くんの暴走による被害を受けることが多く、100年の恋も冷めて当然たる結果といえるだろう。
今では逆に彼の方が密かにワカメに恋心を抱いているようだが…。
※ワカメが彼から受けた主な被害については本人の項目を参照。

  • 塩田 スズコ*1
ワカメの友達でアニメオリジナルキャラクター

  • 大島 みゆき
ワカメの友達。ワカメ・スズコとよく3人で行動する。

  • ワカメの担任
3年2組を受け持つ若い男性教師。本名は不明。
「髪型が独特で冷静だが厳しい」という性格が定着しているカツオの担任と異なり、取り分けて特徴らしい特徴がなく、話の中心に関わることも非常に少ない。


【声優・俳優】

アニメ版では、1969年の放送開始から1976年3月28日まで山本嘉子がワカメの声を演じていた。降板理由に関しては健康上の理由だとされている。一方、後任となった野村道子は「(山本が)ちょっとフランスへ行っちゃったので、代わりの人を決めるオーディションがあった」と話している。

同年4月より野村道子が2代目に就任し、以来2005年3月27日まで29年間ワカメを演じ続けた。2005年3月には夫・内海賢二が経営する声優事務所「賢プロダクション」のプロダクション業務に専念するためとしてワカメ役を降板した*2

2005年4月3日以降は津村まことが3代目としてワカメの声を担当している。

実写版では、これまでに松島トモ子、上原ゆかり、網田麻澄、遠山真澄、森安加代子、鍋本凪々美、錦辺莉沙、秋元真夏(元乃木坂46)、齊藤京子(日向坂46)、松岡茉優などがワカメを演じた。
江崎グリコのCM『OTONA GLICO 〜25年後の磯野家〜』(2008~2009年)では、34歳になったワカメを宮沢りえが演じた。


【余談】

  • ワカメのモデルは、長谷川町子の姪である長谷川たかことされている。

  • 長谷川によるサザエさんのスピンオフ作品にあたる児童向け漫画『わかめちゃんとかつおくん』(たのしい一年生1956年9月号~1961年2月号まで連載)では、カツオと共にタイトルを飾る主役として登場する。
    また、1957年にはこの作品とタイトルが似た『かつおちゃんとわかめちゃん』という作品が単行本で刊行された。アニメ版では主にワカメまたはカツオ主役回の原作として採用されることもあり、原作には登場しなかったワカメ・カツオ以外の磯野家の出番を加えた上で大幅にアレンジされている。

  • 理研ビタミンから発売されている「ふえるわかめちゃん」関連商品のパッケージやCMのイメージキャラクターに磯野ワカメが起用されたことがある。『サザエさん』はこれまでに様々な企業の広告に起用されてきたが、ワカメ単独での起用は史上初である。
    ちなみにCM起用前の2011年1月には、フジテレビ系バラエティ番組『潜入!リアルスコープ』でふえるわかめちゃんの工場が特集された際にワカメが声のみで出演したことがある。



追記・修正は、常時パンツ丸見えのスタイルが周囲に溶け込んでからお願いします。

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最終更新:2025年04月20日 17:44

*1 公式サイトでは「すずこ」と平仮名表記。

*2 同時期に1979年4月より26年に渡り担当していた『ドラえもん』の源静香役も他声優陣と共に降板した。