登録日:2024/08/21 Wed 13:00:00
更新日:2025/03/20 Thu 09:12:07
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磯野 フネ(旧姓・石田)とは、長谷川町子の
漫画『
サザエさん』の登場人物。
●目次
【概要】
一家の大黒柱・波平を陰日向に支え、明るく賑やかな家庭を優しく見守る磯野家の良き母。
時に厳しい一面も見せ、頑固な関白亭主だがどこか不器用で頼りない夫を立てることができる強かさも持ち合わせている。
冷静で穏やかな言動や振る舞いはまさに「日本のお母さん」そのもの。頑固・お転婆・腕白揃いな磯野家の中でも落ち着きを忘れない屈指の常識人……なのだが、そんな彼女の性格も原作やアニメ初期ではかなり異なっていた。
原作者曰く、名前は『サザエさんうちあけ話』によると「荒波に揉まれても絶対に沈まない船」のような一家を支えるしっかり者という意味を込めたとのこと。
名前については、原作では「舟」と漢字で表記されることがあった他、アニメ版のキャストクレジットでも漢字で表記されている。
一人称は「私」、子供らに話す時は「お母さん」とも言う。
夫のことは「お父さん」、義子であるマスオのことは「マスオさん」と呼ぶ。
誕生年は原作では不明とされている。年齢についても52歳など諸説あるが、本人はあまり聞かれたくない素振りを見せており「50ン歳」としか明かしていない(ちなみに波平は54歳)。一部の考察本では1901年生まれ・48歳としている。
少なくとも40代でカツオとワカメを出産したのは確かであると言える。
嘉門達夫の『NIPPONのサザエさん』では「高年齢出産で帝王切開したのか」とネタにされているが、昭和中期当時ではこの年齢で子供を産むことは珍しいものではなかった。
作中で彼女を名前で呼ぶ人物はほとんどおらず、周囲では幼馴染みの伊佐坂軽ぐらいである。夫・波平からも長らく名前を呼ばれていないようだが…。
【原作におけるフネ】
実は原作漫画では記念すべき連載第1話の1コマ目にて、カツオとワカメを読者へ紹介するという役目を担っており、なおかつ最初に台詞を発した人物でもある。ちなみに主人公であるサザエの初登場は同話3コマ目(台詞のみ2コマ目)。
アニメ版での穏やかな性格で知られるフネだが、原作ではかなり気性の荒いキャラだった。
家族を叱る回数も波平より遥かに多く、(時代が時代とはいえ)バイオレンスな体罰も辞さない。ワカメの顔が変形するほど頬を強く抓ったことや、教育方針をスパルタに変えようとしたことも。
これは原作者・長谷川町子が自身の母をフネのモデルにしたためである。
アニメ版でも初期のフネはヒステリックな部分が強く、特に第1話『75点の天才!』において、カツオがテストで75点を取った事実を信じないハマコの態度にサザエと共に激怒し帰ろうとした彼女を軟禁するシーンや、浮気が発覚した波平をハサミ片手に追い回すシーンは、現在と全く異なる彼女の性格を象徴する場面として有名。「毛は切るな!!」
波平が逆に威厳のない父として描かれていたことも、一層彼女のアニメ版とのギャップに拍車を掛けた要因といえる。
ちなみに実写映画版でも原作と同様厳格な人物として描かれている。
【外見】
和服に割烹着姿が基本。着物の色は紫系か臙脂色・茶系が多い。
洋服は全く着ないわけではなく、夏場や遠出・旅行の時にはTシャツまたはポロシャツにスラックスや
ジーンズなど動きやすい服装に替えている。
意外とオシャレなところもあり、波平をも卒倒させた
衝撃のミニスカート姿はファンの間でもお馴染みの定番ネタとなっている。
髪は後ろで一つに結っており、この髪型を変えることは滅多にない。サザエと同じく、下ろした髪は肩までかかるほど長い。
裁縫をする時などは眼鏡をかけている。
作者が20年後の磯野家を描いた『サザエさん一家がひとなみに年をとっていたら…』では、『いじわるばあさん』の主人公・
伊知割石そっくりの外見になっている。また、『サザエさん30年後』では波平共々小柄な老人に描かれている。
【性格】
原作での性格は先述したので、ここでは主にアニメ版での性格について説明する。
普段はおっとりしており、ちょっとやそっとの事では動転することが少ない。
しかし、子供たちがイタズラや不正をした時にはきちんと厳しく叱ることもでき、波平の介入が必要と判断した場合は彼にも説教や懲罰を委ねている。
怒りや激しい感情を露わにするタイプでないため、波平のように声を荒げたり長時間頭ごなしに小言を言うのではなく諭すようにして叱るなど、彼女なりに愛情に満ちた接し方を心がけている。
また、冷静沈着に物事を整理できる聡明さから、カツオお得意の屁理屈やゴマスリで波平を度々丸め込む手腕も彼女には通じない。
こうした穏やかでありつつ厳格で隙のない性格から、一家の主である波平すら彼女には頭が上がらないこともあり、唯一波平を叱ることができる存在でもある。と言っても『サザエさん』の夫キャラは恐妻家ばかりだが。「普段温厚な人ほど怒ると怖い」とはまさにこのこと。
その性格から磯野家でも数少ない常識人で、ドジや失態を晒すことも騒動の発端となることも少ない。
それ故に彼女主役回の本数も一家では最少なのだが…。
フネがメインのエピソードは主に
母の日の放送が多く、夫婦愛や家族愛など心温まるエピソードが多数でありギャグ描写は控えめ。
ただし、ちょっとお茶目なところも見受けられ、本当に稀だが意外かつ突飛な行動で一家を困惑させることも。こうした完璧ではない人間臭さもさすがはサザエの母と言ったところか。
娘のサザエと同様、家事は炊事から洗濯、掃除まで何でも卒なくこなす。
朝は誰よりも早く起きて一家の朝食を作り、夜も裁縫などに勤しみ誰よりも遅く寝る、専業主婦の鑑とも呼べる働き者。
自分のための自由な時間をほとんど作らないため、『お母さんの時間』(作品No.5869)では、ワカメがたまにはフネを休ませようと母の日を彼女だけの「休日」とし、一家で家事を代行しようとしたことがある。「落ち着かない」という理由で結局フネが家事に手を出してしまいワカメをがっかりさせてしまうが、家族が自分のことを思ってくれたことについては大いに感謝していた。
こうした献身的な性格から家族や知人からの信頼は厚く尊敬されている。
何よりも家族の健康と幸せを常日頃願う、主婦の鑑と同時に母の鑑ともいえる人物。「理想の母親」と言われるのも頷ける。
下戸で酒はほとんど飲めず、軽達と忘年会に出席した時には最初の軽めの一杯で泥酔してしまったほど。
そのため作中でも飲酒する場面はほとんどないのだが、『母の日のおねだり』(作品No.8749)では珍しく波平と2人で蕎麦屋へ立ち寄り、日本酒を注文。さらには肴に天抜き、板わさを頼むという玄人指向を見せつけた。
フネの飲酒自体激レアシーンであり、夫婦揃って酒面で帰宅した時には家族一同も驚きを隠せないでいた。
聞き上手で口が堅いことから、悩みを抱えた人の相談相手になったりもしている。本人曰く「自分が幸せだから人の悩みを親身になって聞いてあげられる」。
趣味は芝居鑑賞で軽と一緒に見に行くこともある。
英会話にも関心があり、アニメ版では一時期テレビの英会話講座での勉強に熱中していたことがあるが、原作では集中力の欠如が祟り全く長続きしなかった。
かつては先生になるのが夢だったらしい。
【人物関係】
●磯野 波平
普段は関白亭主然としている波平だが、しっかり者で抜け目のないフネには頭が上がらないことがある。
フネのことは主に「母さん」と呼び、決して名前で呼ぶことはないのだが、実はサザエが産まれるまでは「フネ」「お舟さん」と呼んでいた時期がある。
フネ自身は現在でもたまには夫から名前で呼ばれたいと感じているらしく、波平に「フネ」と呼んでくれないか頼んだところ本人は非常に恥ずかしそうにしていた。
アニメ版でこそ波平との仲は良好で夫婦喧嘩も稀だが、原作では波平に嫌がらせを働いたり陰口を叩くなどかなり殺伐とした関係。
フネとの関係については本人の項目も参照。
●伊佐坂 軽
磯野家のお隣に住む難物の妻で、フネとは女学校時代からの親友。
現在でもお互いに「おフネちゃん」「おカルさん」と呼び合う仲で、よく家の塀越しに世間話をしている(サザエも同様)。
女学校卒業後すぐに引っ越したため、一家で磯野家の隣に越してくるまで、フネとは30年もの間音信不通だった。引っ越し後磯野家へ挨拶に来た時には、長年会っていなかったにもかかわらず顔を見るなりお互いすぐに気付き、思いがけぬ再会を喜んでいた。
◆石田家
フネの実家で
静岡県(原作では
沼津市に実家があるとされている)に暮らす。
●石田 鯛造
フネの兄でみかん農家を経営している。
4人の子供がいるが、初登場エピソード『家なき子物語』(作品No.0023)では子供がいないことになっており、子供に囲まれる生活を羨ましがっていた。
●石田 おこぜ
鯛造の妻でフネの義姉。フネとは実の姉妹のように仲が良い。
【声優・俳優】
アニメ版では、1969年の放送開始から麻生美代子が約46年に渡りフネの声を演じていた。
麻生は番組初期からレギュラー声優として参加していた一人であり、なおかつレギュラーの中では最年長(1926年生まれ)だったこともあり、現場を取り仕切る役目を担っていた。お淑やかなフネのキャラクターとは対照的に、麻生は明朗な気さくな性格で、サザエ役の
加藤みどりも相談できて頼りになる先輩として彼女を慕っていたという。
麻生の年齢(降板時点で89歳)を考慮し、2015年9月27日放送分をもって番組を降板。
同年10月4日放送分からは寺内よりえが2代目としてフネの声を担当している。
2009年6月14日放送分は麻生の急病により谷育子が代役を務めていた。2008年11月16日放送の40周年SPでは榊原奈緒子が幼少期のフネを演じた。
実写版では、これまでに清川虹子、乙羽信子、吉行和子、竹下景子、高橋恵子、市毛良枝などがフネを演じた。
【その他】
- フネのモデルとされる長谷川町子先生の母・長谷川貞子氏は史実では若き日に町子の2人目の姉(『長谷川町子思い出記念館』で判明)・町子が中学生の頃に夫を亡くしながら、娘三人を親族の支援もありつつ成人まで育てた
エキセントリックな女性で、『サザエさんうちあけ話』『サザエさん旅あるき』でフネ顔の女性として描かれていた。
…だが『サザエさんうちあけ話』連載の頃には周囲の家族が何もしなくてもいいくらい世話し過ぎたせいで(やる事を無くし)認知症が加速し、『サザエさん旅あるき』の時代には寝たきり入院生活となりその人生を終えたという。
- 日本郵船は、一時期フネをメインとした磯野家をイメージキャラクターに起用していた。車内広告にはフネがカツオやワカメに日本郵船への就職を促すなどシュールな内容もあり、冒頭のセリフは当該広告のキャッチコピーでもある。
過去には1973年に掲載された東芝製掃除機の新聞広告にもタラオと共に起用されていたことがあり、ここでもフネさん名物(?)ミニスカ姿を披露している。
- 子のサザエとカツオ・ワカメの年齢が大きく離れていることから、フネ=波平の後妻説が囁かれているが、原作・アニメ・実写版共にそのような設定は存在しない。この説は東京サザエさん学会による「磯野家の謎」(非公式)の考察によって世間に広まったもので長谷川町子美術館も正式に否定している。そもそも連載当時では夫婦が子供を何人も産んでそのうち何人かが病気などで早くに死ぬのが当たり前だったので、年齢差が大きく離れたきょうだいがいる家庭は決して珍しくなかった。
お母さんにとって1番嬉しいことってなあに?
あんたたちが荒らしをしないことだよ。
じゃあ2番目に嬉しいことは?
あんたたちが良項目を作ること。
3番目は?
あんたたちが追記や修正をしてくれることよ。
- ノリスケがやらかして出禁食らっても許されているのは彼女の功績…? -- 名無しさん (2024-08-21 14:32:56)
- ついに磯野家全員の項目が揃ったのね。建て主の方ありがとうございます -- 名無しさん (2024-08-21 18:00:40)
- タマ... -- 名無しさん (2024-08-21 20:06:32)
- カツオが大人になって車の運転をするところを想像しにこやかにきゃっこわ〜いと言う茶目っ気が個人的に印象深い -- 名無しさん (2024-08-21 22:04:31)
- タグなぜこうなったしwww -- 名無しさん (2024-08-21 22:44:10)
- 追記修正の部分で笑った。原作屈指の感動的な話なのにw -- 名無しさん (2024-08-22 01:52:09)
- アニメ版のこの人とそりが合わない人いるのかね?ってくらい誰とでも仲良くやれる -- 名無しさん (2024-08-22 04:40:05)
- 後妻説を鵜呑みにしていた俺はいったん死んできまーす -- 名無しさん (2024-08-23 00:43:48)
- 追記修正のところの嬉しいことのエピソード結構好き。大人になるほどこの言葉には分かりみしかない。 -- 名無しさん (2024-08-24 06:08:32)
最終更新:2025年03月20日 09:12