登録日:2024/02/02 Fri 23:49:25
更新日:2025/04/26 Sat 17:40:20
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この項目では、2023年の
プロ野球日本シリーズの激闘を紹介する。この年も三井住友銀行(SMBC)をスポンサーとして「
SMBC日本シリーズ2023」のタイトルで開催された。
概要
巨人に13ゲーム差を逆転され、いわゆる「Vやねん!」と呼ばれる歴史的なV逸を喫した2008年以来15年ぶりに復帰した岡田彰布監督の下「
アレ(A.R.E)」を合言葉に18年ぶりのリーグ優勝を決めた
阪神タイガースと、21世紀初のパ・リーグ3連覇を達成した中嶋聡監督率いる
オリックス・バファローズが対戦した。
日本シリーズでの対戦は前身球団を含めても初めてで、半世紀前に書かれた
沿線住民気質を描いた小説の存在も話題に。
また、甲子園・京セラドームの両本拠地が阪神電車の沿線にあることから「
阪神なんば線シリーズ」とも呼ばれ、開催記念乗車券は即座に完売したことで再販が決定したほどだった。
京セラドームは2020年の巨人も含めて4年連続で日本シリーズ開催になったが、阪神は高校野球との兼ね合いで甲子園の使用できない(本拠地)開幕戦や8月の長期ロード中に主催試合を開催しており、1997年の開場以来準本拠地として使用している側面もある。
下馬評としても両軍拮抗と見る向きが多かったが、阪神は前回の日本シリーズ出場時に
守備妨害によって敗退し、その前の2005年には他ならぬ岡田監督の下でかの有名な
歴史的惨敗を喫していたこともあり、阪神ファンからは悲観的に見る声も少なくなかった。
試合内容
第1戦(10月28日・京セラドーム大阪)
オリックス 0‐8 阪神
オリックスは3年連続投手四冠の絶対エース・山本由伸、阪神はこの年最優秀防御率を獲得するなど大ブレイクした3年目の「虎の村神様」村上頌樹の両先発。
先発が先発だけに4回まで無失点で進む締まった試合となったが、均衡が崩れたのは5回表。
先頭の佐藤輝明が単打に続いて盗塁を決め無死二塁とすると、続くこの年の新助っ人シェルドン・ノイジーの犠牲フライで更に三塁まで進んだところで渡邉諒に適時打が出て阪神が先制。勢いづいた阪神は止まらずこの回4点を入れ、6回にも二死から立て続けに適時打を打ってなお二・三塁としたところで山本をKOすることに成功する。
オリックスは山田修義を2番手に送るもこちらも打たれて更に1点を失い、山本は自己ワーストの7自責点を喫することとなった。
結局阪神は村上が7回2安打1四球という好投を見せるとそのまま加治屋蓮、岩貞祐太で8・9回を三者凡退に抑え、オリックスの出鼻を挫いて完勝した。
前年までプロ未勝利だった投手が日本シリーズ第1戦で先発勝利するのは史上初、阪神が日本シリーズのビジターゲームで勝利するのは前回日本一を達成した1985年の第6戦以来38年・10試合ぶりのこと。
あまりのワンサイドゲームになんJなどでは「33-4回避」なども含めて話題となった。
第2戦(10月29日・京セラドーム大阪)
オリックス 8‐0 阪神
前日の大勝で勢いづいた阪神だったが、今度は3回裏に西野真弘の適時打で先制を許す展開。
4回裏に二死走者なしから四球が出て宗佑磨が出塁すると紅林弘太郎がヒットで繋いで一・三塁となり、更にそこから野口智哉・廣岡大志・中川圭太と三者連続のタイムリーを浴びて西は降板となった。
オリックスは7回裏には二死満塁から代打のマーウィン・ゴンザレスに走者一掃のタイムリーが出て7点差、更に8回にエラーでもう1点追加し、5回以降はヒットすら許さず前日のリベンジを果たして甲子園に乗り込んだ。
第3戦(10月31日・阪神甲子園球場)
阪神 4‐5 オリックス
甲子園に舞台を移した第3戦。阪神が2回に1点を先制するも、オリックスも4回にこの年の首位打者・頓宮裕真のホームランで同点に追いつく展開。
オリックスは5回表には3点を取って一気に勝ち越し、更に6回に1点を加えて4点差とした。
阪神は7回裏には一死満塁から内野ゴロと新人・森下翔太のタイムリーで3点を取るも、二死で登板した宇田川優希に阻まれ同点に追いつくことは出来ず、8回も無得点に終わった。
最終的に1点差で迎えた9回裏、阪神は二死一・二塁のチャンスを作って4番・大山悠輔に打席が回ったが、この年通算
250セーブを達成したベテランクローザー・平野の前にフルカウントから三振を喫し試合終了。
平野は日本シリーズ最年長セーブ記録(39歳7ヶ月)を樹立した。
第4戦(11月1日・阪神甲子園球場)
阪神 4x‐3 オリックス
阪神が初回に森下のタイムリーで先制するも2回表にはオリックスが早々に追いつき、その後も接戦で進んでいたが、阪神2点リードで迎えた7回表にサード・佐藤に痛恨のエラーが出たのを皮切りに畳み掛けられて同点を許した。
阪神は8回二死一・三塁のピンチを4ヶ月半ぶりの1軍登板となった湯浅京己が1球で切り抜けるなど勝ち越しこそ許さなかったが、追加点を得ることも出来ず試合は9回裏へ。
オリックスは9回裏、前年の胴上げ投手であるワゲスパックをマウンドに送り一死としたが、ここからワゲスパックの制球が大荒れ。
近本光司に四球を出したばかりか、続く中野拓夢の打席で二度にわたって暴投し、近本を三塁まで進めさせてしまう。
なおもフルカウントとなった後、中嶋監督は打席の中野と続く森下を立て続けに申告敬遠。満塁策を取った上で大山と勝負することを選択した。
大山はフルカウントにこそ追い込まれるも、そこから三遊間を破る一打を放ち、近本が生還しサヨナラ勝ちとなった。
第5戦(11月2日・阪神甲子園球場)
阪神 6‐2 オリックス
オリックスが4回にゴンザレスのソロHRで先制。
7回には甲子園の魔物が牙を剥いたかのように森友哉の二塁ゴロを中野が後逸、そのボールを更に森下がファンブルという連続エラーで一塁から宗が生還し2点目となった。
ところが8回裏に山﨑が登板すると、今度は先頭・木浪聖也の内野安打を安達了一が悪送球するエラー。これで傾いた流れを代打・糸原健斗がヒットで繋いで無死一・三塁とすると、続く近本のタイムリーで1点を返す。
更に2点目を入れられるきっかけとなったエラーを喫した中野が送りバントを決め、森下は交代してシリーズ4試合連続登板となった宇田川から2点タイムリーを決めて遂に逆転に成功。大山・坂本誠志郎もこれに続いてこの回一挙6点を取り、そのまま9回も抑えて王手をかけた。
新人の逆転打が決勝点になるのは日本シリーズ史上初。
第6戦(11月4日・京セラドーム大阪)
オリックス 5‐1 阪神
阪神が王手をかけて京セラドームに戻った第6戦、2回表に山本から先制のソロHRを打ったのは、当初の期待からするとイマイチの成績で1年限りでの退団が決まりかけていたノイジー。
なんと球団では2003年第7戦の広澤克己以来、球団の外国人選手では1985年第6戦のランディ・バース以来となる日本シリーズでの本塁打となった。
初戦で山本が大炎上したこともあり、この時点で阪神優勝ムードは高まったが、山本もここから奮闘。
打線も2回裏に早速2点を取って逆転すると5回に紅林の2ラン、8回に頓宮のソロHRで都合3点を追加し、そのまま勝利して両軍王手となった。
山本は日本シリーズ新記録となる14奪三振を含む9回138球で投げきり、シリーズ初勝利を完投で達成。
中嶋監督がインタビューで「山本由伸が2回連続でやられるわけがないと思って、信頼して出しました」と力強く語るとオリックスファンから大歓声が上がった。
前回の関西対決以来59年ぶりに「3勝3敗かつ両軍の得失点差ゼロ」という拮抗状態のまま、勝負は2013年以来10年ぶりとなる引き分けなしの第7戦へもつれ込むことになった。
第7戦(11月5日・京セラドーム大阪)
オリックス 1‐7 阪神
オリックスは宮城、阪神はポストシーズン全体を通して初登板となる青柳晃洋の両先発で3回まで無失点で
ゲームが進んだが、4回表に一気に試合が動く。
森下の安打と大山の死球で一死一・二塁となった場面、ノイジーは4球目のチェンジアップを掬い上げるように打ち返す。打球は大きな軌道を描き、値千金の先制3ランホームランとなってレフトスタンドに突き刺さった。
前試合でも先制のソロHRを打っていたノイジーは、いよいよネタ抜きで「バースの再来」の称号を頂戴するに至ったのだった。
勢いに乗る阪神は5回表、一死一・二塁からの中野のショートゴロがリクエストの結果ゲッツー崩れになると代わって登板した比嘉幹貴から森下、大山、ノイジーと三者連続でタイムリーが出て更に3得点。一気に6-0となった。
9回表にも森下のタイムリーで1点を加え、森下は日本シリーズにおける新人最多打点記録(7打点)を更新。
7点差で9回裏へ入る場面、パブリックビューイングが行われていた甲子園では「栄光の架橋」が流された。
それは、この年の7月に脳腫瘍のため28歳で早世した横田慎太郎の登場曲だった。
リーグ優勝が決定した9月14日の巨人戦の9回、横田の同期・岩崎が登板する際に予告なしで流され、自然発生的にファンの大合唱が起きたことが話題となったが、その演出がこの時も行われたのである。
さて、9回裏のマウンドを任されたのは桐敷拓馬。
先頭の紅林に安打を許すも続く森を併殺打に仕留めて一気に残り1アウトとし、満を持して守護神・岩崎が登板した。
岩崎はいきなり頓宮への初球をレフトスタンドにぶち込まれ、ゴンザレスにも安打を許すが、3人目の杉本裕太郎をレフトフライに抑えゲームセット。
阪神タイガースが38年ぶりの「アレのアレ」が決定し、特注で制作された横田仕様の2023年ユニフォームを掲げた岩崎が、そして前回の日本一を選手会長として支えた岡田監督が宙を舞った。1985年の西武ライオンズ球場に続き、阪神はまたしても敵地での胴上げになった。
なお、京セラドームで日本一が決定するのは開場以来初めて。これにより、エスコンフィールドを除いた現行12球場で日本一決定がないのはZOZOマリンスタジアムのみになった。
岡田監督は巨人相手に1956年~1958年の3連覇を達成した三原脩氏以来となる古巣相手の日本一を達成。
そして岡田監督、平田勝男ヘッドコーチ、嶋田宗彦バッテリーコーチにとっては彼らが貢献した1985年以来の日本一に一軍で立ち会っただけに感慨もひとしおだったことだろう。
MVPは近本、敢闘選手賞は紅林、優秀選手賞は阪神から森下とノイジー、オリックスからは山本が選ばれた。
追記・修正は、38年ぶりに日本一を達成した方にお願いします。
- 6戦目オリックスと阪神の点数逆じゃね? -- 名無しさん (2024-02-03 00:55:36)
- 前回の日本一、「33-4」、「Vやねん」、今回の日本一と全てを見てきた岡田監督。数奇な運命というかなんというか。 -- 名無しさん (2024-02-03 14:58:10)
- 全体通してみると白熱した戦いなんだが、一戦ずつみると大差の試合が多い不思議な日本シリーズだった。実力伯仲してたんだかしてなかったんだかわからん -- 名無しさん (2024-02-03 16:07:32)
- 長年の人気球団と十数年不遇をかこってきてようやく人気が出てきた球団という構図でも面白いシリーズだった お互いに持ってないものをやっと手に入れた末の対決といった感じで(阪神は人気有りだけど優勝は久しぶり、オリは近年強くなってやっと球団の人気獲得企画が芽を出し始めた) -- 名無しさん (2024-02-04 16:16:32)
- 何気に森下が日本シリーズの新人打点記録を更新してて驚いた。 -- 名無しさん (2024-02-04 21:13:59)
- 第6戦までで得点数が同じ23得点という両者拮抗した白熱した試合だった 歴代の日本シリーズの中でも特に面白かったよ 両軍のファンは胃が痛かったけど -- 名無しさん (2024-02-04 23:51:52)
- 実力伯仲なんだけど、先行逃げ切り型で掴んだ流れを離さない印象。
- 影のMVPは湯浅。彼の登板が流れを変えた -- 名無しさん (2024-11-21 01:46:01)
- 移動距離の負担がほぼない分全力でぶつかることができたのは見てて良かった -- 名無しさん (2025-04-15 17:11:56)
最終更新:2025年04月26日 17:40