憂鬱くんとサキュバスさん

登録日:2024/07/13 Sat 15:23:00
更新日:2025/01/31 Fri 02:52:13
所要時間:約 8 分で読めます






「 こういうふうに接してくれる、誰かが欲しかった。」




『憂鬱くんとサキュバスさん』は、さかめがねのWeb漫画作品である。略称は『鬱サキュ』
2015年9月から『となりのヤングジャンプ』にて連載中。 単行本は全1巻。





【概要】

過酷なブラック企業勤めの日々で重度の鬱病になってしまった青年「(ユウ)」と、そんな性欲のない鬱病患者にとり憑いてしまった面倒見の良すぎるサキュバス「さくまさん」が織りなす2人の日常生活を描く。

作風は下ネタをふんだんに用いたほのぼのとした日常系コメディ漫画ながら、それに加えて時折甘酸っぱくも微笑ましい純愛ラブコメ要素が描写されるのが持ち味。
しかしその一方でタイトルにもある「うつ」に関しては、作中において決して茶化したりうやむやにはせずしっかりと妙に解像度が高く描写されており、その上で本作の真のテーマたる「うつの改善には周囲の人のうつへの深い理解と献身が必要である」という作者の想いとメッセージが込められた心に響く感動系のエピソードが多いのも本作の魅力の一つ。*1
読めば腹筋と涙腺と情緒がボロボロになること請け合い

原型となったのは2015年2月、作者のさかめがね氏が自身のTwitterにて公開した「鬱病患者に取り憑いてしまったサキュバスが頑張る漫画。」という数枚のラフスケッチからなる短編漫画であり、こちらがネット上で多くの話題を集めた事で、となりのヤングジャンプでの連載へと発展する運びとなった。

2018年1月以降は作者の創作状況の悪化により不定期掲載になることが発表されたがそれ以降は長らく音沙汰が無く、長期に渡り休載。その後さかめがねが本業のサラリーマンを辞めて失業した事で専業のWeb漫画家となり、2020年4月3日より2年以上の休業期間を経て連載が再開されたものの、こちらも2020年9月を最後に再び更新停止。2度の休載から4年近くが経過した今尚もとなりのヤングジャンプ公式ホームページでは連載中の漫画としてカテゴライズされており、現在は作者のTwitterにて不定期に新作が公開されている。


【あらすじ】

人の精を吸い、糧とする恐ろしい悪魔「サキュバス」。 彼女がターゲットに定めた青年は日々の過酷な労働に心身を消耗し性欲すらも失うほどの憂鬱な状態。

だが、このサキュバス、幸か不幸か非常に前向きであった。 青年を 癒し、再び性欲を取り戻させるため、強引に居候生活を開始してしまう! (公式HPより引用)


【登場人物】


CVはコミックス1巻重版記念フルボイスムービーより。

  • サキュバス/さくまさん
CV:渡部優衣
憂にとり憑いたサキュバスで、本作の主人公。精を吸うための標的として憂にとり憑いたものの、ブラック企業勤めによる鬱に苦しむ憂を見かねて彼を強引に仕事から引き剥がし、性欲を取り戻させる為居候を始める。
何故かコテコテの関西弁で喋り、性欲のみならず全ての欲求に忠実。加えて非常に明朗快活でノリが良く、隙さえあれば会話(下ネタ)でウケを取ろうとするなど気質も典型的な関西人のそれである。でも贔屓球団は下半身たいがぁすじゃなくて気持ちが動揺かぁぷ
淫魔なだけあって普段の姿(スッピン)は両胸に「万有力」で張り付いている前貼りとビキニパンツのみとかなり刺激的な格好をしており、顔も憂が「愛らしい」「好ましい姿」と表現する程のべっぴんさん。一方でサキュバスの割に絶壁で、肋骨が浮き出た細身な体形をしている。本人も胸にコンプレックスを抱えており、性欲が枯れた憂のリハビリも兼ねて日課として日々揉ませている。そしてさくまさんが逆に開発されつつある

普段は「さくま」と名乗っているがこれは偽名であり、本名は不明。*2憂の仕事をやめさせた責任感と憂の金銭的・精神的負担をカバーするためにパン屋でアルバイトをしており、バイト先でもその偽名を名乗っている。このため周囲からは「さくまさん」「さっちゃん」などと呼ばれ、店長や常連からは外国人と思われている様子。

魔界の学校では優等生だった様で、魔界における花嫁修業初等教育である家政、栄養学、料理全てに精通*3し、知識欲も強いので独学で学んだ「うつ病」に関しても詳しい。
非常に前向きで人情に篤い性格であり、対照的に後ろ向きで日常生活もままならない憂を時に叱咤しつつも常に優しく寄り添い理解し共感しながら心身共に手広く彼を支える。
また魔族の為ツノと羽も生えているが、羽はツノは前髪で隠れてしまう程に小さく、羽は感情と連動して動く犬の尻尾の様な機能を持つ。そして性感帯でもある

弱点は「純愛」。というのもこれは性交渉こそが日常的で正常とされるサキュバス族にとって、性欲を介さない純愛の方が不健全でインモラルとされている為。*4
…なのだがその実彼女自身はそんな純愛に興味津々であり、純愛小説をエロ本みたくコッソリ隠れて読んでいる程のむっつりスケベ
加えて憂と暮らす中で次第に彼に惹かれ淡い恋心を抱いており、(サキュバスとしては)不健全と自覚しひた隠しつつも、憂が不意に見せる意外な一面や行為に恥ずかしさとまんざらでもなさが混ざりドギマギするウブ一面も見せる。かわいい


CV:河西健吾
本作のもう一人の主人公で、日々のブラック企業勤めにより重度のうつ病を患ってしまった青年。弱々しい敬語で喋り、さくまさんからは「ユウ」と呼ばれる。
その有様を見かねたさくまさんが強引に仕事を辞めさせた為現在は無職だが、退職後もこれまでの不払い残業代と退職金のたくわえで生活費の大半を賄っているので今尚一家の大黒柱である。
非常にネガティブかつ後ろ向きな性格で、鬱に苦しむ自分の現状すら憂う程の心配性。責任感も強い為になんとか変わろうと行動を起こしても過剰に努力してしまい、更に症状が悪化する悪循環に陥っている。
しかし根は律儀かつ心優しい青年であり、自分を支え寄り添ってくれるさくまさんには多大な恩義を感じているが、さくまさんとは対照的に心情の描写がモノローグが殆どされない為、(要はこの人と同じ)彼女に対する本当の想いや恋心などの描写は徹底的にボカされている。

切る暇もなかった髪はボサボサに伸びており頭頂部の白い部分はツヤではなくストレスによる白髪。
かなり濃い目元の隈と、胸元には自身で掻き毟った為に出来た古傷が痛々しく残った見るからに幸薄そうな塩顔ではあるが、顔立ちは意外と整っているのでしょっちゅうさくまさんをドギマギさせている。
趣味は読書...との事だが現在は長文に目が滑り、積んでいた本もまともに読めない。基本常に床に倒れており、感情の起伏もほぼ無く非常に無口、会話や睡眠含め自発的な生活行動もままならず、さくまさんのお陰でようやく生きている状態である。
また非常に真面目で勤勉な性格でもある為、日課の胸もみにも下心なく彼女を満足させたい思いで熱心に研究ノートをつけていたり、博識でネガティブなものばっかりだが雑学にも詳しい。

作中における彼のうつ病の描写や社畜時代の回想はどれも非常に生々しく闇が深いものの、さくまさんが彼の苦しみを我が事の様に悲しみ、寄り添ってくれる内に一部の症状は徐々に改善傾向にあり、例えば雨の中仕事に向かった彼女を心配し駆けつけたことで(近場ならば)外出を克服、さくまさんの前だけでは弱みを隠すことなく素直に出すなど厚く信頼を寄せている事がうかがえる。
因みにプロットに当たる連載前の読み切りでは彼の症状と闇が連載版より更に色濃く、サキュバスがいない隙に首吊り自殺を図る程ダークな描写がなされている。その一方で最終話では連載版でも未だ描かれていない笑顔を見せていた。


  • 天使/ツグナエル
憂を更生させるべく遣わされたと自称する天使。天使なだけあって立派な羽と天使の輪を持ち、さくまさんとは対照的に爆乳。背中の羽根を出すためか上衣とスカートが胸の下で分割された変わった装いで、オマケにノーブラ
プラス思考でポジティブ、「努力すれば必ず報われる」と憂に勤労の素晴らしさと尊さを説き、しきりに社会復帰を促す。
言うなれば「常識的で普通の価値観の持ち主」であると同時に「うつ病に一切共感・理解をせず、寄り添う事が出来ない人」の典型例といえる存在であり、さくまさんとは種族的にも行動理念も真逆な犬猿の仲。
根拠も中身もない薄っぺらな叱咤激励で憂を更に追い詰め、おまけに配慮に欠け感受性も皆無。その為事あるごとに身勝手な発言で憂を傷付けてはその都度さくまさんにシバかれている。

オマケに同僚からも「パワーだけは凄い」と言われるほど他はからっきしで頭も悪く、その上たいへんな怠け者。
地上では「家がダンボール」「野良犬と食料を取り合う」「炊き出しで何度もおかわりする」「ゴミ箱から弁当を漁る」「臭い」等ホームレス生活を送っており、しょっちゅう家に上がり込んではご飯をたかりその上大喰らいの為に家計を圧迫する等その残念な美人っぷりは止まる事を知らない。
弱点は性的な話題。さくまさんが初対面の時についた「毎日6時にセックスするのが日課」という嘘を未だ信じており夜に来る際には事前に時間予告をするピュアで律儀な一面を持ち、その一方で内心は彼女たちの夜の事情に興味津々である様子。またその食べっぷりの良さは「施しがいがある(さくまさん)」「少し食欲が湧く気がする(憂)」と案外好意的に受け止められており、その為か2人からは「ペット」扱いされている。
なお自慢のパワーも淫魔族にこそ無効*5だがその実力は本物であり、なんと淫魔族以外の悪魔ならば一撃で屠れる程の桁外れた強さを誇る。現時点でその才能を完全に持て余している事が本当に残念でならない


  • メタ助
さくまさんの学生時代の後輩で、こちらはキチンと多くの男から搾り取りまくっているやり手のサキュバス。
先輩であるさくまさんをまだ誰の精も取らず憂に固執しまくっているとは露知らず「我が校始まって以来の才女」と強く尊敬しており、彼女に会うべく学校の実習期間にはるばる日本までやってきた。
そんな彼女に対してはさくまさんもなんとか面目を保つために、憂と共に嘘をついて誤魔化しており、彼女の悩みや相談に乗ってあげる事も多い。

憂の事は当初さくまさんにとってのウォーターサーバー的なものだと認識しており、彼女の本心を知らずうっかり手を出そうとしてはさくまさんに死守されていたが、現在は共通の話題(=さくまさん)を通じて憂が徹底した聞き役に回ってトークに花を咲かせる等意外と仲良し。
変身が得意で、高等技術である動物への変化も出来る程に成績優秀。学校でも優秀な成績を収めており、同級生たちからは「姐さん」と呼ばれ「カリスマファッションリーダー」として慕われている。なお見た目はしょっちゅう変えているらしく素顔は不明。作中にて登場した姿も全て変身後の物である。


  • 店長
さくまさんが勤めているパン屋「パンデミック」の店長。
糸目で、世界で一番柔らかいほっぺたの持ち主。
おおらかで思いやりがあり、さくまさんの仕事ぶりを高く評価し、看板娘として可愛がりいつも気にかけている一方で、憂の事は「酒に溺れDV癖があるヒモのダメ男」と完全に誤解しており、無駄に心配する羽目になっている。大体さくまさんの説明不足とデレ隠しのせい

基本的に心優しく穏やかではあるが、さくまさんが遅刻した際には彼女の芸人魂を擽る罰ゲーム*6を課したり、バストサイズを聞いてきた不届き者はパンでブン殴る恐ろしい一面も。また年齢不詳だったり「全ての情報はパン屋に流れ込む」と自負する程の情報通だったりと底の知れない部分も見せる。


  • パンデミックの常連客たち
「パンデミック」に足蹴なく通うどいつもこいつもド変態な男性客の皆様。
中でも落書きのような手抜き顔の人物が頻繁に登場するが、その度にサキュバスや店長をいやらしい目で見たりマニアックな注文をしてきたりと奇抜な言動を繰り返す為しばしば店長を困惑させている。


  • サキュバス女子校の生徒たち
メタ助と同じ学校に通う下級淫魔の同級生たち。その多くが成績優秀なメタ助を慕っているが、唯一そんな彼女を快く思わず淫しなみに煩い*7風紀委淫長や、留学生として通っており未だ淫魔族の常識に翻弄されっぱなしな蛇女のレヴィアさん、自身に亀甲縛りを施し常にボールギャグ装備の見てくれは立派な淫魔な魔族のグゲちゃんなどが登場する。


  • マ◯コで◯ックス先生
サキュバス女子校の淫語(こくご)教師を務める上級淫魔。登場回数はそこまで多くないが元から魔族っぽいからか元ネタとほぼ一緒な外見と、隠す位置に悪意がありすぎるとんでもない名前は一度見たら忘れられない。
なお本作は彼(彼女?)以外にも事象や著名人などを下ネタに言い換えたパロディギャグが至る所に散りばめられており、本作を語る上で外せない魅力の一つとなっている。でもチョコボール向井やスーパーマラドーナはそのまま




追記・修正は鬱への理解を深め、寄り添える人がお願いします
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最終更新:2025年01月31日 02:52

*1 その為作中における「うつ」の描写はどれも妙にリアリティで生々しさに溢れており、その解像度の高さや記事冒頭のキャッチコピーも相まって、一部の読者からは「作者の実体験ではないか?」と推測されることも。

*2 本人曰く本名は命と同じ位大切な物らしく、「親兄弟にも簡単に教えたりしない」との事

*3 上手男心を掴み、外堀を埋めるためにいわゆる女子力を磨くため

*4 サキュバスの倫理観における純愛は性欲を介さないので食事にもならず無意味同然である為、変態的な異常性癖として認識されており、「純愛」が人間社会で言うエロや性行為のように人前で話すには恥ずべきことと認識されている

*5 淫魔族は聖句を理解できず、悪魔祓いの儀式すら性的に解釈して自分の力にしてしまう為

*6 カスタードクリームが入った美味しいパンと、激辛ソースが入ったオイシイ(芸人的な意味で)パンの二択を選ばせる

*7 因みに風紀といっても淫魔なので、その正装は丸見えになる程の短いスカートのワカメちゃんスタイルである