機動戦士ガンダム シルエット・フォーミュラ フォーミュラ91の亡霊

登録日:2024/07/30 Tue 03:07:03
更新日:2025/04/26 Sat 15:27:10
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ま…まさか…

あれがザビーネのいっていた…ガンダム!

ラフレシアをたおしたという…F91か!!


F91じゃねぇ!

この機体は…


F90IIIだー!!



『機動戦士ガンダム シルエット・フォーミュラ フォーミュラ91の亡霊』とは、月刊コミックボンボン1992年春の増刊号に掲載された読み切り漫画作品。作者は岩村俊哉。
クラスターガンダムを主軸とした短編であり、大まかなストーリーはプラモデル説明書に記載されたものをなぞっているが、オリジナルキャラクターも登場するなど作者のアレンジ色が強い。
後の漫画版Vガンダムの作者が描いたと言えば、だいたい予想できるだろう。
長らくコミックスに収録されていない作品だったが、2006年にGレジェンドコミックス「ガンダム短編集2」にて初収録され認知度が上がった。
同時収録されているのが『ガンダム0083』のコミカライズのみと若干詐欺めいたタイトルになっているが。*1
また、雑誌掲載時のみコマ欄外に解説文が添えられている。
その後、2024年には後述の展開もありガンダムエースに再録され、漫画版Vガンダムの新装版にも収録されることになった。


あらすじ

ガンダムF91がカロッゾ・ロナの乗るラフレシアを撃破してから24時間後。
フロンティアIにはクロスボーン・バンガードの兵士たちが制圧に乗り出し、
特に「死神三銃士(デス・ガンズ)」と呼ばれる精鋭たちが猛威を振るっていた。

連邦のパイロットであるウォルフ・ライルは内部にあるサナリィ施設跡から
コア・ファイターに関する研究資料の奪取のために単独でフロンティアIへ潜入する。


登場人物

地球連邦軍

  • ウォルフ・ライル
主人公。クラスターガンダムに乗り込むとなる連邦のパイロット。階級は少尉。
任務中でありながら堂々とポテチ持参で食う、しかし任務は機密保持用の火薬の量を間違えながらも真面目にこなす、モビルスーツ戦だけでなく白兵戦も得意…など、
児童誌掲載の作品らしいおっちょこちょいで熱血漢な不良軍人として描かれている。

  • 大佐
ウォルフの腕を見込んで任務へ送り出した人物。
彼のコメントが物語を締めくくるなど扱いは大きいが終始名無しである

  • ラウル大尉
大佐の部下である連邦軍人。
パイロットとしてのウォルフを評価しつつも問題児とされる彼に任務はこなせないと疑問視していた。


死神三銃士(デス・ガンズ)

漫画オリジナルキャラクター。クロスボーン・バンガードの精鋭である兵士たち。
どう見ても貴族主義者には見えない西部劇の悪役みたいな恰好が特徴。
部隊全員が仲間でも容赦なく銃を向ける冷酷かつ残忍な性格であり、仲間であるCV兵からも煙たがられている。
しかしパイロットとしての腕は認められているのか、彼らが敗れ去った後に残った兵士たちは撤退していった。
そしてチーム内の仲間意識は強く、様々なフォーメーション攻撃を行い敵を苦しめる。


  • ガンマッド
少佐。デス・ガンズのリーダー。
テンガロンハットに口ひげを生やし葉巻を加えているなどワイルドかつダンディな容姿をしている。
ザビーネカロッゾとは顔を合わせているらしい。
クラスターガンダムの残像をショットランサー一振りで全て打ち消すなど、MS戦の手練。
意外と仲間思いらしく、特にイアンに対しては忠告したり、やられた際は激昂したりしていた。
また若干テンションが高いながらも基本的に冷静沈着であり、かなりの腕利き言える存在だろう。
その一方で部下2人が「ポーカーの役でどっちが強いか」と喧嘩になった際は「やめろ」と制しながらも後に「強い役はこっちだ」と述べたり、本当に哀れな存在に対しては同情的なセリフを吐くなど、単なる悪人ではない姿も見せている。


  • イアン
中尉。紅一点でありツインテールでへそ出しミニスカートが特徴。
ドドンガと共にゲーム感覚で捕虜を撃ち殺す事を愉しんでいた。
18号ではない…が、結構可愛いと評判。
調子に乗りやすいもののガンマッドの言うことは忠実に聞いていた。


  • ドドンガ・ドン
中尉。大柄の男で見た目通りの粗暴な性格。デブと言われると怒る。
意外と教養もあるらしく、ポーカーの役を正しく覚えてたり、マーズジオンの歴史を確認していた。
決してドドリアさんではないでも宇宙世紀では割と普通にある韻を踏んだ語感の名前なのが何とも…。
扱いは噛ませ役ながらもウォルフの利き腕を撃ち抜いたりと一定の成果は挙げており、口だけの男ではないのがわかる。


登場メカニック


主役機体。当初はコア・ファイターのみが登場し、フロンティアI脱出の際にガンダム部分と合体した。
本作ではF91のような残像を生み出すことが出来る。「分身はこうやるんだ!」に近い描写だが。
資料が足りなかったのか、ビーム・バズーカがビーム・ライフルのように描かれている上にコマによって形が変わっている。

  • デナン・ゾン
CVの主力量産機。デス・ガンズも搭乗している。
ガンマッド機のみ頭部の両端にブレードアンテナを設置しているため、
デナン・ゲーのようにも見えるが、両肩がスパイクアーマーのままのためデナン・ゾンのカスタム機である。
ちなみになぜ腕利きの彼らに高性能機であるベルガシリーズが与えられてないかというと、ベルガは基本的に「貴族」専用であり、傭兵の彼らでは乗ることが出来ないのである。

合計2コマのみの登場。CV兵たちからはラフレシアとの戦いで相討ちとなり大破した認識らしく、クラスターガンダムをF91と誤認していた。

他にもジェガンやベルガシリーズなどの姿が確認できる。


そして時は巡り…


本作の掲載から32年以上もの時が経った2024年。
月刊ガンダムエースにて『機動戦士ガンダムF90 FastestFormula』の後継作品となる『機動戦士ガンダムF90クラスター』が連載開始。
プロローグとなる回では歴代のF90に纏わるパイロットたちの活躍が次々と映し出されていった。残念ながらシーブックやミノルさんはいないぞ。同じ号で神の雷計画に関する読み切りはあったけど。

そして、そこには…




ビームシールドのガンダム!?

まさか…カロッゾ閣下を討ち果たした白い機体というのか!?


違うな

…こいつは F91じゃねぇ

ー7年の時を経て完成した 最新最強のガンダムー

F90IIIY クラスターガンダムだ!




ウォルフ・ライルとデス・ガンズの姿も描かれていた。
しかも、当時の岩村氏の絵柄に寄せられている。
寄せているとはいえ、流石に某漫画っぽさは薄めてはいるが。

タイトルから「まさかクラスターガンダムが主役なのか?」と多くの読者から予想もされていたが、
今になって本当に彼らに再びスポットが当てられているとは誰も予想できなかったであろう。
勿論、岩村氏もこの事についてX(Twitter)にて喜びのコメントを残している。
思えば連動企画である月刊モビルマシーンにギンザエフ大尉の名前が出た時点で全ては繋がっていたのだろう。

続く第1話でもデス・ガンズが登場し、設定と活躍の掘り下げが行われ更なる話題を呼んだ。
彼らは傭兵部隊であり、第一次オールズモビル戦役の際は連邦軍の裏で活動するダンシネインに雇われていた事が描かれている(つまり生粋の貴族主義者では無い。一応原作の本誌掲載時の欄外にも傭兵という記述はあった)*2
「すべて破壊してしまったからだ~!!」といい焼け野原ひろしといいガンダムの傭兵キャラってみんなアクが強すぎる。
その後話が進むにつれて原作では白兵戦でやられてしまって見られなかったドドンガのMS戦での活躍が見られるだけでなく、デス・ガンズが木星圏出身であるという事実が明らかになった。


死神三銃士(デス・ガンズ)(U.C.0121)

民間軍事企業ダンシネインからの依頼でオリンポス基地にあるF902号機のコピー機体「マルス・ガンダム」回収のために基地に潜入した。搭乗機体はF80。
機体がイヴァル・ダーナによって稼働済みであることを知ると強奪すべく戦闘を仕掛ける。

  • ガンマッド(U.C.0121)
少佐、デス・ガンズのリーダー。機体はF80・Oタイプ
イヴァルとの交渉やチームへの指揮等一歩引いた視点で状況を観察し行動している。
任務のためならば非戦闘員を脅迫の材料として利用し、撃つことも躊躇わない冷酷な「大人」でもある。

  • イアン(U.C.0121)
中尉。機体はF80・Qタイプ。
戦闘データの収集や2丁ライフルでのかく乱を担当。

  • ドドンガ・ドン(U.C.0121)
中尉。機体はF80・Gタイプ。
本編ではなかった戦闘シーンが描かれており、見た目に違わず死を恐れない突撃からの大型ビームサーベルによる白兵戦が得意。






火星独立ジオン軍によるF90強奪事件が終結した、嵐の前の凪の刻---
マン・ハンターを襲撃しようと集まったジオン残党兵に一機のMSが奇襲を仕掛ける!



マン・ハンターに気づかれたか!

冗談!

F80!!

ガンレイドだ---っ!!!


…地球連邦軍特務部隊所属

ウォルフ・ライル!!


『機動戦士ガンダムF90』の物語が一段落し次章への期待が高まる中で、ついにウォルフが『F90クラスター』に本格参戦、しかも直前まで敵側が使用していたF80に乗ってという展開は読者に衝撃を与えた。この男登場するたびに読者を驚かせにくるな



いつの日か…コア・ファイターそのものがアニヲタWikiと呼ばれる日が来るかもしれんな…


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最終更新:2025年04月26日 15:27

*1 『0083』は単行本化される前に単独でコンビニコミック化された事がある。

*2 実際の軍事でも「国の正規軍が雇われ兵に依頼する」ことは現在でもあるためそんなに変な話ではない。『SEED ASTRAYシリーズ』とかでちょっとだけ用語で出てきたPMC(民間軍事会社)がこれ。日本でも横須賀など「航空機を扱っている米軍」がいる地域だとたまに実機訓練の相手として依頼を受けたPMC側人員=傭兵の戦闘機スタッフが来ることがある