機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY

登録日:2011/07/28 Thu 01:26:17
更新日:2025/01/09 Thu 13:39:23
所要時間:約 8 分で読めます






星の屑満ちる時 ガンダム再び宇宙へ


機動戦士ガンダム0083
STARDUST MEMORYジオンの残光




1991年から1992年にかけて発売されたOVA作品。全13話。略称は「0083(ダブルオーエイティスリー)」。
ソフトは約1年をかけて基本的には1ヶ月に一度のペースで12巻に分けられて発売された。
そういう意味では話数こそ少ないものの、無駄を省いたTVシリーズのような構成の作品と言える。




【概要】

機動戦士ガンダム』と『機動戦士Ζガンダム』の間の空白の期間を描いた物語。もっといえば、Ζガンダムで台頭したティターンズ設立のいきさつを描いた作品。
それでいて、当初のメインストーリーが未熟ながら愚直に成長していくパイロット候補生と主役機となるガンダムを開発した才媛だが不器用な美女のラブストーリー……と、恐らくはモチーフとなっているのは問答無用の名作映画『トップガン』だったのだろう。
また、この他にもハリウッド映画的な要素や作風を指摘する声もあり、そういった点でも90年代(より正確に言えば80年代の流行の総決算)的な作品と言える。*1

明確に前半(1〜7話)と後半(8〜13話)に分かれており、主題歌もガラリと変わるので分かりやすい。
ただし、熱い引きを受けてクライマックスが描かれる後半こそが地雷原だったりするので覚悟は必要。
前半の監督は加瀬充子。後半、及び劇場版の監督は今西隆志。
名曲揃いだが、『THE WINNER』というタイトルでありながら「勝利者などいない」という矛盾した、しかし正鵠を射た言葉を歌う前期OP、
『重戦機エルガイム』の前期OPや『聖戦士ダンバイン』で知られるMIOの歌う後期OPの『MEN OF DESTINY』は、本作の魅力とテーマを見事に歌いきった名曲として有名。方向性が『トップガン』の主題歌ぽいのも含めてね。
何なら、曲どころか1フレーズで撃ち抜かれる位にハマっている『ガンダム』シリーズ屈指の正に主題歌である。

前作『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』にて、アレックス登場回のソフトの売れ行きが突出していたことを受け、ガンダムの出番とアクションシーンが重点的に強化されている。
敵として描かれている筈のジオン残党デラーズ・フリートの面々がとにかく格好良く、特にアナベル・ガトー少佐の人気は当時から圧倒的。
……近年でこそ、他作品と比較した場合や本作以降も後付け補完されると共に改めて検証されると共に明確にされていった一年戦争前後の情報やら政治的な動きから「(こいつらの行動)なんかおかしくね?」という声も聞かれるようになったが、ある時期までは一部のキャラ(ほぼ一人)のアレな行動を除いては反論も許さんと言わんばりのカリスマ的な人気と評価を得ていた作品だった。

実際、ビデオ、LD、DVDでのソフト売上のそれぞれで『ガンダム』関連では唯一のオリコン1位を獲得する等、売上も十分で『ガンダム』シリーズでも最高傑作と推されていた時期もあった程。*2

脂の乗り切った90年代OVAの中でも、とりわけ優れたアクションシーンや、渋い男たちの物語で人気を博している。
実際、どストレートに『ガンダム』していた為に、同年公開で本命と見られていた富野由悠季の新作劇場版『機動戦士ガンダムF91』よりも外伝扱いだったこっちの方がウケてしまった程。*3

尚、作品の熱さと視聴者のボルテージを一気に過熱させた人気作である一方で、当時からツッコミのある要素もあるのは確か。
特に
  • 「『Ζ』より前の時代にしてはメカのオーバースペックが過ぎる
  • 「ガンダム対ガンダムという構図の定番化(&ガンダム大量出現の兆候)」
  • 「演出がジオン贔屓過ぎだろ……」
  • 「連邦ヘイトをやり過ぎ」
などの方向から批判されることも多かった。
特に、後半以降の急激で一気にシリアス方面に舵を取り過ぎた展開と最後のアレについては、後半より交代した元凶とされる監督の他作品でも似たような傾向が見られることから槍玉にあげられがち。
また、メインだった筈のコウとニナのラブストーリーがジオニズム信者の交代した監督のせいで思わぬ方向に傾き、劇中では何とも煮えきらない形で終わったことで、恐らく製作が想定していないであろう「ニナ=悪女」という構図を作ってしまった。*4
ただ連邦ヘイトをやり過ぎというのは、後のティターンズ台頭に繋がることを考えればある程度は妥当な線ではある。それにしたって職務怠慢やモブ指揮の堕落っぷりはやりすぎだが…。

予定通りのプロットを見事に昇華しつつ熱い展開で魅せた前半に対して、後半は感情と展開を劇的にすることを優先した結果、描写不足・説明不足となってしまっており、
正義側として描いたはずの主人公チームであるアルビオンの行動が後半において非常に軽率なものへ傾倒。
かたやジオンにも正義はあるといった描き方をしようとしたせいで、内容をロマンに振りすぎたきらいがある。
結果的にどちらにも正義がある、というテーマがちゃんと描けていたとは言い難い。
むしろ世界の安寧を司る組織故に感情論で動かず、徹頭徹尾連邦軍としての体制維持を手段を選ばず粛々とこなすという悪辣に描かれた「腐った連邦軍」が一番まとも、と考察されることも多くなってしまった。
とはいえ制作側の目論見通り、連邦の行動自体は全体を通して悪辣で腐敗したものとして描かれており、後の件を考慮してもこちらはこちらで全肯定することも難しい。つまり全員悪人
重ね重ね最後のアレやコレやで視聴者の期待に水を差し、好漢であっても悪い印象を残して終わる、という後半の展開も何かと言われがち。
……まぁ、監督(脚本も担当)が変わってるんだから作風が違うのは当然なのだが、せめて当初からの設定をいじらなかったらなぁ……という話なのだが。
というわけで描き手が伝えたかったキャラクターや組織の印象が視聴者と噛み合ってないことが非常に多い。
その最たる例がニナとシナプス(とコーウェン)というだけで、主人公サイドはそう考えると総じて良い扱いをしようとした結果酷い印象に下げられている。

とはいえ、汚れ仕事を押し付けられた挙句に故郷も奪われ宇宙を流離うしかなかった海兵隊の存在や、
ジオンの蛮行のせいで環境を破壊され被害を被る地球連邦軍などジオンの闇も描写されており、決してジオンマンセーなだけの作品ではない。*5
というわけで、当時(から20年以上)はともかく、ネットや各書籍などで考察や再評価がされた結果、デラーズ・フリートは「空気を読めない時代遅れのテロリスト」と言う見方が大半になる等、評価も変わりつつある。*6*7

本作における登場するMS・MAの中には、後年のグリプス戦役よりも設定(数値)的に高性能な機体*8が散見されるが、これに関しては、「ガンダム開発計画」を推進していたコーウェン将軍の失脚並びにコロニー落としという“不祥事”を隠蔽したかった連邦軍上層部の意向により事実上無かった事にされた(黒歴史)というのが劇中で触れられており、設定の整合性を保っている。

機動戦士ガンダムAGE クライマックスヒーロー』の作者・鷹岬諒のお気に入り作品でもある。



【ストーリー】


宇宙世紀0083年。オーストラリアの地球連邦軍トリントン基地に向かう一隻の強襲揚陸艦があった。
その揚陸艦アルビオンに積まれていた2機の試作ガンダム。トリントン基地に所属するテストパイロットの一人である青年、コウ・ウラキはその威容に目を奪われる。
一方、アナハイム・エレクトロニクスのシステム・エンジニア、ニナ・パープルトンは、ガンダム試作2号機が核装備であることを見抜いたコウの観察力に舌を巻いていた。
しかし、核弾頭を装填した直後、2号機はジオンを名乗る男に強奪されてしまう。
それと時を同じくして、突然の攻撃がトリントン基地を襲った。眼前で奪われた2号機を止めるため、コウは試作1号機に乗り込む。
基地から逃亡しようとする2号機の前に立ちはだかるコウの1号機。
2機のガンダムの対峙が、新たなる戦いの幕開けとなった。



【主な登場人物】

地球連邦軍

今作の主人公。19歳。
トリントン基地にテストパイロットとして配属され、バニングの課す訓練を受けていたが、ガンダム強奪の現場に居合わせたため、咄嗟に1号機に乗り込みガトーを追撃することに。
シリーズ初の最初から軍人の主人公*9で洞察力も素晴らしい*10のだが、猪突猛進の気がある。
ちなみにパイロットとしては珍しいぐらい、女性関係はウブ。年齢とか軍属経験を考えたら当たり前だけど。
当初は才能こそあれ(ベテランの先輩達相手にも苦労しつつも勝利する程)成長途中であり、手痛い失敗もあったもののなんだかんだで前半のラストまでには遥かに大きな壁であったガトーに自らを認識していると明言させるまでに。
後半からは、薬物なども使用していたとはいえ、明らかに普通の兵士を越える能力を発揮していたが、その結果は……。
尚、あそこまで行ったら殆どニュータイプみたいなもんじゃないかという描写まで踏み込んでるのにそうならなかったのは、富野に「ちゃんとニュータイプ出してよ」と言われたのを断ったから、とか何とか。……おそらく、当時は頼んだ方も断った方もまだまだニュータイプの定義づけがあやふやだっただけなのだろう。
「ここから出すわけにはいかない!」


本作のヒロイン。
前半は年下主人公を翻弄しつつも受け止められる程に大人でもない、仕事は出来るが恋愛方面では同じ位にウブな不器用お姉さん。
後半は唐突に訳アリ彼氏に迫られて社会人経験も少ない内に言われるがままに情報ボロンッしていた過去のあるメンヘラ気質持ちの悩める女
……とキャラ造型の時点で整合際が取れなくなっている本作の最大の被害者にして(視聴者的には)加害者。
特に、ラストの展開のアレなアレのせいで盛大にヘイトを買ってしまい紫豚という蔑称が定着してしまった。
1号機、2号機専属のシステムエンジニアであり、前半まではそれなりに活躍するのだが、本来はコウとの関係性が深くなっていくであろう後半では全くストーリー的には外野に押しやられてしまい一人で悶える姿が殆どという扱いに。
最後のやらかしのせいでガンダム三大悪女の鉄板の一人(※ちなみに三人目はよく論争が起きる)として定着してしまっているが、一応は本編の時点でもコウと結ばれる方向性には持っていかれているので、ちゃんと見てあげよう。
制作側の都合によっていいように扱われた人。
実際、担当声優も製作スタッフも後半からのキャラ変には戸惑い、苦言を呈したが聞き入れてもらえなかったらしい。
「いやぁ!私のガンダムがぁぁっ!!」


コウの親友でナイメーヘン士官学校時代からの悪友。眼鏡男。
どこか頼りない印象を受けるが、コウと違い女性に対してはなかなかに手が早いナンパ野郎である。
当初はヒヨッ子で、戦闘では終始怯えた様子だったが、コウがガンダム奪還の任務に就いた際は彼が行くと決めたためかMSパイロットとして乗船する。
元よりベテランジオン兵とほぼ一騎討ちで戦って返り討ちにする*11など素質はあったが、戦いの中でさらに成長していく。
ついでに上述の通りで真っ当な意味で恋人もゲットしており、本作では数少ない「前半からの路線をブレずに後半に引き継げたキャラ」。
「ちくしょう!今更ジオンが何しようってんだよぉ!」←ド正論です。


強襲揚陸艦アルビオンの艦長で、コーウェン中将の部下。謹厳実直、そして艦長としても現場指揮官*12としても有能な人物。
見た目通り規律には厳しくガトーにも「連邦にしては真面目な指揮官」と称賛されたほど。一方で部下であろうが自分に非があれば丁寧に謝罪する*13など、モーラをして紳士と称される人格者*14
規律に厳格ではあるが判断自体は柔軟であり*15、そのことが多くの部下を救った一方で自分の命運が尽きる原因ともなった。
部隊のメンバーからもよく慕われていたが、コーウェン中将の派閥自体の立場が弱く、軍からろくな支援が得られず地上での試作2号機の奪還作戦に尽く失敗。
それが嵩んだあげくコーウェン中将が失脚すると「軍閥政治」に揉まれて力を失い、星の屑の真意を察知してからは阻止のために最後は独断で動く。
軍に背いてアルビオンを私物化同然で動かした事実は覆しようがなく、反逆罪等に問われて最後は諸々の責任を極刑という形で負うことになった。
脚本や構成の影響で劇中で見せる戦術的有能さに反して政治的動きは悪く、特に後半は重要な判断を下す際に必要な情報が不足したまま行動に移す*16羽目になり、後々一部のガノタから批判を受けてしまう。ニナと同様に不遇な人。*17
ただし劇中では連邦の腐敗や惰性による影響をもれなく受けており、軍からの支援不足等を考慮すると同情するべき点は多い。そのため別作品では元部下が彼の処刑に不満を持つ場面も描かれた。
ちなみに中の人はガトーの中の人のお父さん。
「……この位置からでは間に合わん!」


ベテランMSパイロット。階級は大尉。コウやキースの良き先輩でトリントン基地のパイロットでは一番腕がある。
恐らく劇中全体で見ても5指の腕を持つと思われる。
一年戦争当時所属していた「不死身の第四小隊」を復活させる。
問題児ばかりの第四小隊をまとめ上げたり、ひよっこたちにも厳しいながらも優しく接する等人格者なのは間違いないが、女性にだらしない一面も持つ*18
奥さんと別居状態らしいことが仄めかされているが、おそらくはそのせいだと思われる。
実戦で戦った回が実は少なく、後半には戦闘中に機体が受けたかすり傷が原因の爆発事故で命を落とす。これがアルビオン隊とシーマ艦隊に決定的な因縁と確執を生んでしまった。
「ウラキ、やりよったな。帰ったらビールを奢ってやる」


アルビオンの補充パイロット。階級は中尉。バニングの部下として不死身の第四小隊に所属していた。
ベテランパイロットだが典型的な素行不良兵で、酒癖が悪く態度が横柄なうえスケベ心丸出しな品のない男。こんなんでも設定上ちゃんとマリーという恋人がいる
しかし腕は確かで、新米がパイロットだったとはいえGP01をジムカスタムで相手にして圧倒したり、バニングに小隊長を任されるほど信頼されている。
コウやキースを低く見ていたが、多少打ち解けてからはキースに宇宙戦のイロハも叩き込んだり、模擬戦で負かされたコウに嫉妬しつつ彼の実力を認めたりもしている。
また、バニングのことを心底尊敬しており、彼に大目玉を食らうと報告された時は狼狽し、戦死した時は人目も憚らず号泣した。
連邦にありがちなアースノイド主義なところがあり、スペースノイドを宇宙人呼ばわりしたり捕虜のデラーズ兵を個人的な感情で痛めつけたり*19している。
これらの素行を憎めないとするか否かで好き嫌いが激しく変わるキャラ。ただスパロボでは憎めないオッサンになったり28歳だぞ当時の漫画版ではバニングの役割を引き受けるなど扱いの差異も激しい。
「ちっ、二人も小便小僧はいらねぇよ」


モンシアと同じ元バニングの部下であった補充パイロット。階級は中尉だが、のちに戦時階級で大尉となる。
パイロットとしての腕はモンシア同様に卓越している反面、モンシアと同じく素行がかなり悪い、が、それでも多少の分別はある性格。
コウが誘導灯なしに着艦出来るかどうかを賭けた際、賭けにならないという理由もあるだろうがコウがアドリブでなんとかする方に入れていた。
他にも深追いしようとするモンシアを窘めたり、バカにしながらもモンシアと違いキースを最低限は気遣うなど、見た目よりはまとも。
そのせいかバニングの殉職後はMS隊をまとめるパイロットとなっていた。
ジョークは得意なようだが教養はないようで、モーラのことを「スベタ」と罵ろうとして「スブタ」と間違えていた。
顎に傷があるがその由来は不明。
「鴨料理でも自前で作るかい!」


同じくバニングの部下だった補充要員。階級は少尉でウラキ達と同じ。不死身の第四小隊どころかアルビオンのMS隊の中では唯一円満な妻帯者でもある。
あまり目立たないが真面目かつ冷静沈着なパイロットで、通常は支援を担当。
階級が上のモンシアやベイトにも意見を通すときは通しているため、彼等すらもアデルの言葉は無視出来ないくらい、支援の腕前は相当高いことがうかがえる。
自身の腕前を鼻にかけず、ウラキをからかうための賭けからすぐ降りたり、キースを唯一しっかりと気遣って導いていたのも彼であるなどかなりの常識人である。
口ひげがトレードマークだがあの顔立ちで24歳うっそだろお前
余談だが目立たないことが災いしてか、過去のGジェネではゲーム内ステータスで曹長に格下げされたり、数少ない名言をキースに奪われていた。
逆にスパロボ初参戦となった第二次αでは中尉に昇進していた。
「落ち着けキース!突破されなければこちらの勝ちだ!」


ガンダム開発計画の責任者。階級は中将。
数少ない主人公サイドの理解者だが、弱小派閥故に最後まで自分の派閥者以外との連携がうまく取れず、デラーズフリートのされるがままになってしまう。
劇中では善良で愚直とも言える程の規律に厳しい叩き上げ肌であり、人格者として描かれている。
……が、よく考えると抑止力目的とはいえ核装備MSを開発主導したのは彼であるなど、キャラに見合わない最大の責任を背負わされた人。
「……この一撃こそ、歴史を変える」


後のティターンズ総司令官。
状況的に仕方ない部分があるとはいえ、味方艦もろともソーラ・システムⅡをぶっ放すなどこの頃から外道。
「やかましい! ヤツらを一撃せねばおさまらん!」


後のティターンズ最高司令官。保守派閥のコリニー大将の部下。
今作ではシーマ艦隊を買収したりジョン・コーウェンを失脚させたりなど、裏で手を回しティターンズ設立のきっかけを作る。
「フ……完璧な囲みは敵に死力を尽くさせますからなぁ」


コリニーとは異なる保守派の軍人で、コンペイトウにて宇宙艦隊のほぼ全てを集めた観艦式の最高責任者。
演説でスペースノイドを軽視する発言を交えるなど器自体は矮小であり、政治的な上昇欲からか独断でシーマと内通して寝返らせようとした人物。
英国紳士の振る舞いを好み、船乗りの精神を引用して説くなど気障で洒落た面も持ち、政治家としては間違いなく優秀である。
軍の意向と関係なくシーマ艦隊と密約を行おうとするも、隠蔽・対策不足からアルビオンに密約を目撃されることになり、交渉決裂&先制攻撃の鏑矢を放つハメになる。
思惑が成功すれば観艦式の運命も星の屑も結果も変わっていたと考えると結果オーライで英雄になれたかもしれない人物と言える。が、やはり詰めの甘さは否めない。
シナプスが物語上無茶を背負わされて一部で評価を落とした人物なら、こちらは悪辣な無能として描こうとした結果、全体でみるとファインプレイをしかけた、という対照的な存在。
「キミ、レディは贈り物が好きだと相場が決まっている」


《デラーズ・フリート》

本作の実質的主役。「ソロモンの悪夢」の異名を持つ連邦教科書にも載るほどのエースパイロット。ロン毛
ジオン、特にギレンが作り上げたジオンの精神に陶酔した人。ガンダムを強奪し「星の屑」作戦成功に向けて動く。
こう見えて25歳アデルよりも年上なところもびっくり。良くも悪くも直情的かつ突っ走る性格。
「いいか、一人でも多く突破し、アクシズ艦隊へ辿り着くのだ!我々の真実の戦いを、後の世に伝える為に!!」

ジオン軍の残党デラーズ・フリートのトップ。連邦に対し宣戦布告を行う。
ギレンのカリスマ性に惚れ込んでおり、コーウェンをして「ギレン・ザビの亡霊」と称される。
冷静に見るとかなりのロマンチストで、ギレンと比べると政治的な手腕については賛否ある人。
実は頭はスキンヘッドであって決してハゲているわけではない。
「かりそめの平和への囁きに惑わされる事なく、繰り返し心に聞こえてくる祖国の名誉の為に!ジーク・ジオン!!」

デラーズ・フリートに属するシーマ艦隊の長。腕は認められているが生意気、かつ彼女の部下はならず者が多く、信用はされていない。
また、一年戦争後は海賊行為を行ってきたため、理想主義的な面があるガトーとは相容れない部分が多い。
終盤でデラーズを裏切り連邦軍に付く、ある意味第三の主人公にして、本来であれば0083における悪女になっていたはずのキャラ。
荒くれ者をまとめ上げるだけのカリスマと実力を備える一方、失敗したり戦死した部下はほぼ省みなかったりあっさり切り捨てるなど、決して人情深い人ではない。
「星の屑」作戦阻止のために尽力しており彼女が作中でもっと掘り下げられれば、本作の「ジオン贔屓すぎる」という点は解消されたかもしれない。
一年戦争、そして「ジオンの大義」の被害者の一人という立ち位置だが、そんな彼女の薄暗い過去が明確に描かれたのは本編後の別作品である。
それも相まってやや多めに同情されて、海賊行為もやむなしとされている節はある。
MSパイロットとしては劇中でも随一の腕前を持っており、あのバニングと互角に渡り合えるエース級のスキルを持つ。
「あたしは、故あれば寝返るのさ!」

  • ノイエン・ビッター
ジオン公国軍少将。
キンバライド基地の虎の子のHLVに搭乗したガトーを宇宙に上げる時間を稼ぐために、ブースター付きザクⅡを駆りアルビオンを攻撃する。
キンバライドの隠し基地を0079時代から約4年にわたり、ろくな補給もなしで維持し続けていたこと、部下からも非常に慕われていたことからとても有能であることがうかがえる。
MS操縦の技能も並ではなく、ガトーをして「武人の鑑」と言わしめたのは伊達ではない。
「勝ったぞ……星の屑作戦に栄光あれ……!」

  • ケリィ・レズナー
元ジオン軍のパイロットだが、一年戦争時に片腕を失っている。劇中ではジャンク屋を営んでいてMAヴァル・ヴァロをレストアしていた。
ガトーとは戦友であり、実は彼からデラーズ・フリートへの参加を打診されている。
ウラキにとってのランバ・ラル枠。
「ヴァル・ヴァロだぞぉっ!」


アクシズ

ミネバ・ザビの摂政でアクシズの実質的トップ。見た目はグリプス戦役当時とあまり変わらない。
大きな動きは起こさずに地球圏に先遣艦隊を送ったのみ。
ちなみにこの時点でも素晴らしい風格をお持ちだが、この時の年齢はなんと

16歳である。


16歳である。


そこらの駄目な大人はまず裸足で逃げ出すだろう。
しかも2年前までは普通に女の子してた。おいロリコンちょっとこっち来い。
「寒い……ここにあと何年……」


【登場兵器】

前半の主役機。
2号機強奪の際にコウが搭乗しそのまま彼の乗機に。
元々が地上戦に特化した装備タイプ・調整がなされていたため、宇宙空間では使用はできるものの性能はジム以下になる*20
本来は環境ごとに換装・調整することで最高峰の汎用性を得る予定だった。

  • ガンダム試作1号機フルバーニアン
中破した1号機を修復しつつ、宇宙戦に特化させて改修した機体。
戦況と1号機の状態を鑑みて完全な宇宙戦用MSに強化・改修されており、本来の1号機の宇宙戦用仕様とは異なる仕様になっている。
機体各部にバーニアが取り付けられているため、宇宙空間ではMA並の高い機動力を発揮する。
ちなみに機体スペックはこの後の時代に活躍したZガンダムよりも高いが、地上運用を考えればZガンダムの方が総合的な性能は上回ると思われる。

戦術核弾頭の運用を想定した機体。ジオン再興を望むガトーにより強奪される。
非常にゴツい見た目だが、肩の大型バインダーによって機動性自体は高い。
因みに劇中では南極条約違反と言われているこの機体だが、厳密には違反していない*21

後半の主役機。MS部分である「ステイメン」がアームドベース『オーキス』と合体した超ド級"MS"。
合体時の形状やサイズからMAで通じるが、連邦軍にMAの区分は無いため、どれだけデカかろうが「外部装備を背負ったMS」という扱い。
火力、機動力、防御力の全てが圧倒的で、接近戦にもある程度対応している。
その性能からデザイナーのカトキハジメに「オーパーツ」と言わしめた機体だが、そのデカさ故運用や整備も難しいため一概にグリプス戦役のMSやMAより優れているとはいえない。

  • GP03S「ステイメン」
GP03のMS部分。この形態での出番はOPの他にはわずかであり、まともに活躍するのはゲーム作品がほとんど。
GPシリーズの中で唯一、劇中で一度だけコードネームの『ステイメン』の名で呼ばれた。

当時の連邦系量産機の最上位機種。劇中では特長が無いのが特徴と言われるが、アレックスのデータを参考に開発されたために性能自体は高い。
が、コストが高かったためエース用に少数生産されたのみに留まった。

一年戦争終結後にジムキャノン等のデータを元に支援用MSとして開発された機体。
生産ラインの大部分がジム・カスタムと共通。
チョバムアーマーを参考にした追加装甲があるが、アレックスのようにパージは出来ない。

皆さんご存知のザク……とは細部が少し違う。デラーズフリートが使用するが、連邦も戦後ジオンから接収したものを訓練機として使用している。

ゲルググの海兵隊仕様。シーマ艦隊に配備。しかしジムカスタム相手に旧式呼ばれされたり、地上装備の一号機に撃墜されるなど扱いは不遇。
カラーリング、武装が異なるシーマ専用の指揮官機も存在する。

破損したザクⅡF2型を改修し、なんとガトル戦闘機と組み合わせたリサイクルMS。
右腕は武器腕で、肩には丸いスラスター・ポッドを、足の代わりにプロペラントタンク兼用のスラスターを装備。
地味にカコイイ。
後にまさかのユニコーンにも登場した。

ビグロを発展させたMA。プラズマフィールドを装備し、機体表面にビームコートが貼られて遠距離からならビームライフルの直撃にも耐えられる。
劇場版では1号機との対決シーンが丸々カットに……

アナハイムが極秘裏にシーマ艦隊に譲渡した機体。
その正体は"ガンダム試作4号機"。
最後は試作3号機に串刺しにされた。

本作のラスボス機。機体シルエットがジオン公国のマークに似ている『ジオンの精神が形となった』MA。
腕には有線アームを内蔵しオールドタイプであるガトーでも擬似サイコミュとして使用できる。


【メディア展開】

ジオンの残光

1992年に総集編劇場版の「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」が公開された。
内容は全編を約120分にまとめるというダイジェスト風味になっているが、新作カットもある。
なお勘違いされがちだがOVA最終巻よりも本映画の方が上映が先となっている。
言わばクライマックスの先行公開となったわけだが、曰く付きのラストシーンはOVAのみとなっている。

星屑の英雄

OVA制作当時にノベライズとコミカライズを経験している他、2000年にも松浦まさふみによる漫画『機動戦士ガンダム0083 星屑の英雄』が書き下ろしで発売された。

REBELLION

2014年からはガンダムシリーズの漫画の常連である夏元雅人が作画、OVA版の監督である今西隆志が監修を務め、
ストーリーの補完や改変等を含めた新規コミックス連載版『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』が連載開始。全18巻。*22
『REBELLION」はストーリーが細かに改変されており
  • OVAで序盤に戦死したディック・アレンがしばらく生存。
  • 3巻ラストにおいて08MS小隊のアリス・ミラー少佐、LostWarChroniclesのマット・リーヒィ(退役した模様)、ノエル・アンダーソン(トリントン基地にいた模様)が登場。
  • ガトーや周りに振り回されるだけであったウラキが自分の意志で戦い続ける。
  • 上述したシーマの「掘り下げ」が進められており、彼女を慕う少女兵も登場、そして何より死なずに生き残る。
  • ゴロツキ紛いのモンシアが、バニングを慕っているところがわかりやすくなり、瀕死のウラキの為に感情的になったりと好漢となった。…ように見せかけてそのバニングに対する感情が暴走し、ウラキと同士討ちになるまでに発展。
  • ニナやシナプスなど、本編では制作の意図とは真逆の解釈をされがちな人達の立ち位置を見直して適正化させる。
など、かなりストーリーが書き換えられている。
時が経つにつれて突っ込まれることが多くなった本作を再編集しているだけあって、違和感は減少している。が、ニナは変人的な要素が際立っている。

スーパーロボット大戦シリーズ

参戦は1993年発売の『第3次』からと初期シリーズからの常連作品のひとつであったが、2006年発売の『第3次α』の後は参戦はかなり控えめとなっている。

初期シリーズではニュータイプ優遇のゲームバランスであったことからコウの能力値が低く、主力として使っていくのに愛が必要であった。
コウのニンジン嫌いも高確率でネタにされている
その一方で、当時のデラーズ・フリートの人気を反映してかガトーの扱いがすこぶる良く、ニュータイプに匹敵する能力値が与えられ、条件を満たすことで仲間にすることが可能だったりしていた。
α』以降はこの傾向が変更され、コウは主力として使える能力値となり、ガトーは仲間になることはなくなっている。

作品によっては試作2号機が入手可能で、アトミックバズーカがバランスブレイカーになったりすることも。

追記・修正はコロニー落下阻止に成功した方がお願いします。

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最終更新:2025年01月09日 13:39

*1 その影響?なのか音楽担当の萩田光雄によるBGMが多数のハリウッド映画に「似ている」と指摘され、アルバムに於いては指摘された楽曲が原曲として明文化された上に作曲者の名前がクレジットされている。

*2 現在は作品が増えすぎて『宇宙世紀物で最高傑作』→『一年戦争物で最高傑作』→いや、そうでもない。…みたいに変わってきてるが。

*3 無論『F91』が本来はTVアニメ用の企画だったのが潰えてしまって無理矢理に劇場版に押し込んだ中途半端な作品だったのに対して、『0083』は当時からガンダムファンがやっぱり大好きな一年戦争関連の話だった。……など、評価の結果には納得できる要素はある。特に『F91』は新しい価値観を示すには尺が足りなさすぎたと言え、その魅力にガンダムファンが気づくには『機動戦士クロスボーン・ガンダム』と『機動戦士Vガンダム』を必要とした。

*4 勘違いされがちだが、本編の時点の印象が悪いだけでコウとニナが軍やアナハイムから離れて結ばれる可能性の方が大きい終わり方はしている。重ね重ね勘違いされがちだけど。

*5 実際、主人公側が新人や戦場未経験者を含む手練れの軍人ではないことが寧ろ明確に“善”の側であることを明示している。本家の終盤の方では少年少女ばかりのホワイトベース隊ですら戦争と割り切っていたのに。

*6 ただし、ネット特有の同調圧力により、以前には異論や反論を許さないという風潮だったのが「叩くのが正義」に反転しているだけの部分もあるので、当然ではあるが「見てから判断する」のを強く推奨する。

*7 尚、評価の反転については、その後に発生すると共に21世紀には明確に嫌悪の対象となった「9.11やその他のテロへの反感と脅威」という意見もある。実際、本作がジオン贔屓になってしまっているのも当時(昭和〜平成初期)に多く見られた、体制側を平和ボケや行き過ぎた場合には腐敗・硬直化した組織と描かれがちだった当時の思想に本作(特に後半)も染まっていた、と指摘する声もある。

*8 ただし、この辺も作品の評価と共に見直されて来ており、単に武装や推力の数値が物凄いからといっても、グリプス戦役以降のMSがムーバブル・フレーム&ガンダリウム合金製な上に素でビーム耐性が施されてたり可変性能を有することでスペック上の推力以上の低出力でありながら安定して長時間稼働&無駄のない運用が可能と分析されたりと評価は変わってきている。傑出はしているが、あくまでも後の技術発展の起爆剤や転換点に過ぎない、というのがガチ勢の評価か。

*9 というよりは、これまでが異常という方が正解。ある日、家の隣で戦争が起きてあれよあれよと巻き込まれて人を撃っても耐えられる精神持ちのティーンエイジャーなんてゴロゴロと居てたまるか。しかも超能力持ち。

*10 特にMS関連については、全くデータを見ずに外見から一目で機体特徴を見抜いており、これには開発者のニナでさえ驚いていた。

*11 現地が濃霧に覆われていたなどの要因もあったが、初の実戦と夜通しの極限状態や、慣れ親しんだ基地の壊滅や随伴していた先輩パイロットが文字通り目と鼻の先でコックピットを接射され戦死するなどの凄惨な光景を目の当たりにして、キース自身が肉体的にも精神的にも疲弊していた状態だった

*12 劇中では戦争のイロハすら知らなそうな友軍とは異なる判断を咄嗟に下したり、相手の思惑を即座に看破するなど実戦慣れした叩き上げといった風に描かれている。またガンダム強奪の一件ではシナプスが現地で最も高階級だったこともあるが、壊滅的打撃を受けて基地司令のマーネリーが死亡したトリントン基地の臨時指揮を現地で任され承諾する場面もあった。

*13 自分の短気から出た叱責で萎縮したモーリスを見た時や、バニングの家庭事情に意図せず突っ込んでしまった時に見られた。

*14 アフリカでビッターの部隊に急襲された際、バニングに艦への攻撃を避けるため高度を上げるよう進言されても、地上を進軍していたベイトとアデルに攻撃が集中することを危惧してこれを退けている。この二名が戦死すると艦の戦力がガタ落ちするため仕方ない面あるが、かなりリスクのある選択である。

*15 ヴァル・ヴァロ戦の一件ではそれ以外ほぼ選択肢がなかったとはいえ、即座に一騎打ちを承諾する判断を取ったりしている。

*16 事実上の待機命令中、デラーズ・フリートを追撃中の主力艦隊が出し抜かれコロニーが地球に向けて進路を変更。シナプスらの目線ではその阻止に動ける戦力が非常に限られており、自分達が命令通り傍観すればコロニーが落ちてしまう状況であったためガンダム試作3号機を強制的に『受領』して出撃した。実は連邦軍にはまだ奥の手が残っていたのだが、派閥の弱い彼らには知らされていなかった。

*17 序盤のGP02強奪にまつわる基地内及び艦内のザル警備な設定は、あまりにご都合すぎる展開で顕著と言える。また、擁護寄りの意見ですら友軍化したシーマ艦隊への攻撃は擁護出来ないとされる。

*18 元々いつ死ぬかわからないMS乗りのパイロットは、刹那的な癒しを求める傾向が強いらしい。ガンダム世界のオペレーターに美人が多いのも、パイロットのスケベ心を利用して少しでも士気や生還率を上げるためだと言われている。

*19 慕っていたバニングが亡くなって間もなかったこともあり、ジオンに対して一際恨みを抱いていた期間であることを加味する必要がある。軍人としてはアウトだが。

*20 実際はコウが適当に設定してぶっつけ本番で飛び出したのが最大の原因であり、ちゃんと設定変更などが出来ていればもう少しマシだったと思われる

*21 南極条約が禁じたのは核兵器の「使用」であり、「製造」と「所持」は禁止されていない。むしろ違反しているのは、コイツをぶっ放したガトーの方であるが、そういう詭弁もまたテロリストの常套句である。

*22 コウが主役の話しは16巻で完結。17巻と18巻はモンシア視点の本編の裏側を描いた外伝が収録されている