クロスボーン・バンガード

登録日:2021-06-14 Mon 18:09:24
更新日:2025/03/02 Sun 11:24:07
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クロスボーン・バンガード機動戦士ガンダムF91とその周辺作品に登場する組織である。
同名の組織が複数存在しており、時代毎にその構成や理念が異なるため分けて解説する。



宇宙世紀1世紀を経た今日
地球連邦政府の高官たちは再び地球を汚染して
人類にとって唯一の宝を破壊しようとしている!

クロスボーン・バンガード


最初のクロスボーン・バンガードはブッホ社の秘密組織「バーナム」から拡大発展し、宇宙世紀0106年に設立されたロナ家の私兵軍である。

ブッホ社の創設者シャルンホルスト・ブッホはヨーロッパの旧家から「ロナ」という姓を買い、ロナ家の始祖となった人物である。
シャルンホルストが抱いた思想は、息子マイッツァーによってコスモ貴族主義と改められた。
そのコスモ貴族主義を中心とした国家を作るための尖兵(Vanguard)がクロスボーン・バンガードである。

元々はあまり急いて事を起こすのではなく、ゆっくりと力を蓄えながら改革を進めようとしていたようだが、
政治面を担当していたマイッツァーの長男ハウゼリーが暗殺されたことが契機となり、計画は急激に加速した。

0123年にマイッツァーの娘婿カロッゾはフロンティア・サイドへクロスボーン・バンガードを送り出し、コスモ・バビロニア建国戦争地球連邦に仕掛ける。
フロンティアⅣを制圧しコスモ・バビロニアの建国を宣言すると、クロスボーン・バンガードはそのままコスモ・バビロニア軍へと移行した。
しかし、ロナ家の一人であるベラ・ロナによって貴族主義が否定されると、内部分裂によりコスモ・バビロニアは崩壊し建国戦争は終結、クロスボーン・バンガードも眠る事となる。
具体的にどれだけの期間、コスモ・バビロニアが存続したかは不明だが、0128年時点では既に崩壊しているとされ、5年も保たなかったようである。

マークは金色の交差した骨二本と骨の交差部分を通る一本のサーベル。所属するモビルスーツには必ずこのマークが付けられている。

コスモ貴族主義

劇中でも語られているように、優れた者達(=貴族)が民衆を統べ、有事の時には先頭に立つという歴史上の貴族的な振る舞い「ノブレス・オブリージュ」を、宇宙世紀で再建しようというのがコスモ貴族主義である。
加えて、マイッツァーは地球の保護も思想として掲げており、貴族的な支配体制もそのための手段であるとされる。
ロナ家の貴族趣味が入っているのは否めないが。

長きに亘って続いた地球連邦の絶対民主制に対するカウンター的な部分があり、またCVの者達は高潔で紳士的な振る舞いを心掛けたため、
コスモ貴族主義者たちを好意的に捉える民衆も少なくなかった。
もっとも『クロスボーン・ガンダム』の作中で語られた通り「何を以って貴族とするのか?」という矛盾を抱えた思想でもあり、
また貴族主義を否定するベラ・ロナが、最も貴族主義を体現する存在だったというのも皮肉であった。

「ロナ家の貴族主義」は廃れたようだが、貴族主義自体はフロンティアサイド(サイドⅣ)を中心に残ったようで、
後の宇宙戦国時代でもサイドⅣのネオ・コスモバビロニアが貴族主義を掲げている。(中身はだいぶ変わったが)

ブッホ社

厳密にはブッホ・コンツェルンとも言われる、シャルンホルストが作り上げた企業財閥*1である。アルファベット表記は「BUFFO」
元々はスペースデブリ回収を主とするブッホ・ジャンクという会社であったが、シャルンホルストとその子らによって大きく拡大していった。
0096年の時点ではアナハイム・エレクトロニクス社が所有しているコロニーのインダストリアル7に営業所が存在し、バナージ・リンクスがそこでアルバイトをしている。

クロスボーン・バンガードで運用されているモビルスーツは傘下企業のブッホ・エアロダイナミクス社が開発、製造を担当している。
またパイロットや士官の育成も、傘下にある職業訓練校を装った軍学校で行われており、彼らは一度連邦の軍学校へ入学して教育を受けてから、
卒業後にブッホ側で再教育を受けるという形で一流の尖兵へと育てられた。
一部はスパイとして連邦側に残すなど、工作活動も兼ねたやり方である。

コスモ・バビロニアの崩壊後も存続はしているようで、後述するコスモ・クルス教団とは深い関係にある模様。

ブッホ・コロニー

ブッホ・ジャンクの本社が置かれているブッホグループ保有のコロニー。
サイド1と6に近いが、ラグランジュポイントから離れたエリアに築かれた不安定なコロニーであり、地球上で例えるなら「僻地の村」だという。
コロニーも大きくはないため多くの人が居住できるわけではないが、それが逆に移住者を選別し優れた人材を発見できる要素になっている。

バーナム

0090年代にマイッツァー・ロナによって創設された、モビルスーツのデータ収集部隊。バーザムではない。
三人の魔女の予言に乗って地獄に堕ちた王の物語を描いたシェイクスピアの戯曲『マクベス』に登場するキーワードが名前の由来であり、「バーナムの森」とも言われる。
将来的な自社製モビルスーツ開発を見据えて、手段を問わずMSのデータ収集を行うための組織として設立された。
独自改造したジェガンバイアランなどを主に運用していた。

ラフレシア・プロジェクト

カロッゾ・ロナが極秘で進めていた計画。
カロッゾの義父マイッツァーや義兄ハウゼリーは、コスモ貴族主義に基づく地球再生は「地球に住む人口の調節」という方向で見解が一致していた。
しかし、カロッゾはこの調節の手段を「無差別虐殺による人口調節」と捉え、実際にそれを行うための無人兵器バグを生産していた。
この計画はカロッゾとその腹心ジレを中心に進められ、カロッゾの実子ドレルはもちろん、マイッツァーにすら隠蔽されていたとされる。


主なメンバー

ロナ家

+ その他のロナ家
  • エンゲイスト・ロナ
マイッツァーの兄。
政治家として活動した後、コロニー公社の副総裁へと就任した。

  • ハウゼリー・ロナ
マイッツァーの長男。
叔父から票田を受け継いで政治家となるが、彼の出した法案が地球連邦の高官に真っ向から喧嘩を売る内容だったため暗殺された。
ハウゼリーの死を契機に、カロッゾとマイッツァーによるコスモ・バビロニア建国計画は加速した。

  • シェリンドン・ロナ
ハウゼリーの長女。姉。
マイッツァーから後述するコスモ・クルス教団を任された。

  • ディナハン・ロナ
ハウゼリーの長男。弟。
マイッツァーはハウゼリーの後を継がせて彼を政治家にしようとしている。

  • ナディア・ロナ
マイッツァーの長女。ベラの母。
カロッゾと結婚するも、元々ロナ家の気風を嫌っていたナディアは家に傾倒していく夫に失望して娘を連れて逃げ出し、シオ・フェアチャイルドと再婚する。
しかし、ベラが中学生の時に夫と娘を置いてまたも出奔した。

その他


運用メカ

ブッホ社が開発、製造したものを中心に運用している。なので、製造元ごと(サナリィ、AEなど)の技術比較などでは「ブッホ社」系の名称で表記・呼称するのが正しいのだが多くの設定資料で「クロスボーン・バンガードの」と誤記載されているケースが多いので注意。
モビルスーツは汎用タイプがデナン、指揮官機がベルガの名を冠しておりこれに偵察機のエビル・Sとダギ・イルスを加えたものが基本となる。
ブッホ社はアナハイム・エレクトロニクス社から作業用MS開発を請け負っており、またデブリ回収業という仕事柄、技術の吸収も早かったため、
モビルスーツは時代に合わせた14~16m級の小型で、同時代に連邦が配備していたヘビーガンGキャノンを仮想敵として対策研究が施された造りとなっている。
また0120年代に最先端の技術力を持っていたサナリィでも高級実験機であるF91F90試験装備でしか採用していなかった、
「ビームシールド」を一般量産機の標準装備として配備出来る程度の技術アドバンテージが部分的ながら有った。

ゴーグルタイプの顔つきと、コロニー内での戦闘を考慮した複合武装「ショットランサー」、そしてビームシールドが特徴的*2
上級機体であるベルガ系に装備された「シェルフノズル」は革新的で、次代のモビルスーツ開発に大きな影響を与えたとされる。
また、ラフレシア・プロジェクトの一環として巨大MAラフレシアと無人兵器バグが極秘に作られていた。

「ザムス」の名を関する各種宇宙軍艦類も詳細こそ明かされていないものの、同じくブッホ社で作られたものと思われる。

ちなみに、クロスボーン・バンガードが運用したモビルスーツは、いずれも「XM-(数字)」といった型式番号が付けられているが、
これはクロスボーン・バンガードでの正式なナンバーではなく、対峙した連邦側が暫定的に付けたナンバーである
……と言われているが実際は連邦側に情報が漏れていない機体の型式番号にも「XM-(数字)」が付けられているので
「死に設定」の類である。



木星のあやまった指導者クラックス・ドゥガチを倒すこと!
これが…よみがえったクロスボーン・バンガードの目的なのです!

宇宙海賊クロスボーン・バンガード


宇宙世紀130年代に、地球侵略を目論む木星帝国へ対抗するために再建されたのが宇宙海賊クロスボーン・バンガードである。
組織を再建したのは、皮肉にも初代崩壊のきっかけとなったベラ・ロナ
ただし、彼女自身はコスモ貴族主義を否定し続けており、同じ名を使っているのは残存する貴族主義者達からの援助目的である。
構成人員も純粋に木星の目論見を阻止したい者と、貴族主義再興を目論む者達が呉越同舟で集う。

メカニック面での協力者としてサナリィがバックに付いており、機体や装備を供給してもらっている。
サナリィ的にも木星帝国の侵略は看過できないのと、貴重な木星圏での戦闘データの収集という二つの面からの協力である。

木星戦役後は人員が大きく欠けたことや戦う理由がなくなったことで休眠状態となり、
残存メンバーは民間輸送会社ブラックロー運送を装って暮らしているが、宇宙で何か事件が起こったときには再び帆を上げ事態を収拾している。
その後、木星帝国による再度の地球破壊作戦『神の雷計画』を阻止する過程でパイロットと機体を失ったため、宇宙海賊クロスボーン・バンガードは事実上の解散となった。

マークはかつての物と同じ、交差した骨とサーベルを引き続き使用していた。
木星戦役後は貴族主義との繋がりが絶たれたため、交差したサーベル二本の上にハート形のドクロという海賊旗さながらの新たなマークが使われている。

主なメンバー


運用メカ

サナリィ製のクロスボーンガンダムを中心に、ブッホ社製の型落ちMSゾンド・ゲーや木星から分捕ったバタラを運用していた。
戦火が地球圏まで飛び火した頃には、新たなクロスボーン・ガンダムと量産仕様であるフリントも貰い受け木星戦役を戦い抜いた。
母艦としてブッホ製最新鋭戦艦マザー・バンガードも運用していたが、こちらは木星戦役の途中で失われている。
ブラックロー運送に移行した宇宙海賊は、木星戦役時に補給艦として活動していた同じくブッホ製のリトルグレイ号を新たな母艦としている。

コスモ・クルス教団

残存する貴族主義者たちの拠り所となっている宗教団体。組織自体は建国戦争当時から存在していた模様。
コスモ貴族主義に加えてニュータイプ主義も教義となっているようで、実際に代表であるシェリンドン・ロナ自身がニュータイプであり、また優秀なニュータイプを未来のために集めている。
宇宙海賊の活動には否定的で、連邦軍に差し出しもしたが、最終的にはコロニー軍と共に木星戦役の最終局面に援軍として駆け付けた。
足取りが追えるのは木星戦役までしかなく、以降は財政難になりマザー・バンガードの姉妹艦であるエオス・ニュクス号を手放した事だけが知られている。

ブラックロー運送

宇宙海賊の残存メンバーたちが平時に装っている廃棄物処理&輸送会社。前述の通り何か事が起これば、リトルグレイ号で発進して事を納めに行く。
連邦軍からの依頼で軍と協力して仕事を行うなど、表向きはしっかりと偽装できているようである。
もはや貴族主義者であることを装う理由もなくなったので、貴族的な意匠は殆ど消えて海賊部分の方が強くなった。
神の雷計画後も会社として成長を続け、ザンスカール戦争の頃にはデブリ回収やMSレストアを行う会社として名を馳せているが、
一方で縁がある特殊部隊の発注により輸送機やSFSを用意したり、かつての宇宙海賊のデータから武器を製造するなど、名前に違わぬブラックな面も持ち合わせている。
ザンスカール戦争後は運送部門、ジャンク回収部門、MSレストア部門の3社に分社化したが、相変わらず存続している模様。



極力その行動を隠すためにあえて――
これより――自らを"海賊軍"(クロスボーン・バンガード)と呼称します

宇宙海賊クロスボーン・バンガード(蛇の足)


宇宙世紀0153年に木星共和国特殊部隊蛇の足が、地球圏での任務のために名乗ったコードネームが宇宙海賊クロスボーン・バンガードである。
地球圏に持ち込まれた生物兵器『エンジェル・コール』を抹消する過程で、木星と友好関係にあるザンスカール帝国とも対立するため、
あえて木星が名乗る事が無いであろう宇宙海賊の名前で偽装している*3。命名は木星共和国ハト派のリーダーであるテテニス・ドゥガチ

このため、それまでのクロスボーン・バンガードとの連続性は無く、構成人員も木星人と任務途中で拾った雑多なメンバーの寄り合い所帯となっている。
しかし、実働部隊のリーダーであるカーティス・ロスコが独自の人脈によって元宇宙海賊であるブラックロー運送に協力を取り付けたり、
そもそもクロスボーン・ガンダムを運用しているなど、かつての宇宙海賊を思わせる姿も見せている。
また、あくまで特殊部隊が名乗っているだけなので、それまでのクロスボーン・バンガードに比べれば規模は小さい。
多くのメンバーを失いながらも任務を完遂し、その後は自然消滅したと見られる。

マークはハートに重なるドクロ、それを囲むように足の生えた蛇が二匹、と木星戦役後に使われていたそれを継いでいる。

主なメンバー

木星共和国

  • カーティス・ロスコ 特殊部隊「蛇の足」リーダー。パイロットしても前線に出る
  • ベルナデット・ドゥガチ 木星ハト派リーダーであるテテニス姫の娘
  • ビル バタラ隊を率いる大柄な男
  • ジャック・フライディ 木星タカ派部隊「サーカス」の元メンバー。傭兵として雇われる

リア・シュラク隊

  • トレス・マレス 隊のリーダーを務めるセクシーなお姉さん
  • イー・ライチ/ドゥー・ナウガ・フルス 隊員の少女たち。二人ともスペースノイドの模様

その他


運用メカ

初期の頃は蛇の足が以前に発見したクロスボーン・ガンダムとドク・オック(バタラ)が配備されていた。
その後、リア・シュラク隊ヴィクトリータイプやサーカスが生み出したファントムデスフィズも加わり、特殊部隊としては充分な戦力となる。
母艦のマンサーナ・フロールはマザー・バンガードを受け継ぐミノフスキードライブを搭載した艦だが、戦艦ではないので戦闘力は劣る。

ゲームでの活躍


上述のように複雑な経緯を歩んだことから、スパロボシリーズではF91時代か海賊時代かを扱うかで立ち位置が変わる。
もちろん貴族主義時代が敵勢力で、海賊時代が主人公たちに協力する味方勢力。

追記、修正は貴族主義の楽園を作ってからお願いします。

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最終更新:2025年03月02日 11:24

*1 「コンツェルン」は「カルテル」や「トラスト」と同じ「財閥形態の種類」を指す語である

*2 運用目的上偵察機系はビームシールドは持たない

*3 木星における宇宙海賊クロスボーン・バンガードは非常に印象・評判が悪い…くせに、ザビーネがもたらしたクロスボーン・ガンダムX2のデータを祖に長年MS開発を進め、UC160年代には新型(木星リバイバル版)クロボンシリーズまで造り始める。好きか嫌いか、どっちやねん。