ギンザエフ(Vガンダム)

登録日:2024/07/29 Mon 17:04:28
更新日:2025/02/21 Fri 15:14:48
所要時間:約 5 分で読めます






なんですって、コロニー内に敵が侵入!?

…分かりました、必ず捕獲します。




ギンザエフとは、機動戦士Vガンダム漫画版に登場したキャラクターである。
エフではなくエフである。
もちろん銀座も関係ない。



【概要】

ザンスカール帝国軍の大尉であり、とあるコロニーの守護を任されている男性。
名前こそ某レスラーに似ているが、見た目はハガー市長そっくり。
タンクトップ姿の筋肉ムキムキマッチョマンであり、自称『MS格闘王』。その証拠か腰には何かしらの大会で優勝したのか金メダルが巻かれている。
どうやらこれが普段着らしく、MSに乗ってる時はザンスカールの制服を着ていた。ノーマルスーツは!?
粗暴そうな外見に似合わずめっちゃ人格者であり、美人の妻や可愛い娘からも「強いパパ」として愛されている。
コロニーからも信頼されているのか、不届き者が現れた際には真っ先に彼に連絡が行った。

バトレイヴ*1あるいはクランバトル*2のような格闘大会に優勝経験があるのか、あるいは単に格闘戦が強いゆえの単なる異名なのか、何を持って『王』なのかは全くの不明であるが、そう名乗るだけの実力はあり、武装も使わずにガンイージを無力化出来る実力者である。と書くと生身でやったみたいに見えるけど、流石にMSには乗ってたよ。

と、ここまで説明したら翌年のガンダムの登場人物と勘違いされそうだが、れっきとした宇宙世紀の人間である
また漫画版のもう1人の名物キャラであるゴッドワルドとは親交があるが、その強引な性格は向こうからは若干引かれていたりする。



【来歴】

ザンスカール帝国に拉致されたシャクティを探して、とあるコロニーに侵入したウッソ達。
MSを隠してコロニーの調査をするのだが、そこはなんとザンスカールの本国だった。
そこでシャクティを乗せた車を見つけたせいで暴走し、道路に飛び出して交通事故を誘発。
更に対応に当たった警備兵と銃撃戦をするなど、コロニー内に混乱を齎してしまう。ここまでの言動だと明らかにウッソ達が悪人のそれである。
滅茶苦茶な状況になったが「とりあえずシャクティの無事と居場所は確認できた」ということで逃げることとなったウッソ一行。
敵を収めるためにジュンコはMSを取り出すが、そこで登場したのが、MSギギムに乗るギンザエフ。
彼はまずビームライフル生身の人間を撃とうとするジュンコのガンイージを羽交い締めにし「コロニー内で銃を使えばコロニー内の住民に迷惑がかかる」と説きながら「ギギムセメントクラッシュ」でガンイージをバラバラにしてしまう
それを見たマーベットさんは彼を「MS格闘家(モビルスーツグラップラー)」と断言。そんな有名なものなの!?
「コロニーの平和を守るのがわたしの使命」「リガ・ミリティアの新型機は捕獲する」と言う彼に対し、マーベットも「わたしたちも一般市民に迷惑はかけたくない」と言い、更に「捕獲をする」と余裕を見せる彼に格闘戦を仕掛けるが、ギンザエフのもう一つの奥義「内破砕衝撃波(バーニングソニック)」でやはり瞬殺されてしまう。

しかし、そこで登場したのが我らがウッソ君の駆るVガンダム
ストリートファイターを自称しながらV昇鷹拳(ビクトリーホークバスター)を繰り出した彼に対し冷や汗をかきながらも、強敵相手に胸を踊らせる。
こうしてやっぱり一年くらい早いMSプロレスがスタート。
互いにファイティングポーズを取り「VS」の文字が真ん中に響くコマ割りは明らかに格ゲーのマッチング画面である。もう隠す気ないだろう。

ギンザエフはシンも納得の分身をするが「オレには分かるんだよ!本物の拳には闘気(オーラ)がある!」とアコードのみなさんが教えて欲しそうな見切り方をするなど互いに一歩も譲らぬ戦い。
スピニングヴィクトリーキックなどどこかで見たような技を繰り出しながら2人は戦うが、ギンザエフは一瞬の隙を付き、Vガンダムにギギムセメントクラッシュを決める。
バラバラになるVガンダム!勝負あったか…と思いきや、ウッソはドッキングを解除していただけである。
勝利を確信した瞬間は最も隙だらけになると宇宙世紀の大先輩が述べたことがあるが、ギンザエフもまたするりと抜けた勝機を取り戻すことが出来ず…。
熱くなり、無謀な攻撃を仕掛けようとするギンザエフに対し、ウッソは「待ってたぜ!アンタが冷静でなくなるときを!」と叫び、再合体。
そしてVガンダムから、十八番である「電龍衝撃波(フルバーニアンソニック)」を模倣され、その直撃で機能停止とあいまった。

ギンザエフは潔く負けを認め「いいファイトだったぜ」と延べる。
そして敵であるウッソ達に「追手が来る」と忠告し、再戦を誓いながら彼らを逃がしたのだった…。
恐らく互いに戦ったことで気心が知れたのだろう。
しかし幸か不幸か、2人が戦場で再び対峙することはなかった。



【そして…】

という風に突如現れては当時大流行していた『ストリートファイターⅡ』ばりの戦いをし、当時の少年たちに強烈なインパクトを残したギンザエフ。
書いてあることが色々おかしいが、元々Vガンダムの漫画版はコミックボンボンという児童向け雑誌で連載されていたものであり、要するに子供向けアレンジの賜物といえる。

だが、ギンザエフの活躍はボンボンKCことコミックスに収録されず、忘れ去られてしまう。
未収録の理由は読者やファンからは、あまりにもパロディが過ぎてもう逆に載せるほうが危ない為と思われていたが、作者の岩村俊哉氏曰く、単純にコミックス化の際に1話分カットしなくてはいけなかったのが本当の理由らしい。
確かに他の話は物語の都合上収録せざるを得ないものばかりであり、漫画のオリジナルキャラクターとコロニー内で暴れていただけのこの話がカットされるのは必然だったのかも知れない。
一応この話の前回のラストが「撃とうとした戦艦に、行方不明になっていたシャクティが乗っていた」というものだが、カットされた事でヒロインの行方が知れない状態に陥っていたが。
(恐らく遠い子孫であろう)セナ、プロスト、シューマッハのサンダーインパルス3人組の登場話は普通に収録されてるしね。
コンビニ版ことプラチナコミックスでもやっぱり削られているが、これはボンボンKC版に合わせた処置だろうか。
こうして半ば黒歴史のようになった漫画オリジナルのキャラクターである彼が顧みられることなんかなく、少なくとも宇宙世紀の正史に乗ることなんか、どんなガンダムオタクも考えすらしなかった。

しかし、月刊ガンダムエースでたまに載っている連載企画「月刊モビルマシーン」(宇宙世紀0140年代に出版されていた雑誌)の「VOLUME 05」「MSA-120解説回」にて、メインライターであった「ディナ・キム」が突如「ディナ・キム・ギンザエワ」と言う名義で、ギンザエフの妻となって登場。
そこまでならまだ遊びの範疇かもしれないが、インタビュアー相手に「アメリア国防軍に所属するギンザエフ少尉」の話を振られたことで、まさかのギンザエフが宇宙世紀に登場することとなった。
妻の名前がギンザエなのは誤植ではなく、ロシアなどでは男女で姓が変わることを忠実に再現した結果である。でも、たまに「エワ」になってたのは誤植だ。
そして、アメリアとはテレビ版でのザンスカール本国のコロニーの名前であり、ギンザエフがザンスカール建国以前から軍人を務めていた事と、同時にインタビュアー相手がこの後に亡くなったという記述がある。
最終的にこの雑誌自体がマリア主義に則った誌面刷新の末に休刊しており、その間もライターが何人か亡命したり変死体になったりしており、対照的にディナは徐々にマリア主義に染まっていく様子が文章から見て取れた。
ギンザエフがザンスカール帝国で大尉を務める(一家がザンスカール帝国の方針に則っている)伏線が張り巡らされているのである。
ディナも原作漫画では1コマしか登場せず、セリフは「あなた」の一言のみ。あなたあなたあなたと連呼したりはしない。そう考えると出世したもんである。帝国軍人の妻はマリア主義者にしても不自然が無いので使いやすかったのだろう。

これ以前にも元々ボッシュ等のマイナーなキャラをピックアップしたりしていたのだが、ボンボンから、しかもアニメ本編からめっちゃアレンジされている作品から持ってこられるとは思っておらず、読者に衝撃と混乱を与えるのであった。



【余談】

明らかにネタ要素のせいで忘れがちだが、ギンザエフ本人は家族思い、コロニー思いの善人であり、言ってることは至極まとも。
敵であるウッソ達に対してもMSを無力化するだけで生命を奪ったりはせず、逃げるように忠告しながらも、だからといって完全に絆されたわけではなく再戦を所望するなど、終始善良な人間かつ模範的な軍人として描かれている。
この辺りはVガンダム本編…いや、ガンダムシリーズでも度々描かれる「敵国の相手にも良い人間もいる」という描写だろうか。
ただし新装版のおまけ漫画ではゴッドワルドに祝福された際に感極まりハグをしてそのまま彼の背骨を折ってしまうという、ちょっと困った性質も持っている。

テレビ版でも第23話にてザンスカール本国に潜入する話があるが、そこでは平和を求めているはずなのに軍国主義となっており、学徒兵を平気で使い潰す残酷な都市となっていた。
平和を望みながらギロチンを振りかざすマリア主義の矛盾が見え隠れする話となっており、子供向けにするには重すぎる話と言えよう。

で、彼の乗っているMS「ギギム」ってなんぞやと言われそうだが、コミックスオリジナルMSというわけではなく、その正体は「シャイターン」。
ギギムという名前はラフスケッチ時の仮名であり、漫画ではそのまま使用された。
…まではいいのだが、このシャイターンという機体、全身がビーム砲ばかりというバリバリの射撃用機体であり、格闘戦に不向きなのである。
なのでギギム=シャイターンと考えれば、あんな機体で格闘戦を仕掛けてくるギンザエフの技量とMS選択はおかしいと話題になった。
もしかしたらシャイターンの試作機であるギギムを拝領された際に、自分専用にチューンナップした、またはシャイターンを格闘戦仕様にしたMSをギギムというのかもしれないが…。
この辺りの補足はガンダムの十八番なのでなんか統合性が取られるだろうか。

実際、強さ的にも『MS格闘王』と名乗るに恥じない難敵として描かれており、ウッソは彼が冷静で無くなる時を待っていたと述べている…つまり熱いハートを持ちながらも戦い自体はクールで堅実な物で隙が無い。
相手が奇策を打ってきても、冷や汗をかいている事からその脅威を理解し侮ったりはせず、だからといって気圧されずむしろ逆に戦意を高める等、ガンダムシリーズでも類を見ない凄腕である。
また、ウッソとのファイトにこそ敗れたが、コロニー防衛、敵機体の捕獲(ギンザエフは最初からウッソ達を捕まえる使命を得ており、またガンイージは爆散していない)を達成し、自身も生還している。クリーンファイトに徹することで相手の行動も制限する、ウッソ達に退避を勧めるなど、実力と高潔な人格があってこその結果であろう。

ちなみにギンザエフの使う他の技は千裂張手(サウザンドプレッシャー)超重量頭突き(ギガトンヘッドバット)
名前から分かる通りエドモンド本田のものである。もうモチーフメチャクチャ過ぎるだろ
とはいえギンザエフが「某会社のゲームをモチーフにしている」というのはまだギリギリかろうじてファンが言ってるだけの仮説であったが、2024年、岩村氏も当時ストⅡにハマっていたという節の発言をしており明らかに確信犯であった事が確定した。

その翌月にセナ、プロスト、シューマッハというもっとやばい爆弾が出てきた事は秘密。

なお、当時のコミックボンボンに掲載された他のガンダム漫画でも同ゲームをモチーフにしたネタをしていた。
なんなら、ボンボンでは『Vガンダム』連載中にストⅡの漫画の連載が開始していた。ギャグ漫画だけど
翌年のガンダムが格闘技主体になったのもストⅡブームの影響もある等、変なところで関わりが深かったりする。
十数年後、その会社は後にVSシリーズというガンダムの格闘ゲームを世に出すこととなる。
それで利権関係が解決するわけはないのだが、もしギンザエフを出したい場合、交渉はしやすいのでは?と見られていたが……

そういえば、∀ガンダムのキャラデザを担当したあきまんこと安田朗氏は元々カプコンに所属していて、その際にストⅡのキャラデザを担当した経緯がある。
その氏はカプコン入社時にMSそっくりなメカが大量に現れる横スクロールSTGもキャラデザを担当しているのだが、その点も相まって、やはりカプコンとガンダムは切っても切れない縁を持っているようだ。

その後、令和になってアニメ作品『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』では(会社は違うが)更に露骨な格闘ゲームネタをやらかしたのは秘密。
…もっとも、サンライズ自体がその会社と非常に太いパイプで繋がっているのだが(主にキャラデザとか)。

そして2024年に漫画版が新装版として発売され、彼の登場した話が収録されることが発表されたのだった。
ついでに遂に作者からも「ザンギエフ」と間違って呼ばれてしまった。そしてもっとやばいサンダーインパルスの3人は改名させられた。
なお、今回の収録にあたりカプコンから許可を取ったとの事。まぁカプコンもパロディ色が強めなキャラをバンバン出してるし、上記のストⅡやロックマン関係を連載していた縁もあるので結構懐が広かったのだろう
ただし岩村氏本人が言うにはハガー市長に似ているのは偶然だったとか、外見に関してはキン肉マンを参考にしたとか。

なお漫画版ではこの回が生前のジュンコさんの最後の登場であり、この時は脱出出来ていたが、その後いつの間にか死んでいた。



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最終更新:2025年02月21日 15:14

*1 サイド1の1バンチ、シャングリラ・コロニーで行われていた非合法MS賭博試合。0096年には存在したことが知られている。

*2 別の宇宙世紀にてサイド6のイズマ・コロニーで行われていた2対2の非合法MS賭博試合。その形式が出来上がる経緯から正史で存在しているかは不明だが、かの世界では0085年には存在している。