登録日:2024/11/02 Sat 04:23:17
更新日:2025/05/28 Wed 12:00:36
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首領蜂とは、1995年に稼働開始した“正統派”縦スクロールシューティングゲームである。
開発はCAVE、販売元はATLUS。CAVEにとってはこの作品が記念すべきアーケードSTG第一作目である。
【概要】
CAVEを代表する首領蜂シリーズの第1作にして、現在から見るとまだ
弾幕系シューティングゲームが成立する前史的な作品である。
前身会社である
東亜プランの「ヴイ・ファイヴ」「BATSUGUN」からシステムを継承、洗練させる形となっており、
- ボタン連打と長押しでショットとレーザーの撃ち分け
- 前方集中型の機体と広範囲攻撃型の機体からの自機選択
- 敵を連続で倒す事によるコンボシステム
- 隠された蜂アイテムを集める事によるスコアボーナス
- 腕利きのプレイヤーでなければ太刀打ちできない2周目の存在
- 悲惨な同士討ちを描くストーリー
といった、最終作である「
怒首領蜂最大往生」まで共通するシリーズの特徴・お約束がここで完成されている。
ちなみにヴイ・ファイヴ、BATSUGUN、そして本作共に開発の先導を勤めたのはIKDこと池田恒基氏である。
しかし自機の当たり判定は(他STGよりも小さいサイズとはいえ)まだ大きく、敵弾も速めな上に追尾弾や途中で切り返してくる弾が存在するなど、初見殺し要素も多く存在する。
このためいかに攻略パターンを練り上げて難所を切り抜けるかという点が本作の醍醐味の一つであり、
キャッチコピー通り東亜プランの魂を受け継いだ“正統派”やりこみ型シューティングゲームであると言える。
ゲーム性以外の作風に関しても東亜プラン時代を引き継ぎ近未来の戦争を思わせる硬派なもの。
展開にあわせて入る通信演出のオペレータ―ボイスは渋いオッサン声で、プレイヤーを熱く煽ってくる。
ボスの体力が減ってきた時の「Just a couple more shots!」は後のシリーズでも登場する名文句。
BGMは矢吹隆一氏が作曲を担当。こちらも戦争映画のような曲調の勇壮さと悲愴さを併せ持つ楽曲揃い。
特に1面BGM「静けさの前哨基地」とエンディングBGM「任務を終えて…」で流れるフレーズは後の「
怒首領蜂大往生」1面BGMにも引用され、首領蜂シリーズを象徴するメロディとなった。
【ストーリー】
ある時代の某国で行われていた大規模軍事演習。
それは精鋭部隊に異星人を名乗らせて正体を隠し、軍本隊を襲撃させ実戦を行うことで戦闘経験を積ませ、軍事レベルを底上げするという荒唐無稽なものだった。
パイロットであるプレイヤーはその異星人側に所属しており、その任務は戦闘機を駆って自国軍を蹂躙し破壊する事である。
果たしてこの終わりなき闘争の果てに、一体どんな結末が待っているというのか。
首領(ドン)の第一声は、必ずこれだ。
「任務は言うまでもない。従来通り徹底的にやってもらいたい。
何度も言うようだが、この任務は全て我が軍隊のためなのだ。
この任務のおかげで、我が軍隊は幾度となく実戦経験を積み、更なる軍備の強化がなされてきた。
この強力な軍隊があるのも君達のおかげなのだ。」
異星人の名を借りた襲撃。そう、オレたちの任務とは、我が軍隊を襲撃するというものだ。
確かに軍備はその都度強化され、優秀な兵隊達が残るようになっていった。
結果として軍隊そのものは、襲撃される度により強力な軍隊へと変化していったのである。
「首領、我々よりも軍隊の方が、戦力的に上回ってしまうことはないのですか?」
「それは、ありえん。君達は我が軍隊の中から極秘に選ばれた戦闘のエキスパートなのだ。
しかも君達自身、襲撃のたびに腕を上げているではないか。何も気にすることはない。」
しかし、この軍隊はいずれオレたちの想像をはるかに越えるものになりはしないだろうか?
この任務に終わりはあるのだろうか。終わりがあるとすれば、我々の死なのか…。
「出撃!我が軍隊を壊滅せよ!我が軍隊のために!」
「彼らの存在が脅威に変わるとき、我が軍隊の真価が問われるのかもしれん…」
【キャラクター】
名も無き精鋭部隊のパイロット。姿は最後まで出てこない。
“異星人”の戦闘機に乗り込み自軍を蹂躙するのが任務である。
主人公の部隊を統括する司令官。スーツ姿のナイスミドルな男性。
1周目終了後の中間デモで登場し、任務に一区切りつけた主人公と会話する。
そして2周目では…
【システム】
【操作】
1レバー + 2~3ボタン。 8方向レバーで自機の移動を行う。
短押し(ゆるい速度での連打)で攻撃範囲に優れる「ショット」を発射。
長押しでオプションを収束させ、攻撃力に優れる「レーザー」の発射に移行する。この際、自機の移動速度は低速となる。
レーザー発射中に自機が纏う「オーラ」にも独立した攻撃判定があり、レーザーの発射源(合体中のオプションが配置される位置)を敵に重ねるとレーザーとオーラが同時ヒットとなり大ダメージを与えられる(通称:オーラ撃ち)。
オーラ撃ちを当てるには敵へぶつかるギリギリまで近づく必要があるので注意。
ショット中に押すと画面全体を攻撃する「スプレッドボム」を放つ。無敵時間は短め。
レーザー発射中に使うと攻撃範囲は狭くなるものの火力が高く無敵時間が長い「レーザーボム」を発射する。
被弾した場合はストック数3個にリセットされるほか、被弾で残機0になった時には追加でボムアイテムが出現する。
本作ではボムアイテム回収のほか、ステージクリアによってもある程度のボムが補充される。
また「ボムキャパシティ」(最大ストック数)は被弾ではなくボム使用回数によって拡大される仕様となっており、3回使用ごとに1個キャパシティが増える。初期段階で3個、最大7個。
ただしステージクリア後のボーナス点はボムキャパシティが少ないほど大きいため(後述)、クリアを優先するかスコアを優先するかの判断が求められる。
ボタン長押しでショット連射。店舗設定によってはボタンが無効化されていたり、筐体にボタン自体が無い場合もある。
【スコアボーナス】
俗にコンボと呼ばれる、このゲームのスコア稼ぎの要となるシステム。一定時間以内に敵を連続で破壊することでコンボが成立し、最後に倒した敵の獲得スコアにそれまでに倒した敵のスコアが上乗せされる。
ボムを使用したりミスしてしまったりするとコンボが途切れてしまうほか、本作では後継作で採用されているレーザー当てによるコンボ維持が存在しないため、非常にコンボが切れてしまいやすい。
エリアクリア時に残しているボム1個につき+10000点が加算。
エリアクリア時にボム最大数が少ないほどボーナスが加算。
3個の場合+100000点で、最大数が1つ多くなるたびに減っていき7個で0点。
さらに3個の場合限定でノーミスボーナスも付き、ゲームスタートからノーミスを維持できた面数に応じてさらなる大ボーナスが加算される。
【自機】
(1Pカラー:赤/2Pカラー:黄)
前方集中ショット+高速型。
攻撃力は高いがカバーできる範囲が小さく上級者向け。1周目であれば機動力を生かしてある程度アドリブでも生存ができる。
(1Pカラー:緑/2Pカラー:紫)
左右可変ショット+中速型。この機体だけヘリコプターの様な見た目をしている。
攻撃範囲が静止時でも中程度あるほか、左右入力に合わせてオプションから放たれるショットの方向を傾ける事が可能。
(1Pカラー:青/2Pカラー:黒)
広範囲ショット+低速型。
あまり動かずとも広範囲の敵を処理できる安定機体。ただし機動力が少ない分アドリブ避けが効かず、攻略パターンの構築がクリアへの道となる。
【アイテム】
2個取ると自機のショット・レーザー攻撃力が1段階上がる。最大5段階。
一度被弾するとパワーアップは初期状態に戻ってしまう。
後継作品とは異なり2個のアイテムが必要なため、被弾からのリカバリー時は要注意。
コンティニュー時に放出される。回収するとショット・レーザーが一気に最大レベルへ強化される。
取るとボムのストックが1つ増える。ボムキャパシティを越えて保持することはできない。
スコアアイテム。本作では大きさは1種類のみ。
隠しアイテム。各エリア道中に13個隠されている。
隠されている箇所にレーザーの先端を当てるか、画面内に入った状態でスプレッドボムを当てると出現。
ノーミスで取り続けるとボーナススコアが上昇していく。
【ステージ】
全5エリア、2周エンド。
なお2周目は後継作とは異なり、無条件で突入する事になる。
森の中にある前哨基地を襲撃する。
ボスは巨大戦車。
上空に浮かぶ空中戦間の艦隊と交戦。
ボスはレーザーと円盤型の爆弾を高速でばら撒いてくる巨大戦闘機。
戦艦が多数停泊する湾港基地を進む。
ボスの巨大戦艦は通常弾だけでなく途中で軌道が自機狙いに変わる弾を織り交ぜてばら撒いてくる。
他のボスと異なり時折ザコヘリも現れて攻撃を仕掛けてくるので注意。
再び上空に舞台を移し、敵の艦隊と空中要塞を相手にする。
このステージから難易度が急上昇。これまでに比べエリアがかなり長くなる上、初見殺し要素が急増。
敵の大群が突如襲い掛かってきたり、画面下の後方から急に敵が出現してきたりする。
また所定の手順で空中要塞の砲台を破壊すれば1UPアイテムが出現する。
ボスは左右に大型プロペラを装着した本体とレーザー砲2基を装備した大型シールドパーツで構成された巨大攻撃機。
先にシールドパーツとの戦闘から始まり、シールド破壊後に本体戦の流れとなる。
シールドパーツ戦で初見殺し攻撃がある上に、本体の方も高速大型弾を絡めた複合攻撃がとても避けにくい難敵。
最終面。敵の本拠地を攻略する。
エリア4よりもさらに長く長期戦を強いられる。
さらに超高速で突っ込んでくる敵や大量の弾をばら撒いてくる砲台、処理しきれない量の敵編隊と難易度は最高潮に達する。
ボスは多数の兵装を搭載した要塞。
本体は勿論、左右のレールから補充される砲台も含めた弾幕攻撃で命からがら到達したプレイヤーを苦しめる。
ボムなしで勝利するのは極めて難しいだろう。
-MISSION COMPLETED-
オレの視界にいつものメッセージが映し出された。今回もまた、どうやら任務は遂行されたようだ。
任務とは言え、同じ軍隊の者同士が戦う。どちらかが全滅するまで続けられるこの戦いに、終わりはあるのか。
この任務の目的は本当に軍備の強化なのだろうか。
「ご苦労。今回の戦いも、実に素晴らしい物だった。また、次の機会もよろしく頼むよ。」
「首領、この任務は一体いつまで続けるのですか?」
「…… それは、君達次第だ。」
……
7 years later
final mission
そしてここから地獄の2周目のスタートである。
敵弾の増量や速度上昇だけでなく、爆風から大量の撃ち返し弾が自機に向かってばら撒かれるようになる。
しかも敵を倒した時だけでなく地形を破壊して星・蜂アイテムを出現した時にさえ撃ち返し弾が発生する地味に厄介な仕様。
常に画面内には大量の敵弾が飛び交う事になるため、1周目以上にボムによる弾消しまで織り込んだパターン構築が必須。このためボムキャパシティボーナスを2周目で維持するのは人間では不可能と言っていいレベルである。
また4面の1UPアイテムは2周目では出現しなくなってしまうため、エクステンドの機会もさらに少ない。
そんな猛攻を何とかしのぎ、5面ボスを撃破できると終了…ではなくボスの爆風から撃ち返し弾が飛んできた上で画面がさらに奥へとスクロール。
1周目には存在しなかった真の最終ボスが姿を現す。
Mmmm, boy. I think we're in trouble, kid.
(うぅむ…小僧、ヤバいことになったようだ。)
Don't even think about sparing ammo?
(弾薬を節約しようなんて考えるなよ?)
「君たちのレベルは、もはや我々の想像を
はるかに越えたものになってしまった。
いや、なってくれたと言うべきかもしれない。
どうやら、お互い最後の任務になりそうだな。」
I don't believe it...They'be got a doomsday machine!!!
(信じられん… あいつら“最終兵器”を持ち出してきやがった!)
C'mon,kid! Hit it with everything you've got it!!!
(小僧、もう全力でやるしかないぞ!)
現れたのは「首領」が操る蜂型の中型機体。後のシリーズにおける
ラスボス前座戦の原型といえる。
これまでのボスより二回り小さいサイズながら、大量のバラマキ弾、弧を描いて曲がる弾、レーザーを乱射し弾幕を放ってこちらを圧殺しにかかってくるほか、小型のビットを自機に貼りつかせて弾を包囲射撃を行う等トリッキーさも併せ持つ。
攻撃を加え体力もあとわずかとなると、超高速で自機を追尾する弾をばら撒いてくる。
首領の任務とは、現在の軍隊のレベルの遥か上をいく戦闘員を育て上げることにあり、
実際に戦闘レベルの上昇に貢献していたのは、
オレたちではなく、死んでいった多くの兵士たちだったのだ。
オレたちの任務など全く架空のものであり、
すべてはオレたちのために我が軍隊が長い年月と、
多大な犠牲を払って行われた巨大なプロジェクトだったのだ。
そして、ついに ここに究極の戦闘集団
首領蜂
が結成されたのであった。
……これが、シリーズの主人公陣営にして「首領のどんな命にも従う働き蜂たち」として
恐れられながらも蔑まれる非情の精鋭部隊、首領蜂隊結成の歴史であった。
【余談】
ケイブ社としては黎明期の作品にあたり、ゲームバランスやデザインが後発の作品と比較して改めて見てみるとかなり異なる部分がある。
(自機のミス後の状況までも含めるが)ボムのストック数が非常に多くなること、比較的耐久力の高い中型機までも含め「レーザーよりもショットの方が時間あたりでは高い攻撃力を発揮する」こと、パワーアップに要するアイテム数が非常に多いこと(=フルパワーになるのが最短でも2面ボス直前で、後発作品よりもかなり時間がかかる)など。
東亜プラン中期作品~後期作品の要素が割と多く引き継がれていると言える。
2周エンド後、スタッフロールの後に謎の目線が入ったキャラクターが落下してくる演出が入っているが、
ここで落ちているキャラクターは東亜プランのマスコットだった「ピピル星人」である。
また電源投入後、初期状態のスコアランキングを見ると以下のようになっている。
[1ST] TAR
[2ND] ONE
[3RD] A .V
[4TH] PFE
[5TH] LOR
これを左から縦読みしていくと“TOAPLAN.FOREVER”となる。
東亜プランの意思を引き継ぎ新たなるシューティングの流れを生み出そうとする、CAVEからのはなむけの言葉だったのかもしれない。
追記・修正はシューティング魂を受け継いでいる方にお願いします。
- 首領パッチの名前の元ネタだったか -- 名無しさん (2024-11-02 19:47:37)
最終更新:2025年05月28日 12:00