シャッフル

登録日:2024/12/11 Wed 22:04:34
更新日:2025/01/15 Wed 09:01:18
所要時間:約 8 分で読めます




『シャッフル』(“Shuffle”)とは、トランプカードなどの並び順をランダムにすること。
席順をシャッフルする」のように、日常生活でも使われる用語であるが、以下では主にカードゲーム、ボードゲームでのシャッフルについて解説する。



【目的】

シャッフルの目的とは、カードの並び順をランダムにすることである。
……何当たり前のこと言ってんだ、と思われるかもしれないが、それができないとゲームのルールにもよるが山札で次が出るのが何なのか、
各自の手札がどれなのか決まり切ってしまう。ポーカーなどで毎回開幕時点で役がそろったりする人がいたら明らかに不公平だろう*1
この「ランダム」というのが意外と簡単なようで曲者なのである。

実際問題、人間の手でやっていることである以上、「完璧なランダム」というのは実現不可能なので、ある程度のところで妥協しなければならない。
しかし、カードゲームというのは遊びである一方でギャンブル、競技会も広く行われている立派な「競技」でもある。
そこにランダムに見せかけた意思が介在したら……?

そう、イカサマである。

シャッフルというのは、積み込みなどのイカサマを防止し、公平なゲームであることを担保する重要なアクションでもあるのだ。
そのため、簡単なようでいて「イカサマしたい人」「イカサマを防ぎたい人」の攻防が積み重なってきた歴史があったりもする。

……まぁとはいってもそこまでガチでないゲーマーにとって重要なのは、「互いに気持ちよくゲームができること」であるため、ある程度のランダム性さえあればそれで問題ない、とする人が多い。


【シャッフルの種類】

◇ヒンズーシャッフル

シャッフルといえばこれ、というシンプルなシャッフル。
手のひらに置くようにして山札を持ち、長辺側を摘んで中間のカードの束を抜き取る。そして、山札の上に重ねていくことを繰り返すだけである。
長所
  • 習得が簡単
  • スペースを取らない
短所
  • 切れているようで全く切れない
実はほとんどカードの束の順番を並べ替えているだけに過ぎない*2ため、時間あたりのシャッフル効率は数あるシャッフルの中でも最低ランク。
  • イカサマが非常にやりやすい
「ランダムに見せかけて相手が引いたカードをトランプの中から当てる」という有名な手品でも用いられるぐらいに仕込みがやりやすいシャッフルである。

◇オーバーハンドシャッフル

ヒンズーシャッフルとは持つ辺が異なる。こちらは短辺の方を持ち、手の中に落としていくシャッフルである。
やり方によっては
長短所については大体ヒンズーシャッフルと同じ。こちらもマジックなどでよく用いられるため、「マジシャンのシャッフル」という印象があるかもしれない。
欧米圏だとヒンズーシャッフルではなくこちらが主流なんだとか。

◇リフルシャッフル

カードを2つの山に分け、それぞれを折り曲げ互いに噛み合うように一気に弾くシャッフル。
なお、闇遊戯がこのシャッフルをしていた相手に対して「ショット・ガン・シャッフルはカードを痛めるぜ」と言っていたが、後述するようにこれはショットガンシャッフルではない。そのため、このシャッフルを「ショットガンシャッフル」と誤用する人が結構いたりする。もっとも、だいぶ擦られたので「ショットガンシャッフルではないという豆知識」も近年では大体知れ渡っているが。
「カードを弾く音がマシンガンのように聞こえるからマシンガンシャッフルという通称があり、それと混同したのでは?」という擁護意見もあるが、ショットガンシャッフルと違いマシンガンシャッフルという用語はほぼ使われていないようである。
因みに、噛み合わせた後にカードを思いっきり曲げてアーチを作り山札を整えるまでで一つの工程と思ってる方もいるかもしれないが、ぶっちゃけあれは魅せプレイのようなものでシャッフル自体は噛み合わせた時点で終わっているのでやる必要はなかったりする。

長所
  • 見た目が派手でカッコいい
  • シャッフル効率がかなりいい
短所
  • うまくやるには練習が必要
  • カードが非常に痛みやすい
一度折り曲げることが前提になっているシャッフルであるため、プラスチック製カードならともかく紙製だと折り癖が非常に付きやすい。スリーブをつけていても不可避であるため、自分のカードならともかく借り物でやるのは基本厳禁。

しかし、欧米圏のカードゲーマーには普通にやる人もいたりする(流石にアーチを作って山札を整える事まではしない事が多いが)。
尚、実はシャッフル性能自体はファローシャッフルと全く同じ。

ちなみに下記のファローシャッフルにも言える事だが、このシャッフルは山札を完全に2等分し、1枚ずつ完璧に混ぜ込むことができれば、トランプ52枚の場合、8回で元の並び順に戻ることでも知られる。
実際は一度に2、3枚入り込んだりするのでよほどの腕前がなければ難しいが。
非常に難易度は高いが、下記のファローシャッフル共々片手で行うやり方も存在する。
できたらカッコいい事は間違いないが、通常のやり方以上にカードを傷めやすい。

◇ファローシャッフル

カードを2つの山に分けるのはリフルシャッフルと同じだが、こちらは弾いたりせずそのまま2つの山を噛み合わせてシャッフルする。
慣れれば高効率でカードも傷めにくいことから、主にTCGでは主流のシャッフル。
ただし、カードを噛み合わせるためにスリーブが傷つきやすく、なおかつシャッフルする人によって上手い下手が出やすいため、嫌う人も多い。
このあたりの論争はTCG界隈では余りにも根強く、対立の元になっている一面もある。
長所
  • シャッフル効率がかなりいい
  • スリーブを付けて正しく行えば、シャッフル効率に対してカードが極めて傷みにくい
短所
  • 簡単なようで綺麗に噛み合わせるにはコツがいるため、練習が必要
  • スリーブを付けていないと噛み合いづらいことがある上、カードの端も傷みやすい
  • カードをうまく噛み合わせるために傾ける都合、工夫しないとデッキの中身が見えてしまう場合がある。
  • カードの位置が大きく入れ替わらないため固まりやすい(と言われている)。

◇ディールシャッフル

カードをいくつかの山(パイル)に分けて一枚ずつカードを置いて(ディール)いき、最後にもう一度一山に戻すシャッフル。
山に分けることからパイルシャッフルとも呼ばれる。
もともとショットガンシャッフルと呼ばれているのはこちら。ショットガンのようにあちこちにカードがバラけるからショットガンシャッフルである。
長所
  • 特に技術が必要ない
  • 他のシャッフルで起こりがちなカードの"塊"が出来づらい。
短所
  • スペースが必要
  • 慣れていないと少し時間がかかる
  • 積み込みが容易である*3ため、特に大きな大会などでは禁止されていることも。
    ただ、シャッフルとしてではなく山札の枚数確認としては非常に便利なので相手に山札の枚数を公開する意味も込めてやる事は少なからずあったりする。

◇ウォッシュシャッフル

とりあえずカードをテーブルにぶちまけ、そのまま混ぜる大雑把極まりないシャッフル。
ウォッシュは麻雀で牌を混ぜる洗牌が由来。
上下ばらばらになることから非常に癖の強いシャッフルだが、何故か一時期のポケモンカードゲームでは公式のルールブックで推奨されていた時期があった。
そのせいでこのシャッフルの俗称にポケカシャッフルなんてものもつけられている。

また、カードの上下(正位置・逆位置)で占うタロットカードは「上下逆さまにすること自体に意味がある」という性質もあってこのシャッフルを使うのが正式な手順とされる事が多い。
この場合、基本的には時計回りに混ぜるとするケースが多いほか、混ぜた後に後述のカットを行う場合もある。*4

長所
  • 技術は必要ない
  • シャッフル効率はかなりよく、イカサマもほぼ不可能
  • 神経衰弱などならそのままゲームスタートできる
短所
  • スペースが必要
  • カードの上下がバラバラになるため、並べ直すのが大変
→トランプは大体上下どちらの向きでも使えるため特に問題はない。また、タロットカードの場合は上記の理由で上下を並べ直さずそのまま使用する。
  • カード同士がこすれ合うため、シャッフル中にひっくり返る懸念がある。また、傷もかなり付きやすい

◇シャッフラーの使用

一応はファローシャッフルの亜種……になると思われる。
シャッフラーという専用の機器を使用するシャッフル。
機種によってやり方は色々だが、基本的にはカードの山を2つに分け、機器の特定の場所にセットしてスタートすると、それぞれの山を均等に混ぜてくれる、というもの。
電動式や人力式があり、安いものなら2000円以下で購入可能。
長所
  • ファローシャッフルに近いため、シャッフル効率は良い
  • 技術は必要ない
  • 見た目が派手
  • 機器によるものであるため、公平性が保ちやすい
短所
  • シャッフラー自体を持ち歩かなければならないため、携帯性が悪い
  • スリーブを付けていると対応してくれない機種が大半

◇カット

正確にはシャッフルではないが。
主に公平性を保つために使用される。特定のプレイヤーがカードの束を一枚ずつ落としていき、もう一人のプレイヤーが適当なところでストップと宣言したらそこで落とすのをやめ、落とした束を残ったカードの束に重ねる。
要は積み込み防止措置の一つである。基本的には他のシャッフルと併用して使用される。
先述の漫画でもリフルシャッフルの後に実行されている。
「ギャンブラーの間には古くからこんな諺があります…友達は信用すべし…だがカードだけはカットせよ…とね」

【いろいろなゲームジャンルにおけるシャッフル】

・TCGにおけるシャッフル

相互のプレイヤーがお互い異なるデッキを使用することが前提となっており、さらにそれぞれのデッキ内容が秘匿情報であるTCGにおいて、「互いのイカサマを防止しつつ、なおかつ互いのデッキ内容についてはゲーム開始まで秘匿する」ためのシャッフルは重要な存在である。
一番公平性を保てるのは、プレイに関係ない第三者に切ってもらうであるが、常に暇な第三者を用意できるとは限らない……というか、ローカルだと二人だけのタイマン戦というのもザラだろう。
互いに顔見知りなら紳士協定で「キチンとシャッフルしている」ことを信頼して自分だけでシャッフルするのもいいが、競技性を担保するなら「相手に切ってもらう」のが一番妥当なところか。いくつかのシャッフル方式を織り交ぜるとベスト。
ただ、この際はもちろん相手のデッキ内容を(例えうっかり事故だろうが)見ないように特に注意を払うこと。シャッフルする間は手元から完全に顔を背けるぐらい気を使う人もいる。
また、相手によるシャッフルだと逆積み込みの危険性を排除できないので、最後に互いにカットしあうといいだろう。
基本はファローとヒンズーを交互に2回ずつ行い、最後に2山か3山のカットを行うぐらいが速度と無作為化の妥協点だとは思われる。
ちなみにMtGだと「ディールシャッフルはシャッフルではないので、カード枚数を確認する意味でゲーム開始時の1度のみ使用可能」というかなり厳しいルールがあったりする。
バベル(MtG)のようなデッキだと物理的にファローシャッフルが無理なので、いくつかの山に分けてシャッフルし、最後に山同士をカットして混ぜ合わせるなどの手順が必要。こういう作業を対戦相手に強いてしまうという点で嫌っているユーザーもいる(ただでさえコントロール系のデッキなのでサーチ回数が嵩みやすいのである)。

基本的にTCGで山札からの「サーチ」「リクルート」系の効果が発動した場合は、テキストに明示されていなくてもシャッフルを行うことがルール上規定されていることが多い。
これはサーチした時点でデッキの並び順が見えてしまっているためで、ピーピング防止のためのルールである。サーチ系カード山積みのデッキだと嫌になるぐらいシャッフルを強いられることも……

・ボードゲームにおけるシャッフル

TCGとは似て非なるゲームジャンル。基本的には全てのプレイヤーが共通のデッキを使用するタイプのゲームが多いため、積み込みなどにはそこまで気を使わないケースが多い(競技会などではもちろん別である)。
ただ、ボードゲームの場合いわゆる「箱出し」状態だと山札が綺麗に揃いすぎてしまっていてまともにプレイができないケースが非常に多く、ここからのシャッフルが結構手間だったり。
公平性よりも「とにかく短時間でカードの偏りをなくすこと」に重点を置かれやすいため、割とディールシャッフルが好まれやすい傾向。この際はプレイヤー人数+1〜2程度(4人プレイなら5〜6)の山を作ってシャッフルすると割とバラけやすい。
また、TCGと異なり山札が切れても終了条件を満たすまではゲームを続行するルールのものも多く、その場合は捨て札を回収して山札を作り直す「リシャッフル」が行われる。ドミニオンのようにシャッフル回数が非常に多くなりやすいゲームもある。
逆に変わり種としては『イーオンズ・エンド』のようにルールで山札をシャッフルしてはいけないと明記されているものもある(捨てた順番で捨札がそのまま山札に戻ってくるため、使う順番が非常に重要になる)。

麻雀におけるシャッフル

カードゲームに似ているが用いるのがカードではなく牌であるため、カードゲームのようなシャッフルができない。
基本的には手積みならウォッシュシャッフルと同じような洗牌を行う。電動雀卓なら自動で洗牌と山の作成を行ってくれる。

・花札におけるシャッフル

本格的な花札はトランプと違って硬質で厚い紙製であるため、できなくはないがトランプの感覚でのシャッフルは非常に難儀。
洗牌方式でウォッシュシャッフルを行うことが多いか。別に2つの山に分けて切ってもいいだろう。ちなみに京都の花札屋は洗牌方式をオススメしている。


【余談】

元来、“Shuffle”という英単語は「引きずる」という意味を持つ単語からの派生である。
そのため「足を引きずって歩く」「すり足で動く」というような意味もあり、すり足のような動きで踊ることを「シャッフルダンス*5」呼ぶ。
なので、ダンス用語で「シャッフル」と言われても、決して無秩序に動くことではないので気を付けられたし。



追記・修正はファローシャッフルを練習しながらお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • シャッフル
  • shuffle
  • カードゲーム
  • トランプ
  • イカサマ
  • 積み込み
  • TCG
  • 「ショット・ガン・シャッフルはカードを痛めるぜ!」←痛めない←リフルシャッフルは普通に痛めるのでご注意を
最終更新:2025年01月15日 09:01

*1 他にババ抜きのように「他のプレイヤーにこっちの手札に加えられたカードが分かってしまう」ゲームの場合、自分の手札を細目に混ぜないと相手に文字通り手の内が分かってしまう。

*2 単純にちょうど真ん中で抜き続けると上下が入れ替わるだけで全く混ざってない、実際は誤差があるがその抜き取りの境目付近しかカードが動いてないことには変わりがない。

*3 分割するパイルの数を掛け合わせた値が元の山札の枚数と一致する場合、最初に積まれていた順番に戻ってしまう。例えば60枚デッキなら、6山、10山で2回ディールシャッフルを行ったり、3山、4山、5山で3回行った場合。トランプを使って13山、4山で試してみると分かりやすい。

*4 厳密には、タロット占いには「正式な統一ルール」が存在しないためシャッフル方法も含め流派や占い師毎に異なる。

*5 「メルボンシャッフル」とも