コイ(魚類)

登録日:2011/08/28 Sun 17:23:12
更新日:2023/10/02 Mon 01:15:36
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コイとは、コイ目・コイ科に分類される魚の一種である。
日本での一般的な「鯉」と「コイ科の熱帯魚」とに分類して解説する。


【鯉(コイ)】

日本人にとって馴染み深い魚で、流れが緩やかな川や池などに生息する淡水魚である。
よく似たフナとの違いは頭や目のサイズや口ひげの有無。体長は平均60センチぐらいだが、大きくなると1メートル以上になる。
人に慣れた鯉は手を叩くと寄ってくる習性がある。
主に観賞用として飼われることが多く、街の水路や公園の池などで飼われていることがあり、呼び寄せた鯉達にエサを投げてあげた経験のある人も多いだろう。
巨大な錦鯉を池に泳がせることは、お金持ちのステータスの一つ。

性質

野生のコイは、川の中流や下流、池、湖などの淡水域に生息する。基本的に静かな深みにひそんでおり、産卵期以外はあまり浅瀬に上がってくる事は無い。
口に入るものならだいたい食べる雑食性で、咽頭歯という歯が喉にあり、硬い貝殻なども砕き割る。そもそも胃がないため、四六時中餌を食っていないと生命活動を維持できない。
寿命も長く、20年以上生きる。70年以上生きた事例も存在するため、総じて長命である。
汚れた水にも順応する環境適応能力があり、しかも水から上げてしばらく水のないところでも他の魚に比べて長時間生きられるというタフさを持つことも、観賞用に適した種といえる。
タフすぎて水槽から自ら飛び出してしまうということもたまにあるのだが…

恐るべきことに、このコイと言う魚は空を介して分布を広げると言う特性が有る。
浅瀬の水草に産卵するのだが、そのような場所は非潜水カモ類の絶好の餌場である。
マガモやコブハクチョウなどの非潜水カモ類は雑食で、魚の卵の付いた水草など絶好の餌であるが、コイの卵は非潜水カモ類の胃酸に耐えられるか耐えられないかギリギリの耐酸性を有している
カモ類に食べられた殆どの卵は消化されてしまうのだが、胃酸に耐えた僅かな卵は排泄され、新たな分布地で孵化するのだ。
従って、他の川や池と繋がっていない孤立した水系にも人間が放流しなくとも住んでいる事が有るのだ。


外来種としてのコイ

都市河川等を上記の食性で浄化する目的での放流も盛んに行われているが、コイはあらゆるものを貪欲に食べるので、慎重に放流先を選ばないと河川環境が破壊されてしまうこともある。
コイの放流はブラックバス放流と同様の問題を引き起こすことがあるのだ。
また近年では琵琶湖以外の全ての河川・湖沼に生息するコイは外来種と判明しており、『池の沼全部抜く』シリーズでは毎回見つかっては水槽送りになっている。
主に中国からの流入説が有力だが、鯉のぼりなどの日本文化にも根付いているためこの事実を知って驚く人は多い。
アメリカではより深刻で、養殖業者から逃げ出したコイが日本由来の外来種として猛威を振るい生態系を荒らしている。国際自然保護連合ではコイを「世界の侵略的外来種ワースト100」のうちの一種に数えている始末である。
外来種が定着する原因は、流通や保存技術が未発達な時代に新鮮な動物性食料として非常に便利だったことによる。
とくにコイは生命力が高く、なんでも食べ、大きく育つ。さらに淡水生で内陸部でも育てる事ができる。これらの特徴は、食べる分にはプラスの要素でしかない。増えたコイは人間が食べればよいのである。
流通の発達により需要はジリジリと減っており、あまり売られなくなってしまったとはいえ、長野県あたりでは鮮魚コーナーに鯉の切り身が必ず並ぶなど、地域差も大きい。
中国でも元々は食用として盛んに利用されていたが、唐の時代に禁令が出され、食性の違うコイ科の4魚*1を代用として利用するようになった。
日本にも塩焼きや鯉のあらい、鯉こくなどのコイ料理があるが、泥臭さがのこりがちで、アメリカではサケやマスと違って口に合わなかったらしい。

なお、特有の病気としてコイヘルペスというものがあり、発症すると100%死ぬという、コイにとっての死病である。
ワクチンも未だ開発されていないため、コイ業者にとっては死活問題である。


【コイ科の熱帯魚】

コイ科(学名:Cyprinidae)は、コイ目に所属する魚類の分類群の一つで、淡水魚のグループとしては最大の科。
我々日本人が「コイ」と聞くと錦鯉やらフナやらを想像するが、鯉の仲間はアジアを中心に世界に広く分布していて観賞用の熱帯魚としても有名である。
5センチ前後の小型サイズが一般的であるが、中には2メートル越えとなる「パーカーホ」という種もいる。
マルタウグイ(これは熱帯魚のカテゴリーではないが)などの一部を除いてほとんどが淡水魚である。体色は控えめでシンプルなものが多い。

ラスボラ
大きなバチ模様が身体に入る「ラスボラ・へテロモルファ」が古くから有名。
ラスボラ類は、1~5センチ級の小型サイズがほとんどだが、20センチ級となる「ラスボラ・エレガンス」などもいる。
ボルネオ島やスマトラ半島などが原産地。
おとなしい性質なので群泳や他種との混泳も可能。コイ科という事もあって丈夫で長生きで飼育も容易、パイロットフィッシュにも向く。
元々は一つの「ラスボラ属」だったが、分類の見直しで一部はスンダダニオ属やボララス属などの新属に分離された。

スマトラ
ベーシックなスマトラは、黒い縞模様と赤く縁取られたヒレが特徴。別名は「タイガーバルブ」。
プンティウス属(バルブ)の一種というよりも、スマトラと言った方が一般的には分かりやすいだろう。
非常に活発に動きまわり気性も荒いので、他種との混泳には向かないが、スマトラ同士か同じコイ科の熱帯魚とならば混泳可能。
ペアリング出来れば繁殖は難しくないが、生んだ卵を食べてしまうので産卵後に隔離した方が良い。

チェリーバルブ
雄は赤色、雌は薄い黄色で性別の判断しやすい。
気性の荒いスマトラと同じプンティウス属ではあるが、こちらは温和で少し臆病なところがある。他種との混泳も可能。
ただし、繁殖期になると、雌を追い回したり、雄同士での争いをする事はある。
色が鮮やかで、小型のスネールやプラナリアといった害虫を食べてくれるので、水草水槽にも向いている。
水草水槽ならば、勝手に繁殖している事も多い。
ちなみに、滅多に流通しないが、野生産の個体は赤い体にメタリックな青色が乗っており、まるで別種のような姿をしている。

ゼブラダニオ
別名は「ゼブラフィッシュ」。その名の通りに、シルバーとメタリックブルーのシマシマ模様が全体に入る。
一応は他種との混泳も可能ではあるが、泳ぎが早くて落ち着きが無く、他の魚を追い回して虐める事がある。
品種改良によって尾びれの長くなった「ロングフィン・ゼブラダニオ」もいる。こちらは、オリジナルよりも更に気性が荒い。
脊椎動物のモデル生物として世界中の生物学研究室で研究に用いられている。
2007年には国内での販売・飼育が禁止されている、サンゴの遺伝子を組み込んで体を蛍光色にした
「レッドゼブラダニオ(スーパーパープルカラーゼブラダニオとも)」が誤って輸入・販売されてしまう騒動が起きた。

アカヒレ
赤い尾ひれを持つ事から、アカヒレと呼ばれている。
実は中国に生息する温帯魚なので水温の変化に強く、丈夫で繁殖も容易な事から、観賞用はもちろん実験生物としても利用されている。
こちらも品種改良による「ロングフィン・アカヒレ」がいるが高価。他には「ゴールデン・アカヒレ」なんてのもいる。
改良品種だけでなく、同じタニクティス属の別種としてベトナムアカヒレ、ラオスアカヒレなども存在。
これらは名前の通り、それぞれベトナムとラオスに生息する熱帯魚なので低温には強くない。

アルジイーター
苔(アルジ)を食べるもの(イーター)の名の如く、苔取り用の魚として流通している。
しかし、苔を食べるのは幼魚の時だけで、成長と共にあまり苔を食べなくなる。また、人工飼料になれてしまうと苔には一切見向きもしない。
10センチを越える頃から気性が荒くなって、泳ぐ層の同じコリドラスを追いかけ回したりする。
それが最大で30センチ近くまで成長するので、かなり凶暴な種だとも言える。
水質への適応能力が高く、人工飼料にも簡単に餌付くことから、飼育そのものは容易ではあるが、成長するにつれて持て余してしまうパターンが多い。


【コイをモチーフとしたキャラなど】

ゲーム

もはや説明不要のさかなポケモン。
レベルを上げないと仕様技が一切無用の長物である「はねる」一つしかない仕様はもはや語り草で、逆にポケモンの中では比較的認知度が高い方である。

幕末編に登場する隠しボスで、城の池を泳いでいる超巨大な鯉。
詳細は「幕末編(LIVE A LIVE)」の項目も参照。

漫画


  • 浜崎鯉太郎(釣りバカ日誌)


ウオウオの実幻獣種モデル青龍を食べた龍人間。
おそらく元ネタは「鯉の滝登り」と思われる。

その他

広島市西区に「己斐」という地名があるが、この土地は延喜式で二字の嘉字地名になる前に「鯉」という漢字が使われたと伝わっている。
その己斐を流れる太田川の三角州に毛利輝元が築城した広島城はそれにちなんで「鯉城」と呼ばれるようになり、
さらに原爆投下後復興のシンボルとして立ち上げられたプロ野球チームは「鯉城」に加え太田川が鯉の産地であることに連想して、鯉を意味する英語である「広島カープ」と名付けられた。
他にも広島市のゆるキャラには「コイっしー」なんてのもいるし、カープもコイキングとのコラボ商品を出したことがある。

  • 錦鯉(お笑いコンビ)
渡辺隆と長谷川雅紀によるお笑いコンビで、M-1グランプリ2021覇者。
結成直後に「中国人による錦鯉の爆買い」というニュースを見かけ、それにインスピレーションを得てコンビ名を錦鯉にしたという。


水路で手を叩いて鯉を呼び寄せたことのある方、追記、修正お願いします。

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最終更新:2023年10月02日 01:15

*1 中国四大家魚。ハクレン、アオウオ、コクレン、ソウギョ