登録日:2025/09/15 Mon 00:32:23
更新日:2025/10/04 Sat 19:19:35
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『かくりよの宿飯』は、友麻碧による小説。
富士見L文庫(KADOKAWA)にて2015年~2022年にかけて刊行された。
全12巻。
イラストはLaruha。
【概要】
あやかし(妖怪)を見ることが出来る主人公。
そんな主人公があやかしの住まう「隠世(かくりよ)」に誘われる。
あやかしの世界で祖父が遺した借金返済を目指して主人公が得意の料理で小料理屋を開いて、奮闘する日々を描いている。
最初はあやかしとの関係が険悪だったのもあり、主人公が不利益を被る理不尽さも描かれた。しかし、そのような関係にあったあやかしとの間でも、主人公の行動力と他者に寄り添う姿勢が共感を呼び、仲間の輪が広がっていく。
辛いと言える逆境な状況を持ち前の気丈さと仲間との輪により覆っていくのが見所である。
やがてそうした積み重ねが、あやかしの世界が自分の居場所に変わっていく様も描いている。
料理が得意ということで、主人公である葵による料理にまつわるエピソードもあり、グルメ作品的な側面も持っている。
和のテイストと雰囲気を作りながらも、ジャンルを問わない料理がでてくるのも特徴である。
(メディアミックス)
①コミカライズ版
2種類存在している。衣丘わこ作画によるコミカライズ版がB’s-LOG COMICで刊行されている。
また、冬葉つがるによるもう1つのコミカライズ版も月刊少年シリウスより、連載されている。
②テレビアニメ版
2018年にテレビアニメ版第1期が放送され、2025年にテレビアニメ第2期が10月より放送されている(詳細は後述)。
③舞台版
2018年と2019年にそれぞれ2度に渡って舞台版が公演された。
【あらすじ】
あやかしの棲まう
“隠世(かくりよ)”にある老舗宿「天神屋」。
亡き祖父譲りの「あやかしを見る力」を持つ女子大生・葵は、
得意の料理で野良あやかしを餌付けていた最中、
突然「天神屋」の大旦那である鬼神にさらわれてしまう。
大旦那曰く、祖父が残した借金のカタとして、
葵は大旦那に嫁入りしなくてはならないのだという。
嫌がる葵は起死回生の策として、
「天神屋」で働いて借金を返済すると宣言してしまうのだが……
あやかしお宿を舞台に繰り広げる、葵の細腕繁盛記!
【キャラクター】
(主要人物)
・津場木葵
CV:
東山奈央
本作の主人公。
現在は大学生で一人暮らし。
祖父から料理を学び、自炊が出来る。
あやかしを見ることが出来、妖を相手にしても物怖じしない気丈な性格。
むしろ自慢の料理で妖を餌付けしてしまうこともある。
そんな彼女であるが、現世で大旦那に出会った際、隠世に攫われてしまう。
その真相は彼女の祖父が隠世で迷惑と借金を残してしまったことで、借金のツケとして隠世に嫁入りさせるという契約を交わしていたとのこと。当然、反対する彼女は、借金を働いて返済すべく大旦那が経営する天神屋の離れにある「夕がお」にて小料理店を経営することになる。
祖父が隠世にて様々な「やらかし」をしてしまったおかげで、妖の一部からは彼女をよく思っていない者たちもいる。天神屋の面々からも最初は彼女に白い目を向け、様々な妨害を企てられたり、拉致監禁されたりしたこともあった。時には雷獣のたくらみにより、味覚を一時失ってしまい、料理を作れなくなったことも…。
しかし、持ち前の明るさと気丈さで問題に向き合い、理解者たちの協力も得て、様々な困難を乗り越えていくことになる。
祖父譲りの技巧で、一通り料理が出来る。何より、彼女の作る料理は妖たちにとってもどこか懐かしさを感じて好評である。
幼い頃は育児放棄を受けており、両親からの愛情を受けずに育った哀しい過去がある。
・大旦那
CV:
小西克幸
隠世にある老舗宿の天神屋の大旦那を務めている。鬼の鬼神。
葵を隠世に誘った張本人。彼女を自分の嫁にしようと持ち掛けるが、彼女に断られる。
その後、葵に(嫁入り)を拒絶された序盤は冷たい態度でいることもあったが「夕がお」で奮闘する彼女に何かと助け船を出している。
彼女を嫁に迎えようと口説く一面もある一方、働くと決めた彼女の覚悟を問うこともしており、その性格は掴みどころのないものとなっている。
なお、そんな葵に対しても嫌いな食べ物などは教えていない(弱点を教えることになるためだという)
葵に対する愛情は本物で、デートの時も、彼女が興味を湧くものや貴重な食材を買ってあげることも。また、葵に何か頼まれごとをされると張り切る。
彼女の料理を手伝いたい気持ちもあるのだが、立場の違いもあって、部下たちから止められることが多い。
変装の名人。
葵を陰ながら支える際は様々な職種に化けてサポートしている(例:魚屋など)
・銀次
CV:土岐隼一
天神屋の若旦那を務める妖狐である。
葵の「夕がお」経営を支える縁の下の力持ち的な存在である。
若旦那を務めているだけあり、仕事ぶりは有能。紳士的な振舞もあって、一部の女性妖からは「天神屋最後の優良物件」という声もあり、人気がある。
変身が得意で、普段は青年の姿であるが、幼子や狐、はたまた若い女性にも変身することが出来る。
元々は天神屋のライバル店である「折尾屋」に勤めていたが、義兄弟のような関係であった乱丸とは価値観の違いによって、折尾屋を去ることを決めた。
その際、大旦那からのスカウトを受けて天神屋で働いている。
しかし、折尾屋との縁は切れておらず、とあることをきっかけに折尾屋へ戻らなければならないことになる。
(天神屋)
・お涼
CV:
加隈亜衣
天神屋の若女将。雪女。
雪女のため熱気に弱い。
しかし、後に葵に嫌がらせをした+職務放棄をしたことで若女将の地位から降格処分となった。
大旦那の玉の輿に乗ろうとしたが、婚約者である葵が現れたおかげでその計画が崩れた。彼に倒する尊敬と恋慕の情は厚かったために最初は葵を嫌っていた。
しかし、自身が熱気に当てられて体調を崩した際に葵に看病されたことや美味い食事を提供してくれたことのおかげでお互いに打ち解けて、友人のような間柄になる。
それ以降は「夕がお」
に入り浸ってで葵の手伝いしていることも多い。
・春日
CV:中恵光城
天神屋の仲居。化け狐。
葵との間柄は最初から良好であり、天神屋にまつわる人間関係やその噂を葵に教えて、彼女の仕事が円滑に回るように手助けしている。
・暁
CV:
内田雄馬
天神屋の番頭。土蜘蛛。
葵の祖父である史郎をめぐって、少々因縁めいたところがあり、その都合、葵に対しても当たりのキツイ一面がみられた。
やや視野が狭いところが見受けられるが、仕事に対しては真面目に取り組んでいる。
・白夜
CV:田丸篤志
天神屋のお帳場長。
天神屋の財政状況の把握と歳出管理を担当している。よって天神屋の売り上げ状況を踏まえ、各部署に改善を促すこともあるので、従業員たちが彼には頭が上がらないこともある。
これは「夕がお」も同様で、「夕がお」の客足が悪く、売上が厳しい場合は相応の対応が必要だと葵に告げたこともある。
そんな彼だが、実は天神屋の周辺に住み着く管子猫を愛でている。たまたまその場面を葵に見られたこともある。(その後猫用にエサをもらったことも)
・静奈
CV:
上田麗奈
天神屋の湯守。濡れ女。
お淑やかな性格。
かつては折尾屋で働いていた。その際、師匠である時彦に助けられたが、彼はその際に大怪我を負ってしまう。それを引け目に思っていることがある。
もっとも時彦は気にしていないようだが、妙に隙間風が吹いてしまっている。
・チビ
CV:
石見舞菜香
葵の眷属である手鞠河童。
マスコットのようなキャラである。
河童ということもあり、キュウリが大好物である。
いつも葵の傍にいる愛らしいキャラである。
ただ、海坊主がやってきたエピソードでは窮地に追い込まれたのでは?とも言えるやらかしをしてしまった等、天然な振舞によって場をかき乱すこともある。逆にそれが葵を助けるヒントになることもある。
葵の話し相手のマスコット的な側面が目立つが、彼女の心の支えになっているキャラである。
(折尾屋)
・乱丸
CV:
石川界人
折尾屋の旦那頭。
幼い頃は銀次と共に磯姫に育てられた。このため、銀次とは義兄弟みたいな間柄である。
南の地を折尾屋と共に発展させようと尽力する真面目な性格だが、強引なかつ強権的な手法も目立ったことから、銀次に反発される結果を生んでしまった。
彼が去った後も折尾屋を経営していたが、彼への思いは冷めたわけではない。
現実かつ合理的思考の持ち主で、使える者に対してはとことん利用していく。
・葉鳥
CV:
寺島拓篤
折尾屋の番頭。天狗。
祖父である松葉とは母親の扱いをめぐり折り合いが悪く、母親の死をきっかけに関係が悪化し、松葉とは喧嘩別れになってしまった。
その後、葵が作ったがめ煮をきっかけに母親の愛情を2人は知った形となり、和解することになる。
性格はフレンドリーな性格。葵にも気さくに接する。
・時彦
CV:
平川大輔
折尾屋の湯守。不知火。
静奈の師匠で、上述の通り、彼女を庇って大怪我を負った。命に別状はないのだが、今でも額から霊力が出てしまうくらいの傷痕は残っている。
この件で静奈とはすれ違いが起きてしまっている。自分は気にしていないと伝えようとしても静奈は頑なでいる(何なら投げられてしまうことも…)
・秀吉
CV:
柿原徹也
折尾屋の若旦那。化け猿。
葵が折尾屋へ連れ去られた際、高圧的な態度で接していることが多かった。
後にねねに対する気持ちを葵が知った際は、葵は彼を見直すことになった。
・ねね
CV:金子彩花
折尾屋の若女将。火鼠。
葵が折尾屋へ連れ去れた後、彼女に嫌がらせをしてケガさせたこともある。(後にその件について謝罪した)
お涼に尊敬とライバル心とも言える複雑な感情を有している。
自信をなくすと鼠の姿になって身を隠してしまう。
・戒(かい)/明(めい)
CV:
鈴木みのり
折尾屋の板前で鶴童子。
双子の板前で口調は平坦で独特。銀次の件で葵が折尾屋に攫われた際、一緒に働くことになる。
葵の料理を好いており、そこから彼女には協力的である。
(妖の親族)
・松葉
CV:
大塚明夫
西の地の朱門山で天狗たちを束ねている。天狗のご隠居。
妻の笹良(CV:
名塚佳織)が早くに亡くなってしまったが、それまでの彼女に対する待遇が悪く、これが原因で息子である羽鳥の反発を生み、彼とは険悪の仲になってしまった。
某至高VS究極のメニューの親子みたいな関係性である。
後に葵が、過去に笹良が作った「がめ煮」を再現することによって和解することになる。
史郎とも縁があった関係で葵の事を実の娘のように溺愛している。
「夕がお」の名づけ親で、彼女の作る料理にも目がない。
・鈴蘭
CV:
内田真礼
暁の妹で史郎には世話になったことから彼を慕っている。
そうした経緯もあり、現世へ行くことを希望していたが、兄の反対もあって、兄妹喧嘩を始めてしまう。
リアルでは姉弟喧嘩といったところか。
三味線が得意である。
・磯姫
CV:
坂本真綾
血の繋がりはないが、銀次と乱丸の育ての親とも言うべき存在である。
額に未来を予知する第3の眼を有している。
雷獣の企みにより、300年前の儀式を失敗してしまい、南の地に災いが降り注がぬように、自身は竜宮城に引きこもることになる。
この出来事が銀次や乱丸にも深く影を落とすと同時に、乱丸は磯姫のために南の地を盛り立てようと決心するきっかけになった。
(その他)
・津場木史郎
CV:
井上和彦
葵の祖父で、生前隠世にいた頃は結構な厄介ごとやトラブルを持ち込んでいたという。それらは武勇伝として浸透している模様。故に過去の因縁を持つ妖から葵は狙われてしまう原因になることもある。
葵からすると好々爺のように見えていたようで、彼から料理を教わった。
既に作中では故人。元気だったが階段から転落したのをきっかけに亡くなったらしい。
天神屋で豪遊した借金のカタを付けるために、葵と大旦那の婚姻を認めたというとんでもないことを仕出かしたことから、見方を変えると本作の元凶のような存在である。
・雷獣
CV:
日野聡
妖都の大貴族。
作中に登場する妖ではほぼ唯一の根っからの悪人であり、退屈を毛嫌いし、暇つぶしのためなら非道な行為も辞さない冷酷かつ凶悪な性格。
300年前に銀次と蘭丸の育ての親である磯姫を挑発して儀式を失敗させ、死に追いやった張本人。
最後はこれまでの悪事がたたり、二度と雷獣を頼らないと決めた妖王の秘術で常世に追放されるという自業自得の結末を迎えた。
【用語】
〇隠世
妖たちの集う世界の名称。
中心地にある都市と八つの土地から形成されている。
〇八葉
隠世を形成する八つの土地の事を示す。
現在の八葉は氷人、鬼神、龍人、小豆洗い、犬神、一反木綿、天狗、文理狸の八人である。
〇天神屋
隠世の北東に位置する鬼門の地に店を構える老舗宿を示している。
長い歴史を有しており、人気の宿である。
〇朱門山
隠世の西にある天狗たちの住む山を指す。
天狗の一族は多種多様の宝をまもっており、松葉が葵に授けた「天狗の団扇」もその1つである。
〇あやかしのお面
お面を被ることで自身の正体を隠すことが出来る。
葵が外出する際は、人間の姿だと狙われる可能性が高いので、お面を被るようにしている。
その容姿からまるで
某ゲームの主人公のようにも見える。
〇夕がお
葵が経営している小料理屋。天神屋の離れにある。それまで様々な店をやってみたが失敗の繰り返しだった経緯を持つ。
命名したのは松葉である。
〇宙船(そらふね)
隠世の交通手段の1つである空を飛ぶ船。
動力は妖力で動いているとのこと。
〇妖都新聞
隠世で発行される新聞。レイアウトは現世のそれと変わらない。
葵が隠世につれてこられたり、なにかニュースとして取り上げられたりした際は、何かと「鬼嫁」呼ばわりされており、本人としてはあまりいい気がしない。
【テレビアニメ版】
2018年4月~9月の間でテレビアニメ1期が放送された。(2クール)
葵が隠世にやってくる~折尾屋での奮闘記のところまでが描かれている。
アニメーション制作はGONZO。
そして7年後にあたる2025年10月より第2期が放送予定。
7年の歳月を経て2期が来たことに驚くファンもいたとか。
アニメ2期の制作はGONZOにマカリアが加わっている。
(主題歌)
1期
OP①:「灯火のまにまに」
葵を演じた東山奈央によるオープニングテーマ。和風テイストと疾走感ある曲調が印象的。
OP②:「ウツシヨノユメ」
ナノによるオープニングテーマ。2クール目からメインを張る銀次のことについても描かれている。
ED①:「彩‐color-」
沼倉愛美によるエンディングテーマ。
ED②:「知らない気持ち」
中島愛によるエンディングテーマ。
ED③:「涙のレシピ」
葵を演じた東山奈央によるエンディングテーマ。
他にも各男性キャラによるスペシャルEDが用意された。
追記・修正は妖を料理でもてなせた時にお願いします。
- アニメのシリーズ構成は妖怪ものをよく手掛ける人。 -- 名無しさん (2025-09-15 08:44:04)
最終更新:2025年10月04日 19:19