ぼくらの

登録日:2011/08/18 (木) 18:57:33
更新日:2025/04/08 Tue 20:25:38
所要時間:約 4 分で読めます





中学生になった時、


ぼくらはもう一人前で自分でなんでもできると思った。


ぼくらは泣いたり笑ったり怒ったり、
もう、この世の中のことはほとんど知った気になっていた。


でも本当は父や母に守られ社会に守られてるただの子供だった。


本当の悲しみや喜びや怒りは、
そんな日常の中にはなかった。


それを知ったのはぼくら15人が集まり、
そして、
あれ、


あれに、出会ってからだった。




月刊IKKIで連載されていた鬼頭莫宏によるSFロボット漫画。アニメ化、小説化もされた。

作:鬼頭莫宏

漫画・全11巻
アニメ・全24話
小説・全5巻

巨大ロボに乗って敵と戦うなかで、少年達は命、家族、そしてまだ見ぬ未来を見つめ直す。
鬼頭お得意の思春期の葛藤描写も細かく描かれており、何の為に戦うのか、何の為に生きているのかの悩みを丁寧に表現している。
2009年11月時点で1~10巻までの累計発行部数は約100万部を記録、2010年第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。

ここでは主に原作漫画・アニメ版について記述する。

●あらすじ

夏の臨海学校に、それぞれ違う土地から集まった15人の少年少女。
彼らは海岸で見つけた洞窟の先で怪しげな男から『ゲーム』に誘われる。
『敵』から地球を守るそのゲームに契約し、軽い気持ちで参加する少年達。
しかしそのゲームは彼らの運命を大きく動かすことになる――


●ゲームのルール

  • 次々と襲い来る敵を巨大なロボットで倒し、地球を守る
  • 敵は不定期に1体ずつ出現する
  • 戦闘開始時にパイロットはコックピットに強制転送される
  • 自陣の巨大ロボットは毎回同じものを使い、操縦は念動式
  • 敵の心臓部である『核』を破壊すれば勝利となる
  • 操縦者は原則として毎回交代し、次回の操縦者はランダムで決定する
  • 操縦者に選ばれると身体に特有の模様が浮かび上がる(アニメ版のみ)
  • お互いの出現から48時間に決着がつかない場合、双方とも負け扱いとなる


●巨大ロボット

漫画、アニメ版では《ジアース》(Zearth)と名付けられる怪獣のような巨大兵器。
《ジアース》の由来は「地球代表のロボット」ということで「EARTH」(地球)に、究極っぽい「Z」をつけた物。
甲殻類や甲虫を模したような黒い装甲をもち、全高は500mほど。小説版では《人形》と呼ばれる。
顔にあたる部分には契約者の人数に応じたスリットと、「目」のような光点がともされている。
手足による格闘のほか、機体のあらゆる箇所から地球すら貫通する「レーザー光線*1」を手軽に放つことができる。
構成材は謎ではあるが、弱点部位に核兵器が直撃してなお無傷という桁違いの強度の材質であり、特に装甲部位はさらに別格の強度を誇る。
しかもゲーム終了のたび、どれだけ破損していても必ず完璧に元の形に戻る。
操縦室はフローティング構造となっており、契約者の無意識から構築された「操縦席(普段使っている椅子など)」が人数分存在。
インターフェースは完全な思考操縦を可能としており、何の補助具もなく、文字通り考えただけで任意の挙動を取らせることができる。
また戦いの中で初期説明には無かった機能やそれを利用した戦法が発見されている。
<例>
  • (近接戦闘時当てやすくするため)戦闘後に再生するのを見越して長すぎる腕を自切する
  • 生き物の『命』を感知出来る
  • 一瞬で匍匐前進または四脚歩行風に『変形』する
  • 『命』を標的にしての精密レーザー砲撃
…等、明らかに人知を超えた技術力で製造されたものだが、一部に「敵」との関連性も見られ、多くの謎が隠されている。


●主な登場人物

15人の子ども達

ゲームに契約し、黒くて硬くてデカい巨大ロボットに乗り込んで敵と戦う。
章ごとに次の操縦者に選ばれたキャラにスポットが当てられ、自分の戦闘終了までの間一時的な主人公として扱われる。
漫画・アニメと小説ではメンバーに違いがある。中学一年生が殆ど。

和久 隆(わく たかし)
通称「ワク」。サッカーが好きなスポーツ少年。明るく活発なお調子者で、隠されたヒーローになるべく戦いに燃える。
個別項目参照。
加古 功(かこ いさお)
通称「カコ」。臆病で自己中なやや日和見の少年。足が速く、不良のパシリをやらされている。チズに惚れている。
小高 勝(こだか まさる)
通称「コダマ」。土建屋社長の三男でモデルガンが趣味のボンボン。動物をいじめ選民思想を持つ典型的中二病。
矢村 大一(やむら だいいち)
通称「ダイチ」。両親のいない貧乏4人兄弟の長男で、家族のためなら死ねると豪語する正義漢。並の大人よりガタイが良い。
個別項目参照。
切江洋介(きりえ ようすけ)
通称「キリエ」。カコの同級生で、チビデブで気が弱く無口といかにもないじめられっ子。だが意外と芯は強い。
吉川 寛治(よしかわ かんじ)
通称「カンジ」。角刈り垂れ目のひょうきんで下ネタが好きな少年。ウシロと同じ中学校で彼曰く「マザコン」。
門司 邦彦(もじ くにひこ)
通称「モジ」。優れた観察力と推理力を持ち、冷静沈着に仲間に的確なアドバイスを送るイケメン男子。チームのブレーン。
宇白 順(うしろ じゅん)
通称「ウシロ」。頭は良いが性格は悪いメガネの少年。普段は塩対応だが切れやすく、妹のカナをいじめている。

半井 摩子(なからい まこ)
通称「ナカマ」。模範的で口うるさい学級委員長タイプの少女。ダイチに負けず劣らず正義感が強い。
本田 千鶴(ほんだ ちづる)
通称「チズ」。一見清楚な清純派だが表情が乏しく、どこかミステリアスな雰囲気を持つ少女。リアリスト。
阿野 万記(あの まき)
通称「マキ」。ボーイッシュな少女。こう見えてミリタリーオタクにしてアニメオタク。コモとは幼馴染、カナを可愛がる。
町 洋子(まち ようこ)
通称「マチ」。自然学校の地元の漁村の漁師の娘。活発で人当たりが良く、そばかすがトレードマーク。性格の悪い兄がいる。
徃住 愛子(とこすみ あいこ)
通称「アンコ」。アイドルになることが夢の明るい少女。ちょっと頭の軽いおバカキャラで、メンバーで一番喜怒哀楽が素直。
古茂田孝美(こもだ たかみ)
通称「コモ」。ロングヘアーに大人びた雰囲気の穏やかな少女で、ピアノと読書が趣味。マキの同級生。父は国防軍の軍人。
宇白 可奈(うしろ かな)
通称「カナ」。ウシロの妹で唯一の小学生(四年生)。大人しい性格で、兄には日頃から暴力を振るわれいじめられている。

  • ココペリ
CV:東地宏樹
海岸の洞窟でゲームを作っていた怪しい男。メガネをかけ白髪?でひょろ長い体躯の、ちょっと頼りない雰囲気の青年。
洞窟内に多数のパソコンを持ち込み拠点としており、モニターとして子ども達をゲームに誘う。
ゲームのチュートリアルとして最初のパイロットを務める。本名は画楽

CV:石田彰
しもぶくれのネズミのぬいぐるみのような姿をしたゲームのアドバイザー。
宙に浮いており、任意のものをコックピットを介してテレポーテーションできる。
性格も口も悪く、ゲームの詳細を知っているようだがなかなか教えてくれない。
漫画では手の平サイズ、アニメでは人の顔ほどの大きさ。


ルールのネタバレ













●途中から明かされるルール
  • ジアースを動かすのに必要なものは契約者の命。たとえ戦いに勝利しても操縦者は絶対に死ぬ
    • ゆえにコエムシ曰く契約は「マガジン(弾倉)への登録」。つまり色々な意味で「鉄砲弾」。
    • 契約している≠操縦権がある。操縦者は戦闘直後に契約者の中からランダムで選ばれ、戦闘時のみ操縦権を持つ。万全のセキュリティ。
    • 戦闘はいきなり始まるが、操縦者に選ばれてから数日程度のインターバルがある。
    • 契約を撤回することはできない。
    • 胎児ですら契約者や操縦者として選ばれる。(契約は母体と共に連動して行われる。)
    • 操縦者が契約代償以外の形*6で他界して人手が足りなくなった場合、追加契約を行って規定数まで補充する事も可能*7
      • 追加契約者分の椅子は最初の契約分の終了後コックピットに出現する。
      • パイロットが足りないまま戦闘をした場合、48時間以内に追加人員を補充すれば残存時間内で戦闘可能。
        • 決まるまでは双方の攻撃は通らず、決まらなかった場合は不戦勝。ただし勝利側のパイロットは死ぬ。
  • ジアースと敵は実質的に同じ存在。
    • ジアースにも敵と全く同じ見た目の核がある。核の正体は操縦室。
    • ジアースと敵の顔にある光点は残りの操縦者の数。死ぬごとに一つずつ消えていく。
  • 敵の正体は平行世界(パラレルワールド)の地球人であり、戦闘は自分の地球と平行世界の地球の存続をかけたもの。
    • 厳密な勝利条件は核の破壊ではなく、「味方側の地球人の手で敵操縦者を殺す」こと*8
    • 戦いの場は自分達の地球か相手側の地球のどちらかにランダムで決まる。
      • 但し最後の操縦者のみさらに別な世界の地球に飛ばされ、「新しいコエムシ」と一緒に「別の地球における操縦者」を選定
      • ゆえに最後の戦いは後継者達にとっての「チュートリアル」兼「残る世界が2つ分か1つ分か」を掛けたものとなる。
    • 戦いに負けた側の地球は消滅する
      • 勝った側の地球も戦闘の経過はそのまま残る。よって自分の地球で下手な戦いをすれば無関係な人々が普通に死ぬ。
      • 48時間以内に勝敗が決まらないと両方の地球が消滅する

要するに契約者は戦闘後ランダムで死の宣告を受けて放流、死の覚悟ができたかどうか微妙なタイミングで地球の命運を背負った戦闘をさせられた挙句、どう足掻いても死ぬ運命にある。
…不憫過ぎない?



…そんな設定故、「戦うたびにパイロットが減って足りない!」なんて事態が容易に想像できる為、外部ゲーム出演は絶望的。
いくらお祭りゲーであるスパロボでさえ、あんまりにも絶望的で物騒なスパロボになってしまう……というか無理。
スパロボKより酷いことになるのは明白だし。そもそもジアースのアウェイ戦(並行宇宙にジアースのみ飛ばされる)どうするんだ。
宙さんを連れて行って、戦闘後に死ぬ定めの子供の目の前で「死ねぇ!!」でもしてもらうのか。
どちらにせよ不謹慎な話だし、錯乱する奴が増えそうではあるが。正義の味方なスーパー系陣が軒並み病むレベル。

……しかし、遂に2020年10月『スーパーロボット大戦X-Ω』に期間限定参戦が決まった。
しかも元祖トラウマロボットアニメ『伝説巨神イデオンと同時参戦である…ヤバイ臭いしかしない。
さらには参戦発表時は『魔法のプリンセンス ミンキーモモ』が『ぼくらの』の上に並んでおり、交通事故で死ぬ・乗ると死ぬ・みんな死ぬとユーザーを戦慄させた。
こんな連中の先頭に並べられた『牙狼-GARO-』が一周回って平和にしか見えないという間違った場違い感
ちなみに原作は既に完結済みなのだが、アニメ版の方が先に参戦しており、設定面でもアニメ版準拠となっている。



余談


◎アニメ版は原作ファンからは不評。だが、原作を知らない視聴者からは概ね好評だったらしい。
アニメ前半は漫画の細部まで描いた丁寧な作りだが、原作連載中にアニメ化がスタートしたため後半はオリジナル展開になっている。

小説版は主役陣が大きく変更されており、ストーリーも当然異なる。

◎作品を作るにあたってはジョージ秋山の漫画『ザ・ムーン』のストーリーを参考にしている。

◎着想のきっかけは、作者が「ロボットに乗っていい気になってる子どもなんてみんな死ねばいい」と思ったことらしい。

◎また、最初に構想されていたのは「魔法を使うと主人公の大切な人が死んでいく魔法少女モノ」で、
 そこから「大きな力を使うには犠牲を支払う必要がある」という発想のもとに「操縦するとパイロットが死ぬロボット」という設定が考え出された。

◎2024年にSMP[SHOKUGAN MODELING PROJECT]の一貫でジアースのプラモデルが発売。
 自立はできずスタンドによる展示が前提で、色分けは十分だがモールドがのっぺりとしていて外見通り虫のような趣きがある。
 おまけパーツとしてコエムシとコクピットの核それを掴むハンドパーツが付属。
 更にスリットの点灯数ごとに選べるシールにより残存パイロット数を選べる外道仕様。

原作漫画最終巻には初版限定版にのみオマケ漫画の小冊子が付属。
セルフパロディといった感じの内容で、作者本人のほかにアシスタントが描いた漫画もある。

重くシリアスな本編とはおよそかけ離れたギャグ要素の強い漫画の為わりと賛否両論。
特に作者本人が描いた最後のページのコエムシは忘れたくても忘れられないインパクトをもつ。



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  • スパロボ
  • 乗ると死ぬ
  • スパロボ参戦作
  • 2004年
最終更新:2025年04月08日 20:25

*1 見た目だけの話であり、正確には質量兵器らしい

*2 その男性は仲介人から紹介されていたが、児童虐待専門の弁護士で幼児プレイ専門のジェンダー逆M属性というかなりクレイジーな人だった

*3 これを聞いたウシロとマチは苦々しい顔をしていた

*4 当初その椅子はマキが座ろうとしていたが、弟の誕生前という身の上からベビーベッドと誤解してそちらを選んでいた。なお、そのベビーベッドはチズの胎児のものである。

*5 その人物は描写では少年というくらいの体躯だったが、40代の中年暗殺者であった事が明かされている。

*6 「こちらがわの地球人」による殺害等

*7 なので最終巻によると、ある世界では規定回数以上の人数を事前登録した結果「選ばれて死ぬ操縦者」と「順番が回らず助かるかも知れない操縦者」が発生するロシアンルーレットと化し、かなり酷いことになったとか…。

*8 こちら側の地球人なら誰でも良いので、ロボット戦以外の手段で勝負が決まるケースもある。逆に操縦者が死んでも敵側の地球人の手にかかったのでないなら敗北にはならず、次の操縦者が選ばれて戦闘続行となる