ザ・ムーン(漫画)

登録日:2018/12/29 Sat 02:02:31
更新日:2025/03/21 Fri 21:21:50
所要時間:約 18 分で読めます






神は死んだ!!

この世の悪を見よ!!
悪がはびこり悪の天下だ!!
神が死んだ証拠だ!!

神は死んだのだ!!

わたしは偉大なる発明をした!!

わたしは正義を発明した!!




■ザ・ムーン

『ザ・ムーン』はジョージ秋山による漫画作品。
週刊少年サンデー』に72年から73年まで連載された。
無敵の巨大ロボット“ザ・ムーン”を操る力を与えられた、9人の子供達の活躍をジョージ秋山特有の社会風刺やシニカルなブラックユーモアを交えて描く。

同時代に『デビルマン』が存在していたためか、本作が霞んでしまっているとも言われるが、当時を知る人間からは同レベルの衝撃的な終わり方をした作品として伝説となっている。

強烈なアジテートを炸裂させる登場人物が多いのも特徴で、さながらカルトな新興宗教の勧誘の如し。
そういうノリにハマりやすい人や苦手な人は要注意。

近年では『ぼくらの』の元ネタになった作品として語られることもあるものの、ストーリー的には全く別物である。
しかし、登場人物の名称やら設定にも本作へのオマージュが込められているのは確かである。

単行本は朝日ソノラマのサンコミックより全6巻が刊行されていた。
後に97年に小学館文庫として4巻にまとめられて刊行。
電子版は文庫版の体裁を元にしている。

70年代と、2006年頃に企画に上がったアニメ計画は何れも製作前に頓挫しているらしく、そうした点でも知る人ぞ知る名作、幻の怪作と呼べるかもしれない。


【物語】

何処にでも居るような普通の子供達のサンスウ、カテイカ、シャカイ、ズコウ、双子のリカ兄弟、タイソウ、オンガク、ヨウチエン。

ある夜、彼等が姿を消した後に、行方を探す親たちの前に何事もなく帰ってくる事件が発生。

子供達は何も無かったと語るが、その怪しい態度に疑いを持った大人もいた。

……実は、少年達は世界に悪が蔓延ることを憂いている魔魔男爵により知らずに選ばれ、彼の配下である糞虫により拉致。
その後で、彼等への贈り物を渡すことを約束して解放されていたのだ。

……翌日。
示し合わせて学校を抜け出した九人は約束の場所へ。
そして、山中の巨大な墓石を思わせる建造物から巨大なロボットが姿を現す。

それこそ、魔魔男爵がアメリカの年間宇宙研究費と同じ二兆五千億円を投じて造り上げた、無敵のロボット“ザ・ムーン”!!

「力こそ正義だ!!」の理念の為に建造されたザ・ムーンを預けられた子供達だったが、彼等にしか動かせないと言われたにもかかわらず、巨大ロボットは全く動く気配を見せない……。

そんなある日のこと、“地獄舟”と手書きされた舟盛りの上に女性の生首が乗せられて交差点の真ん中に放置される事件が発生。

その首に見覚えがあると語ったカテイカが命を狙われた事件をきっかけに、子供達の日常は一変していく……!!


【主要登場人物】


  • サンスウ
本作の主人公で子供達のリーダー格。
まだまだ成長途中ながら、あやふやな世の中の中でも確かな正義を見極められる精神と強い肉体を持つ。
その資質故に連合正義軍にも勧誘されている。
その、自己犠牲をも厭わない正義の心は、未だ幼い仲間達にも伝播していき、過酷な戦いの中での指針となった。

  • カテイカ
本作のヒロインで子供達の紅一点。
父親は刑事で、その為か記憶力がいい。
サンスウとはお互いに気になる存在であり、戦いを通して本気で愛し合っていることを自覚するようになる。

  • シャカイ
子供達の副リーダー格。
サンスウ、カテイカとは同学年で、年長組ということもあってか小さな子の世話を焼いてる姿がよく見られる。
サンスウとは当初は喧嘩をする仲だったが、ザ・ムーンを得てからは誰よりも仲間の絆を口にするようになり、サンスウの男気を買って彼に信頼を寄せると共に立てるようになる。
腕っ節が強く喧嘩っ早い。

  • タイソウ
サンスウの弟。身が軽い。
自分の身も危険に晒す兄をよく心配している。

  • リカ兄弟
双子のメガネ少年で科学知識に明るい。

  • ズコウ
小太りの少年。
手先が器用で模型などの工作が得意。
一度は戦いの厳しさから逃げ出そうとしたが自分を戒め帰って来た。

  • オンガク
ヨウチエンの兄。
自分も小さいがもっと小さい弟をおぶっている。

  • ヨウチエン
最年少の幼児。オンガクの弟。
よちよち歩きで、本当はまだ物の区別があやふやでもおかしくない年齢だが、敵に囲まれる中で熱に魘される苦難を乗り越えて正義の心を身に付け、その姿で仲間達を鼓舞する。


  • 魔魔男爵
世の中に強い影響力を持つ爵位持ちの貴族(?)の一人で、悪の蔓延る世界を憎み、莫大な資金を費やしてザ・ムーンを建造した。
如何なる基準かは不明だが、サンスウ達を操縦者として選び、
汚れた心の自分ではなく、純粋な心の子供達を選んだと語る。
小太りで眼鏡の青年~壮年の背の低い男性で、頭頂部が頭の真ん中から突き出ているという形容し難い形状をしている。
ザ・ムーンを預けてからは子供達の活躍を楽しみにしていたり、食事に招待した時には小さい子を膝に乗せたりしている。
糞虫に対して温情を見せようとする場面もあるが、彼に断られたために敢えて厳しく接している部分もあったりと、基本的に思いやりの人。

  • 糞虫
魔魔男爵に仕える下忍で、虫の異名の通りに「ピルルルルルル」という、虫の鳴き声を模した口笛を発する。
背の低い魔魔男爵よりも更に小さい小男だが、弾丸より速く動ける等、腕に覚えのある敵からすら「化物」呼ばわりされる程の人間離れした手練れであり、その力を使って子供達の身を守っている。
自身の事を「糞」と卑下するなど極端に自罰的な性格らしく、登場時は大抵土下座のような姿勢で平伏している。
魔魔男爵との「お前はなんだ!?」「はーっ糞でございます!」というやり取りは毎回の二人の定番となっており、この時が寡黙な糞虫の唯一喋る箇所である。
手傷を負わされることもあるが基本的に対人戦では無敵で、
強すぎる上に万能なため、本作を知る人間からは主役の子供達よりも糞虫が印象に残っていることも多い模様。


【各章の登場人物】

※以下はネタバレあり。


【第一話 連合正義軍の平和】



【第二話 湖底の黄金】



【第三話 春秋伯爵のユートピア】



【第四話 白原に死す】



【登場メカニック】


■ザ・ムーン
魔魔男爵が莫大な資金を投じて建造した、現代科学の粋を集めた無敵のロボット
9人の子供達の意識を統一することにより、額の9つのシグナルが点灯、彼等の思う通りに起動する。
駆動音が「ムーン」「ムーン」「ムーン」とうるさく、魔魔男爵は泣いていると形容している。
また、起動したままで動かないと機関がオーバーヒートするのか、目からオイルが溢れ出して涙のように見える特徴がある。
「力こそ正義」を体現した機械仕掛けのであり、その力は文字通りに神の如くだが、唯一の弱点子供達が一人でも欠けていると起動しない上に子供達の安全を守る機能や逃げ込めるコックピットの様な場所が無いこと。
……このことが、常にサンスウ達を敵に狙わせる事態を引き起こし、最終章での悲劇を生んでしまった。
基本的は武装は徒手空拳と頑丈なボディだが、満足に起動した場合にはこれだけでも敵ロボットを寄せ付けない強さを誇る。
満月時のみの特殊兵器として、普段は下弦の三日月型の胸部が満月と重なり円形になることで放つ破壊光線(フルムーンアタック)があるが、一度しか使われなかった。
また、子供達の更なる精神集中により飛行も可能となるが、その際の全員で般若心経を唱える中を飛行するザ・ムーンの姿は本作の語り種の一つとなっている。

■巨大オランウータン
“未来”の配下の科学者が三十億をかけて作り上げた巨大サイボーグ。
フルムーンアタックで粉砕される。

■ファーブル
春秋伯爵が建造していた巨大ロボット
ケツだけ星人と形容される。
ザ・ムーンよりは小型だが、飛行能力を利用した起動力が持ち味で、起動していないザ・ムーンの腕をもぎ取るも、起動された後は敵では無かった。
実は量産型で、一度はザ・ムーンを拉致するが、二度目の戦いでは複数で挑んだのにザ・ムーンに一撃で粉砕された。

■黒龍号
木の国屋がケンネル星人より譲り受けた、UFO型の頭部と細かな磁石で構成されたボディを持った巨大ロボット
相変わらず起動していないザ・ムーンに挑むが、起動された後は敵では無かった。
しかし、砕かれても再び合体出来るボディと、サンスウ達の集中を途切れさせた暗殺集団の活躍もあって、ザ・ムーンにまとわりついて拉致することに成功した。







追記修正は力だ、ザ・アニヲタwiki!
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最終更新:2025年03月21日 21:21

*1 「あさま山荘事件」は72年の2月に起きている