モリのアサガオ

登録日:2013/03/05(火) 21:25:32
更新日:2024/06/17 Mon 04:20:50
所要時間:約 12 分で読めます





漫画アクションにて2004年~2007年にかけて連載されていた漫画である。
作者は郷田マモラ。連載終了後にドラマ化された。

死刑をテーマにし、死刑囚や刑務官の葛藤や心の交流を綿密かつ分かりやすく書いており、死刑とは何かについて考えられる奥が深い作品である。
拘置所を「森」に、死刑囚を「アサガオ」にたとえている。



◆ストーリー
なにわ拘置所の死刑囚舎房の刑務官として配属された及川直樹。
初めて会う死刑囚におびえながらもこの仕事をこなしてゆくことを決意。
そんな中、また一人拘置所に収容された死刑囚がいた。
名は渡瀬満。仇打ち殺人を犯して死刑となった直樹の少年時代の憧れの人物である。
彼との交流が直樹の人生を大きく変えてゆくこととなる・・・


◆登場人物

演者表記がないものは基本原作のみの登場である(東條松之助はドラマにも出演したがキャスト情報がない)。

【主要人物】

  • 及川直樹(演:伊藤淳史)
本作の主人公。1981年8月10日生まれ。なにわ拘置所処遇部門に対属された刑務官。父親が本刑務所長。
当初は死刑囚に対する恐れや偏見によって感情的になることが多かったが、話が進むにつれて少なくなる。
しかし、彼には自身が知らない出生の秘密があり…

  • 渡瀬満(演:ARATA(現:井浦新))
死刑囚の一人。1981年8月15日生まれ。直樹の憧れで、少年時代名の知れたピッチャーだったが、田尻勝男によって両親と夢を奪われ、復讐鬼となり田尻を殺害。その一年後に出頭し、裁判で有利に進めるも、突如嘘をついていたと死刑が確定。
そして死刑囚となり…

  • 沢崎麻美(演:香椎由宇)
大阪毎毎日新聞社のジャーナリスト。直樹とは大学時代の同級生。原作では途中で絶縁してしまう。

  • 及川正道(演:大杉漣)
検察庁キャリア組で直樹の父親。元拘置所長。

  • 及川佐和子(演:市毛良枝)
直樹の母親。

  • 田尻勝男(演:斎藤歩)
過去に渡瀬の両親を殺し、渡瀬の右肩の腱を切断した男。死刑が求刑されるも村雨弁護士により死刑を逃れられたが、このことが渡瀬が復讐鬼となる原因となる。
出所後、義母に金を無心しに行くも断られ、実の娘の有歌を拉致し歩いていたところを娘共々渡瀬に斬殺される。

  • 田尻達男(演:井坂俊哉)
田尻の弟で有歌の叔父。息子がいるためおそらく既婚。有歌を妹のように可愛がっていた。
兄と姪を殺害した恨みで渡瀬と小春を殺害しようとするが、渡瀬に逆に殺されそうになり「俺が死刑になるなら小春には手を出さないと誓うか」と聞かれ「俺が憎いのはお前だけだ」と思い留まる。
渡瀬の死刑確定後、交通事故に遭い死亡した。
だが兄は姪が金になると連れ去っていることを棚に上げており、兄弟そろってクズである。

  • 村雨久男(演:谷川昭一朗)
渡瀬の担当弁護人。周りからは「人権派弁護士」と呼ばれている。過去に田尻の弁護をしていた。田尻が心神喪失を訴え有期刑にし、「田尻を野放しにした自分のせいで平成の仇討ち殺人事件が起こってしまった」という自責の念から渡瀬の弁護人になるが、渡瀬に嵌められた。

  • 藤間貴子(演:相築あきこ)
喫茶店「パパゲーナ」のママ。
直樹の実母」。

【拘置所に勤める人々】

  • 若林勇三(演:塩見三省)
看守長。多くの処刑に立ち会った。時折死刑制度について考える。*1渡瀬の死刑執行後、定年退職。

  • 谷崎俊幸(演:ベンガル)
副看守長。マイホームパパ。「刑務官は死刑囚の身の回りの世話をしたり話相手になったりするサービス業」と考えている。

  • 里中和明(演:戸田昌宏)
看守部長。何かと死刑囚に対して冷たく当たる。実は付き合っていた彼女を殺された過去を持つ。

  • 後藤了(演:前川泰之)
体育会系の主任看守。死刑囚を平等に扱うことを信念としている。

  • 岡田敦史
ヒラ→主任看守。星山を及川と一緒に改心させる。

星山の処刑の際に星山が絶叫しながら死んでいったことに対して罪悪感に苛まれ、退職。ドラマではこのエピソードは後藤に受け継がれるが、退職ではなく休養という形になっている。

  • 望月加奈(演:木南晴夏)
庶務課勤務。直樹の同期。直樹に好意を持っていたが、渡瀬との仲の良さを見て付け入る隙がないと思い、別の男性と結婚した。

  • 魚住勲(演:なべおさみ)
拘置所所長。直樹の父親の友人。

【死刑確定囚】

死刑囚番号は収監された順ではないので注意。

  • 深堀圭造(演:柄本明)
死刑囚380号。なにわ拘置所の死刑囚の中でも凶悪かつ横柄な人物。昔から素行に問題がある性格だった。
人一倍生への執着心が以上に強いが、その理由とは…
若い頃の回想シーンではそっくりな息子である長男の柄本佑、もしくは次男の柄本時生にやらせればいいものを柄本明が黒い鬘を被っただけのお粗末なものであった。若いのに老け過ぎや。

  • 世古利一(演:温水洋一)
死刑囚490号。一家4人を殺害した強盗殺人犯。拘置所の中では最古参。「俺、まだ死ななくていいんだよな?」が口癖。非常に小心者で、靴音にもビビる。
死刑確定直後は荒れていたが、その後舎房では償いの気持ちから仏の貼り絵を作っている。世古は、この償いの途中で貼り絵が完成しないまま処刑されたら地獄に堕ちると恐怖心から、単純に死ぬことよりも償い切れず死ぬことに恐怖を抱いている。しかし、事あるごとに動転、貼り絵を破り、4年経っても完成していないため、深堀からは「延命措置のパフォーマンス」などと言われている*2。深堀の処刑後は深堀の仏の貼り絵を作るよう頼まれるが、未完成のまま死刑執行されることになる。
「もし死刑が無ければ、殺人鬼のまま地獄に堕ちていたと思います」と遺書に記し、処刑の呼び出しの際は怯えながらも、恐怖心に耐えて処刑場へと向かった。

  • 石峰明(演:六平直政)
死刑囚520号。作中における最初の執行囚。7人の女性を強姦・殺害し、反省はしていない。死刑確定の順番から「あと最低3年は生きられる」と思っていた(1年に一人ずつ処刑、世古→深堀→石峰 の順番らしい)が、直樹配属日の翌朝に処刑された。女性の乳房の形をしているという理由で大福が好物だが、処刑の前日に配られた際には持ってきた直樹に散々悪態をつき没収されて食べ損ねる。直樹本人は大福を取り上げたことを後悔しており、次の日にこっそり与えようとしたが、既に処刑されたことを知り、好物を最後に食べられないまま死んでいったと思い込むが、処刑の直前に振る舞われ、美味しそうに食べていたことを聞かされ安心していた。
読んでいたエロ雑誌を直樹に見せつける描写はドラマでも再現されている。テレビ東京は数年後児童ポルノ表現問題で色々困ったことになったのは有名。

  • 香西忠伸(演:中村獅童)
死刑囚150号。元不良グループのリーダーで、グループを抜けようとしたメンバー2人と通りがかりの高校生1人の3人の命を奪ったチンピラ。
死刑確定直後こそ荒れていたが、自分自身の過ちを悟り、最も心から反省している受刑者となる。自分が殺した人物の遺族に対して謝罪の手紙を書き続けている。返事は一向に来ないことは承知だったが、いざ返事が来たとき、とんでもない行動に出る。原作では後に処刑される。処刑直前は写経に勤しんでいた。

  • 星山克博(演:大倉孝二)
死刑囚780号。体重64kg。星柄の服を着ている。
無銭飲食を咎められたことに逆ギレ、食堂を経営していた倉持家の3人を殺害した(出前に行っていた倉持多恵子(演:中村ゆり)は難を逃れた)。初めはその事件について反省しないばかりか遺族までも侮辱する態度をとっていたが、親に捨てられたことから「幸せな家庭」を夢見ており、また嫉妬していた。餓死寸前のところを保護施設「竹の花園」に引き取られ、日々を送った。食堂一家の「幸せな家庭」を自らが崩壊させたことと自分の境遇とを重ね合わせ混乱して暴れながらも、落ち着きを取り戻した後に多恵子に謝罪の手紙を送った(多恵子は手紙を読んだ5日後に逝去)。舎房では趣味として木で家の模型を作っており、多恵子が亡くなった後は供養のために事件現場となった食堂の模型を製作していたが、更生した矢先に死刑執行命令発令、模型は未完成のまま処刑されることとなった。面会へ行く道ではないことから死刑執行を悟る。処刑のときは恐怖により悲鳴を上げ、看守達らに取り押さえられて死刑が執行された。執行後の遺体は納棺され、竹の花園にて荼毘に付された。

  • 笹野武(演:平田満)
死刑囚310号。刑務官のことを「先生」と呼ぶ謙虚な模範囚。
中学生の息子が同級生にいじめられ自殺した1年後、公園でいじめの加害者の中学生3人組が笹野の息子をいじめていた時のこと、自殺したことを談笑しているのを見て激昂、落ちていた木製バット(3人の持参物)を拾い、3人を撲殺し、死刑判決が下される。
殺害したことを後悔する一方、渡瀬満の影響で「仇討ちは死刑に値するほど本当に悪いことなのか?」と感じ、減刑を求めて再審請求するが、殺した生徒の両親が毎年笹野の息子の命日に墓参りしているのを知り、再審請求も取り下げた。最終話の時点ではまだ死刑執行されていない。

  • 迫仁志(演:津田寛治)
死刑囚770号。「うるさくて勉強の邪魔になった」という理由で8人の野球少年を倉庫に閉じ込め、焼き殺した。自分の行いについて反省しないどころか自慢し、2人殺した渡瀬に対して「こっちは8人も殺している」と叫ぶ。
西田夕子(演:釈由美子)と獄中結婚をしている。癌で死ぬ直前には西田に「被害者遺族に対して申し訳ないと伝えてほしい」と言い遺し病死する。ドラマでは最終話時点で死亡していない。

  • 赤石英一郎(演:石橋凌)
死刑囚970号。強盗殺人の容疑で35年間投獄されていた冤罪囚。
道端で拾ったバッグが、殺害された警察署長夫妻(夫人)のものであったことに加え、現場にあった血痕と血液型が同じB型であることから犯人であるとされ、刑事に暴行を含む取調べを継続され、虚偽の自白をしてしまい、裁判で死刑判決が下される。
小学校時代の恩師の東條松之助から「お前が人殺しなんかできるわけがない」という手紙が届き、再審請求を始めるがいずれも却下され続ける。明くる日松之助が亡くなったため絶望し、自殺も図ったが、松之助の息子・隆(演:田中実)から「父の遺志を受け継いだ」との手紙が届き、再審請求を続け無罪を勝ち取る。死刑囚にならなければ荒んだ生活を続けていたであろうが、死刑囚になったことで自分を信じてくれる人の存在や人の優しさを知ったため、「死刑囚になってよかった」と思っている。


追記・修正は死刑は必要か否についてを考えつつお願いいたします。


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最終更新:2024年06月17日 04:20

*1 被害者やその遺族のためにも死刑は必要であると思っているが、同時に自分の罪を心から反省している死刑囚を殺すのは本当に正しいかについては答えが出せないでいる。

*2 実際、ドラマでは赤石(後述)の冤罪判明による出所時に思わず「俺も冤罪なんだ」と言い、深堀から「何で冤罪なのに罪の償いしてるんだ?やっぱり延命措置じゃねえか」とツッコまれた