EQ+

EQ+ (EQプラス)


EQ+は、Bitwig StudioにおけるフラッグシップのグラフィカルなEQデバイスです。
従来のEQ-2EQ-5よりも高機能で、現代的なサウンドと優れた操作性、視覚化を兼ね備えています。


概要

EQ+は、最大8バンドの柔軟なコントロール、優れた視覚化、現代的なアルゴリズム、そしてBitwig独自のモジュレーション対応を備えています。
ミックスやマスタリング、音作りのあらゆる場面で、直感的かつ高精度なEQ処理を実現します。
主な特徴
最大8バンド対応
  • 最大8つのEQバンドを自由に追加・削除でき、細かい音作りやミックスに対応します
直感的なグラフィカル操作
  • 各バンドはドラッグ&ドロップで周波数やゲイン、Q幅(帯域幅)を直感的に調整可能
  • マウスジェスチャーでシェルフ、カット、ノッチなどのフィルタータイプも素早く切り替えられます
高精度なビジュアル・アナライザー
  • 入出力の周波数スペクトラムをリアルタイムで表示し、視覚的にサウンドの変化を確認しながら調整できます
アダプティブQ
  • ゲインの増減に応じて自動的にQ幅を調整する「アダプティブQ」機能を搭載し、より自然なサウンドメイクが可能です
バンドのソロ機能
  • 任意のバンドだけを一時的にソロ再生し、狙った帯域の聴き比べや調整が簡単に行えます
ミュージカルなコントロール
  • EQカーブ全体を半音単位で上下にシフトするなど、音楽的な操作もサポートしています
Bitwig独自のモジュレーション対応
  • LFOやエンベロープなどBitwigのモジュレーターを各パラメーターに割り当てて、ダイナミックなEQ処理も可能です
用途とメリット
  • ミキシングやマスタリング、サウンドデザインまで幅広い用途に対応
  • 視覚的なフィードバックと直感的な操作性で、初心者から上級者まで扱いやすい
  • Bitwigならではの柔軟なモジュレーション機能との組み合わせで、従来のEQを超えたクリエイティブな音作りが可能です

基本的な使い方

バンドの追加方法
バンドを追加するには、線の上をシングルクリック、または何もないところをダブルクリックします。
バンドの2つの白い丸について
バンドを追加すると2つの白い丸が表示されます。
2つある理由として、下の丸は「周波数とdB」、上の丸は「Q」を変更できることを示します。

例えば「下の丸」をつかんだ状態で「左右」に動かすと "Hz" の値が変化します。

「下の丸」を「上下」に動かすと "dB" の値が変化します。

そして「上の丸」を「上下」に動かすと "Q" の値が変化します。
(上の丸は「左右」に動かして Hz を変更できます)

ちなみに丸をつかんでのドラッグ操作はうまく「丸」の部分がつかめなかったりするので、その場合は「右下の数字」の上をドラッグ操作するのが楽です(また数値が確認できるので微調整にも向いています)
バンドタイプの変更方法
バンドタイプは「白い丸」を右クリックして選びます。

また左下のここの部分を「左クリック」して変更することも可能です。
編集画面の最大化と切り離し
いくつかのシンセと同様に、下から3つ目のアイコンをクリックすると最大化ができます。

この画面は以下の3つの方法のいずれかで閉じることができます。
  • 最大化ボタンをもう一度クリックする
  • 右上の「✘」ボタンをキリックする
  • ESCキーを押す
また右上のセパレートボタンをクリックすると、編集ウィンドウを分離できます。

このウィンドウは常に最前面に表示され、別のトラックを選んでも表示され続けます。

Factoryプリセットまとめ

Bitwig EQ+のプリセットは、 用途や対象に応じて使い分けることができます。
  1. 帯域のパス・カット/ミックス
  2. キャラクター変化/サウンドデザイン(アセント/チルト/シェルフ/モジュレーション系)
  3. ダイナミック/サイドチェイン系
  4. 楽器別スターター(キック/スネア/ボーカルなど)
  5. ノイズ除去・帯域整理(ハム/ノッチ/ローカット系)

1. 帯域のパス・カット/ミックスの整理

プリセット名 画像 概要 特徴 説明
Low Clean Out
超低域をカットするだけでなく、
他の低域も整理するプリセットです。
Low-Cutよりも広い範囲の
ローエンドをなだらかに整えます
・ボーカルやギター、シンセ
などのローエンド整理
・ミックスの透明感向上
・ローエンドのマスキング対策
ボーカルや楽器トラックで、楽曲に不要な低域成分を
まとめて整理し、ミックスの濁りやマスキングを防ぎます
低域を大胆に削りすぎず、自然なローエンドの整理が可能です
特にローエンドが不要な楽器やボーカル、パッド系などに有効です
帯域の変更マクロ
帯域を変更するマクロが用意されています
Low-Cut 8p 40 Hz
40Hz以下の超低域を、8ポール
(非常に急峻なスロープ)の
ハイパスフィルターで
カットするプリセットです
・ローエンドの不要な音の除去
・ミックス全体のクリーンアップ
・マスタリング前の下処理
ほぼすべてのトラックで不要なローエンド (サブベースや環境ノイズなど)
を除去し、ミックスの濁りや不要なエネルギーを防ぎます
急峻なカーブにより、40Hz付近より下だけをピンポイントで
カットし、それ以上の帯域はほぼ影響を受けません
キックやベース以外の楽器、ボーカル、パーカッションなど
幅広く使用可能です
Sub Low Pass
ローパス (ハイカット) フィルターで
高域を急峻にカットし、
サブ帯域(超低域)だけを
残すプリセットです
・サブベーストラックの分離
・サブ帯域のみの抽出
サブベースや808など、超低域のみを抽出したい場合に使用します。
高域成分をほぼ完全に除去し、サブ帯域だけを際立たせます
・サウンドデザインや特殊効果 サウンドデザインや特殊効果、またはサブベース専用バスの
作成などに最適です

2. 音色・キャラクター変化/サウンドデザイン

プリセット名 画像 概要 特徴・用途 説明
Ascent
1.5k〜3kHzから上の高域に
向かって徐々にブーストする
EQカーブ
明るさや音抜け
の強調
音源に明るさやエア感を加えたいとき、
ハイファイな質感や抜け感を強調したい場合に有効です
シンセやボーカル、アコースティック楽器など、
音抜けを良くしたい素材全般に使えます
高域の存在感
の強調
特殊効果として高域の存在感を極端に強調したい時にも適しています
High Tilt
3kHzを境に、高域をブーストし、
3kHz以下から低域を徐々に
カットする「チルトEQ」カーブ
ミックスでの
こもりの解消
音全体のバランスを素早く調整したいときに便利です。
例えば、ミックスがこもっている場合は高域側に傾けて明るくしたり、
逆に耳障りな高域を抑えたい場合は低域側に傾けて調整できます。
グループトラックやマスター、バス処理でもよく使われます。
サウンドデザイン用途では、極端な傾きで音色を大胆に変化させることも可能です
Bass Ascent
300Hz以下の低域に
向かって徐々に
ブーストするEQカーブ
低域をパワフル
にする
ベースやキック、シンセベースなど、
低域の重心を下げてパワフルにしたい時に有効です。
楽曲全体のローエンドに厚みや存在感を加えたい場合にも使えます
ダークさの強調 逆に高域を抑えてダークなキャラクターにしたい場合にも応用できます
Louder (Low and High Shelf)
500Hz付近をノッチで軽く抑え、
300Hz以下と800Hz以上を
シェルフでブースト
派手さの付与 音源にラウドネスや派手さ、明瞭感を加えたい時に有効です
存在感の強調 ローとハイを強調することで、ミックス内で音が埋もれにくくなり、
存在感が増します。
EDMやポップスなど、インパクト重視のジャンルで特に活躍します
Floating Bands
8バンドのEQポイントがLFO
(周期変調)
で動的にモジュレートされ、
櫛形(コーム)状のブーストが
リズミカルに周波数スペクトル上を
移動します
特殊効果 サウンドデザインや特殊効果、リズミカルな音色変化を加えたい場合に最適です
FX的な用途 パッドやシンセ、FXサウンドなど、動きのある音作りに向いています
グルーヴ感の強調 静的なEQでは得られない、時間的な変化やグルーヴ感を演出できます

3. ダイナミック/モジュレーション系

Dynamic EQ
サイドチェインで各帯域を動的に制御。ダッキングや周波数ごとのコンプレッションに。
  • タグ:クリーン、FX、MOD
SideChain from Snare
スネアのサイドチェイン入力でEQを動的制御。スネアをミックスで際立たせる用途。
  • タグ:クリーン、FX、ウェット

4. 楽器・用途別分類

プリセット名 主な用途・対象楽器 特徴・機能 タグ
Kick 1 キック 30Hz以下を大胆にカット クリーン、FX
Kick 2 キック 緩やかなEQカーブ クリーン、FX
Snare 1 スネア スネア用EQのスタータープリセット クリーン、FX
Snare 2 スネア スネア用EQのスタータープリセット クリーン、FX
Vocal EQ - Female 女性ボーカル 女性ボーカル向け明るいEQ ブライト、クリーン、FX
Vocal EQ - Lead リードボーカル リードボーカル向け明るいEQ ブライト、クリーン、FX
Vocal EQ - Male 男性ボーカル 男性ボーカル用6バンドEQ クリーン、FX
Beat Mix Shaper ビート全般 ビートや他の音の全帯域を整形 クリーン、FX

5. ノイズ・ハム除去(トラブルシューティング/クリーンアップ)

50 Hz Hum Removal
50Hz(電源ハム)を8つのノッチフィルターで除去。日本や欧州の電源ノイズ対策。
60 Hz Hum Removal
60Hz(電源ハム)を8つのノッチフィルターで除去。北米などの電源ノイズ対策。
SuperNotch 1 kHz
1kHz帯をピンポイントで完全除去。特定のノイズや不要な共振のカットに。

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最終更新:2025年05月17日 13:04