検証シリーズにおけるロシア語版は、 ロシア人1人が訳を被せたボイスオーバー版と、公式な吹き替えの二種類が存在している。 |
ここでは、「ワンマンロシア」と呼ばれている前者のボイスオーバー吹き替えを扱っている。 |
タイトルは"Бродяга Кэнсин"(ブラヂャーガケンシン:るろうに剣心)(*1)。翻訳は日本語準拠である。 |
1~24幕をЕ. Лурье氏(*2)、25~62幕をХаттори Ханзо氏、63~95幕をгнус氏が担当している。 |
今までファンによる吹き替えだと思われていた、このボイスオーバー版だが、 実際はSuzaku、Moscow City Animegroupの二社によって、販売目的で無許可制作されたものであった。(*3) |
上記が日本語基準の吹き替えなのに対して、SONY英語基準のボイスオーバー吹き替えも存在する。 しかしそちらは、公式なロシア語吹き替えにおいてカットされているシーンを埋めるために制作された ファンによる吹き替えであり、販売目的などで作られた物ではない。正しい台詞はこちらを参照。 |
ボイスオーバーとは、元の本編音声の上から声を当てるといった手法であり(*4)、 るろ剣においてはリトアニア語でお馴染みである。 上記の公式ロシア版とは真逆でまさに完全なる棒読みとなっている。 ロシア語訳が元の台詞からワンテンポ遅れて発せられることが多い。しかし先行してしまう場合もある。 そのため、同時通訳ではなく、台本等があると考えられる。 |
余談だが、皮肉にも上記台詞の"два шага"(2歩)という部分がロシア語がいかにヤバイ言語で、非ロシア語話者にとってちっとも大丈夫じゃないかを物語っている。 |
以下、ロシア語で「○つの××」という表現がいかに複雑か、非ロシア語学習者にもわかるように簡単に記す。 |
例えば、ロシア語で「5歩」と言うときどう表現するかというと、 |
①主格or対格の場合(簡単に言えば「5歩が」や「5歩を」の場合) →「歩(複数形)の5つ / five of steps」のような表現となる ②上記以外の場合(例えば「5歩の」や「5歩で」などの場合) →「5つの歩(複数形) / five steps」のような表現となる |
と、文法的な役割に応じて言い方を変えなければならない。 これだけでも面倒くさいが、5歩ではなく2~4歩の場合、訳あって上記①の「歩(複数形)」は「歩(単数形)」となる。つまり、ロシア語で「2歩」と言うとき、 |
①主格or対格の場合(簡単に言えば「2歩が」や「2歩を」の場合) →「歩(単数形)の2つ / two of step(stepsではない)」のような表現となる ②上記以外の場合(例えば「2歩の」や「2歩で」などの場合) →「2つの歩(複数形) / two steps」のような表現となる |
である。ロシア語とか訳わからんwwwHAHAHAwww |
つまり、"два шага"(2歩)というのは直訳すると「歩の2つ / two of step」となる。 しかし実はこのшага、通常は最初のаにアクセントがあるのだが(ша́га)、このような場合に限ってアクセントが後ろに移動する(шага́)という特殊ケースになっている。 |
言い回しの面倒くささに謎のアクセント移動というロシア語フルコースが、ここにつまっている。 |
公式ロシア語版では志々雄の名前が"Шишио"なのに対し、ボイスオーバー版では"Сисио"になっている模様。 |
ロシア語における日本語の「し」のキリル文字転写として、優勢なのは"Си"である。 現代ロシアにおける標準的な表記法であるポリワーノフによる表記法でも"Си"を採用している。 |
よって、日本語版を直接翻訳したボイスオーバー版では「ししお」の転写として"Сисио"となり、 一方で、Sony英語版を翻訳した公式ロシア版では英語の"Shishio"の転写として"Шишио"となったと思われる。 |
*1 ただし、下記のХаттори Ханзо氏は「ルロウニケンシン」とタイトルコールしている。
*2 実はЕ. Лурье氏による吹き替えは36幕まで存在する、しかし多くのサイトで25幕からはХаттори Ханзо氏の吹き替えたバージョンに差し替えられており、検証シリーズなどでもそちらが主に使われている。
*3 1~36幕がSuzakuによって制作。63~95幕がMoscow City Animegroupによって制作された。Хаттори Ханзо氏担当の25~62幕に関しては詳細不明である。
*4 このような映像作品の吹き替え形式は、旧ソ連構成国やポーランド、ブルガリア等の旧共産主義国では一般的なものであるという。