村の入り口まで引き返して来た黒乃の率直な感想は
「何がどうなってるのかわからないけど、あの3人だけでどうにかてきてそうだなぁ」
だった。
少し肩で息をしながら、見張り台の足元で、魔物が焼き払われる様を俯瞰すると、形容しがたい感情が胸を灼いていく気がした。
遊星のように浮遊するカードとリンクして、感覚を研ぎ澄ます。
まだ、しばらくは大丈夫そうだ。
黒乃は一人決心すると、高台の上を見上げ、
「見張りさーん!何か!使っていい武器とかありませんかー!?」
と声を張った。
するとすぐさま見張り台の上から見張り番が顔を覗かせる。
「見張り台の足組のとこにあるやつ使ってええでよぉ!ってか嬢ちゃん戦えるんかいー!?」
黒乃は見張り台の足組をぐるりと回りながら、
「わからない!けど、何もしないでいたくないんですー!!」
と応えた。
「そうかぁー!ケガせんようになぁーー!」
降ってくる声援を聞きながら足組を半周したところで、木枠に立て掛けてある数本の武器を見つけた。
迷わずその中から、最も長いものを手に取る。
それは槍だった。その柄は胡桃やトネリコのようにしなやかで頑丈な木材で、穂と石突きは鉄のような金属で拵えられた、量産ではあろうが丁寧な造りの長槍。幾度か使われたようであるが、その度に丁寧な手入れがなされたような印象を受ける。
握った感触は、よく手に馴染み、扱いやすそうだ。
「⋯⋯なんじゃありゃぁ?」
見張り番の疑問が、黒乃の耳にも届いた。
黒乃は即座に見張り台の前に出ると、 見張りの視線の先へ、視覚を魔力で補強しながら目を凝らす。
空の彼方に、こちらへ飛来する“何か”が映った。
黒乃にはそれが、たくさんの、否、おびただしい数の、
矢 に見えた。
最終更新:2019年02月02日 20:50