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珠月 #20

 
“傍観者”である2人は、自らの信念に基づき、傍観を継続する。
目の前で教師生徒問わず皆全てが昏倒しようと、そのうち数名が光に消えようと、傍観を継続する。
その次元で起こった騒動に対し、自分たちは可能な限り正義を全うすることはしないし、また悪となって正義を求めるようなこともしない。
ただその次元の正義と悪とが衝突する様を傍観し、陳腐な結果に終わりそうなら一石を投じる。そして再び傍観する。
それが彼らの信念だった。
故に、彼らは“特等席で傍観すること”に対しては労を惜しまなかった。
「使い魔、霧散しました。土壌への浸透を確認。地脈へアクセスしようとしてます。何か呑ませますか?」
少女が問う。
「ぃゃ、特に干渉しなくていい。おおかた木偶の類だろう。ふむ、やはりさっきのは召喚陣だ。扉にしなかったのは技術的な問題か、不特定多数を巻き込むことをリスクと計上したのかはわからんが、高位の魔術師、否、ここでは魔法使いと呼ぶべきか。⋯⋯目的が見えんな。」
男が答えた。
目を合わせることもなく、同じように校庭を見つめたまま会話する2人の前には、大型のクーラーボックス。そして並々の氷水、及び浮かぶペットボトル飲料水、お茶、コーラ、スポーツ飲料、etc.etc...。
加えて1枚の貼り紙。
  『1本 100円  後日精算可』
白髪の若い男は無言でクーラーボックスに蓋をすると、その蓋に指を這わせ、魔力で2つの刻印を転写した。
それは『封』と『軽量化』のまじないだった。
特に言葉を交わさずともクーラーボックスの両端に分かれた男と少女は、大型のそれを片手でスッと持ち上げ、校舎の陰まで運んだ。
男は思う。恐らく、もう間もなくこの校庭は安全ではなくなる。干渉する気は無いが、商品が傷物になるのは御免被りたい。
篠崎君とその他2名を転移させたのは「転移先で確実に処理するため」か「この場の戦力を確実に削ぐため」のどちらかだろう。あるいはどちらもかもしれない。破壊系の魔術で、例えばあのテロのように爆発で仕掛けてこなかったのは、それで戦力を削れない可能性が残るのを考慮したためと考えれば、「この場の戦力を削ぐ」ことが本命ではないだろうか。
それは即ち、この場に向けて何かしらの制圧行為が行われることを意味する。
「⋯⋯来るか。ノエル、警戒『中』で待機。」
「はい。シュネさま。」
直後、唸るような地響きが辺りに響く。
2人の視線の先で、校庭の地面が不自然に盛り上がりはじめる。
逃げ惑う生徒や教師がパニックになり、悲鳴が上がる。
それでも2人は、ただただ傍観する。
盛り上がった地面は次第に形が作られ、校庭の土を自らの身体としてクレーターの中心で立ち上がる、5mを越える高さの巨大なゴーレムとなった。
「ただの泥人形だが、なかなか立派な出来じゃないか。⋯⋯さぁ、首謀者の意図が浮き彫りになるぞ。」
白髪の男は、何かを期待するように、笑みを浮かべていた。







 

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最終更新:2019年02月02日 20:53
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