「ノストラダムス『予言集』の成立過程と史的展開」は、当「大事典」管理者による博士論文。
当「大事典」の管理者は、放送大学大学院の博士後期課程(人文学プログラム)で所定の単位を修得し、この学位請求論文の審査および最終試験に合格したことで、2026年3月20日に博士(学術)の学位を授与された。
ノストラダムスを主題とする博士論文は、本国フランスをはじめ、アメリカ、スウェーデンなどで過去に発表されたことがある。だが、日本国内の大学院で(あるいは「日本語で」「日本人によって」)書かれ、受理された博士論文は、これが初である。
【画像】提出用の革装版(右)、ペーパーバックの私家版(左)
構成
最終試験(口頭試問)で指摘された点の一部について加筆修正が施され、最終的に大学へ提出された論文は、4部構成、全15章となっている(A4判、403ページ)。
目次と概要
- 序論
- 第1部 ノストラダムス『予言集』の背景
- 第1章 ノストラダムスの前半生
- 第2章 ノストラダムスの後半生
- この章では、予言者としての様々なエピソードを検証している。
- 第3章 ノストラダムスの著作群
- 第2部 ノストラダムス『予言集』の成立過程
- 第4章 『予言集』初期版本に関する文献学的諸問題
- 第5章 『予言集』第二部の正当性―1558年版の実在性を巡って
- 第5章補論 1556年アヴィニョン版について
- 第5章では1668年アムステルダム版などに記載された「1556年アヴィニョン版と1558年リヨン版」のうち、後者しか検証していなかったことを補うために、長らく所在不明だった1611年ルーアン版なども活用しつつ、「1556年アヴィニョン版」の実態を検証している。
- 第6章 『予言集』ブノワ・リゴー版の異本ごとの信頼性について
- 第7章 『予言集』の拡張の歴史
- 第3部 ノストラダムス『予言集』の史的展開
- 第8章 世界史的諸事件とノストラダムス伝説の形成
- この章では、第二次世界大戦以前のノストラダムスの予言の受容史を扱っている。
- 第9章 戦後日本などにおけるノストラダムスの受容と特異性
- 『昭和・平成オカルト研究読本』所収の論考の再録だが、論文の流れを踏まえ、この章としての中心テーマを調整し、分量をほぼ2倍に膨らませている。
- 第10章 いわゆる「恐怖の大王」の解釈史
- 第11章 「恐怖の大王」か、「世話役たる大王」か
- 第4部 ノストラダムス『予言集』の世界像
- 第12章 『予言集』などに見るノストラダムスの年代観
- 第13章 『予言集』に登場する地名の特色について
- 第14章 『予言集』の文学的位置と評価の歴史
- 16世紀から20世紀までのフランス文学において、ノストラダムスがどのように受け止められていたのかを扱っている。
- 第15章 『予言集』を我々はどう受け止めるべきか
- 前章までの考察を総まとめしつつ、『予言集』の現代的意義に関する仮説を提示している。
- 結論
- 付録
- 略年表
- ノストラダムスの生涯および同時代のフランス等の主要事件をまとめた9ページの年表。最終試験における「導入部分にはより一般的な見地に立った概観的な紹介があったほうがよいのではないか」という指摘を踏まえつつも、最終的な締切との時間的制約から、概説の最低限の代替策として付加したものである。
- 本稿で参照した『予言集』の版と略号
- この論文の第2部は、「本論文において最もめざましい成果と見なすことのできる部分であり、審査員一同の高い評価を得た」との、著者から見て非常に喜ばしい評価を最終試験で得た。その第2部を支えるのがこの付録であり、初版以降、100版近い『予言集』の書誌データと寸評を、40ページ以上にわたって掲載している。
- 参考文献
- 謝辞
主査・副査
この学位請求論文の審査と最終試験(口頭試問)を担当した主査・副査は、以下4人の専門家である。
- 主査
- 野崎 歓 放送大学教授・東京大学名誉教授(フランス文学、翻訳論、映画論)
- 副査
- 河原 温 放送大学特任教授・東京都立大学名誉教授(西洋中世・ルネサンス史、都市社会史)
- 原 武史 放送大学客員教授・明治学院大学名誉教授(政治学、政治思想)
- 宮下 志朗 放送大学名誉教授・東京大学名誉教授(フランス文学、書物の社会史)
肩書は最終試験時点でのもの。
併記した研究分野は、最終試験時点までに刊行された放送大学印刷教材に掲載された経歴に基づく。
この論文はノストラダムスの歴史的な実態を確認し、『予言集』をフランス文学の作品として正当に位置づけ、文献学的な観点からも分析し、さらには日本での受容などについても再考した上で、『予言集』の現代的意義を提示しようとするものである。そうした多角的な分析の審査と最終試験にあたり、各分野での一流の専門家に担当していただけたことは、この論文にとって実に幸運なことであったと言える。
【画像】 異文化との出会い(放送大学大学院印刷教材)
評価
そこにおいては、「ノストラダムスの『予言集』に対しいたずらに懐疑論的・否定的な態度で臨むのでなければ、もちろん信奉者として読むのでもなく、学術的なアプローチが必要とする客観性を失わずに精緻な論考を組み上げている」等の評価が記されている。
むろん、課題とすべき点も複数提示されており、当然それらの点のうち、最終版の提出までに解消できなかった点については、今後の研究においても真摯に向き合うことが求められる。
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最終更新:2026年06月15日 19:39