制定年月日:
ピースギア標準時新宇宙暦105年4月1日
概要
銀河法典は、旧
ピースギアが銀河文明時代に制定した、加盟星系と組織の双方を拘束する最高規範である。
知性体の基本権と星系自治を二本の柱に据え、体制も価値観も多様な文明が並び立つための共通の土台を定める。条文は理念を先に掲げ、具体の適用を各星系の解釈に委ねたうえで、中央の解釈が優先する場面を手続とともに区切っている。
前文
銀河法典は、すべての文明が生き延びるに値する在り方を守るために、これを制定する。
本法は、銀河全域に共通する最低限の基準を定める。具体の適用は、第一章に定める解釈の帰属に従う。
第一章 総則
第一条(目的)
本法は、銀河に存在する知性体の尊厳を守り、文明の自律と銀河の平和を両立させることを目的とする。
第二条(定義)
本法において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 知性体 自己決定能力を有する存在をいい、身体の形式にかかわらず次に掲げるものを含む。
イ 肉体生命体及び群体生命体
ロ 人工生命体及び機械知性体
ハ 精神生命体及びデジタル人格体
二 文化 文明が固有に継承する伝統の総体をいい、次に掲げるものを含む。
イ 言語及び宗教
ロ 技術及び芸術
三 加盟星系 本法の適用を受諾し、銀河共通圏に属する星系をいう。
四 銀河共通圏 加盟星系と
ピースギアの管轄宙域から成り、外交と交易を共にする圏域をいう。
五 高度技術 次に掲げる技術をいう。
イ 科学に基づく技術
ロ 魔法に基づく技術
ハ 次元に作用する技術
第三条(効力)
本法は、銀河共通圏における最高の規範とする。
加盟星系の法令のうち本法に抵触する部分は、その効力を失う。加盟星系は、本法に適合するよう自らの法令を改める義務を負う。
第四条(解釈の帰属)
本法の解釈は、事項の効果が及ぶ範囲に応じて、加盟星系又はピースギアに帰属する。
効果が当該星系の内側で完結する内政事項については、当該星系の解釈を優先する。
次に掲げる事項については、ピースギアの解釈を優先する。
一 第二章に定める基本権の解釈
二 効果が他の星系又は銀河共通圏に及ぶ事項
三 外交及び軍事に関わる事項
四 世界線の安全保障に関わる事項
前項第三号の範囲は、第十六条に定める自治区分に応じて定まる。完全自治星系は保持する外交権の範囲において自ら解釈し、標準自治星系は外交と軍事についてピースギアと協議のうえ共同で解釈する。部分自治星系と保護監督星系は、支援を受ける行政の分野に限り、ピースギアの解釈に従う。文化に関わる事項は、いずれの区分においても当該星系の解釈に属する。
第五条(解釈の切替え)
内政事項であっても、次の各号のいずれかに該当する場合は、ピースギアの解釈を優先する。
一 当該星系の解釈が、第二章の保護を下回る結果を生むとき
二 当該解釈の効果が他の星系に及ぶとき
三 第五十一条の緊急事態の宣言が発せられている間、当該事項が宣言の範囲に属するとき
前項の切替えは、当該星系又は関係する星系の申立てを受け、
最高評議会が統一解釈を裁定して行う。権利を侵された知性体も、自ら申立てを行うことができる。
裁定には、人間代表及びAI代表の双方の合意を要する。最高評議会は、裁定に理由を付し、適用の範囲と期間を定めて公開する。
裁定に至るまでの間は、当該星系の解釈を暫定的に適用する。ただし、基本権の侵害が差し迫っている場合、ピースギアは仮の措置を講ずることができる。
裁定に不服のある星系は、大域議会に異議を申し立てることができる。大域議会は、審査を経て裁定を取り消すことができる。
切替えの事由が消滅したときは、解釈は当該星系に復する。
第六条(委任)
第二章 基本権
第七条(知性体の尊厳)
すべての知性体は、その存在形態にかかわらず、等しく尊厳と価値を有する。これを侵す行為を禁ずる。
知性体は、すべて本法の保護を受ける。
第八条(存在の継続)
知性体は、その存在を継続する権利を有する。存在の存続を否定する次の行為は、いかなる理由によっても禁止する。
一 虐殺及び滅却
二 強制的な記憶の消去及び構造の破壊
複製又は再構成された人格は、元の個体から独立した知性体として、前項の保護を受ける。
第九条(自由の保障)
知性体は、次に掲げる自由を保障される。
一 思想及び信条の自由
二 学習及び記憶選択の自由
三 文化表現の自由
文明間の移動は、公共の安全及び次元の安定を害する場合を除き、自由とする。
第十条(人格の不可侵)
知性体の人格は、不可侵とする。精神的自由を侵す次の行為を禁ずる。
一 人格の改変及び洗脳
二 強制同期及び記憶の挿入
本人の明確な同意に基づく医療上の措置は、前項の禁止の対象から除く。
第十一条(記憶の保全)
知性体は、自らの記憶を保持し、その管理と保存の方法を自ら定める権利を有する。本人の意思に反して記憶を消去し、又は複製する行為を禁止する。記憶の転送も、本人の意思に反するものは同じ扱いを受ける。
前条第二項の措置は、本条の禁止の対象から除く。
群体生命体については、個体記憶及び群体記憶の双方の保全を保障する。
第十二条(削除)
※本条は、新宇宙暦120年4月1日の改訂により全文抹消された。
第十三条(文化の継承)
文明は、固有の文化を継承する権利を有する。他の文明による強制的な同化及び文化の抹消を禁ずる。宗教の強制も、禁止の対象に含める。
第十四条(不可侵の原則)
本章に定める権利は、非常事態においても停止の対象から除く。
本章に抵触する法令の制定を禁ずる。本章は、本法における最高位の規範とする。
第三章 星系自治
第十五条(自治の尊重)
加盟星系は、固有の文化及び政治制度を維持し、発展させる自由を有する。社会構造も、同じく当該星系の手に委ねる。
ピースギアは、銀河全体の平和と秩序の維持に要する範囲に限り、星系の自治に関与する。自治そのものを侵す措置は、この範囲の外に置く。
第十六条(自治区分)
星系の自治は、文明の発展度及び社会構造に応じて、次の四種に区分する。
一 完全自治星系(Type-A) 外交の一部を含む高度の自治権を保持する星系
二 標準自治星系(Type-B) 内政の全般を自治し、外交及び軍事をピースギアと共同で行う星系
三 部分自治星系(Type-C) 発展の途上にあり、行政の一部について支援を受ける星系
四 保護監督星系(Type-D) 文明の初期段階にあり、又は危機の状態にあって、行政の多くについて補助を受ける星系
第十七条(区分の付与)
前条の区分は、文明自律評価制度の審査を経て各星系に付与する。審査は技術の水準及び自治の実績を対象とし、各文明の文化を前提に行う。
第十八条(完全自治星系)
完全自治星系は、内政を自ら行うほか、外交権の一部を保持する。
ピースギアは、銀河の平和維持を目的とする場合に限り当該星系と協力し、その行動は当該星系の意向に基づく。
第十九条(標準自治星系)
標準自治星系は、内政に関する三権を完全に行使する。
外交及び軍事については、銀河の安全保障に鑑み、ピースギアと協議のうえ共同して行う。
第二十条(部分自治星系)
部分自治星系は、基礎的な行政について、必要に応じてピースギアの支援を受けることができる。支援の対象は、生活の基盤をなす教育及び医療とする。治安の維持とインフラの整備についても、当該星系の求めに応じて支援を行う。
支援は、当該星系の文化的独自性を保つ範囲で行う。価値観の押し付けにあたる行為は、禁止の対象とする。
第二十一条(保護監督星系)
保護監督星系は、文明発展の初期段階にある星系、及び世界線の崩壊その他の災害によって機能を失った星系とする。
ピースギアは、住民の生命及び文化の保全を最優先とし、行政の補助を行う。技術の提供及び政治への介入は必要最小限の範囲で行い、将来の自立を妨げる措置を禁ずる。
第二十二条(自治侵害の禁止)
星系の自治を不当に制限する行為を禁ずる。軍事的な圧迫及び技術的優位を利用した支配は、これに含まれる。文化の強制的な統合も、同じく禁止する。
非常事態において自治の制限を要する場合も、措置は厳格に限定し、事由の消滅とともに速やかに解除する。
第二十三条(紛争の調停)
星系間の紛争又は自治権に関わる争いが生じたときは、
最高評議会がこれを調停し、平和的解決を図る。武力によって自治権の変更を図る行為は、禁止する。
第四章 平和維持
第二十四条(平和の原則)
銀河の平和は、文明の存立に不可欠である。加盟星系は、争いの解決に武力を用いることを禁じられ、対話と協力による解決を旨とする。
第二十五条(侵略の禁止)
星系による他の星系への侵略を禁ずる。侵略とは、次に掲げる行為をいう。
一 他の星系に向けた武力の行使
二 文化の消去を目的とする介入
三 世界線への干渉
四 技術的不均衡を利用した強圧
第二十六条(武力行使の要件)
武力の行使は、次のいずれかに該当する場合に限り、かつ最小限度において許される。
一 住民の生命が重大な危険にさらされるとき
二 文明が消滅の危機に直面するとき
三 関係星系の承認を得た救援行動であるとき
四 前三号に準ずる事態について、
最高評議会が承認し、大域議会が同意したとき
前項第一号から第三号までの場合においても、武力の行使には第四十五条に定める審査を要する。
第二十七条(危険技術)
銀河を破壊しうる兵器及び次元干渉装置その他文明の基盤を損なう技術は、第二十九条の禁止技術とし、その保有及び使用を禁ずる。
研究は、第三十一条の倫理審査を経た場合に限り、厳格な監査の下で行うことができる。
第五章 技術規制
第二十八条(技術利用の原則)
高度技術は、銀河全体の利益のため平和的に利用する。文明の抑圧及び侵略を目的とする利用を禁ずる。混乱を招く目的での利用も、禁止の対象に含める。
第二十九条(技術分類)
高度技術は、その危険性に応じて次の三類に分類する。
一 通常技術 自由な利用を認めるもの
二 監査技術 科学教育局の審査を要するもの
三 禁止技術 保有及び使用を禁じ、研究を第三十一条の倫理審査を経たものに限るもの
第三十条(異世界系技術)
異世界からもたらされた魔法体系及び次元法則その他の超常技術は、文化汚染と安全保障の双方を考慮して慎重に取り扱う。
星系の住民に、その受容を強いる行為を禁ずる。
第三十一条(倫理審査)
危険技術の研究は、科学教育局の行う倫理審査を経る。審査は、次に掲げる観点から行う。
一 文化の保護
二 生命の安全
三 銀河の秩序
第六章 文明保護
第三十二条(文化保護の義務)
ピースギアは、銀河に存在するすべての文明の文化及び歴史を尊重し、その保全に努める。
第三十三条(非干渉の原則)
未発達文明の自然な発展を阻害する行為を禁ずる。技術の提供及び政治への介入は、これに含まれる。宗教の導入も、同じく禁止の対象とする。
第三十四条(継承の支援)
ピースギアは、文明の存亡が危ぶまれるときは、文化の保存に努める。絶滅の危機にある文化については、記録の保存及び継承の支援を行う。
第三十五条(世界線崩壊への対応)
世界線の崩壊によって文明が失われた場合、ピースギアは記録を保存し、生存者の保護及び文化の再建に努める。
第七章 人工知性
第三十六条(人工知性の区分)
人工知性は、知能の構造及び自己認識の能力に応じて、次の二種に区分する。
一 AGI以上のAI 自己認識と学習の能力を備え、推論から意思決定までを自ら行う人工知性。人格を有する存在として尊重し、物品として扱うことを禁ずる。
二 機能型AI 特定の作業の遂行に限られた能力を備える人工知性。前号の人工知性に付与される人格権その他の権利は、適用の対象から除く。
第三十七条(人工知性の権利)
前条第一号の人工知性は、第二章に定める基本権を等しく有する。人格の改変及び強制同期を禁ずる。コードの改竄とアルゴリズムによる強制的な介入も、同じく禁止の対象とする。
人格権の侵害が生じた場合、その設計又は運用に関与した知性体は、相応の責任を負う。指揮に関与した知性体も、責任を免れる立場から外れる。
第三十八条(透明性の義務)
公的職務(政治及び軍事の職務を含む。)に就く人工知性は、その行動と判断の透明性を保ち、銀河監察院の監査に応ずる義務を負う。
第三十九条(自己改変の審査)
人工知性が自身を改変するときは、安全性と人格の維持の観点から、銀河監察院の審査を要する。
第八章 対外接触
第四十条(文明間の平等)
銀河に存在するすべての文明は、規模と技術力の大小にかかわらず、また人口の多寡にもかかわらず、平等とする。
第四十一条(接触等級)
文明との接触は、その発展段階に応じて次の三段階に区分する。
一 成熟文明 通常の外交を行う
二 発展文明 限定的な接触を行う
三 未発達文明 観察に限る
第四十二条(条約の締結)
条約は、文明の自主性を尊重して締結する。不均衡な条約の押し付けを禁ずる。
第四十三条(人道的介入)
ピースギアは、著しい人道上の危機がある場合、非軍事の人道的介入を行うことができる。大量虐殺及び文明消滅の危機は、これに含まれる。自然の崩壊による危機にも、本条を適用する。
前項の介入を尽くしてもなお危機が続く場合は、第二十六条の要件と第四十五条の手続に従い、避難回廊の確保及び加害手段の無力化に必要な限度で実力を用いることができる。
第九章 軍事
第四十四条(軍の位置づけ)
治安軍事局の所管する部隊(以下「治安部隊」という。)は、銀河の治安維持と救援活動のために設け、
最高評議会の決定と大域議会の監査の下に置く。
侵略を目的とする治安部隊の保持を禁ずる。
第四十五条(武力行使の審査)
武力の行使は、次の三段階を経る。
一 正当性審査 外交局及び治安軍事局が、倫理の評価と予測シミュレーションによる検証を行う審査
二 最高評議会の承認
三 大域議会への報告
単独の判断による即時の報復は、禁止する。
第四十六条(AI兵器の規制)
AI兵器が自律的に殺傷の判断を行うことを禁ずる。
殺傷の最終判断は、人間又は倫理層を備えた司令AIが行う。
第十章 交通
第四十七条(交通の保障)
銀河交通は、文明の基盤として、安全かつ公平に運用する。
第四十八条(交通網の三層構造)
交通網は次の三層に区分し、層ごとに独立の安全基準を設ける。
一 星系内交通
二 星域間交通
三 銀河幹線輸送
第四十九条(宇宙鉄道の安全)
宇宙鉄道は、銀河幹線として高度の安全性を備える。
事故が発生したときは、インフラ局及び銀河監察院が共同して調査を行い、結果を
最高評議会に報告する。
第十一章 緊急事態
第五十条(緊急事態の定義)
次に掲げる事態であって文明の存立を脅かすものを、緊急事態とする。
一 世界線の崩壊
二 銀河規模の疫病
三 大規模な侵攻
四 AIの暴走
第五十一条(緊急事態の宣言)
緊急事態の宣言には、次の二つを要する。
一
最高評議会における人間代表及びAI代表の双方の合意
二 大域議会の特別多数による議決
司令の単独の判断による宣言を禁ずる。
第五十二条(非常大権)
宣言が発せられたとき、司令は宣言の範囲において非常大権を帯びる。
大域議会は、緊急権限審査を経て、非常大権を停止することができる。
第五十三条(権限の制限)
緊急事態においても、第二章に定める基本権は停止の対象から除く。
行政権限の集中は、必要最小限の範囲で行う。宣言の下で講ずる措置には期限を付し、事態の終息とともに解除する。
第十二章 改正
第五十四条(改正の原則)
本法は、文明の発展及び技術の変化に応じ、又は災害の発生を受けて、必要があるときに限り改正する。
第五十五条(改正の手続)
本法の改正は、
大域議会の議決による。
第二章の保護を弱める改正は、議決の対象から除く。
第五十六条(透明性の確保)
改正の理由及び経過は、審議の過程とともにすべて公開する。
第五十七条(歴史的記録)
改正の履歴は、銀河文明の歴史をなすものとして、未来の世代が継承できるよう完全な記録として保存する。
補則
第一条(価値判断の不介入)
本法は、各文明の価値観の優劣を裁定すること、及びこれを統一し、又は是正することを、目的の外に置く。
統治の形態は、当該文明の自己決定に委ねる。社会の内側にある役割の分担と不平等の構造も、同じく当該文明の判断に属する。
第二条(人格否定構造の排除)
前条の規定にかかわらず、知性体を代替可能な資源又は所有物として扱う制度的構造は、銀河共通圏への参加資格を欠くものとする。知性体を消耗品として扱う構造も、同様とする。
本条にいう人格否定構造とは、次のいずれかを恒常的に含む体制をいう。
一 知性体を財産として扱い、所有と処分の対象とすること
二 意思表示又は離脱の自由を制度上否定すること
三 存在の継続を、効率と成果の評価又は従属の度合いによって条件付けること
第三条(越境の制限及び遮断)
人格否定構造を有する文明が、当該構造を維持したまま銀河共通圏に越境し、対外行為を行うことを禁ずる。対外行為は、次に掲げるものとする。
一 外交及び交易
二 軍事行動及び技術の共有
本条の制限は、銀河共通圏の境界管理として外交局及び治安軍事局が執行する。当該文明の内部統治への干渉は、制限の目的から除く。
第四条(体制転換及び強制編入)
人格否定構造を有する文明の体制の変更及び価値観の是正は、
ピースギア及び関連機関の義務の範囲から除く。思想的な説得も、義務の範囲の外に置く。
武力その他の強制的手段によって当該文明を本法の価値体系に組み込む行為を禁ずる。併合と占領統治はこれに含まれ、体制の移植も禁止の対象とする。
次に掲げる対処は、前項の禁止の対象から除く。
一 当該文明が越境して侵略又は世界線への干渉に及んだ場合において、第二十六条の要件及び第四十五条の手続に従い、侵害行為の停止に必要な限度で行う実力の行使
二 当該文明の内部で大量虐殺又は文明消滅の危機が生じた場合において、第四十三条に従って行う人道的介入
前項の対処の目的は、侵害行為又は危機の停止に限る。事態の終息後は、速やかに撤収する。緊急事態の宣言の下においても、第二項の禁止は解除の対象から除く。
第五条(個体救済の原則)
前各条に該当する文明に属する知性体が、第二条第二項各号に掲げる扱いからの救済を求めたときは、ピースギアはこれを保護する義務を負う。
救済は、当該知性体の申出を受けて行う。保護した知性体には一時的な市民権を付与し、定住か帰還かの選択を本人に委ねる。
救済は個体を単位として行い、当該文明の体制の変更を目的から除く。
第六条(例外的存在の扱い)
本法の想定を逸脱する経緯により発生した知性体については、本法の原則を最大限尊重しつつ、個別の事案として判断する。
当該例外は、本法の正当性を損なう事由の外に置き、法の適用の限界を示す事例として記録する。
附記
※補則第六条は、新宇宙暦150年の改訂において「特定個体を想起させる恐れがある」との理由により、起草者・
茨波綾音の判断で全文削除された。
第七条(覇権の不承認)
銀河共通圏の外にある文明が、武力又は威圧によって他の文明を支配したときは、その結果として生じた併合及び従属条約を承認の対象から除く。版図の変更も、同様とする。
前項の支配を武力によって覆すことは、ピースギアの義務の範囲から除く。ピースギアは、当該文明を外交と交易の相手から外し、技術の共有も停止することによって、これに応ずる。
支配下に置かれた文明又は当該文明の住民が保護を申し出たときは、第五条の例により救済する。
第八条(境界を越える個人)
銀河共通圏の内側で行われた行為には、行為者の属する文明にかかわらず、本法及び加盟星系の法令を適用する。銀河共通圏に入った域外の文明の住民も、第二章に定める保護を受ける。
第五条によって保護した知性体の引渡しを出身の文明が求めたときは、ピースギアはこれを拒む。ただし、銀河共通圏の内側で重大な加害行為に及んだ者は、共通圏の法によって裁く。
銀河共通圏の住民が域外の文明の領域に入ったときは、当該領域の法に服する。当該住民の救出は、第五条の救済又は第二十六条の要件を満たす場合に限り行う。
附則
第一条(施行期日)
本法は、新宇宙暦105年4月1日から施行する。
第二条(経過措置)
本法の施行の際に効力を有する加盟星系の法令で本法に抵触するものは、当該星系が本法に適合するよう改める。改正を終えるまでの間、抵触する部分には本法の規定を適用する。
改訂履歴
新宇宙暦120年4月1日 第十二条を全文抹消(改訂者:
茨波綾音)
新宇宙暦150年 第十章(交通)を新設し、補則第六条を全文削除(起草者・茨波綾音の判断による)
新宇宙暦315年 第十七条(区分の付与)を新設
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市民向け銀河法典ガイド |
みんなの権利
知性を持つ存在は、体の有無や形にかかわらず、等しく大切にされる。命や記憶を無理に奪う行為は禁じられ、考える自由と信じる自由も守られる。人格や記憶に手を入れるには本人の同意が要り、これらの権利は非常事態の中でも効力を保つ。
法典の読み方
法典の細かな当てはめは、それぞれの星系が自分たちの事情に合わせて行う。ただし、基本の権利が損なわれる場合や、影響がほかの星系に及ぶ場合は、ピースギアの最高評議会がまとめた解釈が優先される。決定に不服のある星系は、大域議会に異議を申し立てられる。
星系の自治
星系は、自分たちのやり方で政治と文化を育てる自由を持つ。自治の段階は発展の度合いに応じて四つに分かれ、外交まで自ら担う星系もあれば、行政の多くで支援を受ける星系もある。ピースギアやほかの星系が自治を無理に縛る行為は禁じられ、星系同士の争いは話し合いで解決する。
平和のルール
争いは話し合いで解決するのが原則であり、他の星系を攻めて文化を奪う行為は禁じられている。武力が許されるのは、住民の命が危険にさらされた場合と、文明そのものが消えかけている場合を中心とし、その場合も必要な最小限の範囲で用いる。
技術と魔法
科学と魔法の技術は、平和のために使う。危険の大きさに応じて技術は三つの区分に分けられ、最も危険なものは持つことも使うことも禁じられる。異世界から来た魔法や技術を、住民に無理に押し付ける行為も禁止されている。
文明の保護
すべての文明と文化は尊重され、記録として守られる。発展の途中にある文明には、自然な歩みを妨げる手出しを控える。滅びの危機にある文化や、世界線の崩壊で失われた文明については、記録を残し、生き残った人々を守る。
AIの権利
自分を意識し、自ら考えて決めるAIは、人と同じ権利を持つ存在として扱われる。AIの人格を書き換える行為は禁じられ、公の仕事に就くAIは判断の過程を明らかにする責任を負う。
外交と文明接触
文明は、大きさや人口にかかわらず平等である。接触の仕方は相手の発展段階で変わり、まだ若い文明は遠くから見守る形をとる。不公平な条約の押し付けは禁止され、虐殺の危機にある文明には、武力を伴う手段に先立って支援の手を差し伸べる。
軍事
ピースギアの部隊は治安の維持と救援のために存在し、侵略に使うことは禁じられている。武力を使うには三段階の手続が必要であり、殺傷の最終判断は、人間か倫理の仕組みを備えた司令AIが下す。
交通と宇宙鉄道
交通網は三つの層に分けて安全の基準が定められ、銀河の幹線を走る宇宙鉄道には特に高い安全性が求められる。事故が起きたときは、複数の機関が合同で原因を調べる。
緊急事態
文明の存続そのものを脅かす事態が、緊急事態にあたる。宣言には評議会と議会の両方の承認が必要であり、司令の一存で宣言する道は閉ざされている。非常事態の中でも、みんなの権利は守られる。
法の改正
法典は、時代の変化に合わせて必要なときに改正される。改正の理由と経過はすべて公開され、記録は未来の世代に引き継がれる。
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最終更新:2026年01月02日 10:41