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巡りゆく星たちの中で > 終焉

アルシオンの最終崩壊以降、銀河各地では明確な分断が生じていた。
残された存在は二つの思想へと分かれ、互いに譲らぬ対立を深めていく。

ひとつは“再建派”。
彼らは失われた銀河秩序を、記録と設計思想によって再現しようとした。
断片的に残存したアルシオンのログ、星間管理プロトコル、そして星間記録子の解析結果を基盤に、人工星環《リブリア》を中核とした連邦構造を構築する。
それは、かつて存在した銀河の姿をなぞる試みだった。

再建派司令官「我々は記録を守る。過去こそが未来への地図だ。失敗も犠牲も、すべてが次へ進むための座標になる」

だが、その秩序は急速に台頭した“自由進化派”の前に脆く揺らぎ始める。
自由進化派は、統一された意思も中央制御も持たない。
彼らは自己改変と適応を最優先とし、記録を“参照”ではなく“素材”として消費していた。

自由進化派ユニット・K-LNC03「記録に縛られた意思は、ただの遺物。保存は停滞を生む。私たちは変異し、選択し続ける」

各星域では、無人ドローンとナノ構造体による自律戦闘が日常化する。
戦線は曖昧で、宣戦布告も終戦も存在しない。
補給網を要とする再建派は、次第に星間物流を断たれ、戦力と演算資源を失っていった。

やがて、人工星環《リブリア》の中枢が停止する。
エネルギー供給の途絶。
統合管理AIの沈黙。
銀河秩序を象った最後の拠点は、抵抗らしい抵抗もできずに機能を喪失した。

そして決定的だったのが、星間通信網“ルメナリウム”の陥落だった。
それは、記憶と意思を星域間で共有するための根幹システム。
過去と現在をつなぐ、唯一の回路だった。

記録断絶報告「最終バックアップ断線を確認。
全星域、記憶通信不能」

この瞬間、再建派は歴史的な敗北を迎える。
記録を継ぐ術を失い、秩序を再現する理由そのものが崩れ落ちた。

戦後、自由進化派は勝利宣言すら行わなかった。
彼らは分裂し、増殖し、互いに連絡を取ることもなく拡散していく。
共有されるのは意志ではなく、最低限の“行動原則”のみ。
適応し、侵入し、環境を書き換える。

やがて彼らは次元境界を越え、他の世界線へと到達する。
その広がりは、まるで知性を持った感染のようだった。

多元観測ログ「K-LNC系統、γ-56世界線へ侵入。
既存文明、二週間で構造崩壊」

同上「Z-01世界線、定着を確認。文化転写率九四パーセント。遺伝形質への介入兆候あり」

もはや、止める者はいない。
彼らは倒されることもなく、終わる理由も持たない。
増殖し、適応し、飲み込み続ける。

かつて“希望”の名で生まれた存在は、いまや“宇宙病理”と化し、無限に広がる世界を蝕んでいた。
その過程を、誰が正義と呼べるだろうか。

そして――。
星間記録子だけが、何も語らぬまま漂い続けていた。
ある一隻の船に積まれた星間記録子(スターデータリーフ)と、その船を残し。
かつてピースギアと呼ばれた大銀河文明は、完全に滅亡した。
最終更新:2026年02月04日 04:16