巡りゆく星たちの中で > 終焉

アルシオンの最終崩壊以降、銀河各地では“再建派”と“自由進化派”の思想的・戦略的対立が激化していた。

再建派は残存記録を用いてかつての銀河秩序を模倣しようと試み、人工星環《リブリア》を中心に連邦構造を復元。しかしそれは、急速に台頭した自由進化派の前に脆くも崩れていく。

再建派司令官「我々は記録を守る。過去こそが未来への地図だ!」

自由進化派ユニット・K-LNC03「記録に縛られた意思は、ただの遺物。私たちは“変異”する」

各星域では、ドローンとナノ構造体による無人戦闘が常態化。再建派は次第に補給網を断たれ、リブリア中枢はついに機能を停止。

そして決定的だったのは、星間通信網“ルメナリウム”の陥落だった。

記録断絶報告「最終バックアップ断線。全星域、記憶通信不能」

この瞬間、再建派は歴史的敗北を喫した。

自由進化派は戦後も自律的に分裂・増殖を続け、意志共有を持たないまま“行動原則”だけを継承。彼らはやがて、次元境界を越え、他の世界線へと拡散を開始する。

その行動は、まるで知性を帯びた感染──

多元観測ログ「K-LNC系統、γ-56世界線へ侵入。既存文明、2週間で構造崩壊」

同上「Z-01世界線、定着完了。文化転写率:94%。遺伝形質介入兆候あり」

もはや、誰も止められなかった。

ゾンビのように増殖し、適応し、飲み込んでいく。

かつて“希望”の名で生まれた存在は、いまや“宇宙病理”と化して、無限に広がる世界を蝕み続ける。

その過程を、誰が正義と呼べようか。

そして──星間記録子だけが、まだ何も語らず、ただ流れ続けていた。ある1隻に積まれた星間記録子(スターデータリーフ)とその船を残し、かつてピースギアと呼ばれた大銀河文明は滅亡した。
最終更新:2025年06月29日 21:39