リーザ・シュベルデン - 聖華世界 @ wiki

リーザ・シュベルデン

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［解説］

聖王国における魔道の名門、シュベルデン家の次女。
シュベルデン家は高い魔道技術でその名を知られているが、一方で公的には長女と長男しか存在しないとされている。
その真相は至極簡単な話であり、次女ないし次男以降の子供達は戸籍すら与えられず、外の世界も知らぬまま例外なく凄惨な魔道実験の糧としてその一生を終えているのだ。

シュベルデン家の目的はいたってシンプルなものであり、シュベルデン家開祖からの悲願である「人智を超えた果ての魔法行使」にある。
そのために魔力臓器の増強、エーテル出力の改善といった人体改造を家督を継ぐ者以外の体で行い、その遺伝子情報を後継者に注入することで人並み外れた魔法行使を可能とする魔道士を生み出してきた。
つまるところ、人間の品種改良を飽きもせず続けてきた血と臓物と魔法に彩られた一族。それこそがシュベルデン家であった。

しかし、聖華暦800年代にさしかかり、シュベルデン家はある一つの壁にぶつかっていた。
それは即ち個人の扱える魔力量とエーテル出力の面に於いては最早頭打ちと言ってもいいほど発展してしまったのだ。
確かにシュベルデン家の扱う魔法は人並み外れた威力を誇る。
数百年の歴史に裏打ちされた魔道の叡智もある。だがそれはあくまで人並み外れた領域に過ぎない。
「人」の領域から外れはしても超えはしていない。これでは開祖の悲願を果たすことができない。
暗黒時代に編まれた神代魔法の如く今までの常識を、壁を破ることなど出来はしない。ならばどうするか。

答えは単純であった。

人の身を捨てればいい。

元来狂気に取り憑かれた一族である。
そうと決まってからの行動は早かった。
血管を、神経系を、筋繊維を、全てを魔力の通り道であり貯蔵庫とすべく既に限界まで手を加えられた赤子を3歳まで超高純度液体エーテルに
漬け込んだまま成長に必要な栄養素だけを注入し続け育てる。
そうすることで全身細胞の一つ一つに至るまで魔力が充填しきった特異体質の幼児を作り上げる。
そして、その子供が成長するに従って骨という骨に極小の簡易術式を掘り込み、彫り跡に魔墨を流し込み特殊な術式で固着させることで本人の意思一つで術式の起動を行える存在……言うなれば「生きる術式機構」を完成させた。

しかし、シュベルデン家の凄惨極まりない実験はそれでもまだ完了ではなかった。
仕上げと称し彼らはその実験体から両の眼球を摘出し、代わりとしてシュベルデン家の集大成とも言える魔道義眼を埋め込んだ。
魔道義眼とはいえ所詮は義眼、本来その実験体が持つべき視力は失われたままであったが、代償として手にしたのは個人が有するには余りに桁違いの力であった。
端的に言ってしまえば大気の魔素の流れから人体に流れるエーテル、果ては術式を構成する魔力に至るまで全てを視ることのできる眼であった。本来は「視る」だけであった。
そう、本来であれば。

だが、シュベルデンの長年に渡る魔力増強が、その骨身に刻まれた数多の術式が、大気に満ちる魔素すら自らの術式の糧とする異常なまでの魔法をその実験体に与える結果となった。
代償としてその実験体は極端に寿命を縮めることとなったがそんなことは些事である。後
はこの実験体が持つ遺伝子情報を極限まで圧縮し後継者に注入すれば次代のシュベルデンはさらなる魔道の深奥に進める。

と、考えていた。その時までは。

最早シュベルデン家の手に負える存在ではなかったのだ。
その実験体……いや、リーザ・シュベルデンという少女は。
文字通り身を切り血を吐く思いで耐えてきた地獄のような……否、地獄ですら生温い実験の数々。
その代償を支払わせるために、彼女はシュベルデン家が施した実験の成果を見せつけるかのように凄惨に、丁寧に、執拗に、丹念に、残酷に、それでいて粛々と、シュベルデン家で殺戮の限りを尽くした。
それは、己が自由を得るための生存競争であり、己に地獄を強いてきた者達への復讐であった。
その後、リーザが聖王国とどのような取り決めを行なったのか知る者はいない。
ただ一つ確かなことは現在の彼女はベイリン・グリューネワルトに忠誠を誓い、呪われた実験の果てに生まれた己の力を、誰かを守るために行使しているというそれだけの事実である。