暗黒剣技について
聖華暦833年 8月1日
僕は師匠の前で暗黒闘気を発動させていた。
師匠は手に時計を持ち、僕がいつまで暗黒闘気を出していられるかを測っている。
師匠は手に時計を持ち、僕がいつまで暗黒闘気を出していられるかを測っている。
自分ではどれくらい時間が経ったのか、わからないけど、そろそろ体力が限界だ。
「……ハァ、ハァ、もう…駄目…」
集中力が途切れた途端、暗黒闘気は風に吹かれた煙のように霧散して消えた。
「ご苦労。……ふむ、36分か。まずまず、と言ったところだな。」
「ハァ、ハァ……ふぅ。師匠、如何でした。」
暗黒闘気を身に付けるのに、通常は1年近くかかると言われている。
だけど、僕は半年ちょっとで身に付ける事が出来た。
この時の僕は、その事で少し得意になっていたのだと思う。
だけど、僕は半年ちょっとで身に付ける事が出来た。
この時の僕は、その事で少し得意になっていたのだと思う。
「二時間だな。」
「…はい?」
「最低でも二時間は持たせろ。でなければ実戦では役に立たん。」
この一言は正直ショックだった。
いや、むしろ良かったんだと思う。
まだ基礎が出来るようになっただけなのに、そんな事で増長するようでは、この先に進めなくなってしまう。
いや、むしろ良かったんだと思う。
まだ基礎が出来るようになっただけなのに、そんな事で増長するようでは、この先に進めなくなってしまう。
「どうすれば長く維持出来るようになりますか?」
気持ちを切り替え、もっと鍛えなければ。
「身体を慣れさせるしかない。今日から基礎トレーニングの間、暗黒闘気を出し続けろ。」
「はい、判りました。」
新たに一歩を踏み出す為に、元気よく返事をした。
…………しかし、その元気も長くは続かない。
暗黒闘気を出したままのトレーニングは思っていた以上にきつかった。
最初は身体が軽くなったように感じ、とても軽快にトレーニングを進めていた。
時間経過と共に体力の消費が激しくなって行き、結局、いつもの量の半分くらいしかこなせなかった。
最初は身体が軽くなったように感じ、とても軽快にトレーニングを進めていた。
時間経過と共に体力の消費が激しくなって行き、結局、いつもの量の半分くらいしかこなせなかった。
元のトレーニング量をこなせるようにならなければ、使い物にならないのか……
先はまだまだ長いなぁ。
先はまだまだ長いなぁ。
自分の未熟さを噛み締めながら、どこまでも長い道のりに苦笑してしまった。
*
そんなこんなで1ヶ月が経った。
もう9月か。
もう9月か。
………エミリさん、どうしてるだろう。
第八特戦隊駐屯基地の外周をランニングしながらそんな事を考えていた。
もちろん暗黒闘気は出したままで。
もちろん暗黒闘気は出したままで。
案外どうにかなるもので、毎日続けていたら1ヶ月で倍の一時間ちょっとは暗黒闘気を出し続けられるようになった。
この調子なら、ここでの訓練の間に二時間持たせられるようになるかもしれない。
それと今日から、暗黒剣技について教えてくれると師匠が言っていた。
ただ暗黒剣技は暗黒闘気よりも習得する事が難しく、さらに長い時間修練を重ねなければならない。
本当に先の道のりは果てしなく長く険しい。
本当に先の道のりは果てしなく長く険しい。
「さてリコス、暗黒剣技についてだが、まずは反物質を大量に生成出来る事、これが大前提となる。」
「暗黒剣技は魔眼を持たない者でもハッキリと視認出来るほど、大量の反物質を生成しなければ行使出来ない。したがって反物質の衣を身に纏う暗黒闘気の習得が必須となる。」
「師匠、暗黒闘気無しでは暗黒剣技は習得出来ないのですか?」
僕は疑問をぶつけた。
「必ずしもそうではない。だが、反物質を生成することは命を削る行為だ。大量の反物質を操るのはそれだけ危険も大きい。だから、反物質を操る前段階として暗黒闘気を習得することは危険を減らすという意味で重要な事なのだ。」
「慣らす事が必要、という事ですね。」
「そうだ。過去、自身の力量を弁えず、限界以上に反物質を生成して自滅した者も多くいる。いかに才能があろうと、身の丈に合わせなければ命の保証も出来ない行為を行なっているのだと、肝に銘じておく事だ。」
焦るなと、暗に釘を刺された。
着実に実力は付いてきている自覚はある。
でも暗黒闘気もまだ十分では無いのだから、それも当然だと思う。
着実に実力は付いてきている自覚はある。
でも暗黒闘気もまだ十分では無いのだから、それも当然だと思う。
やはりまだまだ先は長いのだ。
いつも師匠の言葉でそれを思い出す。
いつまで経っても未熟だな。
そう思って、顔には出さずに苦笑した。
いつも師匠の言葉でそれを思い出す。
いつまで経っても未熟だな。
そう思って、顔には出さずに苦笑した。
「では見ていろ。」
そう言って師匠は右手を突き出し、その掌に反物質が集まり始める。
それはみるみるうちに形を成して、一振りの黒い刃となった。
それはみるみるうちに形を成して、一振りの黒い刃となった。
まるで周囲の光を吸い込んでいるかの様に、ただひたすらに真っ黒な剣。
チリチリと感じる、それが危険なのだという感覚。
これが……『ソウルイーター』。
チリチリと感じる、それが危険なのだという感覚。
これが……『ソウルイーター』。
「よく見ておけ。これを身につけて初めて、暗黒騎士として半人前と言えるだろう。」
「それが出来て、やっと半人前……」
「ソウルイーターは暗黒剣技の全ての技の基礎だ。ソウルイーターも通過点の一つに過ぎん。」
「凄い…。」
「少なくともこれくらいは出来るようになってもらうぞ。」
「…判りました。」
僕の返事を聞くと、師匠はソウルイーターを消した。
反物質が霧散して消え失せる。
反物質が霧散して消え失せる。
「ではやってみろ。右手に刃を作るのを強くイメージするんだ。」
「はい!」
僕は目を瞑り、深呼吸をしてから右手を突き出す。
師匠がやってみせたように、右手に反物質を集め、刃を形作るのをイメージする。
師匠がやってみせたように、右手に反物質を集め、刃を形作るのをイメージする。
右手に反物質が集まる感覚がある。
それはやがて形を成し……霧散して消えた。
それはやがて形を成し……霧散して消えた。
「あ、アレ?」
「…ふむ。出たしとしては悪く無いな。もっと修練を重ねる事だ。」
やはり最初から上手くいったりはしないな。
でも、反物質が集まるのが感覚的に理解出来た事は大きいと思う。
この基地での訓練も後一か月。
帝都ニブルヘイムに帰るまでに、どうにか形に出来るように努力しよう。
でも、反物質が集まるのが感覚的に理解出来た事は大きいと思う。
この基地での訓練も後一か月。
帝都ニブルヘイムに帰るまでに、どうにか形に出来るように努力しよう。