アガベ・グサーノ
[解説]
本来テキーラの原料になるリュウゼツランは、植え付けから収穫まで7~8年かかり、また大きく茂る葉には利用価値がなかった。
旧人類はこれを改良すべくリュウゼツランの遺伝子をいじって、成長速度を速めて植え付けから収穫までわずか1年で済むようになった。
それだけでなく、葉からは高級な布の原料になる上等の繊維が取れるようにされた。
なお、この改良リュウゼツランを栽培するための労働力として作られたのがグサーノ族である。
グサーノ族のベースになったのはリュウゼツランを食草とする昆虫のうち、通称で「グサーノ・ロホ」と「グサーノ・ブランコ」と呼ばれていた二種類の蛾であった。
蛾をベースに作られたグサーノ族は食草であるリュウゼツランを食べなければ生きられないようにされており、アガベ・グサーノを栽培するだけでなく、収穫した際にどうしようもなく余る根を食べて処分する役割まで持たされたのである。
[栽培]
品種改良により1年で収穫できるようになったため、毎年4月に植え付けを行い、翌年4月に収穫する。
なお、植えた株のうち1~2株は、種を取るために残しておく。
本来のリュウゼツランは数十年に一度しか開花しないため株分けで増やされていたが、アガベ・グサーノは1年と少しで開花に至るので、聖華歴の時代では種を取って増やすのが主流である。
アガベ・グサーノの花茎が高く伸び、黄色い花が咲くころが、ちょうど蒸留を終えた出来立てのテキーラが出荷可能になる時期とされている。
[利用]
アガベ・グサーノの利用法は
葉……絹の代替になる、薄く軽く肌触りの良い高級な繊維が取れる。
茎……旧人類の時代から変わらず、テキーラとアガベシロップの原料になる。
根……グサーノ族の生存に必須の食草となる。
なお、生の根は本来収穫の時期にしか手に入らない。
そのため、グサーノ族は商品にするために栽培する以外に、自分達が食べるためのグサーノ畑を作る習慣がある。
また、居住地を離れて旅に出るときに持っていけるよう、若い茎と根を使った独特の漬物が作られている。
(他種族にとっては酷くまずい上に固すぎて食べられず、草食性の種族でもまともに消化できないため、完全にグサーノ族の内部でしか流通していない)