E.T. The Extra-Terrestrial

登録日:2012/10/04(木) 03:15:43
更新日:2021/02/08 Mon 12:44:36
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E.T. The Extra-Terrestrial(イーティー・ジ・エクストラ・テレストリアル)』とは、1982年にアタリから発売されたアタリ2800用のテレビゲームのことである。

概要

1982年にスティーブン・スピルバーグ監督が送り出した映画『E.T.』は世界的なヒットとなった。
アメリカゲーム会社アタリは、高額な契約料を支払いこの映画を原作にゲームを制作した。
しかしゲームの制作期間の短さ、杜撰なゲームばかり作っていた当時のアメリカのゲーム市場への不信感等により結果として売り上げは大失敗、大赤字となってしまった。
当時のゲームのクオリティを考えてもクソゲーと断言出来てしまうこのゲームは、今でもゲームのワースト候補を選ぶときの常連となっている。

開発から販売まで

映画のヒットを受け、ゲームの制作権を得る為、アタリは当時では破格の2000~2500万US$の契約料を支払った。
原作映画を意識したストーリー性の高いゲーム作りの構想、アーケードゲームの構想等、様々なアイデアが出されたが、それらの殆どはカットせざるを得なかった。
なぜならば、ゲームの制作権確保の為の交渉に大量の時間を使ってしまった為、完成まで6週間も残されていなかったからである (当時の平均の製作時間は5ヶ月~半年)。
このソフトはその年のクリスマスのキラータイトルだった為、何が何でも完成させなければならなかったのだ。
スタッフは、基本のデザインを2日で完成させ、その後の5週間で6.5kBのオリジナルコードを書き、デバックし文章化する作業を行った。

人気映画をゲーム化したということに自信のあったアタリは、ゲームの市場の反応を見ないで出荷することにした。
クリスマス向けのTVCMも制作し、500万本も制作された『E.T.』$50(約6000円、当時の平均は$25~$35)という値段で、ついに発売された…。

そして大敗北へ…

ゲームの内容は、ひどく単調で退屈でわけがわからない

ゲームのルールは簡単で、「6つのマップに散らばる通信機のパーツを3つ集め、その通信機によって特例の場所に現れる宇宙船に乗り込めばゲームクリア」というものである。

が、その簡単なルールを実行するのが凄まじく大変かつ理解が困難

アイテムがランダムに表示されるのはいいとして、アイテムを探すのに毎回穴に落ちなければならないのが面倒である。穴から出る時首を伸ばしながら浮遊する
穴から出たと思ったら、穴の淵に出てきてしまい、また穴に落ちるという無限ループに陥ることもある。
「FBI捜査官」はアイテムを没収するし、「科学者」はE.T.を別のマップに強制的に移動させてしまう。早く終わらせたいゲームのプレイ時間がさらに延びる。
当然のようにゲーム中でこれらの要素を説明する場面は一切ない

今では当たり前となっている概念だが、当時は「説明書を読んでアイテムを理解」しなければならないゲームは殆どなかった。
できることが限られるから必然的にシンプルなゲームに(全部ではないが)なりがちなアタリの時代ならある意味当然ではある。
だがこのゲームはそれを必要としたことも、ゲームの評価の低さに拍車をかけたのだろう。

ただし、このゲームが「ゲーム自体の面白さ」という観点で「最悪のクソゲーか」というと、それはそうではないという意見が主流である。
この時代なりに目新しさを出そうとした努力は一応買えるし、当時はこのレベルを下回る作品も少なくはなかった。
「ゲーム史上最大のクソゲー」などの肩書きをつけられることも多いが、それは「売れた数が多い故に最も被害と影響が大きかった」という意味合いが大きく、「最もつまらないゲーム」として本作を選ぶことには異論も多い。

勿論、「クソゲーか否か」はまた別の話なので注意。

そこへ追い打ちを掛けるようにクリアの条件となるイベントが起きないバグや、ゲームデータが破損して2度とプレイできなくなるというバグ、最初から起動しないという商品以前のものすらあったという。

これでもゲームの売れ行き自体は好調であったが、500万本の内売れたのは150万本
アタリのゲームとしては8番目に売れたゲームではあるが、
高額の契約料を支払いに見合う売り上げを挙げることは叶わず、これにより発生した赤字、さらに大量の売れ残り在庫による費用、なにより後々のゲーム一場に対する信頼の喪失という商売で一番あってはならない損失を持ってしては、この称号は何の意味も持たなかった

売れなかった原因

当時のアメリカのゲーム市場は、儲けだけを重視した第三者団体が、手抜きの杜撰なゲームを数打ちゃ当たる戦法でどんどん売り出す、クソゲーばかりというひどい状況であった。
またネットはおろか、ゲーム専門誌も存在せず買ってみるまでどのようなゲームなのかわからないという、現代と比べて前情報が殆どない時代だった為、地雷を踏むのを恐れた消費者のゲーム離れが深刻化していた。


なんでこんな状況ができてしまたのかというとナムコのヒットゲーム、『パックマン』をアタリ2600に移植した際、それがあまりにも酷い出来でじも売れたことが一因。これを本格的な切っ掛けに「粗悪でも数うちゃ売れる」という考えが広まってしまう要因になっている。
もっともこの時点でも投売りや返品が続出していた。

そんな中で発売されたこの『E.T.』が、これまでの消費者のゲーム市場やアタリへの評価をどん底まで落とすこととなる。
この時点でアタリはゲーム市場の8割を握るほどの独占状態であったが、
市場は大量の在庫を抱え次々と倒産、俗に言うアタリショックが起こり、『E.T.』発売の翌年、アタリも負債を抱えたまま倒産した。

そして伝説へ…

様々な要因が重なり、当時も今もクソゲーの烙印を押されるはめになってしまった『E.T.』だが、このソフトがこれほどまでに語り継がれるのには、ひとつのエピソードがあるからであろう。
それは、売れ残ったソフトを砂漠に埋め立てたというものである。
トラックで運び出された大量のソフトは、アメリカ合衆国ニューメキシコ州オテロ郡のアラモゴードの砂漠に埋めたとされ、この場所は米ゲーマーから「ゲーム史遺産」に認定されている。
これは当時のUFO関係の陰謀ブーム(E.Tも宇宙人物の物語)があったのも要因だろう。
アメリカのロックバンドWintergreenは、この話をもとに、自身の楽曲『When I Wake Up』で、「砂漠に『E.T.』のソフトを探しに行き、発掘する」というストーリーのPVを制作した。

余りにも荒唐無稽なこの話に対して、
都市伝説であり、本当はソフトの部品は経費削減の為再利用された」
といった意見もあったが、2014年、映像プロダクションFuel Industriesの検証によってマジで砂漠に埋められていたことが発覚した。
流石アメリカ色々でっかくてドン引きだぜ。

中にはパッケージを変えて日本に輸出されたものもあると言われている。

現在でも『E.T.』の評価は非常に低く、海外のゲームレビューサイトでは、ワースト1に挙げるところが殆どである。
もっとも、今となっては伝説化してしまった作品であるので、ネームバリューの分はだいぶ上乗せされていると思われるが。(あるイベントで観客に「『E.T.』はクソゲーだと思うか?」と質問したら全員手を挙げたが、実際遊んだ者は誰もいなかったという話もある)

また、ゲームレビュー動画『The Angry Video Game Nerd』で「スティーブン・スピルバーグ映画のゲーム」を特集した際、AVGNがソフトの箱の中から『E.T.』を一瞬目にするが、すぐに放り投げて目をそらしていた。


そんなAVGNはまさかの映画化が決まった『The Angry Video Game Nerd』にてこのソフトをレビューすることを発表。
現在アメリカ本国で大好評公開中であり、映画内のレビュー部分はyoutube等で普通に見る事が可能。一個人としてのAVGNの意見も述べられている。



2014年12月17日、発掘された本作の一部が米国のスミソニアン博物館に展示されることが決まった。
こうして、名実ともに「歴史に名を刻むクソゲー」として後世に残される羽目に陥ったのである。



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最終更新:2021年02月08日 12:44