E.T.(映画)

登録日:2025/01/04 Sat 12:10:13
更新日:2025/02/04 Tue 21:28:03
所要時間:約 10 分で読めます






遥か300万光年の彼方から、未知なる地球へ…
彼は、ひとりぼっちで恐怖におののいていた。




E.T.

THE EXTRA-TERRESTRIAL





『E.T.(原題:E.T. the Extra-Terrestiral)』とは、1982年に公開された米映画。
製作・配給はユニバーサル映画。

監督は『ジョーズ』『未知との遭遇』『レイダース 失われた聖櫃《アーク》』のスティーブン・スピルバーグ。
劇伴音楽はジョン・ウィリアムズが作曲。

第55回アカデミー賞の作曲賞、視覚効果賞、音響賞、音響編集賞の4部門を受賞した。


概要

ジャンルとしてはSFではあるが、アメリカに住む平凡な少年が、宇宙船から置き去りにされた異星人と知り合い、交流を深めていくという、子供の目線から作られた物語である。
公開から40年以上経った現在もジュブナイル(児童向け)SFファンタジーの名作映画として知られ、内容は知らなくても「満月をバックに空を飛ぶ自転車」や「異星人と少年の人差し指が触れ合う」ビジュアルを知っている人は少なくないはずである。
テーマ曲も聞いたことある人が多いだろう。

それまでスピルバーグと言えば、『激突!』を皮切りに大人を主人公としたサスペンス映画を多く製作していた監督として知られていたが、本作で子供を主人公とした映画を作り、その幅広さを世に知らしめた。スピルバーグは本作を以て、その地位を不動のものとしたと言っても過言ではない。

物語の主題は、少年エリオットと異星人E.T.の出会い、そしてE.T.を故郷に帰すまでの手伝いである。
エリオットとその兄妹達はE.T.との触れ合いを通じて成長し、やがて異星人間の本物の友情を育んでいく。
しかし、その一方で異星人の痕跡を嗅ぎつけた大人達がE.T.を狙い、彼らから逃げるサスペンス要素も盛り込んでいる。
このように、映画は徹底してエリオットの視点で描かれるため、物語前半の追跡者が本格登場する前では母親のメアリー以外の大人の登場人物の顔が映らないようにしている。

それまで「異星人が登場する映画」と言えば、地球侵略あるいは人間の殺戮を目的とした悪意ある内容が殆どで、本作で登場するE.T.のような友好的な異星人は希少で、本作公開の5年前に同じスピルバーグが手掛けた『未知との遭遇』程度だった。

本作のヒットを機に、「子供と異星人の交流」を描いた映画が立て続けに作られたのもその影響力が伺える。
E.T.のデザインも、「地球外生命体ではあるが愛嬌のある外見」をコンセプトにしており、長年にわたって愛されている。

主役となる子供達を演じる子役はオーディションで選出され、殊にエリオット役のヘンリー・トーマスとガーティ役のドリュー・バリモアはその演技を絶賛された。
バリモアに関しては本作を機にハリウッドから引っ張りだこにされるほどの名子役としてブレイクしたが、同時に本作のイメージが付きまとった影響もあって、私生活のストレスから薬物中毒に陥った時期もあった。
その後は女優として復帰し、映画監督としても大成している。

興行収入は全米で3億ドルを突破し、『STAR WARS エピソードⅣ 新たなる希望』を超えて歴代トップの記録を樹立した。
日本においても、配給収入が『ジョーズ』の記録を突破し歴代1位となり、1997年の『もののけ姫』の公開まで記録を保持していた。
全世界興行収入においても、93年の『ジュラシック・パーク』の公開まで歴代トップの記録を保持していた。

本編では後述するように宅配ピザを注文するシーンが登場するが、当時外食チェーンの社長だった浅野秀則という人がこれに感銘を受け、日本展開を検討することとなる。
当初は本編に登場するドミノ・ピザのフランチャイズ契約を計画していたが諸事情で頓挫し、1987年に東京・目白に宅配ピザ店「ピザーラ」を開業。日本で宅配ピザが広まるきっかけを作った作品でもある*1


物語

夜のロサンゼルスの郊外の森の中に人知れず着陸した宇宙船。
その乗組員達は地球の植物を調査・採取していたが、突如として押し寄せた人間達に驚き、調査を中断して宇宙船を緊急発進させる。
調査のために外に出ていた一人の仲間を地上に残したまま……。

一方、街に住む母と兄、妹と住む少年エリオットは、パーティーをしていた兄の言いつけで出前のピザを取りに外に出る。
そこで、物置に投げたボールを投げ返す「何か」がいることに気づいた彼は、深夜に家を抜け出して草藪の中に入る。
そして彼は、奇妙な生物と出会うのだった。

エリオットは、「空」からやって来たという生物「E.T.」を家に匿い、秘密を知った兄妹達の協力を得て彼を「おうち」に帰す手伝いをすると決意。
だが、E.T.を狙う追跡者の手はひっそりと忍び寄っていた。

心を通わせるうちに、大切な友達になっていくエリオットとE.T.。彼らを待つ結末とは……。



登場人物

吹き替え声優はVHS・Blu-ray版/DVD版の順。

  • エリオット・テイラー
演:ヘンリー・トーマス
吹き替え:浪川大輔/村上想太
主人公。ロサンゼルスに住む10歳の少年。
好奇心旺盛で、謎の生物に進んで会いに行こうとするなど、行動力があり勇敢な性格。
ひょんなことからひとりぼっちの異星人E.T.と出会い、彼を家に匿って仲良くなる。
E.T.が故郷に「でんわ」するための手伝いもするが、本心ではずっとそばにいることを望む。
やがて、E.T.と共に過ごすうちに彼の心が伝わるようになる。

  • E.T.
声:パット・ウォルシュ
吹き替え:高橋和枝/水原リン
遥か彼方の惑星から来た異星人。
子供くらいの小柄な体格だが実は10万歳とかなりの長寿であり、宇宙を旅しながら各惑星の植物の調査をしていた学者。
念じるだけで物体を宙に浮かせる、枯れた植物を蘇らせるといった特殊な能力を有している。
地上の森に降りて植物を調査していたところ、宇宙船が先に発進してしまい、地球に取り残されてしまい、彷徨ううちにエリオットと出会う。
彼に匿ってもらった中で、地球の文化に触れて学習し、英語も話せるようになり、漫画やドラマをヒントに通信機を発明し、「おうちにでんわ=救難信号の発信」をする。
エリオットとの生活で彼と精神を感応させるが、地球の環境が負担になっていき、遂には瀕死の状態に追い込まれ、政府のモルモットとされてしまうが……?

なお「E.T.」とは「地球外生命体(EXTRA-TERRESTRIAL)」の略称で、エリオットらが付けた名前。
本作のヒットにより、現在では宇宙人を意味する一般的な単語となっている。方向性は逆だがこいつらみたいなものである。

  • マイケル・テイラー
演:ロバート・マクノートン
吹き替え:鳥海勝美/林勇
エリオットの兄。
弟をしょっちゅういじめている悪ガキで、母もよく困らせている。
当初はエリオットの話を馬鹿にしていたが、実際にE.T.に出会ってからは弟に全面的に協力し、E.T.の失踪時は自転車で街中を駆け回るほど仁義の篤さを見せた。
時々車の車庫入れを手伝っており、クライマックスで予期せぬ形でドラテクを披露することに。

  • ガーティ・テイラー
演:ドリュー・バリモア
吹き替え:藤枝成子/松野瞳
エリオットの妹。
夢見がちな年頃で、無邪気な性格。
兄達のE.T.の秘密を偶然知り、彼を人一倍可愛がる。なお、女の子ファッションに仕立てた時は流石のエリオットも閉口していた。

  • ハービイ
エリオットの飼い犬。
E.T.にも分け隔てなく接した。

  • メアリー・テイラー
演:ディー・ウォレス
吹き替え:駒塚由衣/藤生聖子
エリオットの母。
夫が愛人と一緒にメキシコに行ってしまったため、女手一つで3人の子供を育てている。
子供達の前では気丈に振る舞っているものの、夫の不在を誰よりも痛感しておりナーバス気味。
E.T.が病気になった際に初めて彼の存在を知らされ、当初は怖がるが、エリオットの悲痛な気持ちを察して応援するようになる。

  • キーズ(鍵の男)
演:ピーター・コヨーテ
吹き替え:安田隆/牛原茂
E.T.を追う政府機関の男。役名の「キーズ」は実は名前ではない。
腰に鍵束を付けており、物語前半における彼の存在は脅威に映る。
異星人に対して憧れを抱いており、「10歳の頃から異星人に会いたかった」という意味深な発言をしている。
機関の人間の中では唯一E.T.やエリオットに対して友好的に接する。

  • グレッグ
演:K・C・マーテル
吹き替え:杉元直樹/渡貫良児
  • スティーブ
演:ショーン・フライ
吹き替え:岩田光央/木村良平
  • タイラー
演:トム・ハウエル
吹き替え:菊池英博/宮野真守
マイケルの友人達。
マイケル同様にガラが悪いが、友達のピンチを一目で察し、E.T.を逃がすのに協力した。

  • プリティ・ガール
演:エリカ・エレニアック
吹き替え:村田彩/板倉沙織
エリオットの同級生。大人びた美少女。
カエル大脱走の騒動の時、E.T.に影響されて酔ったエリオットにキスをされた。
演じるエリカ・エレニアックは、本作の後セクシー女優としてブレイクした。

  • 警察や政府機関の大人達
本作における「悪役」に当たる人達。
E.T.の痕跡を察知し、彼を捕まえるためにエリオットの周囲を動き回っていた。
物語前半における彼らの動きは、スピルバーグ監督のサスペンスタッチの演出も相まって非常に怖い。
異星人捕獲のためなら各家庭の盗聴や無断侵入も厭わず、果てには自宅周囲を隔離し現地で異星人の検査を行う勝手な連中。
しまいには子供相手に銃を使うことも厭わない。


用語

  • 宇宙船
E.T.の乗っていた宇宙船。球体の巨大な船で、内部には宇宙中の惑星の植物が採取されている。
人間が押し寄せたためE.T.を残して飛び去ってしまったが、E.T.の通信を察知して地球に舞い戻る。
  • 精神感応
E.T.がエリオットとの交流を経た結果成立した現象。
E.T.が感じたことが全てエリオットにも影響し、二人の絆をより深めていった。
だが、E.T.が瀕死の状態に陥った際はその接続は途切れている。
  • 通信機
「おうちにでんわ」するためにE.T.が作った機械。救難信号を宇宙に向けて発信する。
エリオットの家にあった丸ノコ、ハンガー、傘、単語用コンピューターといった有り合わせの道具を使って発明された。


リバイバル上映

1985年には全世界においてリバイバル上映され、公開当時以上の反響を呼んだ。

2002年には、公開20周年を記念して、スピルバーグ監督自らが再編集した「20周年アニバーサリー特別編」が公開された。
こちらは、未公開シーンの挿入や一部シーンのデジタル編集*2が施されたバージョンであり、当初DVDはこのバージョンしか流通していなかった時期があった。
しかし、このバージョンについてスピルバーグ監督は「最悪なバージョンのE.T.になってしまいました」と強く後悔しているようで、今後は過去作品の再編集は行わないと明言している。


続編

続編の企画も当初は持ち上がっていたが、最終的に却下された。

しかし、公開から38年後の2019年にCM映像として、『A Holiday Reunion』が公開された。
内容はなんと、大人になったエリオットがE.T.と再会する物語であり、エリオット役のヘンリー・トーマスが復帰している。


ゲーム

本作の世界的大ヒットを受けて、アメリカのゲーム会社アタリは2000~2500万US$という高額な契約料を支払い、映画公開と同年である1982年にゲーム『E.T. The Extra-Terrestrial』を発売した。
話題の大人気映画をゲーム化ということで、アタリ社は同作をクリスマスのキラータイトルとして500万本も出荷したが、諸々の事情で制作期間は僅か6週間だけとなってしまった。
結果、あまりに出来が酷いクソゲーになってしまい、当時はクソゲーの粗製乱造で失いつつあったアメリカのゲーム市場やアタリ社の評判が一気にどん底まで落ち、俗に言うアタリショックの引き金となった。


アトラクション

アメリカのユニバーサル・スタジオ・フロリダには、本作をテーマとしたアトラクション『E.T.アドベンチャー』がある。
過去にはユニバーサル・スタジオ・ハリウッドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンにも存在したが、いずれも営業を終了している。
内容としては、恩師・ボタニカスに故郷のグリーンプラネットが伝染病により危機に陥っている事を告げられたE.T.が、森を訪れたゲストと共に自転車で冒険の旅に出るというものになっている。
旅の終わりには、E.T.が名前を呼んでくれるというサプライズも。
俳優の出演はないが、スピルバーグ監督が狂言回しのような役割で登場し、E.T.とガッツリ喋る。


STAR WARS』との繋がり

監督のスティーブン・スピルバーグは『STAR WARS』シリーズのジョージ・ルーカス監督と盟友であり、同じ異星人がテーマの本作との共通点が描写されている。

本作では『STAR WARS』シリーズ(以下SW)が作中でも存在しており、エリオットがSWのキャラクター人形(ボバ・フェットやランド・カルリジアン)で遊ぶシーンや、ハロウィンの仮装でヨーダが登場するなど、SWファンへの目配せが入っている。

また、このお返しとして、ルーカスは1999年の『STAR WARS エピソードⅠ ファントム・メナス』において、銀河共和国の元老院議員としてE.T.に酷似した種族を登場させている(なお、E.T.の種族かどうかは不明である)。

さらに本作の未公開シーンではハン・ソロ役でお馴染みのハリソン・フォードが学校の校長役として出演していた。








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  • 1982年
最終更新:2025年02月04日 21:28

*1 それまでピザと言えば冷凍食品かレファミレスで食べるものというイメージが強かった。

*2 「児童向け映画にそぐわない」との理由で警官の持っている銃を無線機に入れ替えたのが有名。