登録日:2011/12/22 Thu 22:17:02
更新日:2025/09/18 Thu 06:18:34
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性能
全長:200mm
重量:990g
使用弾:9x19mm
装弾数:13+1
銃口初速:360m/s
動作方式:ティルトバレル式ショートリコイル
概要
ベルギーのFN社製造のシングルアクション自動拳銃である。
ブラウニングが基礎設計を担当。しかしブラウニングが1926年に逝去したため、FN社のディウドネ・セイヴが引き継ぎ1934年に完成した。
量産拳銃として初のダブルカラム脱着マガジンを採用し、当時としては装弾数が多く高火力を実現している。
歴史
1921年にフランス軍から新型拳銃の要求が出される。
グラン・プイサンス(high power)と呼ばれたそれは以下を求めていた。
- コンパクト(1kg以内)
- 装弾数10発以上
- マガジンセーフティー、外部ハンマー、安全装置を装備
- 頑丈で分解結合が用意
- 50mでも殺傷力があること(9x19mm弾を使用)
FN社は当時ベルギーに移住していたブラウニングに設計を依頼。
M1911の特許をコルト社に売却していたためそれとは異なる設計で2種類の銃を設計した。
1つはシンプルブローバック、もう一つはティルトバレル式ショートリコイル。ハンマーは外部露出式のストライカーで、セイヴによる16連ダブルカラムマガジンが採用されていた。1923年に本銃の特許を申請し1927年に受理されている。
流石にシンプルブローバックでは9mmパラベラム弾には耐えきれなかったので後者で開発を進行。ヴェルサイユ試験委員会による試験結果を反映し、通常のハンマー式を採用しストックをホルスター兼用の取り外し可能なものに変更するなど改良していった。
しかしながらブラッシュアップされるにつれフランス軍の要求から少しずつ乖離していっており、フランスではアルザスのSACMにて自国開発のM1935Aも並行開発している。
ブラウニングの逝去後、やはりM1911の設計が最適と判断したセイヴはM1911の特許失効を待ってからバレルブッシングと分解結合の方式を取り入れた。
1931年の段階でほぼ完成していた本銃はフランス軍では要求に合わないとして却下したものの、ベルギー軍が性能を見込んで1000丁を試験導入。
1934年には大量生産向けのブラッシュアップも完了し、ベルギー軍にてP-35として制式採用された。
民間では1931年にカタログに載せたグランド・プイサンス/ハイパワーの名を採用しブラウニング・となった。
制式採用直後、ベルギーはナチスドイツに占領されてしまい、ドイツ下でP640(b)の名で準制式化された。
カナダに逃れたFN社技術陣(セイヴ含む)は本銃の技術を提供し、ジョン・イングリス社にて生産された。1944年には連合軍に供給しており、枢軸連合双方で採用され使用された銃となった。
ベルギー開放後はセイヴも帰国し、疎開中に計画していた自動小銃の設計を膨らませ
FALなどを手掛けた。
戦後も長らく活躍し、英連邦、南米、中国、果ては北朝鮮と様々な国で採用された。80年を超えるご老体だが、いまだカナダ軍、オーストラリア軍で現役である。
デザインが古い銃の為現代のポリマーフレームオートに比べると少しばかり握りづらく引金も癖があるそうだが、良く当たり操作性も悪くないのがロングセラーの秘訣だろう。
最終モデルはMkⅢ。2018年まで生産された。
現行の純正モデルはアメリカ製のFNハイパワー。2022年にリバイバル的に生産開始したモデルで、装弾数を17+1発に増やしつつスライドストップのアンビ化など改修がなされている。
構造
ハイパワーの名の通り、8+1発が最大だった当時において13+1発の多弾数による高火力を実現している。
ダブルカラムマガジンではあるがシングルフィードを採用したことでグリップ上部が絞られ握りやすくなっている。マガジンへの装弾に力がいるようになるが、握りやすい点が評価されその後の拳銃用ダブルカラムマガジンでも継承されている。
当初のフランス軍の要求にも可能な限り沿っており、マガジンセーフティーにより弾倉を抜いていると発砲できなくなるようになっている。
内部としてはM1911を改良しつつもよい点も継承したような構造をしている。
ティルトバレル式ショートリコイルは1911にそっくり(スライドストップ軸を結合にも用いる)だが、スライドストップ軸とは接合されておらず単なるバーで接触しているだけとなっている。これにより分解結合時にバレル側の穴とスライドの穴を合わせる必要がなく結合が容易になっている。
H&K USPなど後年の拳銃でもこの形式は踏襲されている。
トリガーは1911と違いレバー状でトリガープルは約4ポンド。
ハンマーは純正モデルではハンマーバイトしにくいような形状に改められている。
セーフティーはコックアンドロックに対応。ただし内部的に動かす際に力が要る構造のわりに小さく操作しづらい。
バリエーション
1982年までのモデル。1962年にエキストラクターの外部化などの改良が施された後期型に移行。
タンジェントサイトによる調整が可能なモデルも存在。
1989年までのモデル。安全装置のアンビ化、グリップパネルをナイロン製に変更、アイアンサイトの3ドット化、フィーディングランプの拡大(スロートバレルと呼ばれる)。
2018年までのモデル。AFPB、エポキシ樹脂製グリップパネル、銃口下の開口部排除が行われている。
- HP-DA(Double Action)/BDA/BDAO
XM9トライアル向けの改修を施し、ダブルアクション機構を採用したモデル。多くの部品で共通のものを使用しているがマガジンに互換性はない。1999年に後継のFN49/FNPに移行し生産終了となった。
- HP-SFS(Safe Fast Shooting)
変則ダブルアクション。デコッカーはないものの、マニュアルセイフティを解除すると自動にコッキングされるので初弾からシングルアクションで撃てる。
2022年からの最新モデル。
フィクション
M1911と同じく世界各国でライセンス生産されデッドコピーも多数ある、人気の拳銃である。
だが、アニメ、漫画の登場回数は少なめである。
余談
- リビアのカダフィ大佐の殺害に使用されたとされているのも黄金にぬられた本銃である。
- 初のダブルカラムマガジン拳銃はモーゼルC96。
追記・修正お願いします。
- トリガーバーがスライド内にあるため、撃ってスライドが後退するとき、トリガーに「コツン」という感触がある。マルシンのモデルガンとタナカのガスガンでは、この「コツン」が再現されている。 -- 名無しさん (2015-02-10 21:47:33)
- ラノベ、黄色い花の紅の主人公にも出ていたので追記出来るかたお願いします -- 名無しさん (2016-12-25 20:25:58)
- こちら情報量などの面からFNハースタル社(銃器会社)に統合しようと思います。7/30めどとしていますので何かあればコメントをお願いいたします。 -- 名無しさん (2025-07-24 10:23:18)
最終更新:2025年09月18日 06:18