登録日:2012/02/16 Thu 13:55:50
更新日:2025/08/02 Sat 05:15:59
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Universal Selfloading Pistol
性能
全長:194mm
銃身長:108mm
重量:720g
装弾数:15/13+1
使用弾:
9mmパラベラム弾/.40S&W弾
作動方式:ティルトバレル式ショートリコイル
概要
ドイツのH&K社が開発した自動拳銃。Universal Selfloading Pistol(汎用自動拳銃)を意味し、多数の弾種と多様なユーザーに合わせた汎用的な拳銃を目指して設計された。
社風の冒険を比較的抑えてオーソドックスな技術を用いて作られており、非常に高い精度と信頼性を誇り各国軍警察で採用され、派生銃も数多く存在する。
前史
H&K社は当時
G3シリーズの
突撃銃や
短機関銃など所謂“長物”と呼ばれるジャンルにおいては非常に高い評価を得ていた。
しかしこと
拳銃に関しての評価はお世辞にも良いとは呼べなかった。
H&K社の「妥協しない」をスローガンとする
社風を持つことに起因し独特な新機軸を採用することが多かった。
- 初代HK4(1967)はモーゼルHScの改修モデルだが多数の弾種に対応。
- H&K VP70は項目参照。
- P9SはVP70よりも堅実だがG3同様のローラーロッキングシステムを搭載。
- P7はガスによる遅延式ブローバックとスクイズコッッカー(握ると撃鉄が起き、離すとデコックされる)を採用。
軒並み操作性や構造が独特すぎて、法執行機関以外では人気が高いものとは到底言えなかった。
さらには銃の構造上9mmパラベラム弾より強力な弾薬を使用できなかったため、銃器の一大市場であるアメリカでポピュラーな
.45ACP弾モデルを投入出来ず、一般受けしなかったのでやはり売れなかった。
1989年、冒険のし過ぎを反省したH&K社は既存の枯れた技術を用いることを決心し新規開発を開始した。
同年から始まった米SOCOMの攻撃用拳銃兵器システム(OHWS)として.45ACP +P弾を使用する拳銃のコンペが開始された。米国への販路を見出すべくH&K社はそのコンペに参加。いきなりコルト社との一騎打ちとなった(条件が厳しかったのか、はたまた…)。
コルト社のM1911A2はフェーズ1にて脱落し、フェーズ2、3を勝ち抜いて1995年にMark23 Mod.0として採用された。Mark23については後述。
Mark23の知見をフィードバックし1992年末に設計が完成。1993年にUSPとして発表した。
特徴
USPの構成要素は以下のとおりである。
- SIG P220にて採用された排莢口とバレルとを結合させる形のティルトバレル式ショートリコイル
- Glock17 Gen2のようにリコイルスプリングをユニット化。追加で部品に与える衝撃と反動のピークを下げるデュアルリコイルスプリングを採用
- M1911に近い操作系となっており、サムセーフティーによるコックアンドロック/デコッキングが双方可能。スライドストップも通常分解時のピンを兼ねたものとなっている。
これだけ見ると革新的な要素はあまりないように見えるが、当時の状況からかなり魅力的な銃となった。
1990年初頭の最新拳銃は、
グロック17のヒットに引っ張られ S&WシグマやCZ100などグロックを意識あるいはそのままパk……参考にした拳銃がトレンドであった。
USPはポリマーフレームこそ採用したものの、オーソドックスなメカニズムを組み込んでおり旧来の拳銃ユーザーにはなじみやすい。
Mk23のフィードバックにより20000発のジャムのない連続射撃能力と耐腐食性の高いコーティングによる高耐久性、.45ACP +P弾に耐える堅牢さを得ている。
無論堅実にとは言ったが妥協はせず新機軸も取り入れられている。
- 部品組み換えのみで撃発機構を自由に変更できる。
公式には9バリアントに対応しSA、DAO化や左右差し替え、サムセーフティーのオミットも可能。
- フレーム下部のアタッチメントレールを世界で始めて装備。(ただしP2000以前のモデルはピカティニーレールでない独自規格)
- マガジンキャッチを従来のボタン式ではなくH&K社特有のレバー式を採用し、左右の利き手を問わずマガジンを着脱出来る。
弾薬は.40S&W弾と9mmパラベラム弾から始まり、.45ACP弾やコンパクトモデル専用だが.357SIG弾にも対応している。
バリエーション
後継モデルを含め多岐にわたる。1990年代以降のH&K製拳銃の祖といってもよいだろう。
H&K MK23
厳密にはバリエーションとは異なり、USP開発と並行して開発したモデル。
日本ではMGS1で
ソリッド・スネークの愛銃として採用されたためかやけに有名で「ソーコムピストル」の俗称がある。
前史
1989年頃 U.S.SOCOM(アメリカ・スペシャル・オペレーション・コマンド/アメリカ軍特殊作戦指令部)内部にて、屋内などの限定されたエリアで拳銃をメインアームとして使えないか?というOHWS構想が出てくる。
作戦上CQBが多い特殊部隊にとって、全長が長い
突撃銃・
短機関銃よりも拳銃の方が取り回しの面で有利と考えたのだ。
当時の制式拳銃は
M9だが、そちらの
9mmパラベラム弾では威力に不安がある。
そして最適な威力を求めて作られた.40オート弾は流通面で難がある。
であればと.45ACP +P弾を用いることが定められた。
その他にもメインアームとしての以下の性能を定め、コンペを開始した。
- 過酷な環境や状況、ハイパワーな弾薬を使用しても壊れない耐久性と堅牢性
- 高い命中精度
- サプレッサー、フラッシュライト、レーザーなど各種アタッチメントの装着
- デコッキングレバー、サムセーフティなどの安全装置の完備
コンペに参加したのはコルト社とH&K社のみ。
難儀な要求であることは確かなのだが、米軍の特殊用途向けということでH&K社以外はあまり参加するメリットを感じなかった可能性がある((コルト社はコンペに必ず参加する契約を結んでいたとされる))。
コルト社は
ダブルイーグルの改修型としてM1911A2を提出したが敗退。あとは前述のとおりである。
構造
デザートイーグル並の大きさがあるがあちらよりは軽い。
命中精度の良さは折り紙つきで、レースガン並。
条件の一つであるサプレッサーとアタッチメント装着のために、バレル先端には専用のネジ山が切られ、フレームに専用マウントレールが設けられている。USP45らとの互換性はない。
開発競争及び試験的に少数配備されたプロトモデルにのみスライド前部にもセレーション(滑り止め用の溝)がある。
その後
Mark23は小規模使用されたものの、サプレッサー込みだと大きすぎて「これならMP5SDとかでいい」となり、一部の惚れ込んだものや合致した用途以外ではほぼ使用されなかった。
しかし45口径のストッピングパワーは欲しいとなり、後述のUSPコンパクト・タクティカルやHK45(Mark24)、M1911の改修版であるMEUピストルやM45A1などを採用するなどした。
えっ肝心の海軍特殊部隊はもう9mmグロック(Mark26/27)にお熱?そう…
USP
オリジナルモデル。
ドイツ連邦軍にP8として製式採用されている。後継により末尾に9、40、45が付く(他モデルでも同じ)
USPコンパクト
銃身、グリップを切り詰めたコンパクトモデルで、内部ではリコイルスプリングユニットの変更と.357SIG弾への対応が行われている。
こちらもドイツ連邦軍にP10として採用された他に、ドイツ連邦警察の標準拳銃として採用されている。
USPタクティカル
銃身に減音器を装着出来るようネジを切ったモデル。減音器への対応も兼ねてリアサイトがより豪華なものとなっている。
ドイツ軍特殊部隊KSKはP12として採用。
特殊作戦群(陸上自衛隊)でも採用されていると思われる。
USPコンパクト・タクティカル
.45ACP弾仕様のUSPコンパクトにタクティカル同様の改修をしたモデル。
大口径拳銃を持ちたいがMk23ではデカすぎると判断した米軍向けのモデルで、のちのHK45CTにつながる。
USPエキスパート
競技向けで精度を向上のため銃身とスライドを延長し、ルールに合致するようにハンマー形状を変更している。
USPエリート
エキスパートからより長い銃身に変更したもの。
USPマッチ
エキスパートと同じく競技用の銃。エキスパートとの違いは跳ね上がり防止用のウエイトをスライド延長ではなく銃前方に設けた点(フレームを介して接続。コンペンセイターの能力はない)。
P2000
USPコンパクトをより特化させる形で開発したモデル。変更点は以下の通り。
- グリップを細身にしてバックストラップ(グリップ後部のちょっと膨らんだ部分)を交換出来るように
- フレームのレールマウントをピカティニーレールに変更(このモデル以降のH&K製拳銃も同様)
- Combat Defence Action(CDA)による変則ダブルアクション化
- 操作系の完全アンビ化。特に珍しく左にもスライドストップを設けている
- グリップに小型トランスポンダーを組み込み銃器データの識別に使用可能
- マガジンセーフティーのオプション
こちらも5バリアントのメカを用意してあるがそれぞれの互換性は公式には無い。
サブコンパクトモデルのP2000SKのバリエーションが存在する。
開発要求はドイツ税関(ZKA)から出されており、曰く女性の手に合うようにとのこと。
P3000(P30)
P2000のフルサイズ版。サイドパネルまで別サイズに交換出来る様になっている。
バリエーションとして以下の者がある。
- P30L:銃身、スライド延長版
- P30S:サムセーフティーのアンビ化
- P30LS:P30L+P30S
- P30SD:減音器用のネジを切ったモデル
- P30SK:サブコンパクトモデル
- P30SKS:サブコンパクト+サムセーフティーのアンビ化モデル
こちらも5バリアントのメカが用意されている。
HK45
.45口径仕様のUSPタクティカルをもとにラリーヴィッカース氏等監修のもと改良されたモデル。
P2000のバックストラップ交換機能のほか、Mark23の知見を再びフィードバックしており銃身固定用のOリングなどにそれらが見て取れる。
バリエーションとして以下が存在する。
- HK45C:コンパクト
- HK45T:タクティカル 減音器用のネジを切ったモデル。
- HK45CT:HK45Cのタクティカル版。Mark24mod.0として採用された。
P46
MP7と同じ4.6x30mm弾を使用するUCPとなるはずだったが、MP7が十分拳銃運用できるものであったためキャンセルされた。
VP9/SFP9
当初はP30のストライカー式バージョン(P30X)としてP7の更新用に設計されていたが、トレンドなどを色々盛り込んで別物となった。
バリエーションとして以下が存在する。
- SFP9 SF:Special Forces スタンダードモデル
- SFP9 SK SF:サブコンパクトモデル
- SFP9 TR:Technische Richtlinie(ドイツ公務向け技術指定)対応モデル
- SFP9 L/VP9L:ロングバレルモデル
- SFP9M:対塩水コーティングモデル
- SFP OR:ドットサイト対応モデル
- SFP8 マッチOR/VP9マッチ:ロングバレルとドットサイト対応モデル
- SFP SD:減音器用のネジを切ったモデル
- SFP SK/VP9SK:サブコンパクトモデル
- VP9LE/VP9SKLE:米法執行機関向けモデル
- VP タクティカル:減音器用のネジを切ったモデル
- VP タクティカルOR:ドットサイトに対応し減音器用のネジを切ったモデル
- VP9 B:アメリカ向けのボタン式マグキャッチ仕様
SFP9Mを自衛隊が採用している。
フィクション
ゴツく拳銃らしい拳銃の恰好から多くの作品に登場する。
USP
アンジェリーナ・ジョリー演じるララ・クラフトが
二丁拳銃として愛用している。
タンカー編でスネークが眠らせたオルガから奪って使用。
P30
主人公ジョン・ウィックが第一作にて使用。第二作以降はいろいろあってグロックTTIカスタムなどがメインとなる。
Mark23
1ではフェイズ2のプロトタイプ(LAM装備)をスネークが使用。
2では雷電がイロコイ・プリスキン(スネーク)から受け取った本銃を使用(上記のと同一の銃かは不明)。
4では1で本銃を入手したトラックの下で入手でき、初めて主観で構えたときにスネークが「懐かしい…」と呟く。
- Phantom PHANTOM OF INFERNO
遊戯銃
USP
KSCからガスブロが数種類販売されています。
エッジの効いたスライド、グリップ内の安全装置等、なかなかリアルな造りになってます。
.45口径モデルは現時点ではここか海外のKWAくらいか。
東京マルイからもエアコキ・電動ハンドガンとして販売されている。春夏秋冬問わず安定した射撃を求めるならこちらを。
ガスブロもフルサイズ、コンパクトモデル出ています。
エアコキ、電動ハンドガンは.40S&W、ガスブロは9mmモデルで販売中。
Mark23
国内トイガンとしては
東京マルイ、KSCから発売されている。
マルイ製MK23はスライドが可動しない固定ガスガン。
固定ならではの集弾性+静音性(
サプレッサーを着ければ本当に相手には聞こえないレベル)を有している。
まさにメインアームとしての性能を誇っている。
ライバルと言えたマルゼンのP99フィクスドが廃盤になったため、固定ガスガントップの座を維持し続けている。
また前方にセレーションのない後期型がエアーコッキング式18才以上、10才以上版で出ている。
特に前者は造詣もよく固定ガスガン用のオプションもそのままつけられるため手元遊びにはこちらの方が向いている。
ただし連射できないとはいえ威力はガスガン、電動ガンと同等のため注意。
KSC社製品はガスブローバックモデル。大型のスライドが豪快に動く。
命中精度もなかなかの物で、サバゲのメインウエポンとしても十分な性能を持つ。
余談
特徴で述べたレバー式マガジンキャッチ。実はこれ指に噛み付く。
え、どゆことかって?
簡単に説明するとマガジンを落とすためにレバーを押し下げるわけだが、この時指の皮がごくまれにレバーに挟まることがある。
手袋をすると問題無いが素手だとこれ結構痛いらしく、海外では噛み付かれて思わず落としてしまったなんてこともあったらしい。
チェッカリングの凹凸が激しいことも含め、運用時には手袋をつけたほうが良いだろう。
実射してみるとデュアルリコイルスプリングのおかげか瞬間的なキックはないのだが、グロック等に比べると銃身軸が高いので多少跳ね上がる。
逆にMark23やHK45では重さ又は形状の洗練具合からかきちんと抑え込め連射しやすい。あくまで個人的な感想であるが…
撃てる機会があれば撃ち比べてみるのもよいだろう。
追記・修正はUSPに噛み付かれた人がお願いします。
- こちら情報量などの面からH&K社(銃器会社)に統合しようと思います。7/30めどとしていますので何かあればコメントをお願いいたします。 -- 名無しさん (2025-07-24 10:15:34)
- こちら統合しました。Mk23の項目は追って削除します。 -- 名無しさん (2025-08-02 00:03:15)
最終更新:2025年08月02日 05:15