FN FAL

登録日:2012/03/28 Wed 07:37:25
更新日:2025/08/30 Sat 19:46:33
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性能

全長:1090mm
重量:4325g
使用弾:7.62mmNATO弾
装弾数:20+1
動作方式:ショートストロークガスピストン ティルトボルトロック




概要

ベルギーのFNハースタル社が1947年より開発を開始し、1954年より製造、配備されている突撃銃
FALはFusil Automatique Léger(軽量自動小銃)を意味する。
西側(特に欧州)で広範囲に採用されており、世界90カ国(ノンライセンス含め)以上にもおよぶベストセラーである。
コルト M16H&K G3AK-47らとともに20世紀を代表する突撃銃の一つ。



歴史

ベルギーとFNハースタルの解放

FNハースタル社は1889年にベルギーのハースタル国営造兵廠として誕生。戦前はモーゼル社の小銃やブローニング技師による最新鋭の拳銃などを製造販売していた。
しかし第二次大戦によりドイツに接収され、その間はドイツの軍需工場として被害を受けることもあった。
戦後は米軍の小火器整備を請け負い再興。それと同時に西側の軍備再建にむけ、戦前からの計画などを発展させた火器設計を開始する。

ディウドネ・セイヴとFN1949

戦前から自動小銃の設計を行っていたディウドネ・セイヴは戦後なんとかイギリスから帰国。イギリスで試作していた銃を発展させてFN1949を完成させた。
M14等に近いフルサイズ弾の自動小銃であったが、その時点でFALの面影がある程高い完成度であった。
しかし戦中ドイツのStG44と7.92x33mmクルツ弾*1の情報を抑えていたFN社は同じような中間弾薬を用いた自動小銃が必要とし、FN1949の設計完了直前の1946年に より突撃銃然とした試作銃を作成した。

イギリスもセイヴ経由でその情報をつかんでいたのか、自国製の中間弾薬である.280ブリティッシュ弾とブルパップ式を提案。両方とも対応したモデルが試作されているのが確認できる。
しかし、同時期にアメリカの7.62mmNATO弾が西側標準弾薬として確定してしまった。当初は英EM-2突撃銃と歩調を合せていく方針であったものの、再選したチャーチル首相が.280ブリティッシュ弾とEM-2を却下。
やむなく7.62mmNATO弾向けに再設計し1951年にFALは発表された。前述の通りFN1949はフルサイズ弾対応であったのでその点ではスムーズに事が進んだ。
そのあたりの詳細は7.62mmNATO弾の箇所を参照。

西側主力としての台頭

他国でも突撃銃は喉から手が出るほどの存在であり、FALは多数の国で採用された。
フルオート射撃などの難しさからどうしてもセミオートライフルとしての運用、仕様が主になってしまったり砂漠戦を想定する国では他銃が好まれたりなどしたが、5.56mmNATO弾が策定されるまでは自由世界の右腕として活用された。

しかし、売れすぎたことが仇となるとはこの時はだれも予想していなかった…



特徴

当時としては非常に先進的で、FAL並の性能を有するライフルが市場に皆無な時期すらあった。
  • 使用者に寄り添った設計
左面にある非レシプロのコッキングハンドルとグリップから手を離さずに操作できるセレクターはかなり使い勝手が良い。
部品数も少なく工具なしで主要部品が分解できるので、整備や調整も容易。

  • 必須工業力が当時の水準に合致
削りだし加工のレシーバーや機関部が高コストながら耐久性に優れている。
当時プレス加工などがまだ未発達な国も多く*2*3、むしろこちらのほうが他国の事情とも合致していた。
しかしティルトボルトだけは材質などの面で難があり、後の突撃銃では採用されていない。

  • 耐久性の高さ
湿気や泥、暑さ寒さに強く過酷な環境でも充分な性能を維持した。
しかし砂にだけは弱く、排出用のスリットなど隙間を設けての対処などが実施されたりしたものの根本的には弱いまま。
部品どうしの遊びがないことが裏目となったようで、この点はAKと対比されることがある。



バリエーション

初期はグリップ、ハンドガード、ストックが木製だったが、ハンドガードをスチールにしたモデルが開発され、後期モデルではプラスチックを多用したモデルも登場するなど改良・発展がみられる。

  • FALO
LAR-HB(ヘビーバレル)とも呼ばれ、二脚と肉厚銃身を追加した分隊支援火器モデル。

  • FAL 50.63
金属製折り畳み銃床モデル。カービンタイプは50.63、機関部下部をアルミ合金製にしたものは50.64と呼ばれる。

  • L1A1(SLR)
イギリス製でフルオート機能のオミット、泥や塵を排出する為ボルトキャリアにスリットを入れるなどしたイギリス制式採用モデル。
単位がインチで設計されていた為に本家その他大半とは互換性がない。イギリスの他にオーストラリアやニュージーランドで採用された。

そのほか、カナダではC1、ドイツではG1、南アフリカではR1、オーストリアではStg58として採用されている。
リビア、トルコ、オランダ、インド、ポルトガル、イスラエル、ベネズエラ、ペルーなど世界70カ国で採用されている。
例外として、FN社はドイツでのライセンス生産を認めなかったので3年ほどでG3に転換されている(詳細はH&K G3にて)。



その後

NATO諸国やアフリカ等旧植民地国に広く採用されていた為、ベトナム戦争や中東戦争その他紛争で使用された。
フォークランド紛争は冷戦期には珍しい西側同士の戦争で「FAL対FAL」の戦いとなった。*4
だが、アルゼンチン軍のFALにはフルオートが残されており尚且つ二脚まで装備していたので穴倉に籠る敵軍にイギリス軍は相当てこずったそうだ。
折り畳み式ストック、フルオート機能を持つアルゼンチンFALは英兵士に羨ましがられ、鹵獲・使用されたという。

白人政権時代のジンバブエ(旧ローデシア)ではもともとイギリス政権と親交がありL1A1を主に用いていたが、
南アフリカと同様アパルトヘイトを行っていたため他の西欧諸国から孤立して武器を禁輸され、
更に工業技術が未熟だったため個人防衛用の拳銃やサブマシンガン(しかも性能はともかくデザインはかなり不格好)くらいしか作れず、
軍用銃においては南アフリカから供給されたR1やポルトガルからFALを入手するなどしていた。

現在は小口径高速弾が主流で、AUGやL85、G36へと更新済みの国も多い。しかしM14のように7.62mmの利点から見直しが行われている。
アメリカではDSA社がFALを近代したSA58シリーズ等を販売しており、民間向けでもコア人気は高い。
しかしオリジナルは規制により輸入出来ず、ピカティニーレールもないためアメリカ人にはイマイチなようだ。


またリビア内戦で見られたように、過去生産された各FALは他所に流れながら今も使用され続けている。



フィクション

  • うぽって!!…ふぁる姉。擬人化されており主人公FNCの姉として描かれている。
  • 砂ぼうず…小砂が4巻にて使用。
  • 緋弾のアリアAA…火野ライカが10話の身体測定時に所持。
  • アヴァロン…小説版の主人公「カバル」の主装備。ストーリーそっちのけでこの銃について語る語る。まあ、押井守だから仕方がない。
  • The Division…古いタイプの「クラシックFAL」と、近代版の「ミリタリーSA-58」、「SA-58 Para」の三種類が登場。なぜか3点バースト専用になっている。



追記・修正はFALに言い様のないトキメキを覚えた方にお願いします。

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最終更新:2025年08月30日 19:46

*1 フルサイズ弾よりも小さく、高い連射性能と必要十分な威力の保持を両立している中間弾薬の祖

*2 「均一で高品質な鋼板を大量生産できる体制」と「精密な金型」が必要で、地味に工業力のハードルが高い

*3 AK-47がいったん削り出しに戻ったりAR-18が売れなかった遠因

*4 他にもFN ハイパワーやブラウニングM2重機関銃なども両軍で採用されていた。