ディアナ・ソレル

登録日:2012/02/18 (土) 20:14:02
更新日:2022/05/25 Wed 15:27:27NEW!
所要時間:約 3 分で読めます





ディアナ・ソレルから、

ディアナ・ソレルへ。




CV:高橋理恵子

『∀ガンダム』の登場人物で、キエル・ハイムと共に本作のメインヒロインとも呼べる立ち位置の人物。
かつて、外宇宙にまで届くテクノロジーを持っていた科学万能時代(宇宙世紀~RC、そして他の世界)の記憶を僅かに残すムーンレィスにより神格化された月の千年女王である。
神格化されているというのに留まらず、実際のカリスマ性や統治者としての能力も備えた女傑でもあるが、後述の様に月側には彼女の本心を理解する者が居いないばかりか暗殺まで企まれ、地球側からは敵対する月の総大将と捉えられていたことで、これまた本心が理解されず……と、ディアナ自身は善人であるにも関わらず、不本意ながら劇中の混乱の中心となってしまっていた。
御大が『∀ガンダム』の発想の元とした『かぐや姫』と『とりかえばや物語』から発想されたシンボル的存在である。

名前の由来は、ローマ神話で月と狩猟をつかさどる女神、ディアナ*1から。
また、家名のソレルはフランス語で「太陽(Soleil)」のことで、月と太陽の合わさったネーミングには富野監督も感心していたが、実際に制作に入る頃には命名したスタッフは居なくなってしまっていたとのこと。


【番組中の設定】
見た目は20才前後の女性だが、女王の役目を背負わされた1000年程前から1~2年の公務と100年単位の人工冬眠というサイクルを繰り返している為、実際の年齢は不明だが公式的には19歳とされている。
ソシエ・ハイムの姉であるキエル・ハイムとは容姿から声まで瓜二つだが、公式的には二人に血縁やらの関係は無いとのこと。
……幾らなんでも似すぎているので、先祖の何処かに血縁者が居て隔世遺伝でもしたのだろうと予想されるが年代を跨ぎ過ぎているし、設定もされていないので詳細は不明である。

番組中でも僅かに触れられているだけであるし、番組設定でも表に出ていない事実であるが、ディアナが月の女王として崇拝されるようになったのは、ソレル家が過去に食糧事情の悪化から滅亡の危機に瀕した人類を救ったことがあるからであり、殊に他ならぬディアナの実父が月の土壌改良に成功し、ムーンレィスが自給自足の生活を送れるようになったことがソレル家が月の統治者として望まれるようになった一番の理由だったとのこと。

尚、月の土壌改良以前の話と思われるが、劇中にも登場した地球と月の間にある衛星ミスルトゥは、劇中では既に役目を終えて廃棄されていたものの、かつてソレル家が宇宙での植物栽培の実験を行っていた場所だったとのことで、それ故に役目を終えた後もソレル家の功績を讃える地として捉えられてもいたようである。*2

一説によれば、ソレル家はかつて太陽系外へと旅立っていったニュータイプ達の子孫の内、太陽系へと帰ることを望んだ一団の末裔であったとも言われる。
ソレル家とは如何なる関係となるのかは不明だが、月の統治を補助する家柄として摂政家のメンテナー家と武門を司るギンガナム家があるが、ディアナの理想には恭順していないこともあってか現在の関係は微妙である。

かつて、人類が地に足を付けて生きていたという事実を知るディアナ自身の願いは「いつか地球に帰ること」であり、物語の開始と共に数百年を擁して慎重に行ってきた視察と交渉の総決算として、私設軍ディアナカウンターを率いて自らの手で地球帰還作戦を開始した。
物語にしてロラン・セアックとソシエ・ハイムが成人の儀式を行っている晩の時である。

その真意は、人工睡眠を繰り返すムーンレィスに、豊かな自然に触れて人生を全うさせ『生きる喜び』を与えるため。
やや小難しい言い回しだが、要は普通の人間らしい生活に戻したい(戻りたい)ということであり、この辺は昔の人間っぽい。

ただ統治者としてのカリスマと実力こそあれど、前述のように眠っている期間の方が長いだけに世間知らずであったのもまた事実であり、それが諸々の問題を引き起こした。
特に、臣下のムーンレィスが現在の科学文明が消え去った後に原始的な生活をしていた地球人を見下していたことはディアナにとっても予想外であり、この辺の旧世界(黒歴史以前)から引き継がれた進化した科学を持つものと持たざる者のギャップは、他ならぬディアナ自身も体験したことである。

実際、彼女の理想は生まれた時からテクノロジーに囲まれた後の世代のムーンレィスは勿論、生まれたときから豊かな自然に囲まれた現在の地球人からも共感し難い思想であり、
この女王との思想のズレこそが『∀ガンダム』に於ける月と地球の戦争の発端となってしまったのである。

地球人代表として北アメリアのイングリッサ領を治めるグエン・サード・ラインフォードとムーンレィスが地球で暮らせるよう交渉をするが、
上述の理由と経緯から侵略行為だと反発する地球人と、地球人を野蛮と見下すムーンレィスは折り合わなかった。

そんな中、自分と瓜二つのキエルと遊び心で衣服を交換した結果、意図せず成り行きでそのまま二人は暫くの間入れ替わることになる。
視察としてハイム家を訪れるが、そこでディアナカウンターが放った一撃でキエルとソシエの父が亡くなった事を知り、墓前で自身の過ちを嘆き、涙まで流して謝罪をした。
この時“自分に変わって泣いてくれた”ことで、キエルはディアナを心より慕うようになると共に、
前述の様に孤独であった彼女の本心を知ろうと努力してディアナが思っていた以上に完璧に女王の代わりを務めるまでとなり、
その姿を見たディアナもキエルに“もう一人の自分”として絶対的な信頼を寄せるまでになる。

また、ディアナ自身はミリシャに帯同して地球側から自分が原因となってしまった戦争を見つめつつ、地球帰還作戦の先駆けとして月より送り込まれた少年の一人であり、ホワイトドール(∀ガンダム)を駈って前線で戦いながらも、月と地球の友好を願うロラン・セアックを頼りにするようになっていき、後には自ら正体も明かしている。

因みに、アニメでは区別の為にディアナは色白で瞳のハイライトが無いのに対しキエルは少し肌の色が濃く瞳にハイライトが入れられているが、
これは作劇上と視聴者への区別を付ける為にそうしているだけで、実際には細部に於いても殆ど差異が無い=側近ですら区別が付かない程に似ているとされる。
これは、本当の家族と呼べる存在が既に居らず、周りの側近も目覚めた時には入れ替わっている可能性も高く侍従とも親しく接していないという事情もある。
寧ろ、念願叶って降りた地上にて自分自身で行動する中で、真の友達や女王の騎士とも呼べる存在を得ることになった。
そうして前線を移動しつつ各地で地球人の営みを知り、野戦病院ではリリ・ボルジャーノの意地悪が発端とはいえ、傷病者の洗濯などの雑用を経験している。
野戦病院でのエピソードはサブタイトル通りのディアナ様の奮闘、戦争の悲惨さ、全自動洗濯機∀等、多くの意味での見処があり、従来のガンダムらしくは無いが『∀』中でも評価の高いエピソードである。

その後、数百年前に地球を訪れた際に出会い、恋仲になったウィル・ゲイムの子孫に出会う。
彼は祖先が月の女王と恋人であったことを残された日記で知り、月へ行くことを夢見て宇宙船の発掘をしていた。
そしてディアナカウンターと接触し、宇宙船を渡す代わりに月へ連れて行って貰う約束をしたが、道中でミリシャの襲撃に合い死亡した。
残された船はミリシャが手に入れ、ディアナはその船に『ウィルゲム』と名付けた。


その後、地球帰還作戦に反対していた摂政アグリッパ・メンテナー一派が、自身の不在をいいことに月の実権を掌握したことを知り、
コレン・ナンダーやレット隊の助けを借り月へ戻る。

月では自分の暗殺を目論み、ディアナ自身は思想を危険視すると共に月に留まることを命じていたギンガナム艦隊をも引き入れていたアグリッパと対立するも、秘せられていた過去の記録を“∀”のコードと共に皆の前に解き放つ。
そこで黒歴史の真実(数千年以上に及ぶ戦争の果てに∀が地球文明を月光蝶により埋葬した後の世界が現在である)を知り、月では混乱が起きるが、ディアナの演説で沈静化した。
そして再び地球へ戻り、ターンXの月光蝶で全てを無に帰すことを企んだギム・ギンガナムを打倒する為、作中で初めてディアナカウンターに武力行使を命じた。
この時自分を信じる民を死地に向かわせる命令を下すことに苦しむ姿を見せた。
また、最終決戦では最高指揮官であるにも関わらずギンガナムとの最終決戦に挑むロランの下に向かおうとして諌められており、その頃には周囲にもロランに向けた特別な感情を察されていた模様。


エピローグでは、戦争終結後は月の統治はキエルに任せてロランと共に人里離れた土地に渡り、そこで隠棲生活を送っている姿が描かれた。
ディアナはこれまで多く重ねてきた人工睡眠の後遺症で、人工睡眠装置を利用しなければ肉体の維持が出来なくなってしまっており、
物語終盤からずっと人工睡眠を行わなかった影響もあり、その肉体は急激に衰えていたが、月に戻って延命治療を受けるのではなく、地球でロランと余生を過ごすことを決めたのだという。
ちなみに、「ディアナが肉体的に老いている」ことを示す描写に関しては何度か脚本が書き換えられたそうで、老いていることを強調する脚本案もあったらしいが、
最終的には「声の調子を変える」「杖をついている」など、強調するのではなく、それとなく匂わせる程度の描写になっている。

なお、このエピローグではロランとソシエが別れのキスを交わす場面でディアナが目を背ける描写があったり、
その後のロランとの隠棲生活の描写では左手の薬指に指輪を嵌めていることから、ロランとディアナが結婚したのか否かについても考察されている。

これについて冨野監督は、自身が出版したエッセイ『ターンエーの癒し』にて、
「ロランは、キエルさんに憧れを感じていたし、ディアナ様を尊敬もしていた。そして、ソシエを愛おしくおもっていた。そして、ソシエにはそれがわかったから、ロランをディアナ様にあげたのだ。そのディアナ様は、ロランとソシエを十分に知っていても、最後の自分を見取ることをロランに頼んだ。許したのではない。頼んだのだ。なぜなんだろう?」と問を投げ掛けた後で、自らこう解答している。
「それは、永遠の疑問ではない。簡単な理由だ。ディアナの本当の初恋の相手が、きっとロランに似た少年だったからだろう。人間などというものは、そんなものなのだろうとおもう。」
「それは、つまらないことなのだろうか?そうではないと伝えたいのが、『∀』という物語なのだ。」
と。



◆名言集


「よしなに」

「私に歩け、と?面白そうですね」

「戦争はいけません。パーティを催しましょう」

「あなたと私は立場は違いますが、思いは同じと感じました。お互いに頑張りましょう」

「なるほど、私の後ろ姿ってこういう感じなのですね」

「実際に見せていただくのとは違いますよ」

「お気をつけなさい、あなたはディアナ・ソレルです。もっと尊大な言葉遣いをなさらないと」

(このような人を相手に、私は戦争を仕掛けてしまった…)

「空と雲と風、私はこれをみんなに見て欲しい」

(ロラン、あなたは勇敢なムーンレィスです)

「ガンダムにはお髭がありますか?ありません。時代は違ったのですから、お前の任務は終了しております。命令に従わないなら私が処刑します」

(月に帰るまでは政治向きの報告、留守にしていた間の問題の処理、落ち着くまもなく人工冬眠に入り、これが、女王にできることなのか?)

「それは月の為にも、地球の為にもなのです。ロラン・セアック、力を貸しておくれ」

「ロラン、キエル・ハイム嬢は私以上に私の心を語ってくれています」

「これは私の仕事です。やめたりすればキエルさんの名も辱めることになります」

「…、ムーンレィスはお嫌いですか?」

「先生は、患者さんが生きているから、汚れ物も出るし、血も流す、汗も流すとおっしゃった。私はそういう風に考えたことがありませんでした」

「こんな私にも、そんな事があるんでしょうか?ロラン・セアック」

「わたくし、戦争の暴走を止める為に一度、月に戻らなければならないと考えております」

「二つの星を一つの国にする為です」

「夜中の夜明けなど、あってはならない歪みです」

「先祖より依託された土地を求めて、地球へ、故郷へ!」

「わたくしは必ず戻ってきます。この地上がわたくし達の故郷なのですから」

「キエル・ハイムから、キエル・ハイムへ」

「「また、お会いいたしましょう」」

「わたくしは、今度の地球帰りで死にたかったのです。年を取り、死ぬ人生だからこそ、生の喜びがある…その喜びを、一人でも多くのムーンレイスに知らせたかった…わたくしのエゴだったのでしょうか…?」

「わたくしは地球で、花を咲かせるにも血と肉が必要なのだと学びましたが、わたくしは300年前に大罪を犯したのでしょう」

「「死にませい!」」

「冬の宮殿に眠る1000万のムーンレィスにも、この新しい事態を伝えて、人類の営みを月と地球に行き渡らせ、恒久的な文化圏に確立していかなければなりません。私は、古代からの人々のように、普通に生き死にをするまことの生き方を手にすべき時代が来たのだと、確信できるようになりました。その為に、地球の力を借りなければなりません。そして、同じ過ちを二度と繰り返さぬように共に歩もうではありませんか」

「女王殺しの汚名を着る覚悟があるのならおやり、かしましいだけの者」

「月であろうが地球であろうが、人々が安心して働くことができる世界を作らなければならないのです。ですから」

「フィル少佐、ギム・ギンガナムが地球に降りてきてしまいました。これも、またわたくしの犯した罪であります。彼を駆逐する為に手を貸してほしい。…ミランも」

「ディアナ・カウンターに命令する、全軍をもってギンガナム隊を駆逐せよ!」

「わたくしは、父と母のことを覚えているのだろうか?」

「ああ、今夜は月食でしたか」

「ソレイユは落ちてもよい、全バリアーを放出。月光蝶の拡散を少しでも食い止めよ!」

「美味しかったわね…」


【余談】


地球と月の戦争の発端になったということから『ガンダム三大悪女』に挙げる不信心者も要る。
尤も、拗れたのはディアナ暗殺を目論んだアグリッパ派の行動と地球側の無知があったのだが。  

ソレル家が月の“王族”になった経緯を踏まえると最初にムーンレィスの“王”として迎え入れられたのはディアナの父であったのかもしれないのだが、いつの頃からかは不明だがソレル家の名を引き継ぐのは現在ディアナ一人で、既に親兄弟は居なくなってしまっているとのこと。
現代だと、例え実際の政治に関わらなくなっていたとしてもロイヤルファミリーが消滅の危機に瀕していれば大問題になりそうなものなのだが、ムーンレィスの場合には民も同じく人工冬眠を繰り返す中で死の概念が薄まっていたのか、女王が消えるという可能性を殆ど問題にされていないのは何気に異常である。
その上で、半ば自動的に代わり映えのしない統治システムのみが持続し、代わり映えのしない長い時間をただ生きながらえてきたのが本編でのムーンレィスという種族のおおよその姿であったようで、本編でもムーンレィスの人工冬眠施設を見た地球の面々が最初は墓場かと勘違いするというやり取りがある。
……本来の地に足を付けた人間の姿を知るディアナが長い時間をかけてでも地球帰還作戦を実行(して自分も地上で死ぬこと)を望んだのも当然だったのかもしれない。

エピローグでのディアナ様が見た目には変化はなくとも老衰で弱っているというのが公式で確定している部分であるが、一部のファンからはエピローグ時の体型が隠れた服装から、ロランと結婚した所か実は妊娠していると言われることも。
……繰り返すが、公式では以降の末路が不明な為に決まった答えではないものの、上記の既に肉親が消えて久しかったことや、余命幾ばくもないことを自覚しているであろうという事実や、何よりも死と再生を掲げた『∀ガンダム』(というか過去の富野作品でも繰り返されてきた構図だし)のテーマに沿った可能性ではあるので、妊娠説を支持する人間も少なくないようである。


【ゲーム作品での扱い】


スーパーロボット大戦シリーズ
ソレイユの艦長(メインパイロット)扱いで登場。立場や原作シナリオ上、加入が遅くなりがちであり戦闘能力は高くないが
非常に優秀な精神コマンドを有しており、終盤加入ながらもサポート要員としての価値は大きい。



ディアナ様、また明日。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/


最終更新:2022年05月25日 15:27

*1 ギリシャ神話ではアルテミスと対応する。

*2 そして、そんな場所を何やかんやと理由を付けてギンガナム艦隊が破壊してしまった辺りに、地球帰還作戦実行以来のディアナとギンガナムとの確執が見てとれる。