ピカティニーレール

登録日:2012/03/05(月) 15:41:18
更新日:2025/07/03 Thu 21:21:03
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概要

ピカティニーレールとは、スコープなどの各種オプションを装着する取り付け台『マウントレール』の規格の一種である。
銃の機関部の上部に付いているギザギザのあれである。

アメリカ陸軍の軍備開発研究を行うピカティニー兵器廠が開発し、NATO標準としても用いられる。
おおよそ大半の西側銃にて適用されており、照準器のみならず様々なアクセサリに対応している。

正式名称はMIL-STD-1913/STANAG 4694。
日本では横幅が20mmであることから20mmレールマウント等と呼ばれることもある。



形状


凹凸凸凸凸凸凸凸凸凸凹
正面
<=>
横からだとギザギザの四角が並んでいるだけに見えるが、正面からだとそろばんの玉のような形をしている。
横幅が0.835in(約20mm)、横溝(スロット)の間隔は各0.206in(約5mm)、斜めの部分は45度などと細かく決められている。
MIL-STD-1913ではインチ基準、STANAG 4694ではメートル基準であるが先のウィーバーレールとともに概ね形は変わらない。
ただスロット間隔が決められているので、細かい前後の調節はピカティニーレールの特権である。

ただのギザギザといえど、常に安定した土台でなくてはならず、温度差や衝撃で変形することはあってはならない。
灼熱の砂漠や寒冷の極地、多湿、乾燥など、地球上のどこでも使えるようになっているため、かなり丈夫な部品である。素材にはポリマーやアルミ合金を用いる事が多い。



歴史

ピカティニーレール規格の誕生以前は、スコープの着脱用に各銃専用のマウントレールが用いられていた。
第二次大戦中の狙撃銃や夜間対応のAK、競技用のレースガンなどには側面にマウント(ドプテイル/Dovetail)が取り付けられているのが見て取れる。
しかし標準的なものはなく、他の銃に同じスコープを取り付けるにも手間がかかり、ダクトテープでフラッシュライトを括り付けたり一体形状のフォアグリップにしたりと自由度はほぼないに等しい状態であった。

1980年代、ライフルスコープ向けのマウントであるウィーバーレールをもとに標準化を行いM4カービン(コルトモデル920)のアッパーレシーバーに取り付けるマウントシステムとして開発。
追ってNATOも2009年にSTANAG(Standardization Agreement)として標準化した。



現状

米軍ではKAC社のレイル・インターフェイス・システム(RIS)*1が導入されている。
特殊部隊向けのSOPMODから全軍に派生し、M4A1/M16A4の標準装備といえる。
現在は改良型のRAS(Rail Adaptor System)*2が標準となっている。

開発当時はスコープマウントがなかった小銃(AUG89式FA-MAS)にも改造して取り付けられたり、H&K USP*3SIGSAUER Proなど拳銃のアンダーレールとして採用されたりしている。

主に以下の用途に用いられている点が確認できる。
  • 照準器:直列に並べやすいので、ドットサイトとブースター/ナイトビジョンを並べている場合もよく見かける
  • レーザーサイト/フラッシュライト
  • 上記ライト用のスイッチ
  • フォアグリップ
  • アンダーバレルウェポン*4
  • 2脚:フォアグリップと合体したものもある。
  • スリング取付用のスイベル
  • ストックアダプター:MPXなどで採用される。
  • レールマウント:スコープなどはリングマウント経由で2か所で固定するが、それの脱着を簡易にするためにレールに載るレールがある。*5
  • 着剣装置(半ばジョークグッズだが実際に売られている)
状況に応じたカスタマイズが即時可能である点が広く認知されているといえる。

しかしハンドガードにレールがあると
  • 手触りが悪く持ちにくい
  • 金属製だと手を切るわ重たいわ熱伝導率が高いので火傷する
…といった欠点もある。カバーをつけて対策できるが太くなる。

これらの点を解消することを目的に、新しい規格としてVLTOR社の「KeyMod」拡張スロット規格が開発された。鍵型の穴が開いていて差し込んでねじで留める方式で、スリムさと拡張性を兼ね備えている。
追ってH&Kの「HKey」、MAGPUL社の「M-LOK」も登場。精度面で勝り、オープンソースなので制限もないことから現在ではM-LOK一強となっている。
しかし拡張スロットにピカティニーレールを増設するパーツも存在。今後もピカティニーレールはアクセサリのスタンダードとして使用されるものと思われる。



余談

  • M-LOKなど拡張規格対応でもトップレールは残っていることが多い。照り返しを抑えるために天辺に縦の溝が彫られている。
  • レーザーサイトを樹脂製ハンドガードにつけるとゼロインが狂うことがあるので、ハイドラマウントのように照準器と同じ場所に照準器に近い高さでつける場合がある。
  • 東側でも普及しており、AK-12ではドプテイルマウント(WTO標準)をかなぐり捨てて(!)公式にピカティニーレールに対応した。
  • 拳銃にもトップレールや4面レールをつける例は存在するが、どちらかといえばMOS(Modular Optic System)として直接スライド側が対応する方向に進化している。



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最終更新:2025年07月03日 21:21

*1 マウントレールを四面に配置したハンドガード

*2 これはKACの商標なので他社では「ハンドレイル」や「ピカティニーフォアエンド」等の名で販売している

*3 開発当初は独自規格だったが、H&K P2000からピカティニー規格に変更されている。

*4 M203グレネードランチャーは標準ではバレルとアッパーレシーバー部で固定するが、派生型で対応している

*5 ゲームでは照星が邪魔な場合にかさ上げするために用いられることがある