FA-MAS

登録日:2011/08/22(月) 17:33:13
更新日:2025/07/15 Tue 20:34:18
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性能

全長:757mm
重量:3.52kg
使用弾:5.56mmNATO弾
装弾数:25+1(F1)・30+1(G2)
連射速度:930発/分(F1)・1000発/分(G2)
作動方式:ディレイドブローバック



概要

フランスのGIAT(現Nexter)傘下のサン=テチエンヌ造兵廠が1967年より開発、1978年から1992年まで製造していた突撃銃
名称はFusil d' Assaut de la Manufacture d' Armes de Saint-Étienneの略。フルオート=F 突撃銃=A サン=テティエンヌ兵器廠製 = MASとなる*1
制式採用されたブルパップ式の主力小銃としてはかなりの古株で、デザインは後のブルパップ式小銃の手本とされることも多い。
愛称はクレーロン(le clairon/軍隊ラッパ、フランス軍)やトランペット(俗称)。



前史

フランスは長年陸軍大国を張っているだけあり古くから国営企業による銃器の製造が盛んである。サン=テティエンヌ以外にもル・マンやイシー=レ=ムリノー(AMX 戦車製造で有名)などの造兵廠やマニューリン社などの軍需産業が数多く存在している。

1960年代以降レバノンなどの元植民地にてAK-47の存在感が増していた。
当時の装備であるMAS49/56自動小銃とMAT49/MAC29サブマシンガンでは時代遅れで、SIG SG540のマニューリン社製造版を使用したりもしていた。
時代遅れである点とAKへの対応力を強めるものとして、1967年よりFAMASプロジェクトが開始された。

1979年にはフランス全軍に配備され始めた。他国*2)への販売を含め30万+10万丁以上が生産されたが、M16の2倍のコストから積極時には他国へは輸出されなかった。



構造

携帯性の向上と銃身長の確保のためブルパップ式としている。
大きなキャリングハンドルは照準器とレシプロのコッキングハンドルの覆いも兼ねている。二脚も標準装備されており、照準線の短さによる照準精度低下を補っている。
トリガーガードは欧州ではポピュラーな取り外し式で、手袋をしたままでの射撃に対応する。
作動方式が独特で、レシーバ・ボルト・ボルトキャリアの三部品が二本の爪をもつレバーを介して連結され、てこの原理で遅延を行うようになっている*3
これにより手動操作時の軽さと確実な遅延閉鎖を実現し、連射速度が西側小銃の中でも比較的早い。

同形状のAUGとは違いちゃんとセレクターが付いている。場所はトリガーの前方にあり、グリップから手を離すことなく安全・セミ・フルへと切り替えられる。
バースト射撃機構はユニット式のオプションとなっており、マガジンの後方あたりの装着する。このユニットにメインセレクターとは別のセレクターが付いており、メインセレクターをフルにした際にフルオートかバーストかを切り替えることができるようになっている。
銃口に装着し空砲で飛ばすライフルグレネード用の折りたたみ式照準器も標準装備されていたが、G2ではNATO系のアンダーバレルグレネードランチャーに対応していたり、夜間用の蓄光剤が危険であるとして取り外された際に一緒に外されたりしている。不憫である。
レールなどの周辺機器装着は当初考慮されていなかったものの、アップグレードによりPGMPユニットやハンドガード下面にレール追加、Felinにてキャリングハンドル自体の低姿勢化とトップレールの追加などを行ったことで拡張性もそこそこに。


長所

  • ブルパップ式特有の利点(銃身が長い、重心が手前なので取り回しが良い)
  • 一部にグラスファイバー/ポリマーを使用し軽量化
  • 連射時の安定性と集弾性が非常に高い
銃身軸線と構えた軸との位置関係により跳ね上がりにくい点と高い連射速度によるものである。
  • 排莢口の切り替えが可能で左利き射手にもある程度配慮している



欠点

  • ブルパップ式特有の弱点(照準線が短い、機関部が耳の付近なのでうるさい、硝煙による健康被害の可能性等)
  • 排莢口の切り替えは分解が必須で瞬時に出来ず、スイッチングなど戦闘中の左右構え切り替えは苦手
  • G2までSTANAGマガジンに対応していなかった(陸軍は引き続きF1を使用したので特に問題となった)
  • 本国のスチール薬莢でないと信頼度が低下する。他国の真鍮薬莢では圧力に耐えきれず問題が発生する。



モデル

  • F1:基本型で銃身長488mm。
Commando:銃身が405mmに短縮されたカービンモデル
Infantry:トップレールを搭載
Valorisé:キャリングハンドルをFelinと同じレール付きに交換したもの

  • G2:1994年以降の改良型。ライフリングの改装によりM193/SS109双方に対応し、NATO標準の30発弾倉とM20340mm榴弾発射機が装着可能
G1:F1とG2の過渡期モデルでマガジンなどはF1のまま
Commando:銃身が285mmに短縮されたカービンモデル(試作のみ)
SMG:Commandoからレシーバー側も短縮したモデル
Sniper:狙撃銃モデル。キャリングハンドルは排除
Picatinny rail:キャリングハンドル上部がピカティニーレール

  • Felin
FelinにはG2をベースに昼夜兼用のサイトやデータ共有機能等が装着。
光学照準器が撮影した映像をヘッドマウントディスプレイに投影する機能が付き、遮蔽物に隠れたまま射撃が可能。


その他民間仕様の.222レミントン/.223レミントン弾対応版が300丁ずつ生産されている模様。



実戦とその後

1980年から2015年までレバノン、チャド、ジプチ、ルワンダ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、南アフリカ、コンゴ、コートジボワール、マリなどのアフリカ旧植民地やコソボ、アフガニスタン、イラク、シリアなど数々の戦線で使用された。
1990年中盤よりFelin(Fantassin à Équipement et Liaisons In tégrés/通信能力を備えた統合歩兵装備)の研究がすすめられ、一部G2モデルが照準器やバレルを更新したFAMAS Felinに改修された。22588ユニットが発注されたようでこちらもアフガニスタンで実戦を経験している。

しかし40年の酷使による老朽化と、弾マガジンが独自規格である点から2016年以降H&K HK416F(フランス独自仕様)への置換を実施している。
置き換えたあとの余剰分はフランス国民衛兵隊やスリナム等旧植民地に供与(無償の場合も)されている。



フィクション

その他、多くのFPS



エアガン

実は東京マルイの電動ガン第一号で、実銃同様に同社の製品よりも連射サイクルが早く、初期の電動ガンとしては出来がよい。
そしてFA-MASのトイガン化第一号でもある。「電動ガンが受け入れられなくてもFA-MASのトイガンとして売れるように」という配慮の結果なんだとか。
しかし欠点がない訳ではなく、他の同社の電動ガンと比べパワーが弱く、射程が短い。
また、初期の試行錯誤の結果なのか、「ピストンを元の位置に戻すスイッチ」が付いている。
外見はプラパーツが多く、ギシギシと音がする事もある為に強度に不安がありそうな印象を受けるが、いざ撃ってみると精度もそこそこあり、以外な程壊れにくい。
思い切り落としたりしなければ壊れる事はまずない。
価格も比較的安めなので興味のある人は是非買ってみる事をオススメする。




余談

クロアチア製のVHS(ビデオではない)というそっくりさんがいるが、作動方式もフレーム材質(ポリマー製)も異なり、外観以外は別物。



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最終更新:2025年07月15日 20:34

*1 MASはMAS36(戦前のボルトアクション小銃)やPA MAS G1(ベレッタ92のフランス仕様)などでおなじみのMAS

*2 ジブチ、ガボン、セネガル、UAE(F1)、フィリピン国家警察特殊部隊(G2

*3 1952年配備のAAT-52汎用機関銃にて採用された機構