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ナックルボール

登録日:2010/12/18(土) 04:03:01
更新日:2026/05/04 Mon 21:33:39
所要時間:約 5 分で読めます





ナックルボールは、野球における変化球の一つである。
単に「ナックル」と呼ばれることも多い。

名前の由来は、握りが拳(Knuckle)のように見えることから。
小指と親指でボールを挟み、残りの指の爪を縫い目に立てるという、数ある変化球の中でも極めて特殊な握りをする。
人によっては人差し指と中指だけを立てる場合も。

その変化の仕方も非常に特殊なため、『魔球』と言えば真っ先に挙げられる変化球である。


【変化】

立てた爪でボールを押し出すことで、ほとんど『回転を与えずに』投げることが可能となる。
これによって空気抵抗がほぼ最大になり、気温や風向き、湿度など、その日その時の状況に応じて不規則に揺れながら落ちる。

簡単に言えば、「ランダムに変化する遅い球」である。

ちなみに野球以外の球技でも無回転の球をナックルと呼ぶことがある。
サッカーの無回転シュートもヨーロッパのファンから「ナックルボールシュート」と呼ばれている。


【長所・短所】

打者は軌道を予測できないため芯で捉えることが難しく、打たせてとるのに非常に有効な球種として知られている。
また、回転を与えないという性質上、腕の振りが制限されるため、結果的に投手の疲労を抑えることができる。

要所で上手く使えば効果は絶大。
コントロールと変化に自信のある投手には、これだけを投げ続ける者もいる。(後述)


しかしながら欠点も多い。

第一にはコントロールの問題。
『打者が予測できない』とは言うものの、それは投手も同じこと。
不規則変化のために細かいコントロールが効きにくいのだ。

あまりに変化するとキャッチャーも捕球できないことすら起きてしまうため、受けるキャッチャーにも特別な技能が求められる。
普段レギュラーを務める捕手では捕球が安定しない場合、専属のキャッチャーがバッテリーを組むことも珍しくない。
中にはナックルボーラーとバッテリーを組む時のみ、ソフトボール用のミットを使用していた捕手もいる。
打者「くそっ、どう変化するかわからん」
投手「俺もわからん」
捕手「俺にもわからん」


また、球速は80~100km/h前後とスローボール程度なため、下手に回転がかかって変化しない場合、単なるバッピが投げる球と同じになってしまう。
強打者と呼ばれる選手であれば、まず間違いなくホームランにできるだろう。
まあ、軌道の読めない球をわざわざフルスイングする場面もそうはないが、いずれにせよ、投手としてはコントロールも相まってギャンブルのような球である。


さらに、ランナーが出れば出たで、今度は盗塁の心配が出てくる。

打たれにくいと言ってもこの球速である。
キャッチャーも捕球に意識を傾けざるを得ないため、ナックルの時に走られたら、阻止率はかなり低くなる。

もっとも、後述するフルタイムナックルボーラーであれば、性質上ランナー云々よりも如何に自分の投球に集中できるかが最優先事項となるので、さほど大きな問題にはならないと言える。


【ナックルボーラー】

ナックルを球種に持つ投手を「ナックルボーラー(ナックラー)」と呼ぶが、前述のように世の中にはナックルばかり投げる投手が存在する。
こういった投手を、特に「フルタイムナックルボーラー」と呼ぶ。

フルタイムナックルボーラーは通常のピッチャーよりも早いローテーションで登板することができ、選手寿命も長いのが特徴である。


通常プロの世界では、変化球は読まれたらおしまいである。
また、球威やキレを上げるとどうしても肩や肘への負担が大きくなる。
しかしナックルボールは、その変化の不規則さと負担の少なさから、連続して投げることが可能なのだ。

しかもナックルは傍目にはただの遅い球にしか見えないため、素人の観客からすれば『バッターはなぜあんな球が打てないのか』と疑問にさえ思える。
結果、バッターに精神的ダメージをも与えるというおまけがついてくる。
ナックルボーラーとしてはしてやったりである。


メジャーリーグでは、フィルとジョーのニークロ兄弟、チャーリー・ハフ、トム・キャンディオッティ、
ティム・ウェイクフィールドなどがナックルボーラーとして知られている。
特にウェイクフィールドは、年間17勝を記録したこともあるナックルボーラーの代名詞である。
そして45歳(2011年)まで現役を続けたという稀有の存在。
通算成績も200勝180敗という堂々たるものである。しかもキャリアを一塁手として開始したにもかかわらず200勝である。


近年のナックルボーラーと言えば、やはり2012年に20勝を上げサイ・ヤング賞を獲得したR.A.ディッキーであろう。
球速120〜130kmとナックルボーラーとしてはやや速く、四死球の少なさに対して奪三振率が高いなど、従来のナックルボーラーとは一線を画す投球スタイルが特徴。

そんな彼も1996年に大卒投手としてプロ入りし、2001年にメジャー初昇格を果たすも、ストレートとチェンジアップを軸とした投球では成績を残せずにいた。
防御率5〜6点台というなんとも言えない成績を残しては降格と昇格を繰り返すプロ生活の中、「自分が活躍するにはナックルボールしかない」と一念発起。
往年のナックルボーラーであるチャーリー・ハフの指導のもとで訓練を開始し、ようやくナックルを完成させ人生初の二桁勝利を掴んだ頃には35歳を超えていた。
そこから37歳でサイ・ヤング賞、42歳で迎えた最終シーズンは190回を投げるという、実にナックルボーラーらしいキャリアを送った。


日本プロ野球界ではナックルを使う選手こそいるものの、まともに「ナックルボーラー」と言われる選手は未だ登場していない。
そもそも大きな手と強靭な握力を求められるという点でも日本人にとってはやや不利。
また北中米の人間に比べて日本人は爪が柔らかく、爪が割れたり内出血を起こしてしまうという難点も。
空気抵抗を受けてランダムに変化するという性質上、ドーム球場の多い日本球界にはあまり適さないという問題もあるし、そもそもMLBのボールとNPBのボールでは縫い目などが微妙に違うため「ナックルは単純に投げにくい」というのがネックになっている様子。


2007年に広島に入団したジャレッド・フェルナンデスはナックルを多用しナックルボーラーっぽい扱いを受けたが、
肝心のストレートが遅い為緩急が付けられずメッタ打ちに遭い、結局大した活躍もできずにすぐクビになった。

DeNAの山崎康晃は投球練習や、オールスターなど「ファン向けの一発芸」的な場合にナックルボールを投げることがあり、『実況パワフルプロ野球』などゲーム類でもナックルが収録されていることがある。近年かつ一軍で実績があるといえる選手ではこの人くらいか。
ただし山崎本人によれば「(先述の特性から)投げたとしても、無視できないほどパスボールになる可能性が高い」として、試合登板の際には投げない前提でピッチングを組み立てているとのこと。
もっと昔だとナックルありでピッチングを組み立てていた名投手は何人か存在し、「元祖・七色の変化球」若林忠志、同じく阪神黎明期に活躍したジーン・バッキーなど。「17歳の新人王」「怪童」尾崎行雄もナックルを覚えたことで緩急をつけられるようになり、160km/h出ていたとも170km/hともされる直球一本槍でなくなったことを本人も非常に喜んだと伝わっている。ロッテの小宮山悟の「シェイク」も低速で揺れるボールとする証言からすればナックルボールの一種か。

NPB以外だと関西独立リーグ・吉田えりがナックルボーラーとして入団時に話題を集めた歴史もあるし、伊藤智仁が再起をかけてナックルを習得しようとしていたことがある*1など、実は意外に日本人ナックルボーラーは多かったりする。
寧ろ問題は習得難易度よりも「捕手が捕りづらい」という変化の特性にあったりする。

類似球種として、無回転に近いパームボールが存在し、こちらは帆足和幸(元西武→ソフトバンク)など使い手は少なくない。ただし彼はフォームの関係上パームが特に横方向に変化するのでスライドパームと呼ばれていた。
また、ナックルに似た握りでカーブ回転をかけて投げるナックルカーブという球種も存在する。ちなみにナックルボールはボールの回転を抑えて投げるのに対し、ナックルカーブはボールに強い回転をかけて投げるため、両者の性質は全く異なる。

楽天で活躍した小山伸一郎が投げ、後に涌井秀章に伝授した球は以下のように判別不可能だった球種であったが、回転がかかっていて速度が出ていることからナックルとまで呼ばれることはなかった。
打者「くそっ、ストレートっぽい変化球だけど球種がわからん」
小山「俺もわからんからとりあえずシンカーで」*2
捕手「俺にもわからんけどシンカー」
解説「シンカーと言ってる」「わからん」「わかんね」*3
涌井「小山さんから教わったからこやシン」
プロスピA「こやシンで実装します」


【二次元におけるナックルボール】

『魔球使い』ということで、ナックルボーラーは漫画などでは格好の素材。
その反面、意外にも「本当にナックルしか投げない」タイプは稀で、どちらかと言えば緩急をつけるために直球と併用する感じの描写が多い。
下述のウェイク国吉の他、『MAJOR(無印)』の阿久津のように前者のタイプのナックルボーラーもいないわけではないのだが…

解雇寸前の外野手だったウェイク国吉が、二軍で猛特訓しナックルボーラーとして復活
優勝に貢献するというエピソードが描かれており、かなり熱い。

《ヒーローインタビューより》
ウェイク『僕の場合、中3日、いや2日でも投げられますよ』

監督「…ということは、計算できる投手が一気に2人現れたのと同じだな」

「ドカベン」の終盤、東郷学園の小林真司が窮地に際し、徳川監督の檄に応じた捕手のサインで一投だけ放った。しかし練習でも捕球がままならなかった様子で捕逸して振り逃げにされ、試合には敗退。それが高校時代描写された小林の最後の試合になり*4、この頃完成度を上げられたのかは不明。

「大甲子園」デビューの犬飼知三郎は「プロ野球編」で通称『ドックル』を使用する。
大甲子園時代にその構想があったかは謎だが、超進学校のワンマンエースだったので例え投げられても当時のキャッチャーがまともに捕球できたとは思いにくい。
プロでは先に西武ライオンズにいた山田と入団早々からバッテリーを組み、速球派の蔵獅子丸と三人一組で起用された。

「ドリームトーナメント編」では、高校卒業から日本を離れてメジャー2Aで野球を続けていた小林がスーパースターズ入りしてナックルを多投している。
高校の内はやはり多投はしなかったのか、小林がナックルボーラーに変わった情報はスーパースターズのみならず国内に全くなかったらしく、突然の帰日とスタイル変貌を驚かれ、
チームメイトになった里中には「中学時代、俺に速球派の道を諦めさせた小林とは思えない」とややマイナスの感慨を覚えられた。

  • 実況パワフルプロ野球(サクセスモード)
なんといっても阿畑やすしだろう。
「ナックル*5を決め球にする」「球速はさほどでもなく、ナックル以外の変化球にも乏しい」と一般的なナックルボーラーに近い選手能力をしており、まさにパワプロにおけるナックルボーラーの代表格と言える。
変わったところでは鈴本大輔もナックルボーラーだが、こちらはナックルなしでも本格派投手としてやっていける能力があるうえで7段階中変化量4が基本なためいろんな意味で異色のタイプ。

ナックルベースのオリジナル変化球持ちとして阿畑の他にアルヴィン・ロックハート、史門泰司(ともに同作のSFF並みの球速が出る高速ナックル)、泡瀬満里南の選手兼任ver.(球速の能力に関わらず110km/h程度が上限の、さらに遅いナックル)などがいる。ストーリーのメイン格キャラばかりなのはやはり球種としての知名度か。
ナックルは史実に比べて明らかに弱いけどこれらは観戦モードやペナントのオートモードでも強い、なんて失礼な意見も…
意外にも野球漫画でおなじみの「フォーシーム並みの球速が出る超高速ナックル」はパワプロでは数が少なく、『アプリ』のオクタヴィアの登場までは先述したように「揺れるスプリット」に近いものが大半であった(史門のものは150km/hを超えているが、このバージョンの史門はそもそもの最高球速が速い)。
結果的にフリート高校は投手の固有キャラが事実上3人いるうち、2人がナックルボーラー*6とパワプロどころか野球もの作品でもかなり珍しい投手構成の高校となっている。

【野球以外では】

上記の通り野球ではキャッチャーが捕球する必要があるため、無回転による不規則な変化はメリットとデメリットの両方を持つのだが、捕球を必要としない、相手に拾われないようにする競技では不規則な変化はメリットが大きいためよく用いられる。
バレー、卓球、テニスといった競技では「回転をかけないサーブ」が使われている他、サッカーでも「回転をかけないFK」「回転をかけないシュート」は主流となっている。
サッカー漫画の「シュート!」にも同じ原理の『ナックルシュート』として登場している。

  • 広瀬清隆
家が貧乏で兄弟が多くいるため、小さい頃サッカーボールを買ってもらえず、一人でいるときや兄弟と遊ぶ時にはゴムボールでサッカーをしていた。
結果として自由自在なコントロールを身につけている。
劇中では、ナックルシュートで白石健二と白石のフォローに回っていた久保嘉晴を翻弄する。ある意味、久保を殺したシュート。


追記・修正はナックルボールを完成させてからお願いします。

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最終更新:2026年05月04日 21:33

*1 ただし結局うまくいかず、そのまま「ケガから復活できなかった」形で引退に追い込まれてしまった。

*2 投手の変化球は自己申告制である。

*3 実際に解説者は全員「変化するストレート」「ツーシーム」「スライダー」「カーブ」「フォーク」「シュート回転した何か」「チェンジアップ」「シンカー」と全員バラバラ。本文に記載しているのは解説することを放棄した3名が実際に言った内容である。

*4 3年夏の県予選では不知火の白新高校に敗けた模様。

*5 厳密にはわずかに落ちる度合いが異なるオリジナル変化球『アバタボール』。

*6 本来の先発投手担当である梶は投げられない