ギュンター・プロイツェン

登録日:2014/04/10 Thu 02:49:50
更新日:2025/01/13 Mon 22:30:48
所要時間:約 5 分で読めます




ギュンター・プロイツェンは、『ZOIDS』シリーズのガイロス帝国で優秀な手腕を持つ摂政であり、『ゾイド -ZOIDS-』、漫画家の上山道郎氏の『機獣新世紀ZOIDS』、そして旧トミーと小学館による『バトルストーリー』全てで暗躍するキーパーソンでもある。


人物像と生い立ちの相違が作品毎にとても激しいので、アニメ版・漫画版・バトルストーリー版の順で説明する。



【アニメ版】

「この大陸に国は二つも必要ない」と、独善むき出しの野心家で一点の曇りもない清々しいまでの悪役として登場。

「人間が生きていく上では必ず誰かしらに迷惑をかけているものだ」

病床のツェッペリン皇帝に忠誠を誓うふりをして、この時点ではクローンだったデスザウラー復活を立案。
「皇太子のルドルフにもしものことあらば、皇位はプロイツェンに譲る」というツェッペリン皇帝の遺言を現実にしようとルドルフの命を幾度となく狙い、皇位簒奪を画策する。

過去にはガイロス帝国軍 三個師団を展開して、とある黒いオーガノイド(のちのシャドー)のカプセルを捜索。
バンの父ダン・フライハイト少佐の部隊が先に発見していたと知るや、直属部隊を率いて出撃し、ウインドコロニーの住民を人質として武装解除とカプセルの引き渡しを要求した。

ダンはこの要求に応じるつもりだったが、彼の部下が独断で黒いオーガノイドを覚醒させて逃がしたため、部下たちに攻撃命令を出すもコマンドウルフ1体相手に全滅。無理をし過ぎたダンと初代ジーク*1を死に追いやった。

部下たちと撤退中に少年に銃を向けられたが銃は安全装置がかかっており、発砲できなかったその少年に興味が湧いて連れ帰り、“レイヴン”という名を与えて自分に忠実な兵士へと仕立て上げる。

ルドルフ皇太子の暗殺は失敗したものの、ガイロス帝国の全権掌握と復活に成功したデスザウラーを利用して惑星Zi全土の支配*2へと野心を拡大させた……………が、バン・フライハイトが駆るブレードライガーに撃破されてしまう*3



  • ガーディアンフォース編
しかし、奴は生きていた……!

倒したと思われたデスザウラーのゾイドコアと融合することで生き延びており、『ダークカイザー』を名乗って、ヒルツやリーゼを従えて暗躍。
その野望もパワーアップし、デスザウラーになるという野望を引っ提げていた。

だが、その天下は長続きしない。

デスザウラーのゾイドコアを守る卵の殻でしかないプロイツェンは、最後の最後でヒルツの裏切りに遭い、ゾイドコアに完全に取り込まれるという余りの凋落っぷりを遂げたのである。

「なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

ネタキャラ扱いがデフォルトになったのであった。



【漫画版】

身一つでPK師団を設立した「最高の政治家」。

続編の回想を見る限り、「自分に力を貸してくれる」人材を文字通り自分の足でせっせと探していた*4ようで、プロイツェンのおかげで帝国の統治と国民の生活が目に見えて安定したことをルドルフが語ることからもカリスマと実力、政治手腕の高さがうかがえる。

自称は「全てのゾイドに安らかな眠りを与える者」。

能力向上と引き換えに「ゾイドコア」を停止させるシャドーと共に生まれてきたことが示唆されている惑星Ziの最初の生命体『ゾイドイヴ』から直接生み出された第1世代ゾイド。

まあ、ゾイド星人*5も、我々にとっては人型のゾイドなので何もおかしな話ではない。ただしゾイド星人*6に自覚があるかどうかは疑わしいなかで自称するくらいだし、プロイツェンにはゾイドコアがあるのだろう。「シャドーキー」を作り出すこともできるらしいし。

作品自体が打ち切りに終わった上に、作者が自身のHPで掲載していた続編も長期休載中なので多くは語れないが、性格に関しては後述するバトスト版に近いと思われる。






【バトスト版】


この節ではファーストネームの「ギュンター」と呼称する。

彗星と衝突した衛星の質量の一部が砕けて隕石群と化し、まだゾイド星名義だった頃の惑星Ziに降ってきた大異変「グランドカタストロフ」でしっちゃかめっちゃかになったガイロス帝国を再建した手腕と、暴徒鎮圧のため自らゾイドを駆るその献身ぶりから民衆からの絶大な支持を得た。

ガイロス帝国が落ち着いたあとに養育を任され、即位したての幼帝ルドルフからの信頼も厚いガイロス帝国摂政の家系である大名門の当主であり、一人息子のヴォルフ・プロイツェン*7が身を置く国防軍の元帥も務める傑物。

国家建て直しが一段落するや、大半を旧ゼネバス軍出身が占める私兵集団『PK師団』に政敵を片っ端から粛清させて議会掌握。更に密かに実質的な自身の私兵である鉄竜騎兵団を作って息子を隊長に据えるなど、ギュンターは次第にどす黒い行動を繰り返すようになる。

尻切れトンボの決着という名目で「第二次大陸間戦争」*8を開戦。初戦こそ共和国軍を封殺したものの、伸び切った補給線による退嬰、双方の新技術や新兵器投入により戦線膠着。
本土を空にするほどの戦力投入を行った共和国軍によってパワーバランスが逆転し、ガイロス本土を舞台する消耗戦に移行。

Zi歴(ZAC)2101年、ギュンターはガイロス帝国に反旗を翻す
帝都ヴァルハラを占拠と同時に出生も公表した。



以下、衝撃のネタバレにつきスクロール。



























諸君……我が名はムーロア。
ギュンター・プロイツェン・ムーロア。
ネオゼネバス帝国初代皇帝である



ギュンターは亡きゼネバス帝国皇帝、ゼネバス・ムーロアの忘れ形見、ヘリック共和国初代大統領の甥である。

出生を明かした後、「ギュンター・プロイツェン・ムーロア」と改名*9し、自身の初代皇帝即位とネオゼネバス帝国建国を宣言する。

母がプロイツェン家の令嬢であったために、大異変でのプロイツェン一族壊滅で棚からぼた餅同然に家督を継承した幼い頃から、ギュンターはゼネバス復活を至上命題としていた。そのために前々から父の無念を晴らすためにヘリック共和国とガイロス帝国を共倒れに追い込む下準備を進めていたのだ。勿論、彼がゼネバスの隠し子であったことは、彼のごく一部の家族等以外、ほとんど知られていなかったようである(これが周囲に知られていれば、プロイツェン家継承や摂政就任など到底、ありえなかった)。実父がゼネバスであるが、そのような事を周囲から微塵も疑わせなかった事からすると、実は血の繋がらない義父(母の連れ合い)がおり、周囲からはそちらが実父と認識されていたのかもしれない。

国家と民衆に献身する帝国臣民の鑑を装い、絶大なカリスマと人気を得て政敵を粛清し続けたのも、PK師団が旧ゼネバス帝国軍将兵の再就職先の様相を呈していたのも、鉄竜騎兵団を息子に与えたのも。
戦争序盤に共和国軍に大勝したにも関わらず、自軍の補給線を細らせ共和国の逆転を許した*10のも、国力を分散させるかのような新技術・新兵器の開発にこだわったのも、すべてはゼネバス帝国復活のため

この壮大な茶番劇に対して両軍は連合軍を結成し、ガイロス首都ヴァルハラに居座るPK師団と交戦を開始。
文字通り体を張って善戦していたPK師団も怒り心頭の連合軍の攻勢を捌き切れなくなり遂に全滅。人質にとられながら決死の一騎打ちを挑んだルドルフをギュンターは性能と技量、経験の差、そしてブラッディデスザウラーで圧倒するが、取り逃がす。
ギュンターを追い詰めたと誰もが思ったが……。



徒手空拳から40年。この程度の覚悟なくして、遂げられる望みとは思っておりません


PK師団全滅後、ギュンターは最期の仕上げとばかりにブラッディデスザウラーと共に自爆を敢行。

ヴァルハラ占拠も、連合軍相手に戦ったのも、鉄竜騎兵団が中央大陸上陸・掌握を完了するまでの時間稼ぎ*11

ルドルフと辛うじて駆け付けたシュバルツの死に物狂いの巻き返しで、ルドルフの抹殺と連合軍全滅こそ失敗に終わったものの、ヴォルフ・プロイツェン改めヴォルフ・ムーロアと、彼率いる鉄竜騎兵団に後の事を全て託したギュンターたちは、連合軍の戦力の大半と帝都ヴァルハラその物を道連れとして不完全体デスザウラー数体分からのエネルギー供給を受けたブラッディデスザウラーの自爆による大爆発の中へと消えた。

ブラッディデスザウラーが爆ぜた刹那、目的を達成した孝行息子、ヴォルフへの期待と不安の板挟みになっている優しい父親、ルドルフに対する後悔に苛まれる良き宰相という複雑な心境のまま壮烈な生涯に幕を閉じた……。

その後、第二代皇帝に即位したヴォルフによってヘリック共和国は解体され、中央大陸全土はネオゼネバス帝国となる。



余談

バトスト版のギュンターは、父の無念を想ってゼネバス帝国復興のために暗躍し続けた末に自らの命まで捨てた、哀しくも熱く激しい「漢」であった。

確かに劇中での所業自体は許されるものではないが、ルドルフが認める信念や散る間際の心境からは優しい人柄だったと推測できる*12

そんな彼には彼も知らない腹違いの姉がいた。

旧名エレナ・ムーロア。またの名をヘリック共和国大統領ルイーズ・エレナ・キャムフォード。
そう、ゼネバスの旗こそ翻らなかったが「ゼネバスの血筋による中央大陸の統一」というプロイツェンの悲願はとうの昔に果たされていたのだ。
そのことを知らないプロイツェンの意志を継ぐヴォルフによって中央大陸の民は分断された。
愛し合いながらも全国民を巻き込んだ殺し合いをやめられなかったヘリックとゼネバスの因果は子孫に受け継がれた。
ルイーゼ大統領が「呪い」と思わずにはいられなかった因縁は再び泥沼の内乱を引き起こしたのだ。

エレナ大統領が姉であることをギュンターが知っている」というifが招く結果は、誰にも分からない……。

エレナ大統領は「今更国民が納得しない」と和解を断念しているが、ギュンターが開戦前にこの事を知っていれば、姉とルドルフと共に戦乱の時代を終わらせただろう。一方でヘリック共和国とガイロス帝国に牙を向く危険性もあった。



アニメ版とのあまりの相違ゆえか、『綺麗なプー様』なるあだ名までついてしまったが、それ故にギュンターは多くのファンから「漢」として認められ、高い人気を誇ることなる。。
おふざけ同然の字面だが、忘れないでもらいたい。
バトスト版のギュンターはそんなあだ名がついてしまうほどの素晴らしい漢であったということを。




追記・修正はギュンター先帝陛下を偲ぶ忠実なネオゼネバス帝国臣民の皆さんにお願いします。

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最終更新:2025年01月13日 22:30

*1 バンの相棒である方のジークの名の由来であるため

*2 デスザウラーに操られているプロイツェンは惑星Ziに破滅をもたらそうとしている

*3 結果的にバンは仇討を果たした格好となった

*4 PK師団の結成以前の時期かどうかは不明

*5 ゾイド星人=惑星Zi固有の人類。初代シリーズで「ゾイド星」と呼ばれていた頃の表記

*6 ゾイドコアを有していない。漫画版以外の媒体では「ゾイドではない小動物が生存のために頭脳を発達させた」説が有力候補になっている

*7 便宜上であり公式名義になっている記述では無い

*8 別名「西方大陸戦争」。ガイロスとヘリックを隔てるダラス海が電磁嵐吹き荒れる魔海と化して通行不可能になり、西方大陸ことエウロペ大陸を通って中央大陸に攻め込むガイロス帝国軍の動きを察知したヘリック共和国軍と鉢合わせ同然に開戦したためこの名がついた。

*9 「ギュンター・ムーロア」と改名するべきなのだが、何故か母方の姓をミドルネームとして残している。母親に対し思うところがあったのかもしれないが、これに関しては終ぞ明かされず、謎のままで終わっている

*10 「勝って見せなければならない」アンダー海海戦では「目立たぬように、わざと負けることに比べれば児戯にも等しい仕事だよ」と側近に語り、事実旧式機であるシンカーを大量に配備して一瞬の隙に全機投入することで完璧な勝利をおさめたように共和国を粉砕するだけなら容易であったらしい。

*11 当初はもっと疲弊するのを待ち、鉄竜騎兵団がヘリック、ガイロス両軍を殲滅する予定だった。事実共和国軍も冬を越す規模の長期戦を想定していたが、状況を踏まえて総攻撃に切り替えた。シュバルツが独自に共和国と接触するなど不安定要素もあった。しかしギュンターは柔軟に計画を流動させ、ヴォルフに託す予定のデスザウラーを正規軍に譲ることもためらわなかった

*12 「指導者に向かない」と評される息子は優しい性格をしているし、実父ゼネバスも遠出をして大事故を起こした兄を庇う心優しい少年だった