登録日:2009/08/09 Sun 23:16:15
更新日:2020/07/14 Tue 13:50:38
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塩とは、塩化ナトリウムを主成分とする結晶体。主に料理の調味料や保存料として用いられるほか、工業用や氷、雪を融かすためにも使われている。
古来より生活の必需品であり、知らない人は居ないであろう。
一見塩はどれも同じに見えるが、実は粗悪な塩もあるので注意が必要である。

塩産業は昔から組合や業者と国との対立が絶えなかった事業である。
なぜなら、摂取過多には注意だが*1塩は体に必要な上にいつの時代でも必ず供給があり、金持ちも貧乏人も等しく必要な生活必需品である。
なおかつ海水や岩塩が原料なので原価はタダ同然(無論人件費や設備投資などはかかる)。
いわば無限に金を生み出す事業と言っても過言ではないので、国が目を付けるのは当然。
その上、海水であれ岩塩であれ、作るには相応の生産設備や人員を必要とすることから産出地を監視しやすい。
そのため古くから国家専売や税金対象とされていた。

特に中国では太公望の時代から重要な流通・課税対象とされ、国と塩商の綱引きが多く行われた。
安易に値上げすれば、安い密造塩を売りさばき利ザヤを稼ぎ庶民に感謝される「塩賊」なんてのも出たくらいで、一説には関羽は塩賊だったという説も。
末期の唐王朝は専売制実施後、安易に値上げされた塩の値段が10倍以上に跳ね上がってしまい、
黄巣という塩賊が人々の人心を集めて唐に反乱を起こし、唐を滅ぼし五代十国時代に突入するなど、塩で国が動いた例すらあった。
古代ローマでは兵士の給料として支払われていたことがあり、英語のサラリーの語源である。

戦略物資としても重要であり、必需品であるがため自前で塩を生産できない内陸国などは、塩が手に入らないとなれば正に亡国の危機に陥る。
「敵に塩を送る」の故事で有名な上杉・武田の関係であるが、無論上杉氏が「お届け物でーす!」と武田氏に塩を送ったなんてそんな平和なお話しではない。
武田・北条・今川による「甲相駿三国同盟」を破棄した武田氏に対して、塩商人が甲斐に行かせないようにする「塩止め」を行った今川氏。
それまで塩の調達を今川氏の領地である駿河から頼っていた甲斐ではたちまち塩不足に陥り、領民は生活が立ち行かなくなってしまう。
それに対して上杉氏は、自国からの塩商人の往来を制限することなく通し、尚且つ塩不足に付け込んで若干の高値で売りつけた。というのが事実。
物不足に付け込んで暴利を貪ったが(もっとも敵国なので安く売るわけがないが)、上杉謙信の人柄から話が美談となっただけ*2

日本においては前述の通り海塩が主だったわけだが、これも平坦だったわけではない。
ヨーロッパの様に岩塩などには恵まれないため、前述の様に内陸地では塩をどう確保するかが問題になりやすかった。
また、海塩についても降水量も多いお国柄なので天日干しでローコストで製塩出来る環境は少なく、
煮詰めなくてはならない以上かなりの高値になったり量が確保出来ず、近代化で需要も増えたことで島国でありながら昭和においては必要量を確保できず輸入に頼っていた。
そのため太平洋戦争前後の連合国との貿易停止時は深刻な塩不足に陥り、自家製塩を認めるなどの動きがあった。
この時の自家製塩は不純物が多く工業用としては不向きな塩が多かったと言われている。

昭和20年代後半には流下式製塩法が行われるようになったが、これでも外国の塩と比べてまだ高値で不純物も多く、工業用途での使用は難しかった。
しかし、1972年にイオン交換膜法が出来てから一変した。
イオン交換膜法とは海水を電気分解して塩化ナトリウムの結晶体のみを取り出す方法である。
これにより外国と比べて一般的な純度・値段の塩の国内製造が可能になり、
食塩として販売するようになったり施設の本格導入開始時に、国は流下式製塩法による塩の製造を廃止した。
欠点としてこのイオン交換膜法は天然塩に比べ純度が高すぎ、天然塩の不純物が生み出す旨味や風味に乏しいため、現在でも天然塩の製造や輸入は一部で行われている。


ちなみに現在では塩専売法は廃止され塩田も一部復活し、2002年には海外からの輸入も自由化された。


ここまでは主に中国・日本の塩事情の話なので海塩が主だが、
他にも岩塩・塩湖・井塩(山塩とも呼ばれる塩を含んだ温泉から製塩)・その他(海藻や植物の灰などから製塩)などの種類がある。
また、現代では同じ海塩でも強風や温風で水気を飛ばして生成する場合もあるなど、イオン交換膜法に限らず製塩方法も増えている。



アニメでも塩不足での話が作られたことがあり、「機動戦士ガンダム」では、ホワイトベースが食糧の補給を満足に受けられない上に倉庫の被弾で塩を喪失。
オデッサへと向かうユーラシア大陸の砂漠のど真ん中でなんとか塩湖を探し塩を確保しようと奮戦する話がある。




以下お勧めの塩

最進の塩
専売法が廃止され「株式会社 最進の塩」が作った純日本産の天日塩。
値段は業務用で1kg約1300円(2009年現在)と高めだが、これが流下式製塩法を行っていた頃の塩の値段。
手間をかけて作られたこの塩はまさに万能であり絶品と言える。
コレを使った塩揉み唐揚げとビールの組み合わせはまさに…

海の精(赤ラベル)
伊豆大島産の塩。
この塩の特徴はミネラルを大量に含ませるように作っているのがポイントである。
値段は500gで約1200円とかなり高めだが、間違いなく最高クラスの塩である。
因みに青ラベル(名称は海の晶)は完全自然乾燥で作られたものである。

雪塩
塩なんざ大して変わらんわー…って言う人こそ是非一度味わってみよう。
柔らかな塩の味わいが舌の上で雪のように後を引かず消えてゆく感触は驚愕物。
料理に使うのは些か勿体無いので、採れたての生野菜にかけて食べよう。

伯方の塩
コストを抑える為にメキシコの岩塩を海水で溶かし再結晶化してミネラル・マグネシウム等を加えた塩。博多じゃないよ、ついでに日本ですらないよ。
所謂再生自然塩と呼ばれるもの。
もちろん天日塩には及ばないが安価で手に入るので、懐に余裕の無い人にはお勧めである。また、なたぎ武がCMのものまねをやっていることでも有名。
2019年には「は・か・た・の・し・お!」のサウンドロゴのためだけに声優をオーディションで募った。

シママース
沖縄在住の方にはお馴染みかもしれない一品。
シマ(島)マース(塩)という意味で直訳すれば島の塩。
コレも再生自然塩なのだが、なんとこの塩は場所によっては100円台で買える代物。
九州・沖縄以外に普通に売ってるかは不明だが、見かけたら是非買ってみよう。(北海道にも売っていたので恐らく全国に有るかと。)


以下買ってはいけない塩

安くて不自然な色の塩
あたかも天然っぽい茶色い塩はまず裏の表示を見てみよう。
アンモニウムが入っていたりする。
とはいえ、例えばこの塩化アンモニウムだが自然産出もあったり、食品添加物として膨張剤に使われることもある。
あの有名なサルミアッキにも使われている辺り*3、多少食べたところで人体がどうにかなるものではないのでご安心を。
とはいえ匂いとエグみから普通は肥料や工業用途に使うものではあり、ダイオウイカのエグみもこれだとか。




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最終更新:2020年07月14日 13:50

*1 調味料として直接・間接問わず広く使われていることと、味の濃いものに慣れると薄味に満足しにくくなるため、そういった人は比較的塩分摂取過多になりやすい

*2 南(今川)と東(北条)から塩を止められても、西(織田)から塩商人が来ていたので北(上杉)の塩商人は大して暴利を貪れなかったのでは?とすら言われる

*3 というよりもサルミアッキの名前には『塩化アンモニウム』の意味もある