万仙陣(相州戦神館學園 万仙陣)

登録日:2015/10/02 (金) 04:50:00
更新日:2024/10/17 Thu 19:27:28
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「いいぞいいぞ、好きに夢を思い描け―――そのときおまえは、おまえの中で世界の勝者だ

俺はおまえの幸せを、いつ如何なるときも祈っている!」








黄錦龍が使用する邯鄲の夢
協力強制が容易であるという性質から急段である…と思われる(終段であれば協力強制を必要としない)のだが、地の文や静乃の見解では終段とされているなど正確な区分はできていない。
おそらくは神格「四凶渾沌・鴻鈞道人」を基にして急段の形で能力を行使しているという捉え方が最も近いのだと思われる。



その効力は協力強制に同意した人間をそれぞれが思い浮かべた理想の世界へと誘う、万人にとって最も幸福な夢の世界である。








◆能力
協力強制の成立条件は、黄錦龍の「人は己だけの閉じた世界の中で幸せになればいい」という人間賛歌の願いに対して「良い夢を見たい」と同意してしまうこと。条件の成立と共に対象となった人間は夢を見る。彼らが本当に望むもの、それらすべてが叶った美しい夢を。

家族を失った者は家族とともにすごす日常を夢見るだろうし、一攫千金を夢見る博徒は巨万の富を得る夢を見るだろう。
人との絆を欲するならつながりを与える。独りを望むならそれも然り。動かぬ身体を厭う老人は若く活力に溢れた身体へと変貌する。
人生に後悔を残した人間は過去へと戻るだろうし、辛い過去を持つ者はそれを改竄するかもしれない。
先に述べたようにこれこそが理想世界。誰もが希求する夢である。





◆対抗手段
したがってこの夢に対抗できる人類はほとんど存在しない。
多くの人間は夢を信じ、それを現実にするために困難に挑戦し自己を磨いているし、逆に歩みを止め諦めている人間もそれぞれに欲する夢がある。
仮に理想の具現たる万仙陣を否定し、「黄錦龍に勝ちたい」と思っても万仙陣はそれを「願い」と捉え夢の中で黄錦龍との戦いを具現しその果てに勝利してしまう。「困難の道を」「自分はこんな世界望んでいない」「死にたい」という選択肢も同様。万仙陣はその一切を叶えてしまう。



万仙陣に嵌らない人間がいるとすればそもそも知性を持たないか、勝ちたいと思うと同時に「現実は甘くない、そんなに上手くいくはずがない」と強固に精神を武装できる狂人くらいであろう。しかし、前者に百鬼空亡は該当しない。彼にもまた心から欲する願いを持つがゆえに。そして、後者の中でも最たる存在である盧生すらも油断すれば嵌り得るとされる。











◆正体
ところで夢を見ている最中、現実の肉体はどうなっているのか?

実はこの夢にあてられた者は自分の思い描く最高に幸福な夢を見るが、現実の肉体は異形の触手へと変化してしまう。
また嵌った人間は自分の夢を守ろうとして無数の廃神を生み出す性質もある。
もっとも一般人の生む廃神は杜撰な二次創作レベル、本物の神格と比べれば大した脅威ではない……ただしその物量は別として。
盧生中最大の破壊力を叩き出す甘粕正彦ですら、その廃神の軍勢を削り切るには百年千年はかかると見積もられており、また総ての廃神の死は即ち万仙陣にて夢に沈んでいる圧倒的多数の人類の死と同義である。
また盧生を想ってその廃神を召喚すると盧生本人がそれを乗っ取って現れるので危険性もはらむ。しかし…


錦龍自身には戦闘の意思が全く無いが、盧生同士の戦いが支持者の取り合いである以上、対峙する盧生は必然、圧倒的不利を強いられることになる。
彼以外の盧生が如何なる標を掲げようと願いの一切を肯定する万仙陣の普遍性を超えることはできない。…否、仮に彼の眷属たちが生み出した廃神を全て退けたところで干渉不能の無敵の仙王は崩れない。彼の仙境に亀裂を与えられるのは世に唯一の―――


時間が経つにつれ黄の支持者は世界に広がり続け、そして彼らは夢を見ている間生命活動すら止めていずれ衰弱死してしまうので、黄錦龍を一刻も早く倒し万仙陣を解かなければ世界が滅ぶ。
















幸福度だけで言えばおそらく正田崇が書いてきた神格・盧生の世界法則の中でも最高である。次点でサタナイルの悲想天。
当の黄自身も混じり気のない善意と絶大な人類愛で夢を具現している。
故にその夢は優しく、そして皮肉にもその救済の願いは世界を滅ぼすのだ。阿片が齎す幸福の中で焼け落ちた彼の故郷、黄錦龍の原風景のように。







追記修正は現実を生きる人にお願いします

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最終更新:2024年10月17日 19:27