三部作通して最速の登場を果たす。
クレイトの戦いから一年、相変わらず荒ぶった戦闘スタイルでムスタファーの抵抗勢力を一掃する最高指導者カイロ・レンはあるシス・アーティファクトを探し求めていた。
オープニング・クロールで前作、前々作で気配すら感じさせなかったダース・シディアスが突如銀河に向けて宣戦布告同様に自身の生存を明かしたことから、自身の覇権への脅威として元銀河皇帝が潜む惑星エクセゴルへと導くベイダーのウェイファインダーが必要だった。
速攻でただ一人エクセゴルに殴り込みをかけたカイロ・レンは、ゾンビのようなおぞましい外見で生き延びていたシディアスと対面する。EP 7全編で展開するレジェンドを探し求めるあらすじが五分で終わってしまった。
慎重に薄暗いエクセゴルのシス要塞の中を進んでいくレンの脳内に語り掛けるシディアスはスノークは彼が作った幻であり、彼が昔から脳内で聞いていたスノークやベイダーの声は全て彼であったことを明かした。
ものものしい廊下から開けた空間に出たレンを迎えたのは、修道士のように顔も隠した匿名の召使たち、そしてあのスノークが全裸の状態で何体も培養液で満たされたタンク中に、まるでクローンであるかのように鈴なりになっていた様であった。
シディアスが古代よりのカルトであるシス・エターナルの協力で密かに築いていた銀河史上類を観ない規模の大艦隊「ファイナル・オーダー」および新たなる銀河皇帝の座と引き換えに、レイの抹殺指令と彼女の真の正体を聞かされる。
時を同じくしてジェダイ最後の希望であるレイは、マスターのルーク・スカイウォーカーがフォースの冥界へと旅立った今、彼の妹であるレイア・オーガナからジェダイの修行を受けていた。
共和国時代から伝統であるトレーニング・リモートとの訓練中、思い通りにいかない苛立ちが募ったタイミングでレンによるフォースの波紋(恐らくベイダーの遺骸を依り代にしたと思われる)が届く。
この時双方はフォースが見せた不可思議なヴィジョンを目撃するが、この時ベンが見たのは断片的な過去の記憶がつぎはぎになったフラッシュバック、そして「貴様が殺した」「ベン!」というⅤのルークの発言とⅦのハン・ソロの呼び声だった。
またこの時、ムスタファーにおいて何かを脳内で見せられているのか両眼をつぶって頭を振るカットも一瞬映っているため、少なくともスノークに指摘された「父の影」を未だに吹っ切れていない。
その後、自身が最高指導者として君臨したファースト・オーダーでは、レンの騎士団(スターキラー基地の戦いやクレイトの戦いの最中は別の任務で留守にしていた)をプレトリアン・ガードに代わる親衛隊に任命、上級将校たちを集めて情報共有などを可能とした最高評議会を設立していたことが明らかになった。
秘密主義のためにまとまった体系も特になかったスノーク体制では幹部同士の情報共有も不明瞭だったため、それを受けた改革であると思われる。
この最高評議会のその他大勢のような調子でひっそりと座っているという事実上の左遷を受けたハックス将軍を威圧し、自身に異議を唱えるクイン将軍をフォース・グリップで締め上げて天井に叩きつけるなど、かつて帝国内の処刑人として猛威を振るった祖父ダース・ベイダーに勝るとも劣らない貫録を見せつけている。
プライド将軍の発言からエクセゴルのシス艦隊がその時点のFOの軍事力を一万倍にも増大させるほどの強さを誇る事から、元皇帝から提示されたレイの抹殺指令をFO中に下す。
砂漠の惑星パサーナに同じくウェイファインダーを求めてやってきたレジスタンス一行の中にいたレイに、レンはクレイト以来のフォース・ボンドで接触を試みる。
レイを暗黒面に引き込むことを諦めてはおらず、本来は殺意はないことなどの言葉を交わす中、彼女の胸にかかっていた現地のネックレスをひったくる(前作で見せていた四度目のフォース・ボンドで示唆された空間を超えて質量が瞬間移動する能力の発展)事でレイたちの位置を特定。
レン騎士団を予め向かわせる中、自身は愛機のTIEウィスパーでレイに突撃をかけるが軽やかに交わされた上に片方の翼を着られたことでド派手に墜落&大炎上。
死亡したと思わせて自身のテーマ曲を盛大に鳴らしながら堂々と登場。FOの捕虜となったチューバッカが乗っていると思われる輸送船をフォース・プルで引き戻そうとするレイを、輸送船を押し出す形で妨害。
前作でアナキン・スカイウォーカーのライトセーバーの引き合いを彷彿させる互角の力勝負へと至る中、焦りや恐怖といった負の感情を爆発させたレイの指先から電撃が噴出し、輸送船を撃墜してしまう。
動揺しつつ逃走を成功させたレイを、レンは衝撃とも歓喜ともつかぬ表情で見つめる。
なお、別の船に乗っていた事で実は生存していたチューバッカと共に、レジスタンス側のウェイファインダーへの情報源となるシスの短剣を確保した。
C-3POのメモリーに残されたシスの短剣の情報解読のために雪の惑星キジーミへと赴いたレイ一行をFOの情報網で特定し、予め向かわせていたレン騎士団に町中を探索させる。
その一方で情報解読に成功し、チューイの生存を感知したレイたちは逆にレンの旗艦<ステッドファスト>に潜入成功していた。この際「女は近くにいる」とフォースで感じ取るレンは、当のレイが自分の部屋に思いっきり侵入している事に気づいていない。
短剣の実物を確保したレイとフォース・ボンドを確立させると、レイの両親は「『平凡』を望んだ何者か」である事や「シディアスの魔の手から守るために自分をジャクーに売った直後にシス・アサシンの手にかかって死亡した」という真実をちらつかせ、動揺したレイと空間を超えたライトセーバー戦を行う。
すんでのところでレイの脱出直前にステッドファストに到着したレンはハンガーでレイと対峙し、彼女こそがシス卿ダース・シディアス/銀河皇帝シーヴ・パルパティーンの血を継承する孫娘、レイ・パルパティーンであるという真実を明かす。
後ずさるレイにレンは「自身の母親はベイダーの娘・彼女の父親がシディアスの息子」という銀河中を恐怖政治で圧巻した銀河帝国のトップに君臨したシス・マスターとアプレンティスの血筋にあるとなぞらえる中、更なる真実を明かす。
自分たちはフォース・ダイアドであり、このフォースを通じた特別な絆はシディアスさえも認知していないと言う。
全ての黒幕であったシディアスをも倒すことで共にシスの王座につき、前作よろしく自身の手を差し出すことでプロポーズ誘いを持ち掛ける。
しかしレイはそれを拒否し、フィンらの機転によりまたもやレイの脱出を許してしまう。
シディアスからも「余のシス艦隊を貴様に向けさせるな」と脳内催促が入るが、シディアスからシディアス分のウェイファインダーの所在を聞いたのかレイが次に向かった海の月ケフ・バーへと単身向かい、
デス・スターⅡの残骸中のかつての王座の間でレイを待ち受ける。
ウェイファインダーを手にした際に完全に闇に身をゆだねた自分のヴィジョンを見て動揺し、レイは落としたウェイファインダーを確保したレンは「俺の母にジェダイとして顔向けできなくなった」「もう帰れないぞ。俺のように」と、母への郷愁や後悔ともつかぬ表情でレイが自分と同類であることを突き付ける。
唯一エクセゴルへと至るウェイファインダーのデータを手にしているレンはシディアスのウェイファインダーを素手で木っ端みじんに粉砕し、それに激怒したレイが襲い掛かってきたことでケフ・バーの決戦へともつれ込む。
何度か大波に襲われつつ、一年の間にそれぞれ腕を磨いていた二人の戦いは進んでいく。
フォースの新技を披露しつつ激情のままにライトセーバーを振るうレイと、それを全て受け止めるかのように淡々と対応しつつ着実に駒を進めるレン。
最終的にレイを圧倒したレンは倒れこんだ相手にライトセーバーを振り上げた瞬間、最後の力を振り絞ってフォースを通じて語り掛けてきた母レイアの声に動揺。思わず振り向いてライトセーバーを撮り落としたところで、その隙を突いたレイに起動した自身の十字のライトセーバーで胴体を貫かれる。
同時に二人はレイアの逝去を感じ、死を覚悟して崩れ落ちたレンは、自身の激情に身を任せたレイによる生命エネルギーを分け与えられることで腹の傷はおろか顔につけられた傷すらも治癒し、レイに混乱したような表情を向ける。
レジスタンス一行が去り、レイアの死を聞いたチューイの咆哮に重なる形でデス・スターⅡ残骸の先端に立ち尽くしていたレンは、聞き覚えのある「よう」という声に振り向く。
一年前、自分がこの手で胴体を貫いて殺したはずの父ハン・ソロが、あの時の格好そのままでそこに立っていた。
亡き父に「あんたはただの記憶だ」と返すが、「お前の『思い出』さ」と優しく語り掛けてくる。
言葉を交わす中でレンはあの時、勇気が無くてスターキラー基地でできなかった事、やってしまった事で溢れださんばかりの涙を必死にこらえつつ、父からの愛をしかと確認した事でシスのライトセーバーを背後の大海に投げ捨て、ベン・ソロとして帰還した。
その後しばらく出番は無いが、依然エクセゴルのファイナル・オーダー及び銀河各地の最高指導者が失踪したファースト・オーダーは着々と出撃の準備が始まっていた。
皇帝との決着をつけるために単身エクセゴルに乗り込んだレイと追いすがるレジスタンスがエクセゴルに強襲を掛けるが圧倒的な軍事力の差でレイとレジスタンスは共にシディアスの思惑通り闇堕ち・壊滅へと追い詰められる。
王座の間から上空で一機一機撃ち落とされて命を散らしていく仲間たちを見つめる事しかできない中、何かをもくろんで自身を殺して王座につくよう迫るシディアスに圧倒されて絶望するレイはその瞬間、エクセゴルに駆け付けたベン・ソロの存在を感じ取る。
ベンはかつておじのように慕っていたランド・カルリジアンから譲り受けたブラスターだけを武器に、着の身着のままで全速力でレイの元へと走っていく。その途中で待ち伏せをしていたレン騎士団に急襲され、六対一で絶体絶命のピンチへと追い込まれる中、レイと最後のフォース・ボンドが発動した。
追い詰められつつ、言葉を必要としない彼らはそのつながりの中で意思を交わし、ボンドを通じてアナキンそしてルークのライトセーバーを譲り受けた。一年前のスターキラー基地で自身が手にできなかった伝説の武器を手にしたベンは、軽やかな身のこなしで六対一の劣勢を大逆転で全滅させる。
王座の間へと乗り込み、同じく複数人のソヴェリン・ガードを相手に戦っていたレイを見つけ、ようやく対面を果たした(ちなみに要所要所で前二作で重々しく流れていたカイロ・レンのテーマをよりヒロイックにアレンジしたベン・ソロのテーマが流れるので要注目)。
スターキラー基地の時と違いまっすぐな意思が宿った顔つき、スプレマシー艦内のように予測のつかない未来へと身をゆだねた二人は全ての元凶ダース・シディアスに向かい合い、共に青い光刃のライトセーバーを構えた。
直後、圧倒的なフォースの力量差で武装解除させられ、跪かされた二人はシディアスにフォースの一対であることを悟られ、生命エネルギーを瀕死になるまで吸い上げられた。
レイより一足先に目を覚ましたベンは力を振り絞って立ち上がるも、アナキンに満足に抵抗できないままデス・スターⅡの大穴に投げ捨てられたことを根に持っていたシディアスに「余が落ちる時には最後のスカイウォーカーもまたそうなる」として稲妻が走る底なしの亀裂に放り込まれる。
死亡したかと思われたが、レイがシディアスを今度こそ滅ぼし、その余波でシス・エターナルが全滅したことで静寂が訪れた王座の間に、唯一生きていたベン・ソロが亀裂から這い上がって来た。
満身創痍で満足に歩けない状態でなんとかレイの下にたどり着いたベンは、ようやく触れ合う事ができたレイの肉体にもう光が宿っていないことを目の当たりにする。涙を流すでも咆哮をあげるでもなく、深い悲しみに顔を歪ませたベンはレイの身体を抱きしめつつ、ある事を決意する。
ケフ・バーでしてもらった瀕死の自分に生命エネルギーを分け与えるフォース・ヒーリングを、ベンは見様見真似の全力でレイに行う。精神を統一し、作業にひたすら集中するベンのその右手に、動かなかったはずのレイの左手が触れた。
自分の腕の中でもぞもぞと起き上がるレイを信じられない思いで見つめるベンは、顔いっぱいの笑顔で自身の名前を呼ばれた瞬間自分の顔にも笑みが広がる。様々な思いが込められた二人のキスは、最初で最後となった。
最後に浮かべたのはいつなのかわからないほどの、照れくさく最高に幸せな笑顔をみせたベン・ソロの表情から力が抜けていき、その身体はあおむけに倒れこんだ。
何が起こったのかわからないレイの前で、ベン・ソロの肉体は徐々に透明になっていく。時を同じくして歴代のジェダイたちと同じようにレイア・オーガナの遺体も消えた。
銀河の英雄レイア・オーガナ、ハン・ソロという両親のもとに生まれ、幼少期に抱えていた孤独の闇からダークサイドに転向し、カイロ・レンとして銀河中に苦痛を広めた男は、最後の最後に光を見出し、その命を愛する者にささげたことでその生涯を終えた。
その業績はアナキン・スカイウォーカーがかつて執着した「愛する者を死から救う術」であり、ダース・シディアスが不完全な技術で、そのマスターである
ダース・プレイガスがミディ=クロリアンの操作で一度は司ったとも言われるものでもある。
ジェダイらしい無私の精神・シスらしい生死の法則すら捻じ曲げた行いを、純粋な愛によって達成したベン・ソロはフォースと一体化したのである。