ダース・プレイガス

登録日:2020/02/13 Thu 08:00:00
更新日:2025/03/25 Tue 23:09:31
所要時間:約 35 分で読めます




「わたしはきみが銀河を作り変えるときの案内役を務めよう。われわれは力を合わせ、シスという星座を完成させる星となるのだ」



ダース・プレイガス(Darth Plagus)とは、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物の一人。


【概要】

映画本編ではEP3に名前のみの登場。
ミディ=クロリアンの研究家で、「不死の研究」を行なっていた、シスの暗黒卿であったという。
しかし、不死の研究を行なっていながら、弟子に寝首を掛かれて殺されてしまったとのこと。
これを話したのは銀河元老院の最高議長シーヴ・パルパティーンで、彼は「不死を研究していながら、自分の死からは免れなかった男の悲劇」として話していた。

その後、パルパティーンこそが現在のシスマスター、ダース・シディアスであることを明らかにし、それと同時に、ダース・プレイガスはシディアスの師匠であることが明らかになる。

とはいえ、シディアスは当時弟子のダース・モールダース・ティラナスにそれぞれシスの名乗りを許し、ティラナスを持ってからはモールの帰還をも拒絶するなど、「二人の掟」に忠実であった。
そのため、EP3時点ではプレイガスはかなり前に殺されているということで、当然登場しなかった。


スター・ウォーズ・シリーズはダース・シディアス/シーヴ・パルパティーンに対して、神秘性を優先してか過去について触れることを忌避するのが一般的である。
レジェンズに分類された旧来の設定では「『シーヴ』の本名はほとんど使わず『パルパティーン』で通している」「過去については皇帝即位後、情報操作で消した」などとされており、カノンに分類されて以降も、過去についてほとんど触れられない。
そのため、シディアスの人格形成に大きな影響を与えたはずのダース・プレイガスの詳細も、闇のベールの向こうに追いやられている。
カノンでもレジェンズでも、彼については「詳細不明」で通すのが、スター・ウォーズ・シリーズの暗黙の了解となっていた。




しかしごく希に、闇のベールも揺れるときがある。
2012年、アメリカで彼ら師弟を主人公とする小説「ダース・プレイガス」が発表されたのだ。邦訳は2018年に刊行。
そしてその小説にて描かれたダース・プレイガスの人生と人格、能力は、同じく掘り下げられたシスの哲学とあわせて、驚くべきものであった

以下は、レジェンズ作品「ダース・プレイガス」を基礎としてまとめていく。
なお、都合上小説作品の深刻なネタバレに関わるので、閲覧注意。




「“フォースは神秘に満ちた形で働く”などと口にするのは、自分の無知をさらけだしているようなものだ。
適切な知識と不断の努力により解き明かせぬ神秘など存在しない」



【人物】

俗名は「ヒーゴ・ダマスク(Hego Damask)」。
ダマスク・ホールディングスの社長であり、インターギャラクティック銀行グループにも強い影響力を持つ。
「マジスター・ダマスク」の二つ名でも呼ばれる。
シス卿としては、ビス*1の暗黒卿ダース・テネブラス(Darth Tenebrous)に師事した。


◆風貌

「青ざめた肌にしゃがれた声の、黄色い目をした老怪物に、という意味かね? きみの目の前にいるような?」

種族はムウン。
人間から体毛を抜き取り、縦に引き伸ばしたような種族で、縦に長細い頭部などが特徴。
著名な個体としては、映画本編でインターギャラクティック銀行グループの頭取であり、分離主義勢力/独立星系連合の幹部も努めた、サン・ヒルがいる。
(というより、サン・ヒルはプレイガス=ヒーゴ・ダマスクの部下であった)

プレイガス本人は、厳めしい顔付きをしており、間の抜けたサン・ヒルとは見た目からして風格が違うが、その他は一般的なムウンと懸絶した姿ではない。
作中では暗殺に巻き込まれて重傷を負い、途中から生命維持装置と呼吸マスクをつけた。


◆性格

「ダークサイドに堕ちた、あるいはダークサイドがこんな行動をとらせたと自分を納得させようという試みは、あわれな正当化に過ぎないのだ。だからこそ、シスは最初から闇を抱き、力の獲得に集中する。われわれは言い訳を口にしない」

シスの暗黒卿で、ダース・シディアスの師匠というからにはどれだけ狂暴な人物かと思いきや、実際は深思熟考型の哲学者タイプ
ミディ=クロリアンを遺伝子工学の側面から研究したり、シスの掟について受け継ぎつつもその是非について問答したり、シスの哲学をさらに昇華したり、
自分のマスターであったダース・テネブラスを倒した際には勝利の喜び以上にミディ=クロリアンの推移を気にしたり、シス候補として打ち負かしたダース・ヴェナミスを長年に渡り人体実験に供したりと、
フォースの研究者・哲学者としての色調が強い。

衒学趣味なところもあり、時間と余裕があれば講義中の大学教授よろしく(本人談)語り出す。
+ 「なにが起こっているのか、説明させてくれたまえ」
「すべての生けるものを作っている細胞は、ミディ=クロリアンという細胞小器官を有している。それは命のもとであるばかりか、わたしがフォースを探知し、使うことを可能にしてくれる。生涯にわたる研究により、わたしはミディ=クロリアンを操る方法を学んだ。そしてきみが所有するかぎられたミディ=クロリアンに、もとの場所へ戻るように指示したのだ。つまり、ベーシックで簡単に説明すると、ヴェルナ、わたしはきみを殺しているのだよ」
……暗殺の口上としては明らかに長い。どうやら衒学趣味もあったようだ。


もちろん、フォースの光明面との調和だけを訴えるジェダイとは異なる、暗黒面の没頭を是とするシスの暗黒卿なだけに、いざとなれば冷酷かつ狂暴にもなれる。
周囲にひとの目が無く、存分に腕を振るえる状況ならば敵対者を皆殺しにし、研究のために動物のみならず人間まで実験に供するなど、冷酷。

ただ、必要がないとなれば積極的に害を為そうとはせず、多少不愉快な目にあわされたり敵意をぶつけられたぐらいなら「紳士的な投資家ヒーゴ・ダマスク」としての顔を崩さない、穏やかな面がある
変わったところでは、狙った標的の背後関係があまりにアホ臭かったために殺意よりも先に笑ってしまい、助言を与えて見逃してやったことも。


シスの教義についても哲学者として疑問を呈しており、シスの路線を外れない限りで改革を考えるなど、柔軟でもある。
とくに、師弟の殺し合いを是とする「二人の掟」を「悲惨な同士討ち」「シスの戦力を減らすだけ」「二人のシスで一万人ものジェダイに勝つのは不可能」と否定的に捉えている。
そのため弟子のダース・シディアスには、修業は厳しくしつつも個人としては親身に接しており、自分の研究室に招いて研究を共にする、自分が体得した秘技を惜しみなく分け与える、などの一面がある。
不老不死の研究が完成すれば、自分とシディアスのふたりで永遠にして完璧なシスになろうと考えており、弟子を裏切ろうと考えたことはなかった。

哲学者なだけあって、彼のセリフも一つ一つが深い含蓄に富んでいる。
特にシディアスに修行をつけるエピソードでは、荒々しくも深遠な、死と生を超克する人生の哲学が如実に表れている。

「一秒で終わろうと永遠に続こうと、それがなんだ? 先のことを考えるな。いまこの瞬間だけを考えろ。シスの弟子は、訓練用のライトセーバーで遠隔装置と戦いながら大切に育てられるジェダイの子どもたちとは対極にある。シスは最初から痛みを友とせねばならん。自分に痛みを与えねばならん」
「善と悪の概念さえ超越したわれわれにとって、“まし”という言葉がなんの意味を持つ? きみはボン・タパロよりましか? パドメ・アミダラより優れているのか? その質問の答えはひとつしかない。命令を遂行するものがましなのだ」


総評すると、シスとは単なる悪の王ではなく、独自の哲学を持ったフォースの研究者であるということが強く示されたキャラクターである。*2


◆能力

「シスの将来はいまや優れた腕力や能力よりも、政治的な狡猾さにかかっている。新たなシスは腕力ではなく恐怖を植えつけて支配するのだ」

シスの暗黒卿のマスターにふさわしく、極めて高い能力を持つ。

ライトセーバーは真紅の光刃を持つシス型。
本人はライトセイバーの戦いについて「無駄な感情と必要のないアクロバットに満ちた、退屈な行為」と考えているが、師のダース・テネブラス(こっちは熱意がある)が認めるほどの達人。
自分と同等以上の腕前があるシス候補ダース・ヴェナミスとの一騎討ちでは、あえて戦いの呼吸を外すことで相手の感覚を狂わせ勝利するなど、戦いの組み方もうまい。
フォースライトニングやマインドトリックなど、シスの技も一通りこなせる。

しかし彼を語るうえでもっとも強調するべきは、ミディ=クロリアンへの干渉技術であろう。これはシディアスすらが完全には引き継げなかった領域である。
彼は長年、ミディ=クロリアンについて研究を行なってきた。さまざまなフォースにまつわる動物、ハットのようなフォースに耐性を持つ人種、果てはシス卿にいたるまで、多くを研究し、ミディ=クロリアンについて相当深く切り込んでいた。

そして彼は、意識と肉体とフォースを繋ぐこの微生物をコントロールすることに成功。
死んだ相手を蘇生させるという、恐らくはアナキン・スカイウォーカーがもっとも求めた芸当や、フォースの申し子を生み出す呪法すらも完成させた。

レジェンズ作品では、ダース・シディアスは死後もクローン技術を用いて復活した。しかしこれは、プレイガスが行なった方法に比べれば児戯に等しいということである。

シディアスは、プレイガスを殺して超えたあとも、彼については「賢者」と表現している。それは、彼にも到達できない領域に至ったマスターへの惜しまぬ賛辞である。


【生涯】

◆前歴

「そんなに急いで下に行きたいなら、窓から飛び降りなよ」

まず、インターギャラクティック銀行グループについて。
その名の通り、銀河全域の金融組織である。銀河共和国はもとより、宇宙各地の星系政府、入植者の都市、各種企業、果ては通商連合のような超星系規模の組織にいたるまで、誇張抜きの意味で、銀河全域の金融を司ってきた組織である。
ビルの一つでも建てようと思えば、コルサントだろうが辺境惑星だろうが、まずは銀行グループに申し出なければならず、宇宙港はどの星系であろうと銀行グループが関わっている。
この銀行グループの幹部にはムウンが多い。ムウンは大きな頭蓋骨を持っているが、これは伊達ではなく、数学的な計算能力に非常に長けている。そのため、平均的にムウンが銀行グループの要職に就きやすい。


さて、ダース・プレイガス、本名ヒーゴ・ダマスクの父親はカー・ダマスクといい、銀行グループの中級幹部であった。
しかし中堅から昇進し切れず、一念発起して故郷ムウニリンストを離れ、辺境の惑星マイギートーに移住した。
マイギートーは氷河期の極寒惑星だが地下資源が豊富で、氷雪と鉱物に格闘しながら、次第に資金を培っていった。

ところでカー・ダマスクには、微弱ながらもフォースの才能があった。ようはジェダイのスカウト漏れである。
そしてカーは、ルージェス・ノーム(Rugess Nome)というビスの宇宙船設計士と親交があった。
このルージェス・ノームこそが、シス卿ダース・テネブラスである。
テネブラスはあるとき、カーに一人のムウンの女性を紹介した。彼女もまた、微弱なフォース感応者である。二人ともシスやジェダイとして大成する才能はないが、テネブラスの計算によると、二人のあいだに子供が生まれれば、その子は強いフォースの才能を持って現われるという*3

かくして「配合」されて生まれたヒーゴ・ダマスクは、テネブラスの計算に違わず鋭いフォース感応者として生まれた。
テネブラスはヒーゴに「ダース・プレイガス」の称号を与えて弟子とし、それと引き換えにカーを支援し、ついには銀行グループの財務部門長官にまで押し上げた。
母親は失踪し、二度と会っていない。


◆テネブラス時代

「ダークサイドがわたしを導いたのです、テネブラス。あなたはそれを感じたが、わたしの能力を軽んじたばかりに判断を誤った」

プレイガスはテネブラスのもとで修業をつけてシスとして成長すると共に、歴代シス卿が培ってきた、社会の全域に通じるネットワークも掌握。
また、プレイガスは独自に持株会社「ダマスク・ホールディングス」を設立し、父の縁を通じて銀行グループにも関与していた。
ダース・テネブラスは表向き「高名な宇宙船設計士ルージェス・ノーム」として活躍していたが、ダース・プレイガスも「高名な投資家ヒーゴ・ダマスク」として、銀河で知らぬものはない大物に成長していった。
両人の師弟関係は長年に渡り、お互いに切磋琢磨しつつ成長していった。

また、テネブラスの先代のシスマスター(種族はトワイレックだが名前は不明)は、ジェダイへの挑戦として初めて暗黒面の兆候を見せたらしく、ジェダイを打破して衰退する一方の共和国を再編する時期は近いと見ていた。それは、テネブラスから一代か二代も経たないだろう、と。

そのために、テネブラスとプレイガスは修業に平行して暗躍もした。
後年TIEファイターを設計するサイナー・エンジニアリングと組んでライバル業者を暗殺したり、ジェダイ崩れ宇宙海賊ロリアン・ノッドを利用して元老院議員を誘拐したり、シスの計画のためいろいろと働いている*4


しかし、シスの「二人の掟」に基づくシスの殺し合いについてプレイガスは批判的で、むしろ積極的な改革を主張していた。具体的には、よほど対立するのでなければ敵対はやめて、むしろ人数を増やしてもいいのではないか、ということである。
対するテネブラスは、ダース・ベインからの流儀を遵守するよう説得しており、両名の意見は対立しつつあった。
この状況下で、テネブラスはプレイガスとは別のシス卿候補としてビスの青年を見出し、「ダース・ヴェナミス」として別途に訓練し始める。

だが、テネブラスの死は唐突に訪れる。
ある惑星で師弟が極秘に鉱石発掘作業を行なっていたところ、掘削ドロイドにルージェス・ノームを狙った罠が仕組まれており、落盤事故が発生。
テネブラスはフォースで岩盤を防ごうとしたが、プレイガスがとっさに岩盤を押したため、ついに師父は圧死。プレイガスがシスマスターとなる


◆ただ一人のシス

「わたしに挑戦するために遠路はるばるやって来たのだろう? その努力を無にするな」

宇宙船と雑用ドロイド11-4Dを強奪しながら帰還したプレイガスは、テネブラスの置き土産と言うべきダース・ヴェナミスや、ほかのシス候補などを倒しつつ、我が弟子たる人物を探すようになった。
ちなみに、シス候補というのはシスになるだけのフォース感応者のことだが、危険なレベルの相手は殺すなどしていたが、あまりにしょうもない奴は懲らしめるだけで見逃したことがある。

+ しょうもない奴
種族特有の変身能力とフォースの才能を併用してカジノ荒らしをして巨額の金を稼いでいた男がそれ。
正体は超大ガネ持ちの二代目が雇ったギャンブラー。

銀河指折りの資産家が賭場で荒稼ぎというから何事かと思えば、先代が暗殺されてから酒とギャンブルのやりすぎですっからかんになり、あまつさえ犯罪組織から借金して破滅の寸前というアホ臭い顛末であった。
プレイガスはその先代を暗殺した黒幕だったが、これにはつい笑ってしまう。

いっぽう、表の顔の実業家としての仕事も抜かりなく行なっており、自分の本拠地である惑星ソウジャンにてさまざまな投資計画、裏社会の要人を集めた大宴会などを繰り広げ、巧妙に銀河に堕落と崩壊の兆しを刻んでいった。
また、惑星ソウジャンの研究所では、倒したダース・ヴェナミスを仮死状態のまま保存して実験体として利用するなど、シスの研究にも没頭する

そしてダース・テネブラス暗殺の原因を探る過程で、大量のプラズマが眠る惑星ナブーの存在を知る。
当時ナブーは鎖国体制を敷いていたが、プラズマの売却に端を発する開国派と鎖国派、および名門貴族同士の権力闘争が繰り広げられていた。
ダマスク・ホールディングスの業務としてナブーに降り立ったプレイガスは、そこで少年でありながら強い不満と自己意識を持った少年、シーヴ・パルパティーンを発見する。


◆ダース・シディアスの抜擢

「ぼくはナブーが過去と決別するのを見たい。より大きな銀河の一員になるのを。共和国の歴史に重要な役割を演じたい。そう望むのは悪いことかい?」

当時シーヴは、父のコシンガ・パルパティーンと軽蔑しあっており、政治的な見識でも対立。それで父と対立する開国派に情報を流していた。
それで興味をひかれて接触したプレイガスは、この十代半ばの少年が、常人の枠からはみ出た、独自の倫理を持つ「超人」であることを見抜いた。
しかも彼は、すでにプレイガスがシスの技で心を読み取ろうとしても無意識下でブロックしていた。心が強いのか、それともフォースの技を独自に知っているのか。
いずれにせよ、この少年にはシスとして大成する素質がある。

プレイガスは、さすがにいきなり正体を明かしはしなかったものの、接触するたびひそかに「シスらしい生き方」を教えつつ誘導。
自分もかつて父や異母兄姉たちを死に追いやって今の自分を作った、という話もしているがこれは嘘らしい。しかしそういう話を通じて「シスらしい生き方」を暗示したのは事実である。

「自分を解放するんだ。結果を考えるな。不安は自分で物事を決めるための最初のステップだ。次は勇気が来る」

暗示を受けたというより、彼の話から人生の指針を学んだシーヴは、コシンガがシーヴを辺境の惑星に幽閉しようとしたのを切っ掛けとして「自分を解放」、原始的ながらも莫大な質量の暗黒面のフォースを駆使して、ついに家族を皆殺しにした。

「これでぼくらは一蓮托生だぞ!」

シーヴからの一報を受けたプレイガスは、ただちに彼を回収。そして事後処理を終えると、ついに彼の前で「シスの暗黒卿ダース・プレイガス」を名乗り、ついに彼を弟子に迎えたのである。
シーヴ・パルパティーン、ダース・シディアス、当年わずかに十七歳であった。

「きみが進む道はふたつある。いまここでその力を拒否するか、それがどんな結果をもたらそうとも勇気を持ち、周到に準備して奥深い真実を探りはじめるかだ」


◆シスの修業

「追うのではない。呼びかけるのだ。狙った獲物を目の奥でとらえ、獲物が近づきたがるものになれ。フォースを呼び寄せるときにも同じことがいえる。フォースが近づきたいもの、魅せられ、近づかずにはいられないものになれ。そうすれば必要な力を思いのままにできる」

新しい弟子をとったプレイガスは、過酷でありながらも奥深い修業によってシディアスを鍛え抜いた。
激しい訓練は十年以上も続き、ひと段落しても形態を変えつつ続いた。

同時に、銀行グループのコネを用いて、資金力で「政治家パルパティーン」も支援。
シス卿ダース・プレイガスとして知識面・精神面でシディアスを鍛え上げ、投資家ヒーゴ・ダマスクとして財政面・政治面でパルパティーンを支援する日々は、水面下で長く続いた。

やがて弟子はナブー選出の元老院議員の補佐官となり、先任議員の失墜に乗じて、その後釜としてナブー元老院議員にまでなった。
もちろん裏では師弟でいろいろ暗躍している。先任議員の失墜の原因となった妻子の事故死は偶然だが、それに乗じた議員の暗殺、ナブー王位の混乱と選挙、などなど、ナブーを実質的に支配するよう、だれにも気づかれずに世界を誘導していった。

「われわれはかつて一部のシス卿がそうであったような、ただの残忍な人殺しではない。未来を設計し、作り上げる者だ」


もちろんプレイガスも、弟子に君臨するだけで満足してはいない。かつて捕えたシス卿候補――弟弟子――ダース・ヴェナミスや、フォースの利かない種族を重点的に研究し、フォース感応者の素質を左右するミディ=クロリアンの研究を飛躍的に進めていた。
その研究は取りも直さず、シスのフォース技術を高めることにも直結する。

ミディ=クロリアン研究と関係して、惑星カミーノに接触してクローン兵士の計画を相談したのもプレイガス(「ヒーゴ・ダマスク」名義)である。
この時点ではジェダイを直接撲滅する戦力として、フォースの催眠が利かない狂暴な種族インチョリを候補としていたが、この計画はやがて「ジェダイを裏切る戦力」として人間に変わる。
また、当時カミーノには何百万ものクローンを生産する施設はなかったのだが、それを映画本編のように巨大化させたのも、プレイガスが牛耳るダマスク・ホールディングスであった。


シスの師弟それぞれの修業は大いに進み、ジェダイの絶滅と銀河への秩序回復の計画も骨子がなった。
銀河の市民がジェダイそのものを憎むように誘導し、シディアスを最高議長に薦め、プレイガスが「共同議長」となって、師弟で銀河を支配する――そんな計画を、たった二人にはあまりにも大き過ぎる陰謀を、しかもこの師弟は着々と進めていったのである。

「わたしはあくまでもきみの玉座の背後で密かに助言をする役にまわる」
「シスの歴史の年譜には“賢者プレイガス”と記されるでしょう」


◆モールとドゥークー

この修業の時期と相前後して、シディアスはモールを、プレイガスはドゥークーをそれぞれ見出している。

モールの出会いは惑星ダソミア。ダソミアで暗黒面の遺産を探していたシディアスは、「タルジンから隠したい、奴隷の身分から解放したい」と願う母親から、ザブラクの赤子を授かった。これがモールである*5
シディアスはしばらくプレイガスにも黙っていたが、やがて彼に素質があると認めると、プレイガスに相談の上で彼を鍛えることにした。ただし「シスの弟子」ではなく、あくまで「戦力」としてである。

シスはたった二人しかいない。それで一万人ものジェダイを倒すのは無理だ。その上、ダマスクもパルパティーンも目立つ。
だからこそ、シスの命令を受けて暗躍する懐刀、純粋な戦士、そしてシスの哲学は理解しない、そんな「兵器」が必要になる、と。
結果、ダース・モールはシスとしては知識不足ながらも、戦闘力を極めた「闇の戦士」として完成した*6


一方プレイガスは、惑星セレノーの紛争調停に参加し、当時五十歳ぐらいのドゥークーと出会っている。
正確には、プレイガスは直接・間接にドゥークーと関わってきた。ダース・テネブラス存命中から、ドゥークーはシスの計画を、そうと知らずに潰してきたのである。
プレイガスは彼の素質や影響力を分析しつつ、彼をシスに転向させられればジェダイにとてつもない痛撃を与えられると確信した。
もちろんドゥークーは、モールと違って使い走りで納まる人間ではない。シスの哲学を求める向学心がある。
しかし、そもそも「二人の掟」が時世にそぐわないと考えていたプレイガスは、ドゥークーにシスの哲学を教えるのもそれはそれで問題ないと判断した。シディアスとドゥークーを両腕として併用するかっこうである。
無論、プレイガスはドゥークーに正体を明かしてはいない。ただ確認にとどめている。
またこのセレノーの会合では、ドゥークーの友人でジェダイ評議員のジョカスタ・ヌー、サイフォ=ディアス、ドゥークーの元弟子クワイ=ガン・ジンとも出会っていた。


こうした出会いは、プレイガスやシディアスにそれぞれジェダイへの理解と研究を促進していった。
もちろん、当時の戦力差は圧倒的にジェダイが上である。個々の能力ではシスの師弟に叶うジェダイはいないが、もしも見つかればたった二人のシスなど瞬く間に滅びてしまう。数と力の差はそれほどに大きかった。
そうした戦力差に圧倒されつつも、シスの師弟はそれを切り崩すための「真理」を探っていった。

「常にバランスを念頭に置いたフォースは、光の支配が長すぎるほど続くとダークサイドのフォースが強い者を与える」


◆プレイガスの飛躍

ところが蹉跌は思わぬところから飛んできた。プレイガスが銀行グループの会合に参加したとき、殺し屋の一団に襲われたのである。
しかもプレイガスは彼らの奇襲にまったく気づけず、先手を打たれて重傷を負った
幸い、事情を察知したシディアスが駆けつけてなんとか撃滅し、プレイガスも一命は取り留めたものの、傷は重く以後は呼吸マスクを外せなくなり、投資家ヒーゴ・ダマスクとしては実質隠居に追い込まれた。


もっとも、プレイガスはこの隠居を奇貨とした。
政治的な工作はすっかりナブー元老院議員が板についたシディアスに任せ、自分は各地の秘密研究所にこもって「シスの研究」に力を注いだのである
その期間は優に二十年にもなり、ミディ=クロリアンの研究はいよいよ佳境へ突入。
ミディ=クロリアンを用いた生物の懐胎*7、フォースが利かないはずの種族へのマインドトリックの成功、一度死なせたダース・ヴェナミスの蘇生*8、毀損したプレイガスの肉体の再生、老いたはずの肉体の若返り、といった、奇跡のような業績さえ解き明かした。

プレイガスはしかも、これを自分だけの宝物にする気はなかった。
不老不死の領域を解明すれば、彼はこの技法をシディアスに教え、二人で永遠のシスとなり、ダース・ベインをも超える領域に進もうと決意していた。

「のちのシス卿はあなたの知恵を称えるでしょう、マスター」
「いや、シディアス卿。われわれのあとにシスはいない。ここで行われてきたことはすべてひとつの目的のため。われわれが永遠に支配するためだ」


一方シディアスも、パルパティーン議員としてヴァローラム最高議長を補佐しつつ、密かにさまざまな謀略を仕掛けて、共和国とジェダイを衰退に突き進ませていた。
ダース・モールを戦士として完成させたり、ヌート・ガンレイに「ダース・シディアス」の名前を明かしたり、ドゥークーのジェダイ離脱の意志を確かめたり、ナブーの次期王に十三歳のパドメ・ネイベリーを推薦したりと、映画本編への道も着実に前進。
プレイガスも暗躍を続け、サイフォ=ディアスを唆したり、カミーノに一大投資をしたりと、大きな布石を次々と打った。

もちろんシディアスは、不老不死の研究がシスの哲学に必要ではないと考えていた。
そしてシスの弟子は師匠を殺さないとマスターにはなれない。
プレイガスもかつてテネブラスに反発していたし、殺した過去がある。シディアスが自分に批判的なのはわかっていた。
ただ、プレイガスはシディアスを好いていた。いずれは不老不死の道を相互に教え、そして二人で銀河元老院の共同議長となり、二人で永遠のシスになろうと考えていた。そして、シディアスを説得できると信じていた。


研究施設を、敵対勢力の引っ張り出してきた核ミサイルで消し飛ばされるという一幕もあったが、プレイガスは(核にはさすがに驚いたが)昔のつてでジャバ・ザ・ハットの救助を受けて切り抜けた。
ちなみに、この事件の黒幕はパドメの政敵の前ナブー王。核まで持ち出して攻撃したのはガーデュラ・ザ・ハット、バンド・ゴラ、ブラックサンといった犯罪組織であった。
前ナブー王はプレイガスが直接暗殺し、ブラック・サンはモールが、ガーデュラはジャバがそれぞれ始末をつけた。バンド・ゴラだけは、黒幕があのコマリ・ヴォサらしいことがわかり、ドゥークーとの関係で保留となっている。


◆ファントム・メナス

「共和国はせいぜいもって十五年。まもなく不満を抱えた星系がこぞって脱退するにちがいない」

通商連合内部の裏切りものを粛清したシスの師弟は、ついに延期していた計画、通商連合ドロイド軍によるナブー封鎖を実行に移した。
すでに失脚寸前となっていたヴァローラムは問題を解決できず、元老院は「たかが辺境で、占領されたわけでも死者が出たわけでもなし」と無関心。
ついにヴァローラムは取って置きの秘策、ジェダイマスター、クワイ=ガン・ジンオビ=ワン・ケノービの独断の派遣に踏み切った。
これに対し、シスの師弟は切り札ダース・モールをジェダイ討伐に出した。
ついにシスが千年の沈黙を破り、タトゥイーンでジェダイの前に姿を現したのだ。

そうしたシスの暗躍の裏側で、プレイガスはどうにも気になり、シディアスと話すモールや、クワイ=ガンが砂漠の星からつれてきた少年アナキン・スカイウォーカーを、この目で見届けている。
とくにアナキンをクワイ=ガンが見いだしたというのはショックで、シスの道に引き込めれば幸いこのうえないが、もしクワイ=ガンがアナキンを導くようなことになれば、フォースは我々を滅ぼす方向に作用すると強烈な恐怖を抱いている。
どちらにせよ、あの少年は未来を変える。そしてどちらに転ぶかは、クワイ=ガン次第である、と――


そのころシディアスはパルパティーン議員として、ナブー女王アミダラを巧みに誘導し、ヴァローラムへの不信任案提出、最高議長選挙の実施を要求させた。
議論は紛糾し、プレイガスも久しぶりに投資家ヒーゴ・ダマスクとしてロビー活動に参加。
危うく落選かとも思われたが、対抗馬の議員の裏情報をジャバから得たプレイガスが、あえてパルパティーンではなくもう一人の候補に発表させることで、両者共倒れを図るなど全力で補佐。
いまだ確実ではなかったが、やれることはやり尽くしたシスの師弟は、明日の投票に備えてダマスクの屋敷で、11-4Dだけを残した二人きりの酒宴を開いた。

「乾杯しましょう。何十年にもわたるすばらしい計画とその遂行の頂点を迎えたことに」
「そして明日はわれわれが、ふたりの掟に新たな意味をもたらすことに」

明日のパルパティーンの演説を推敲しながら、静かに注がれるワインを飲み干し、また飲み続けて、ダース・プレイガスはいつしか、酔いに任せて眠りに落ちた。






……シディアスは席を立ち、わずかに迷った。いや、長いあいだ迷っていた。
やがて彼はいつもの外套を羽織り、感慨とともに部屋を見つめ、フォースに意識を没頭させた。


――明日は間違いなく最高議長に選ばれる。今夜はサンガードもいないうえ、プレイガスはなんの疑いもなく眠っている……――
次の瞬間、彼はいきなり目にも留まらぬ速さで動いた。


静かな部屋を貫いて、フォースライトニングがプレイガスの肉体を焼く。
かっと目を見開いたシスマスターが弟子を見つめる。しかし彼は反撃をしない! 本当に自分を殺すのか、弟子を試しているのだ。
一瞬動揺しつつも、シディアスは逆上するかのようにダークサイドをわしづかむ。

「演説の第二部をさらおうか、役立たずの愚かな老人め」

シディアスの口から憎悪の言葉がほとばしる。ダース・プレイガス、俗名ヒーゴ・ダマスクの数々の陰謀や悪事、シーヴ・パルパティーンにしてきたあらゆること、不死の研究に没頭するあまりのダース・ベインの掟への背信、ダース・モールへの侮辱、弟子にとって自分の価値がなくなっていたことに気づかなかった賢者らしからぬ愚かさという罪――シスとして断罪されるべき、シディアスが断罪するべきプレイガスの「悪事」を弟子はまくしたてた。

「自分のかたわらでともに支配するため、いや操り人形として支配に加わるためにわたしを選んだ最初の日に、あなたの運命は決まったのだ。たしかにあなたはいろいろなことを教えてくれた。そのことは永遠に感謝する。しかし、マスターとしては――決して……」

プレイガスがフォースを集め、自分のミディ=クロリアンをコントロールしているのにシディアスは気づいた。気づいた上で、フォースを用いてプレイガスの長い首を締め上げる。
たしかにプレイガスは肉体の再生を可能とする。しかし肉体を操るには呼吸がなければならない。シディアスはプレイガスを殺せる!
もちろんシディアスはプレイガスを生かしておける。生き返らせることもおそらくできる。しかしそのつもりはない。いま殺すのだ。

「これほど賢い者を失うのは、実際、悲劇としか言いようがない。あらゆる生命の生と死を監督することができる者を。ただし、自分の死はその限りではなかったようだ」

そもそも自分は一度も変わっていない。最初からプレイガスを騙し、操っていた。学ぶべきことが多くあったからだ。そして必要なものは学び終えた。不老不死の研究についてもいずれは教えてくれるつもりだったようだが、わたしはそれに興味はない。そもそも、すべてを伝授したとすればもはやわたしにとってあなたの価値はなくなるではないか。どうしてそれを考えなかったのだ!
いままで我々ふたりが為してきたさまざまな陰謀……それはあなたが考えたものではない。すべてわたしが考えた。ただあなたを唆し、自分が考えたように仕向けたのだ。
あなたは二度ほど死にかけた。一度目の暗殺者に襲われ不具になったとき、わたしはあなたを殺せたが、学ぶべきことがまだまだあったからやめた。ソウジャンでの核攻撃で死ぬかとも思ったが、生き延びたのは想定外だった。しかし、この元老院選挙で勝つにはあなたの協力が必要だったから、あれで良かったのだろう。
しかしいずれも終わった、もうあなたは必要ない! わたしにはモールがいるのだから!

プレイガスの頭部が紫色に変色していくのを見ながら、シディアスはとめどなく言葉を吐き続けていた。
自分こそがシスであり、真のシスマスターであると名乗りながら。

「墓の中で安らかに眠るがいい。やがてわたしは皇帝となり、シスは復讐を遂げて銀河を支配する」

プレイガスが床に滑り落ち、最後の一息を引き取った。
……しかし、シディアスが歓喜を感じたのは短いあいだのことだった。
勝利になにかの影を感じる。自分よりも大きな力を漠然と感じる。プレイガスが死後になっても、何らかの干渉をしているのか? それともこれは、孤独になった自分の感傷なのだろうか?
教えてくれる者はもういない。


外では、コルサントの摩天楼の頂点を、夜明けの最初の光が滑るように動いていく。


◆死後

その二十四時間のあいだに、シーヴ・パルパティーンは銀河元老院の最高議長となり、ダース・シディアスはシスマスターとなった。
その日のうちにはナブーの封鎖も突破され、しかもそれが共和国の力ではなく現地住民の奮闘の結果だったことで、共和国の支配が無力化したという議論も発生。
隠者ヒーゴ・ダマスクの訃報はそうした混乱に紛れて、ひっそりとした噂で終わった。

しかし、シディアスに歓喜の色はなかった。
シスマスターの座と元老院議長の地位は得たが、引き換えのようにナブーの計画は失敗し、ダース・モールも失われた。
ナブーの失敗はとりもなおさず、自分の読みが足らなかったことの証明である。
計画の練り直しや自分自身の磨きなおしも求められた。

それでも収穫はあった。
ダース・プレイガスの持っていた銀行グループへの影響力は限定的にも引き継げたし、プレイガスがそそのかしたサイフォ=ディアスは、カミーノに赴いてクローンの軍隊を発注した。
ヌート・ガンレイもまだ生きている。戦争裁判を切り抜けることはできよう。
通商連合、銀行グループ、クローン軍団……まだまだプレイガスの遺産は残っている。

そしてなにより、アナキン・スカイウォーカーとドゥークーを見いだせた。
ドゥークーは騎士団を離れた。そしてシスに接触しようとしている。
アナキンは騎士団に入った。そしてジェダイになりたいと願っている。
二人の中にはジェダイでは収まらない、よく似たものがある。

「これからもきみのことは非常に興味深く見守り続けるつもりだよ」
ジェダイ・オーダーを壊滅させ、シスがこの銀河に返り咲くクライマックスをもたらすために!



【余談】

・シディアスの演説

プレイガス暗殺の瞬間、シディアスはプレイガスに激しい口調で罵倒を向ける。
彼の人生を否定し、自分がシスマスターであることを主張し、プレイガスの計画はすべてシディアスの提案に過ぎないと罵倒する。

しかしこの演説を見ると、いつもの超然としたシディアスには似つかわしくない、勢いや支離滅裂さが目立つ。
「(多くを教えてくれた)ことには永遠に感謝するが、マスターとしては――決して……」という言葉は、まるで続ける句が見つからずに詰まったようである。

また、これほどの賢者を殺すことを嘆いてから続けた後半の長文(プレイガスの計画はすべてこのシディアスが考えたと断じる内容)は、前後の文面の矛盾や口調のおかしさ、話の散漫な飛び方、モールの評価の矛盾、などが見られる。
例えば、「学ぶべきことは学び終えた、不老不死の教えはいらない」といったあとに、「仮にすべてを伝授したとしたらますます必要ないではないか」といらないといったばかりの秘術に触れ、しかも唐突に「真のマスターはわたしだ」と続く。
また「これまでの計画はわたしが考えたものだ」とはいうが、実際には小説にてシディアスはプレイガスの命令や発想に驚いている。ガンレイに「ダース・シディアス」の名前を明かしたあたりでも、シディアス自身の内心ではっきり驚いていた。

あの場面のシディアスの演説は、いつものような要点を絞り切って洗練されたものではなく、怒りの感情そのままの勢いで放たれる感情の奔流に近い。
しかもプレイガス殺害直後、ダークサイドの完全な占有を知覚しつつも、晴れない影を感じつつそれが理解できなかったり、プレイガスが本当に死んだのかと不安と怒りを感じたりと、悩む様子を見せつつ「物事が予想通りに進むことはそうそうないのだ。まあ悪くない結果だろう」と結論を下している。
「ことはすべて予測通り」を口癖にする彼がである。

プレイガスの発想すべてが、シディアスの思いのままだったということは、実際にはない。
そしてプレイガスはたしかにシディアスの師父足りうる優れたシスであった。
ただ、シディアスがプレイガスの数々の遺産をすべて継承して効果的に利用し尽くしたのは確かである。


・ダース・テネブラスの憑依

作中、プレイガスは何度か暗殺の危機に見舞われており、それをギリギリまで感知できない様子が描かれた。これ、優れたダークサイド使い程、自身の身の危険を感じ取ることに長ける事を考えるとかなりおかしい描写である。(アナキンの身内の危機による予知や、自陣営のヴェントレスを危険視して抹殺を遂行するシディアスが代表的な例だろう)
……実は、プレイガスは生涯一度も気づかなかったが、彼の予知能力が衰えたのは、師父だったダース・テネブラスが寄生していたからである

テネブラスは宇宙船デザイナーである一方、生命工学にも造詣が深く、ミディ=クロリアンを突然変異させた「マキシ=クロリアン」の存在を見いだし、それを利用して他人に憑依する秘術を研究していた。
彼は密かにプレイガスの細胞に干渉し、マキシ=クロリアンへと変異させ、彼の内部で意識だけになりながらも生きていたのだ。
彼はこの技を用いて歴代シスを渡り歩き、いずれ訪れるだろう「選ばれし者」と融合し、自分が「フォースの申し子」になろうとしていた。

ところが、プレイガスに取り付いたテネブラスは、弟子の細胞を密かに利用して未来を予知したところ「プレイガスがシディアスに殺される」というビジョンを見てしまう。
テネブラスは慌てた。これでは「選ばれし者」に取り付くどころではない。
だがマキシ=クロリアンには問題があった。これに変異した細胞は、フォースを用いた未来予知能力が失われるのである。
先の予知をした時点では、プレイガスの肉体にはミディ=クロリアンが相当に残っていたが、気づいたときには変異は完了していた。

プレイガスが「暗殺者集団」「バンド・ゴラの核ミサイル」「シディアスの裏切り」という三つもの暗殺計画をフォースで予知できなかったのは、実はテネブラスがいらんことをしたからだったのだ。

その後、テネブラスはプレイガスの肉体から離れて本来のボディを探したが、霊魂だけの彼は時間間隔を失っており、彼の本来の肉体はとっくにミイラ化していた。
結局、テネブラスは魂だけの状態で放り出され、死ぬことになる。


・ダース・モールの扱い

もともと「シディアスへの忠義を尽くす」「戦闘力は高いが哲学性が薄い」など、シスらしくないと言われてきたダース・モール。
しかしプレイガスの小説ではそもそも「シスの法の継承者」ではなく、「シス卿の駒」にすぎなかったことが明かされる。その意味ではのちのアサージ・ヴェントレスと同じである。
作中ではモールは「シディアスはシスマスターではない」ことにも「自分が継承者として期待されていない」ことにもまったく気づいておらず、ただシディアスの期待に応えられないことや、自分の理解力が低すぎることばかりを気に病む、意地らしいまでに一途な心根を持っていることが明かされているが、彼の不憫さはこういったところにも見出せる。


・スノークの正体説

ファースト・オーダーの最高指導者スノークについて、顔のデザインや大柄な体格、腐乱死体のような姿などから、その正体はプレイガスではないかとささやかれていた。日本語翻訳版小説でも書かれている。
ただ、スノーク=プレイガス説は初期から制作サイドによって否定されたらしい。
ちなみに候補の次点はジョカスタ・ヌー(!)。


ちなみに映画監督のコリン・トレヴォロウがEP9の制作から降板する前に用意していた草案によると、元はプレイガスと関連の深い人物が登場する予定だったとのこと。
生前シディアスは仮に自分が死亡した場合のことを考えて、Tor Valume(日本語表記するとしたらトア・バリューム?)なるダークサイドを極めたクリーチャーの手解きを受けて修行を終わらせるようにとヴェイダー宛てにメッセージを遺していたらしい。(流石の彼も自分がまさかそのヴェイダーに討たれるとは夢にも思っていなかったため)
結果的にカイロ・レンが代わりに惑星ムスタファーのヴェイダーの城だった場所でシディアスの遺言を開いて、そのシスマスターと接触するべく行動を開始するというストーリーだったようだ。


【その後の作品展開】

小説「ダース・プレイガス」は、2012年1月10日にアメリカで発表された。日本語訳は2018年にまでずれ込んでいる。
2012年というと、10月にスター・ウォーズの権利がディズニーに移行された年である。そして2014年、一部の映像作品を除いて大多数のスピンオフ作品が「レジェンズ」分類となった。
つまり本作は、レジェンズ末期の作品ということになる。

ところが、小説「ダース・プレイガス」は完全にレジェンズ扱いとはならなかった。
例えば、2014年秋に刊行されたカノン小説「ターキン」にて、本作の設定が一部引用されたのである。
帝国期、ウィルハフ・ターキンダース・ヴェイダーの協力関係に思いを馳せるシディアスは、ついに取り返した古代シスの神殿にいながら、亡きダース・プレイガスの「フォースは必ず逆襲する」との言葉を思い出している。
これは「ダース・プレイガス」で実際にプレイガスから語られており、フォースの秘術を試して失敗すると、なんらかの形で反作用が起き、災難に遭うとしていた。
また「ターキン」では「プレイガスから継承した遺産」として11-4Dも再登場している。
もともと「ターキン」はレジェンズ作品からの引用が多い小説ではあるが、「ダース・プレイガス」は製作サイドでも依然として重要な価値を有しているようだ。

もっとも、「ターキン」をはじめとするカノン作品の設定が完全に「ダース・プレイガス」に準じているわけではない。
例えば、「ダース・プレイガス」ではシディアスは自分の「シーヴ」という名前を嫌っており、自分では「パルパティーン」しか名乗らないし、周りにも苗字だけで呼ばせている。
しかし「ターキン」では、限られた親しい友人にだけはファーストネームで呼びあっている設定である。例えばターキンとは「ウィルハフ」「シーヴ」と呼びあう。

シディアスがプレイガスを殺害した時期についてもモールを弟子に取った後とされていたが、現在は『Son of Dathomir』など他の正史作品におけるモールの設定との整合性を考慮してかモールを弟子に取る前とする資料もある。

完全な引用ではないが、重要な参考資料、という立ち位置なのであろう。

その後…
+ ...
EP1の約100年前を描くドラマ『アコライト』に、当時のシス卿であるカイミールという男(シスとしての正式な名前は不明)が登場。
仮にシスであるならばプレイガスと世代が近いことから、彼の正体について正史におけるプレイガス説、正史におけるヴェナミス説、シスの真似事をしているだけのダークサイダー説など、様々な推測を呼んでいたが、
そんな中第8話にて、拠点としている星から発つカイミールの船を暗闇から見つめる、ムウン種族らしき謎の人物が一瞬だが登場。

後に製作陣からこの人物はダース・プレイガスであり、プレイガスこそがカイミールの師匠であることが明かされた。

『アコライト』は残念ながら1シーズンで打ち切られてしまったが、シーズン2があった場合はプレイガスが本格的に登場するはずであったという。
しかし、わずかでも登場した以上はカノンにおけるプレイガスの来歴が綴られる時も近いのかもしれない。




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最終更新:2025年03月25日 23:09

*1 バド星人のような顔をした、頭部がつるつるで大型の宇宙人。映画では演奏家として活動している者が多い。

*2 実はこれはプレイガスだけが異例なのではなく、映画本編に現れるシスにも大なり小なり見られる傾向であった。兄弟や家族に対しては情を抱くモール、弟子や仲間に対して面倒見のいいティラナス息子と再会してから感情に変化が出たヴェイダー、そしてもしもヴェイダーが究極のシスとして完成するなら殺されてもいいと考えていたシディアスなど。

*3 実はカーは既婚者で、正妻とのあいだにも子供がいる。

*4 ただ、そうした暗躍の多くはジェダイマスター・ドゥークーに潰されており、テネブラスの暗躍は決定打とは行かなかった。

*5 母親はこのとき「モールは双子」「もう一人はタルジンの下から離れられない」と語っているが、その「双子の片割れ」がサヴァージなのかは不明。

*6 もっとも、完全な戦闘向けにしてしまったことはシディアスにとっても悔いが残ったらしいが。

*7 その技法の果てに、アナキン・スカイウォーカーが生まれる。

*8 死者復活を見た11-4Dは情報処理ができず、シディアスはパニック寸前に陥ったほどの偉業。