SCP-210-FR

登録日:2017/01/21 Sat 23:29:43
更新日:2025/04/26 Sat 10:18:19
所要時間:約 5 分で読めます






いいえ、それはウサギです。



SCP-210-FRは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するウサギである。


概要


ウサギである。







…うん、ごめん、何言ってるかわからないよね。
SCP-210-FRはSCP Foundationフランス支部に登場するウサギである。
ウサギといってもわざわざナンバーが付いていることからわかるとおり、オブジェクト (SCiP) として研究されている。
オブジェクトクラスはウサギ。
フランス支部にはオブジェクトクラス(収容難度)と別に7段階の「脅威レベル(危険度)」を定めているが、こちらもウサギである。

項目名も『Un Lapin(ウサギ)』と徹底している。
そしてある年の「12月7日」に撮影された写真がついている。

このままじゃ何なのか多分わからないまま終わるので、旧説明を見てみよう。
といっても旧説明である。現在は改訂されて「いいえ、それはウサギです。」でしめられている。
だが旧説明も報告書内で普通に折りたたまれて閲覧可能なので読んでいく。


旧説明

旧説明によれば、SCP-210-FRはウサギである。
…うん、もう一回繰り返すね。でもまだ続きがあるのよ。
上の写真の撮影年と同じ年の「1月21日」に撮影された写真がついている。

SCP-210-FRは体長38cm、体重2.1kgのウォーレンという名の黒ウサギで、
毛皮は12mmの厚さであり、毎日平均350gのハーブや様々な野菜を消費する。
…まあよくあるウサギである。体長にも体重にも異常はないし、食ってる飯の量もウサギである。

SCP-210-FRは体長14.9インチ、体重4.6ポンドの消炭色のアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)で、
視野は240°(頭の回転を含めると360°)に広がっており、最高速度40km/hで、耳の大きさは7cmである。
アナウサギで耳の大きさは7cmならまあ中くらいの部類である。つまり普通。
消炭色というのはまあ黒ってことであるし。体長にも体重にも不自然な点はない。
…ちなみに財団では原則SI単位系以外の単位表記を禁止しており、なおかつSI単位系に直すと上と同じ値をとる。なんで繰り返してるんだろう?

SCP-210-FRは質量と体重を持ち、#000000の毛色をした毛皮を持つウサギの雌である。
#000000はつまり真っ黒。嗅粘膜は8億個の受容体から構成され、触毛は平均82mm、鼓動は毎分180回。
まあウサギである。…あのー、まだオブジェクトの異常性の説明はいらないんですかね…?

SCP-210-FRは、筋肉、脂肪、骨、神経や血液から成る生物であり、神経終末と毛を含んだ有機組織に…
って当たり前だろ!ウサギなんだから。この生物は120℃以上の温度に耐えることができないらしい。

…本文の横に仕込み中のSCP-210-FRの画像が写っているのは見なかったことにしよう。

SCP-210-FRは愛情がこもった特製シチューであるという。ウサギさんがシチューにされてる…。
心拍数は0bpmとのこと。そら死んでますし…。というかオブジェクトをなに料理にしてんだよ。
これには、ネギ属(Allium)に属する3つの異なる球根植物のスライスが添えられており、肉はシャラント産のブランデーとヨーロッパブドウのジュースで漬けてあります。これは、4人の胃を満腹にする力を持っています。それはおいしいです。
なぜか報告書にシチューの材料を、やはり詳述しており、しかも主観的な味の感想までついてる。
あとシチューの画像も。

SCP-210-FRは幸せであるという。いや死んでるけど?

ここから報告書とは思えない詩的な文章のデパートである。
なんでも、SCP-210-FRは慈悲深く利他的であり、彼女の力は計り知れないのだという。
彼女は私であり、彼女は他人で、彼女は何者でもなく、故に彼女はすべてであるという。
ウサギが犠牲になることで、人は味のない人生から救われるという。

そして、別の人が必要とするとき、また再び地に還るという。

ウサギはいない。

ウサギはいる。





旧説明は、新任研究員に、「前任研究員が不幸にも心臓発作で死に、後任の君はこれを最初から書き直す義務があり、
ウサギは小屋から出ていないがテーブルの上にいて、脱走することはなかったがもうこういうことはないだろう」という
ガレット監視員のメッセージで締めくくられる。


結局これはなんなの?



ウサギである。

…ただし、より詳しく言うならば、
「見た人に信仰心を湧き起こさせ、その深淵に近づきたいと詳しく調べさせ、やがてウサギを取り込むことで天の国に近づこうとする」という
強烈な認識災害特性を有するウサギである。

だから報告書の大半は、「ウサギであれば当たり前のこと」をつらつらと書いていたのであり、
後半は詩的な文章で埋められていたのである。

SCP-210-FRのシチューを食った研究者は、その後「天の国に行った(=つまり死んだ)」。
そしてウサギはそこに再出現し、それを次の研究者は写真を撮り、調べている。

というわけでちょいと横道に逸れ、財団テンプレートでこのウサギについて真面目に記してみよう。

アイテム番号:SCP-210-FR
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:SCP-210-FRは常時監視下に起き、研究担当者の接触を妨害してください。研究担当者はSCP-210-FRの直接の研究を行うことは認められません。当報告書を書き直す必要が出た場合、それまでに書かれた旧版の報告書を参考に新たな報告書を作成してください。
説明:SCP-210-FRは体長38cm、体重2.1kgの消炭色のアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)です。生物学的に非異常性のアナウサギとの差異は存在しません。
SCP-210-FRは自己再生能力を有する認識災害ベクターです。SCP-210-FRは自身の直接の研究を行う人間に対して、3つのフェーズに分類される精神影響をもたらします。
  • フェーズ1:SCP-210-FRの研究を行う人物は、SCP-210-FRに対して異常なまでの魅力を感じ始めます。その結果、SCP-210-FRについて執拗に調査し、報告書に記載します。しかし、曝露した対象はこの現象を異常であると捉えることができず、結果として報告書に記載される文章は、あらゆる角度からSCP-210-FRがウサギであることを示す内容となります。
  • フェーズ2:対象はSCP-210-FRの存在に神性を見出します。さらにその神性を自らに取り込むことを強く望むようになり、結果としてこれはSCP-210-FRの摂食、およびフェーズ3への移行に至ります。
  • フェーズ3:SCP-210-FRを摂食した対象はこのフェーズへ移行します。対象の記す文章はSCP-210-FRに関する、根拠を欠いたより詩的な文面へと変化し、いかにSCP-210-FRが神聖で尊い存在であるかを連ねるものとなります。最終的に対象はエクスタシーを伴う心臓発作により死亡し、SCP-210-FRは対象の近辺で再構成されます。
補遺:SCP-210-FRの研究担当者であったS███████博士は█/██/██、オブジェクトの異常性に曝露したことによる心臓発作により死亡しました。このオブジェクトの研究はP█████-████████博士に再割り当てされました。SCP-210-FRはS███████博士の自宅の庭で発見されています。


…さて、旧説明でも「SCP-210-FRはウサギである」という一文からスタートしていた。
次の研究者も「SCP-210-FRはウサギである」という一文を書いている。



無限ループって怖くね?




追記・修正はウサギです。


CC BY-SA 3.0に基づく表示


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最終更新:2025年04月26日 10:18