登録日:2018/11/10 Sat 01:09:20
更新日:2024/11/24 Sun 19:06:01
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「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」は19世紀のドイツの哲学者・フリードリヒ・ニーチェの格言。
本項ではこちらを使用させていただくが、
ドイツ語を
日本語に訳したものなので翻訳によっては
「深淵をのぞく時、深淵もまたお前を見返しているのだ」
「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」
「汝が久しく深淵を見入るとき、深淵もまた汝を見入るのである」
など表記は揺れる。
▽目次
【概要】
原文は『Und wenn du lange in einen Abgrund blickst, blickt der Abgrund auch in dich hinein.』であり、
こちらだけが一人歩きして知られているが厳密には直前の『Wer mit Ungeheuern kämpft, mag zusehn, dass er nicht dabei zum Ungeheuer wird.』(簡単に訳すと「怪物と戦う時は自らも怪物にならぬよう、心せよ」)から一続きの文章。
『善悪の彼岸』(原題:Jenseits von Gut und Böse)という書籍の第146節にあたる。
深淵からだけだとイマイチ意味がわかりにくくなるが、怪物から通して日本の諺でいう「ミイラ取りがミイラになる」という状況に陥らないように警告している言葉である。
感染症や呪いに通ずる考え方であり、観察対象から五感を通して、あるいは理解を通じて情報を受け取る以上、望ましくない情報をも受け取ってしまう危険性は常につきまとうのである。
犯罪行動研究の権威で元FBI捜査官のロバート・K・レスラー氏が講義などで頻繁に引用していたことでも知られており、凶悪犯罪関連の作品・書籍などでこの言葉を意識したと思しき言い回しがしばしば見受けられる。
【引用・オマージュした作品】
上で述べたように本来は「ミイラ取りがミイラになる」という意味合いの言葉なのだが、
なんとも中二心をくすぐる言い回しではないだろうか?
特に
深淵で眠る邪神の名を冠し、実際に化け物が深淵から覗いてくるエピソードも多い
クトゥルフ神話との相性は良く、そうでなくても著名な言葉なので引用する作品も時折見られる。
というか
クトゥルフ神話発祥の言葉だと勘違いしてる人も少なくない
。
ルイス・キャロルの同題の詩からタイトルを引用したミステリー小説。
原作の詩におけるスナークとは誰も目にしたことのない怪物。もしもブー
ジャムだったとしたら捕まえた者は影も形もなく消えてしまうという。
本作は、このスナークとニーチェの言葉が掛け合わされている。姿もない怪物を追った者の末路は……。
同題の短編集収録の
小中千昭の短編小説。
とある存在が誘導していたせいでもあるのだが、勝海という男が
深淵に誘われ、最期には自ら深淵に足を踏み入れてしまう。
深淵もまた、そんな彼を観察していた。
朱川湊人の小説シリーズ。
覗くと正気を失うと噂される井戸と、とある少女の闇を描いた「汝、深淵をのぞくとき」というエピソードが存在。
めぐみんが初登場時に発言。
何故かTシャツとして商品化されている。
シールケが闇に触れた際に回想したフローラの言葉。
深淵の部分が「闇」に言い換えられている。
世界の真実を知り死を選ぶが失敗し、目覚めぬまま光と闇の間を漂うナウシカを見てセル厶が発言。
こちらでも闇と言い換えられて引用されている。
作中で引用されている他、狡噛慎也の在り方を示している。
ATLUSの
ゲームシリーズ第三作。
石碑に刻まれた古の賢者の言葉として引用されている。
本作の
ラスボスは
深海に潜む邪神であり、それを表した直球の伏線となっている。
まあ、そんなラスボスを倒せる冒険者も怪物と言って差し支えないだろうが。
七夕の特別編のエピソードの一つ「恐竜はどこへ行ったのか?」にて、登場人物の田口教授が発言。
彼も人間が触れてはならない深淵を覗いてしまった結果、向こうからも覗かれるようになった者であり、発狂したふりをして深淵の存在を秘匿しつつ警告を送っていた。
CHAPTER 6「THE ABYSS GAZES ALSO」(邦題:深淵もまた見つめる)とエピソードの表題に使われ、最後のコマでも引用されている。
(日本語版では最後の引用部分は「お前が深淵を見つめる時、深淵もまたお前を見つめているのだ」と訳された)
このエピソードは逮捕された
ウォルター・ジョセフ・コバックス/ロールシャッハのカウンセリングを行う精神科医の視点で進められる。
精神科医は、面談を重ねるごとに徐々にロールシャッハの精神性に寄り添っていき、最後に彼から叩きつけられた「世界の真実」によって同様の狂気を発露させてしまう……という展開になっている。
「深淵をのぞくと、めっちゃ深い」
「ないです。ニーチェはそんな語彙力ゼロの学生みたいな格言は残していない」
「女の子はスカートに深淵を、男の子はズボンに怪物を隠しているのよ」
「ニーチェを
下ネタおじさんみたいにするな。一言も言ってないからそんなことは」
連載初期のエピソード「地獄流し」より。
逃走中の銀行強盗犯は、たまたま迷い込んだ鬼太郎の家で見たこともない不思議な景色が映る宝石を発見する。時間を忘れて宝石の中の景色を眺めていたところ、向こう側からもこちらを覗く眼が現れて……。
作者の
水木しげるは青年時代にニーチェを始めとした哲学書を読みふけっていたため、当エピソードがその影響を受けて描かれたであろうことは想像に難くない。
余談だが水木は同じテーマ、同じ宝石というガジェットを用いて別の短編を執筆しており、そちらでは異界の景色に魅入られて破滅へと向かう大学教授の姿が描かれている。
物事の暗い側面ばかり見がちなトレギアに対しタロウがある地球人の言葉として引用したが、トレギアは好奇心を抑えきれず深淵を覗き続け狂気に飲まれた。
- 深淵への覗き込み/Peer into the Abyss
Magic the Gatheringのソーサリー。ライフ半分を対価に深淵を除き込みデッキの半分という莫大な知識を得る、もしくは深淵を覗き込んだことで狂気に飲まれ消耗する、といった効果。
とはいえ手札を増やすカードとしてはコストが重すぎ引く枚数が多すぎ、他のプレイヤーのライフを削る呪文としては「現在値の半分」であるためトドメはさせず多くて10点程度のダメージに留まり効率が悪い。
相手がドローするたびにダメージを与える《地獄界の夢/Underworld Dreams》や自分がドローするたびに相手のデッキを削る《テフェリーの後見/Teferi's Tutelage》と組み合わせて
一撃必殺が主な用途。
伊坂幸太郎の小説「魔王」のコミカライズ作品。
週刊少年サンデーにて連載されていた。第1話の序盤にて引用されている。
【余談】
この言葉をGoogleで検索しようと打ち込んで行くと、この言葉に混じって「
深淵をのぞく時深淵をのぞいているのだ」という、
どこかの議員の構文みたいなただ深淵を覗いているだけな一文がサジェストされる。
どうやら2chの誤用が発祥とされる
コピペらしい。
追記・修正する者は、その過程で自分自身も追記・修正を受けることのないように気をつけなくてはならない。
Wikiをのぞく時、他のアニヲタもまたWikiをのぞいているのだ。
- 毎回ラストで格言を引用してたレッドアイズ、予想通り最終回はこれだった。 -- (名無しさん) 2022-08-10 21:04:25
- コナンの美術館オーナー殺人事件はこれをモチーフにしてるんだな。>悪魔の返り血を浴びた正義の騎士はやがて悪に身を染めていくというものであり、 -- (名無しさん) 2022-11-04 11:30:09
- この項目の関連として間違ってはいないんだが、有害指定同級生の浮きっぷりよ… -- (名無しさん) 2022-11-04 11:37:47
- 物体に力を加えるとき、物体もまたこちらに力を加えるのだ(作用・反作用の法則) -- (名無しさん) 2023-01-28 18:20:42
- 深淵が俺をのぞく時、俺もまた深淵を見返しているのだ。フハハハハ!怖かろう!恐ろしかろう!気持ち悪かろう! -- (名無しさん) 2023-01-28 19:56:17
- 深淵「べ、別にあんたが覗いたから覗いてる訳じゃないんだからね!」 -- (名無しさん) 2023-03-20 19:39:59
- 深淵「ん? 今俺を見たな? これで縁が出来たな、深淵だけに。ハイ、アルトじゃ~ナイト~!」 -- (名無しさん) 2023-03-20 21:54:57
- 深淵をのぞく時、フルハーネス安全帯をつけることが義務化されたのだ -- (名無しさん) 2023-07-09 22:42:00
- 深淵「キャー! ○ーチェさんのエッチ!」 -- (名無しさん) 2023-07-09 23:34:40
- 深淵を覗くと、暗くてよく見えないのだ・・・ 深淵もまたこちらを覗くけど眩しくてよく見えないのだ・・・ -- (名無しさん) 2023-10-29 13:08:32
- 何という厨2語録wちょくちょく創作物で使われてる辺り変な魅力あるのかね? -- (名無しさん) 2023-10-30 19:34:28
- 君が深淵を覗くとき、深淵は君を無視して後ろを向いているのだ -- (名無しさん) 2023-12-15 14:27:18
- 我々人類は深淵となってしまった。ただ生きていくためには仕方がなかったからだ。 -- (名無しさん) 2024-01-11 12:20:43
- 我々は生きていく過程で様々なモノを犠牲にしている。食料や資源は勿論のこと個人の充満もまた然りである。 -- (名無しさん) 2024-01-16 00:41:20
- 一部ではこれらから脱却せんとする者たちがいる。欲望からの解放もしくは隷属、持続可能な社会の実現、ボランティアの参加、そして人類を生物を終わらせること。 -- (名無しさん) 2024-01-16 00:50:15
- しかし、これらにも犠牲は当たり前のように存在するであろう?つまり、深淵からは逃れられない。我々は断ち切らんと努力してしているがただ空を切り繰り返しているだけなんだ。 -- (名無しさん) 2024-01-16 00:54:02
- それでも、君たちは進まんとするのであろうな。希望を持ち深淵から目を逸らし続けることによって、あるいは深淵そのものになることによって。 -- (名無しさん) 2024-01-16 01:03:11
- その他の選択肢はない。そしてどちらの選択にせよ、人類の深淵を深めるだけだ。 -- (名無しさん) 2024-01-16 01:32:46
- ↑言葉の意味はわからんがとにかく凄い厨2だ! -- (名無しさん) 2024-01-16 19:27:54
- この格言、皮肉なことにニーチェ自身が実践しちゃってるんよ -- (名無しさん) 2024-01-27 23:00:55
- ↑「神は死んだ」と宗教の権威を否定した哲学をニーチェは展開したけど、晩年狂気に染まりワーグナーへの手紙から自分自身が権威あるものだと錯覚している -- (名無しさん) 2024-01-27 23:08:46
- ↑↑ほんとこの格言が意味ないと思われるような逸話だけど、忠告した人間が怪物になってしまうほど深淵はヤバいって事なのかもしれないね -- (名無しさん) 2024-01-27 23:15:11
- ↑↑晩年じゃなくて3年後だったわすまん -- (名無しさん) 2024-01-27 23:39:37
- 太陽見れば太陽も自分を見てる、そんな生き方の方がいいや -- (名無しさん) 2024-01-28 00:07:34
- 井戸の中のねこを覗くとき、ねこもまた我々を覗いているのだ。 -- (名無しさん) 2024-03-02 22:25:44
- お前が深淵を覗く時、お前は深淵を覗いているのだ。 -- (名無しさん) 2024-08-14 14:11:39
- ジョージ・ビールズ・シャラーという学者が野生のゴリラを観察してた時、ゴリラはそのうちシャラーが近づいても逃げたりはしなくなったが一応警戒して子供がシャラーに近づくと大人も後を追ってきた。そこでシャラーは万一を考え、離れて木によじ登ったところ、ゴリラたちは「あっ!あいつ木に登りだした。何をする気だろう?」と群れのほぼ全部がぞろぞろ木の下に集まってシャラーを観察したという。 結論「シャラーがゴリラを観察してたとき、ゴリラもシャラーを観察していた。」 -- (名無しさん) 2024-08-22 18:20:54
- 「負けヒロインが多すぎる!」4話サブタイトル。「負けヒロインを覗く時、負けヒロインもまたあなたを覗いているのだ」 -- (名無しさん) 2024-09-09 20:03:59
- ハム太郎3大言ってない名言「勝てばよかろうなのだ」「お辞儀をするのだ」「深淵をのぞく時、深淵をのぞいているのだ」 -- (名無しさん) 2024-11-01 05:05:04
- これ今日だと、めちゃくちゃ誤用されてる言葉だと思う。相手側の干渉は一切なく、自身が変化した場合のみ適用される言葉 -- (名無しさん) 2024-11-23 18:38:09
最終更新:2024年11月24日 19:06