SCP-540-JP

登録日:2017/01/31 (火) 19:12:00
更新日:2019/09/10 Tue 13:36:14
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SCP-540-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『ンボボボさん』。オブジェクトクラスは「safe」に指定されている。

SCP-540-JPは、某県の某市に存在する小学校の、5年3組の教室だ。
この教室の持つ異常性は、教室内のヒューム値が通常よりも低い『クラスE現実性希薄領域』であるという事である。

財団が実際に計測を行ってみたところ、なんと検出された数値は0.986~0.982hmという物であった。
いつ頃から、このようなヒューム値が出るようになってしまったのかは不明だ。

ヒューム値とは、早い話が現実性の強度や量を示す値の事である。
この値が高ければ高いほど、現実に与える影響は強くなってしまうというわけだ。

例えば、個人のヒューム値が高い場合、その個人は現実そのものに干渉して思いのままに組み替えることが可能となる。
要するに『現実改変能力』である。

アニオタwiki的には、涼宮ハルヒなんかがいい例だろうか。

財団でもこの能力を危惧しており、たとえばSCP-239(通称・ちいさな魔女)は、当人が幼女であることを有効活用して行動自体に制限を加えることで辛うじて収容に成功していた。
…もっとも、彼女の能力のチート具合を危惧した某変態博士の所為で財団内に内乱が起きた挙句、彼女自身はマシン疑惑のある冷徹な科学者の手によって昏睡状態にされてしまうのであるが。

この他にも、財団はまだ存在にたどり着いていないものの、日米両国で悪事を働いたサイコパスの男もこの『現実改変能力』の所有者であると推定されている。

では反対に、ヒューム値が通常よりも低いとどのようなことが起こるのであろうか?
その答えがこのオブジェクトである。

このオブジェクトの異常性が明らかとなったのは、教室内に現在では《SCP-540-JP-A》として指定されている怪人が突如として出現した事件がきっかけであった。
《SCP-540-JP-A》は、この教室で授業を受けていた生徒の一人、金田賢治少年が素体となって誕生した、布袋を被った少年のように見える人型の実体である。

素体と聞いて嫌な予感した方もおいでになられたと思われる。
…正解だ。

本題に入る前に、まずはこの実体について解説して行こう。
繰り返すが、 《SCP-540-JP-A》は布袋を被った少年のように見える人型の存在である。

布袋のように見えるのは、実は変質した少年自身の頭部である。
目と耳は肉眼では判別が不可能なほどに縮小してしまっており、鼻と口も同様に縮小しているため五感のうち四つまでが不自由となってしまっている。

一応、声は出す事ができるものの、会話を試みても「んぼぼぼぼぼ…」としか喋れないため意思疎通は不可能な状態である。
その為、金田賢治少年であった頃の知能がどれだけ残されているのかも不明だ。

また、袋の布地に見える物は実際には彼自身の変質した皮膚であり、手触りはゴワゴワとしているらしい。
…麻袋かな?

なお、金田少年が《SCP-540-JP-A》に変貌した際、彼は手に未使用の文庫本サイズの無印手帳を持っていたことがクラスメイトに証言によって明らかとなっている。
少年は、変身するまでこの手帳を読むようなそぶりを見せていたそうであるが、回収されたこの手帳には何の異常性も見られなかった。



財団との関わり

財団がこのオブジェクトを認知したきっかけは、問題となった教室を有する小学校が地元の警察にかけた一本の通報電話であった。

「賢治君がンボボボさんになってしまった」

『ンボボボさん』とは、問題となった小学校で噂となっていた怪人の名前である。

現場に急行したエージェントは、とりあえず怪人となってしまった金田少年を施設に収容するために教室から連れ出そうと試みる。
ところが、教室を一歩離れた途端に呼吸困難や頭部が変形してしまった事に起因する脳内出血などが一気に襲ってきて、哀れな少年は昏睡状態に陥ってしまったのである。

現在、金田少年は公的には『心不全により死亡』という扱いになっており、彼の身体は財団の医療施設で生命維持装置につながれている。



人の口に戸は立てられぬ

エージェントが金田少年のクラスメイトに聞き取り調査を行なったところ、同少年がお昼休みにいきなり《SCP-540-JP-A》に変貌してしまったらしい。
以下は、財団所属の科学者である若桑博士が、金田少年が変貌するその瞬間を目撃してしまった少女に対して行ったインタビューの抜粋である。

若桑博士「『ンボボボさん』についてお話し頂けますか」
少女「はい。私の小学校で今年の始めぐらいから流行っていた都市伝説です。
   ンボボボさんは、学校に住む、妖怪やお化けみたいなもので、あ、神様かもしれないよって言う人もいました」

少女の話によると、『ンボボボさん』は大きい頭に袋を被っていて、その素顔を見た人はいないとされていたそうである。
また、言葉が分からないので『んぼぼぼぼぼ…』としか言葉が喋れないらしい。

少女「それで、いつも文字が書かれていない本を読んでばかりいて、その本には絶対に触っちゃダメなんです」
若桑博士「なぜですか」
少女「その人が新しい『ンボボボさん』になっちゃうからです」

学校内で流行っていた噂によると、『ンボボボさん』の本を手に取ってしまった人間は何故か『ンボボボさん』の真似をして白紙の本を読むようになってしまうそうなのである。
それも、時と場所を選ばず、四六時中その読める筈のない本を読みふけるようになってしまうのだとか。

少女「それで、時間が経つと、新しい完璧な『ンボボボさん』に変身するんです。
   だから、本を読んでばっかりいる子は『ンボボボさんなんじゃないか』ってみんなに言われたりしたんです」

どうやら、ジョークのネタとして使われるほど、『ンボボボさん』は問題の学校内で浸透していたらしい。

若桑博士「本を読み始めるようになってから、どれくらいの時間が経って『ンボボボさん』になるのですか」
少女「ごめんなさい。わかりません。でも、たぶん、3日くらいだと私は思います。ケンちゃんがそうだったから」

…さて、問題の金田少年が何故《SCP-540-JP-A》となってしまったのかというと。
事件が起きる三日前、なんと金田少年が何も書かれていない文庫本を手に教室に現れ、「『ンボボボさん』から本を奪ってやった」などとクラスメイトに対して自慢し始めたそうなのだ。

少女「みんなは『ンボボボさん』になるのが嫌だったから、それに触ったりはしなかったんですが、ケンちゃんはただの都市伝説だって言って平気な顔をしていました。
   ケンちゃんの様子がおかしくなったのは、その次の日からでした」

普段は元気印のアクティブな人間であった金田少年が、その日から何故か教室で一人黙々と件の何も書いていない文庫本を読みふけるようになってしまったのである。
しかも、クラスメイトがいくら声をかけても、彼は全く反応を示さなくなってしまったのだ。

そして、今日…。

少女「昼休みには5年生の人たちが私たちの教室にいっぱい集まってケンちゃんを見に来ました。
   ケンちゃんが『ンボボボさん』になったのはその時でした。
   ケンちゃんの体がボコボコと変形し始めて、そして、『ンボボボさん』になっちゃったんです」

このインタビューの後、目撃者となってしまった生徒と教員には記憶処理が施された。


大吉は凶に還る

後の調査により、金田少年が突然危篤状態に陥った原因は、彼の肉体が粗雑な現実改変を受けた結果であった事が判明している。
ロクに仕組みを知らない素人が、勘だけで機械を修理しようとして大惨事になってしまうのと似たようなものだったのだ。

こうして、金田少年が怪人に変貌してしまった理由は見当がついた。

しかし、なぜこんな事が起きてしまったのか…調べれば調べるほど、財団は迷宮の中へと迷い込んでしまったのである。

金田少年を《SCP-540-JP-A》に変貌させるためには、最低でも1.7という強大なヒューム値が必要なのであるが、残念ながら問題の教室にはそれだけの改変能力を持った人間は存在していなかったのだ。

更に問題なのは、現場となった小学校の教室が『クラスE現実性希薄領域』だったという事である。

ヒューム値が低ければ、現実改変の影響を受けやすくなるのは事実である。

しかし、水に少量の塩を足しても味が変わらないのと同じように、一般人の表層意識程度ではこの空間では簡単に希釈されてしまい、現実に干渉することなど不可能であるはずなのだ。
では、この事態を引き起こしたのはいった何だったのだろうか?

この難問を見事解決に導いたのは、後に『蒐集物加護及天罰之術式』に挑んで命を落とすことになる土橋京一郎博士であった。



三人市虎をなす

第2回・SCP-540-JP調査報告会にて土橋博士が提唱した仮説は、現実改変の研究にコペルニクス的転回を齎す歴史的なものとなった。


土橋博士「私の推測を交えて、事の成り行きを初めから説明しましょう。全ては金田賢治君のイタズラが起点です。
     賢治君は学校で今一番流行っている都市伝説『ンボボボさん』に触発され、これを利用してクラスメイトを脅かしてやろうと企んだ。
     お小遣いで買い揃えた無印手帳をンボボボさんから奪った本だと皆に見せびらかし、自分がンボボボさんの呪いにかかったふりをした」

早い話が、金田少年はクラスの注目を集めたくてしょーもないイタズラを仕掛けただけだったのだである。

しかし、事情を知らないクラスメイトは金田少年が本当に呪いにかかってしまうのではないかと心配し、彼の行動を必死になって止めようとした。
その姿が、ますます金田少年を愉悦させた。

その結果、彼の一人芝居は三日間もの間継続し、彼が『呪い』にかかってしまったという噂は学校中に広まる事となってしまったのである。

土橋博士「現実性希薄領域に大勢の人が集中した、これが良くなかったんです。人の表層意識は、現実改変のトリガーを引く力になってしまう

噂に敏感な小学生の目の前に、その噂通りの言動をとるようになってしまった少年がいる。
この子は、間違いなく『ンボボボさん』に変貌する…そんな思考が現実改変が発動しやすい領域に充満する。

█研究員「SCP-540-JPはクラスEの現実性希薄領域です。そのような顕著な現実改変はありえません。博士もご存知でしょう」

…そうなのだ。先ほども書いた通り、現場はヒューム値が通常よりも低い特殊な空間だったのである。

この空間で現実改変を行うには、まずヒューム値を外界と同じ数値に戻し、更に現実改変が発生するレベルにまでヒューム値を引き上げるための甚大なエネルギーが必要な筈なのだ。
――しかし。

土橋博士「簡単です。単体では弱い力も、集まれば強い力に成り得る」

塵も積もれば山となる。
小さなヒューム値の積み重ねも、山となれば現実をなぎ倒す事に繋がるのである。

本来なら、人の思考は千差万別であるため小さな現実改変が加算され、強大な力を発揮すること有り得ない話だった。
――だが。

土橋博士「今回は『ンボボボさん』という明白なイメージを学校中の生徒が都市伝説という形で共有していた。
     非常に類似性の高い50以上の表層意識が、SCP-540-JPという現実性希薄領域で、金田賢治君という1つの対象に集中してしまい、1つの現実改変が起こってしまった。
     ……非常に稀な集団による現実改変が行われてしまったのです。というのが私の推測です」



…待てよ。
という事は、この教室のようにヒューム値の極端に低い場所を探し当てて、大勢で願えば魔物娘図鑑』に出てくるようなモンスター娘達を現実世界に再現する事が!?

土橋博士「そんな事やったらお前ごと収容するからな!?」




申し訳ございません!!



余談

因みに、怪人の名前はアメリカのロックバンド『ガンズ・アンド・ローゼズ』の元メンバーであったミュージシャン、スラッシュが音楽を手がけたことでちょっとだけ話題となったホラー映画『少女生贄』に由来しているそうである。
…正確には、DVDのパッケージに書いてある幽霊のセリフが元ネタだったりするのだそうだが。

また、元記事に掲載されている《SCP-540-JP-A》の写真は、このオブジェクトの生みの親である土橋博士の中の人、tsucchii0301氏が高校生の頃に自分を撮影した写真を使ったらしい。



驢事未だ去らざるに馬事到来す

事後調査のために問題の小学校を訪れたエージェントの報告により、記憶処理を用いて抹消したはずの『ンボボボボ…』の噂が再び流行していることが明らかとなった。
しかも、噂にはいくつかの新しい要素が追加されていたのだ。
「廊下を独りで歩いているとンボボボボ…という声が聞こえる」
「夜の教室で本を読んでいる」
などが、追加された主な噂の内容である。

生徒たちに確認をとったところ、一様に「他人から聞いた」という返答が返ってきた。
記憶処理に不備があったのか、何らかの形で同じ内容の噂が再び流行してしまったのか。
真相は藪の中である。

んぼぼぼぼ んぼぼぼぼ んぼぼぼぼ んぼぼぼぼ んぼぼぼぼ んぼぼぼぼぼ ほんかえして


追記・修正は噂に流されにくい方にお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-540-JP - ンボボボさん
by tsucchii0301
http://ja.scp-wiki.net/scp-540-jp

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
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