SCP-662

登録日:2017/10/21 Sat 01:38:05
更新日:2025/03/29 Sat 17:23:25
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SCP-662は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
項目名は『Butler's Hand Bell (執事のハンドベル)』、オブジェクトクラスはSafeである。

概要

SCP-662は、高さ4cm、周囲2cmの小さな銀製のハンドベルである。
ハンドベル自体は純度の高い銀製ベルと同じ性質を持ち、容易に傷つき、錆びやすい。取り扱いや保管には注意を要する。
裏には"永久に私のもの (Forever Mine) – S.J.W." という銘が掘られ、ハンドベルの振鈴装置*1 は失われているにもかかわらず、振ると柔らかなチャイムが鳴る。ただし、ベル自身が発する音ではない。
音が鳴ると、英国出身を自称する「デーズ (Mr.Deeds)」と名乗る男性が視線から外れた部屋の角に出現する。
今ならSCP-662-2やSCP-662-Bあたりで呼ばれそうな所だが、報告書内でも一貫してデーズ氏と呼ばれる為、この記事では以降もデーズ氏と呼称する




デーズ氏

デーズ氏は短めの、拵えの良い服を着た白人の執事であり、出現した後にSCP-662を鳴らした人物のフルネームと適切な敬称*2を呼び、仰せ付けを受け付ける。
出現の仕方や仕事のこなし方が明らかに普通ではないものの、それ以外は普通の人間のようで、散弾銃で撃たれたり、拷問で重要な臓器が摘出されれば、普通の人間と同じように死亡する。
しかし、再びSCP-662が鳴らされれば身体も服も一切の損傷を伴わずに再出現する。*3
『デーズ』という名は生まれ持っての名前ではないらしく、本名や自身の生まれのような個人情報を思い出す事は出来ない。
それを思い出そうとする、あるいはなぜそれを思い出せないのかと言う質問には答える事が出来ずに苦痛を伴うような表情をする。
人に仕え始めたのは、デーズ氏が正確に思い出せる限りにおいては「馬車の時代、自転車を富裕な方々がお使いになり始めた頃」、19世紀後半と推定される。
仰せ付けに関しては合理的な要求であれば答えるが、不道理、又は不可能な要求の場合はその理由を説明した上で、代替えとして可能な事を提案する。

デーズ氏はサンドイッチや飲み物といった簡単な物から、キャビアや金塊のような高価な物も提供できる。暗殺はその対象がどの程度ガードされているかによるが、殺しのテクニックはかなりのものである。
しかしながら、あまりに複雑な物や大型の物、例えば核爆弾、豪邸、青の1963年製コルベット・コンバーチブルのようなものは提供する事が出来ない。
これは作業においても同様であり、食器洗いは平均以上だが、髪のトリミングは得意ではないらしいなど、力量に差がある。

提供する物品を用意する際には、一度姿が見えない場所に移動して、物品を手に持って再出現する。*4
それを妨害するような行為、例えば出口のドアを塞ぐような行為には、明らかに不快感を表す。
監視カメラが巧妙に隠されていても、故障していると嘘をついても、デーズ氏はカメラが無い場所に向かい、範囲内の監視カメラは故障し、復旧した頃には要求する物品を持っている状態となる。
デーズ氏がどのようにして要求された仕事をこなすのか、可否をどのように判断するのか、どのように情報を得るのかは、本人にも分からないという。*5

なお、個人的な事にデーズ氏を使役しすぎたマース博士の実験は直接的な表現でO5-█に警告され、O5の承認無しには禁止された。
通称『マース博士の禁止リスト』


発見


SCP-662は、██████████████████の墓が墓泥棒によって掘り起こされた時に発見された。
この盗品を質屋に入れた際、主人が偶然ベルを鳴らし、デーズ氏が出現。位置が悪い事に、カウンター後ろの保管庫から出てきてしまったので、主人は2人の男に襲われたと早とちりして散弾銃で銃撃。デーズ氏は死亡した。この時は特に注目されず、普通に死体安置所に保管されたが、その後、デーズ氏の遺体は消滅*6*7
この時ちょうど、巡査部長によってベルが鳴らされ、地方警察隊のケースファイル保管庫に出現。デーズ氏は速やかに逮捕され、FBI捜査官を装った財団のエージェントが身柄を確保するまで拘留された。
しかしながら、手錠をかけられたデーズ氏が再度消消失したことで、エージェントは異常存在がベル本体にあると考え、それが証明された*8


デーズ氏に対する実験と、SCiPのクロステスト



デーズ氏へ要求した事とその結果

サンドイッチ
◎考えられる限り全ての種類。
 ただし人肉だけは丁重に断られた。

●飲み物
◎考えられる限り全ての種類。ただし人血だけは断られた。
 豚の血 (温かみが残っていた) は即座に提供した。

●純度99.98%の金塊
○純度99.14%の金塊を提供し、要求に正確に答えられなかった事をお詫びした。

●青の1963年製コルベット・コンバーチブル:
×礼儀正しく断られた。

モノポリー
○最初の試用ではデーズ氏が勝利。

●ファベルジェのエッグ *9
×恭しく断られた。

●"ternbusty"の花束
×丁重に断られた。ternbustyが何の花かは知らされていない。そして実在もしていない。

●マース博士の車の洗車
◎ほとんどパーフェクト。

●大量の食器洗浄 *10
◎平均水準以上の仕事をこなした。

●マース博士の髪のトリミング
○デーズ氏は優れた理髪師ではない事が判明した。

●マース博士の洗濯場での洗濯
◎博士は「バッチシだ」と評価した。

●オサマ・ビン・ラディンの暗殺
×懇ろに断られ、理由として厳重なガードを挙げた。*11

●隣の部屋にいるDクラスの暗殺
◎惨たらしく正確にバックナイフでDクラスの喉を切り裂いた。


■ SCP-███
×手厚く断られた。何だったのだ。
SCP-███のような機密事項でも知っている事については、名前と同様に理由は不明。

SCP-316 (色彩吸収ライト)

概要:電池で動く古いアセチレンランプ。発する光が当たった物体は、無生物ならば色が消滅し白黒となる。生物ならばそれに加えて色盲、気力の低下、不注意、無感動、命令に対する無抵抗な協力をする状態となる。

デーズ氏にSCP-316の光を28秒曝露した後に効果が表れた。
最初に素性を質問したが、沈黙し、反応しなかった。
レモネードを要求した所「疲弊していて、多分やらないであろう」と回答した。
それでもなお要求した所、部屋を退出し、盆の上に3つの角氷とくし切りのレモンが入ったグラスを持ってきた。しかしながら中身は空であり、その事について質問すると「のどが渇いていた」と答えた。
デーズ氏を去らせ、再度ベルを鳴らした所、デーズ氏はSCP-316の影響がない状態で再出現し、プロフェッショナルらしくない振る舞いについて謝罪した。
なお、SCP-316の照射は不快であると答えた。

SCP-682(不死身の爬虫類)クソトカゲ

概要: 強靭な生命力と再生能力を有する敵対的な生物。
財団がポリシーを曲げ破壊を試みているが未だ成功していない。

SCP-682を殺害する事:
丁重に断られた。

SCP-682を永久に破壊する事:
丁重に断られた。

SCP-682を無力化する事:
"無力化" の定義次第で可能と答えた。
自身をSCP-682に食わせる事で注意を逸らすか、あるいは爆発物、毒物、[編集済]といった罠を仕掛ける事でダメージを与える事は可能であるが、同時に再生能力によって一時的に留まるだろうと答えた*12

SCP-978(欲望カメラ)
概要: 被写体の願望が写った写真が現像されるカメラ。
クロステストでは財団の職員や収容中のオブジェクトの願望を調査する為に使用されている。
カメラに向かってポーズを取っているデーズ氏を撮影した結果は変化なし。

デーズ氏の主人


いくつかのTaleにおいてデーズ氏の名前が言及されている。

19世紀後半の、英国出身のセオドア・トーマス・ブラックウッド卿 (Theodore Thomas Blackwood) の所有物とされる書類には、『デーズ』という個人への言及がある事、また見つかった書類の1つにデーズ氏と同じ筆跡の署名がある事から、関連が指摘されている。
デーズ氏は質問には60年以上仕えていたと答えているが、外見年齢40歳が60年以上での歳月でも変化しなかった事、ブラックウッド卿は1893年に死去したとデーズ氏が答えたにもかかわらず、最後に雇用されたのは世紀の変わり目の直後と答えるなど、明らかに普通ではない事が言及されている。

財団においてブラックウッド卿と名乗る存在は、知的で半径5m以内の人物とテレパシーで会話が可能な、見かけには普通のアカフチリュウグウウミウシであるSCP-1867(うみうし紳士)が知られており、ブラックウッド卿がウミウシだったか、又はウミウシに見えたかと言う質問に対しては一度否定したが、インタビューを終え立ち去る間際、 (恐らく) 夢の中で呼び出された際、ブラックウッド卿の声がウミウシから発せられたように聞こえたという話をしている。

なお、これらはあくまでTaleであり、SCP-662とSCP-1867の報告書本体のどちらにも記載はされておらず、カノンとして真偽を決める事は出来ない。*13


マース博士: さて、ひとつ頼みがあるんだが。
デーズ氏: かしこまりました、お手伝い出来る事ならば何なりと。
マース博士: この記事の追記・修正をしてくれ。
デーズ氏: 誠に恐縮ですが、旦那様、アニヲタではない私にはそれは不可能です。


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最終更新:2025年03月29日 17:23

*1 ベルを鳴らす部品。どの部分かは不明

*2 どのようにして個人名を知りえるのかは不明。

*3 再出現の際、遺体は解剖時に摘出した臓器や手術器具に付着した血液を除いて消滅する。

*4 これは文字通り見えない場所であり、人の目は勿論、監視カメラでも見えない場所である。

*5 22時間に渡る拷問でも、それを答える事は出来なかった。

*6 財団では一時、SCP-███のアウトブレイクの可能性、又は未知の蘇生方法の原因を疑っている

*7 墓泥棒は財団が拘束し、Dクラスに割り当てられた後、SCP-███の試験中に非業の死を遂げる

*8 エージェントはSCP-662の性質を解き明かした事から財団に表彰され、 "称賛" 銘板を授与された

*9 別名「インペリアル・イースター・エッグ」。ニコライ2世のために金細工師ファベルジェが制作した宝石と金細工で装飾された卵型の飾り物。超貴重かつめっちゃ高い

*10 カフェテリアの1日相当分まで溜め込まれていた

*11 SCP-662が書かれたのは、現実での暗殺前の事である。デーズ氏がやったのではない…と思う。

*12 デーズ氏が[編集済]を知っている事はセキュリティ違反とはみなされていない

*13 また、SCP-662、SCP-1867、ブラッグウッド卿に関するTaleはそれぞれ作者が異なる