SCP-001-JP > AiHeの提言

登録日:2018/09/24 Mon 19:01:36
更新日:2025/06/08 Sun 19:38:08
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問い続けよう。
Are We Cool Yet?



AiHeの提言とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの1つであったSCP-001-JPに関する提言枠であり、日本支部職員であるAiliceHershey氏によって執筆されていたが、作者のサイト退会により削除となってしまった。
メタタイトルは、「惟鯨」でありオブジェクトクラスは暫定Thaumiel。

概要

このオブジェクトを説明する前に、カー・オンについて少し知ってもらう必要がある。
カー・オンのカーというのはベトナム語で魚を意味し、オンは修飾語で、漢字の翁に由来しまんまお爺さんとかそういう意味になっている。これらを合わせてクジラを意味する言葉となり、ベトナムでは古くから信仰対象として人々に親しまれて来た。ストレートに訳すと「おやっさん魚」とか「魚卿」とかちょっとコミカルになるが、どちらも敬意を込められた名前である。

さて、本題に戻ろう。SCP-001-JPは、宇宙を内包するクジラである。ちなみに基底世界は食道と胃の中間くらい。
提言枠に相応しいスケールであり、捕食行動以外では移動もせず、ただ眠っている。
当然のように収容は不可能だが、とある理由により暫定だがThaumiel指定となっている。
このクジラが生息しているのは、当然ながら基底世界の外である。これを「超外宇宙」と言う。ここでは常にミーム因子の凝縮による概念の形成と拡散による消滅が繰り返されており、このクジラはこの「概念」を食べている。
どういうこっちゃか説明すると、クジラの周りは概念が生まれたり死んだりしてるよってことである。で、クジラはその概念を食べてるということ。この概念がこのオブジェクトのキモとなる。

なお、宇宙内に存在する音を真似るようにして時々いびきを書いており、これを財団の外宇宙支部がキャッチしたことで発見につながった経緯がある。 さらっと書いてるけど外宇宙支部って……

カー・オンとAWCY

このオブジェクトを探知したのと同じ頃、要注意団体「Are We Cool Yet?」のメンバーの一人、アメフラシと名乗る男を捕まえていた。AWCYではこのクジラについて知っており、カー・オンと呼んでいた。このメンバーによりオブジェクトの詳細を知る手掛かりを掴めた為、インタビュー記録が残っている。以下がその記録である。


2002年12月5日
[省略]


キリカワ博士:
では、本当に私たちの宇宙の外側には、そんなにも大きいクジラが存在するというのかね?

アメフラシ:
俺はそれを50年前から言ってるよ。

キリカワ博士:
信じることができない。何か肯定的な証拠は?

アメフラシ:
あんたらなら俺らの施設にあった観測所と同程度の施設を作る技術があるよ。最も、俺の研究職のポスト、あといくつか異常なもんを借りる事にはなるけどな?

キリカワ博士:
それはすぐさま肯定する事はできない。

アメフラシ:
それならそれで構わない。どうせ放置した所で、俺たちにとってクールじゃない事は起きないからな。あんたらにとっては許容しがたい事が起きるかもしれないけど。

キリカワ博士:
許容しがたい事?

アメフラシ:
気まぐれな世界の滅亡さ。

キリカワ博士:
説明を求める。

アメフラシ:
まず初めに、恐らくだが、俺達は「カー・オン」だなんて親しみを込めて呼んじゃいるが、あれはクジラなんてちゃちなもんじゃない。高次生命体? 神的存在? それよりも遥か原初の存在だ。

アメフラシ:
俺達はアイディアを求めた。だから、宇宙の外側へ行こうとした。この宇宙ではそれに限界があると感じたからだ。そして宇宙の外を観測した。そこには、俺らの想像通り、無数のアイディアと、想定外なクールが鎮座してた。カー・オンだ。

アメフラシ:
暫くして、カー・オンがアイディアを食い始めた。流石の食事量だ。俺達が求めていたアイディアを貪り食うようなその姿には体が震えたね。ただ、その過程でうねから零れ落ちていく無数のアイディアを見て感じた。それは、クールじゃない。

キリカワ博士:
クールではない?

アメフラシ:
カー・オンが零したアイディアは、実に興味深くなかった。ただ首を折るだけの彫像、死なないだけの爬虫類、思わせぶりなことを騙る全能者。全くつまらない。

アメフラシ:
だが、カー・オンが捕食したアイディアの中には素晴らしいものがあった。ただ首を折るだけではない、目を離したら首を折りにくる彫像あまりにも凶暴で手のつけられない不死の爬虫類どこまでも安全な全能者。それらは零したアイディアと紙一重の存在だけど、ユニークさ、クールさが確かそこにあった。

キリカワ博士:
それはたまたまではないのか? クジラは食料を選ぶ事はない。選ぶにしても、何故だ?

アメフラシ:
そんなもん決まってんだろ。誰だってアイディアはより良い方がいい。

アメフラシ:
アイディアは確かにどこにでもあって、存在し続けてる。その中からよりクールなもんを選び取りたいのは俺達だって変わりゃしねぇ。最初に俺達が宇宙の外を求めた事と一緒さ。

アメフラシ:
そんで? ここで質問だ。俺達はよりクールになれるか?

キリカワ博士:
クールになる事に意味があるのか?

アメフラシ:
もちろんさ。言っただろう。アイディアはより良い方がいい。では今ある物より、より良いアイディアが見つかった時はどうする? 簡単だ。今ある物を切り捨てる。

アメフラシ:
博士、ここは腹ん中だ。忘れるなよ。いつだって俺達はカー・オンのより良いアイディアを捕食するためのエネルギーになるんだぜ?

アメフラシ:
だからいつだってあいつに問い続けろよ。「Are We Cool Yet?」ってな。他のとこも必死だぜ。



書き起こし終了


そう。カー・オンは財団世界においてオブジェクトとされているものを好んで食べているのだ。正確には、カー・オンが食べたそれが財団世界に流れ着き、異常存在として収容されている、ということになる。



だからこそ、AWCYはクールさ、面白さを求め異常な作品を作り続ける。世界がカー・オンに飽きられ、消化されてもっとクールなアイデアを捕食するエネルギーにならないよう。

このインタビュー後、アメフラシ氏は財団へ寝返り就職し、アーノルド博士としてSCP-001だけでなく他の外宇宙のSCiPを観測するための機材が整えられた。
その結果カー・オンの観測に加えカー・オンが取り込み変質させた物品の特定も可能になった。
また、後に財団が収容してから異常性が変異しているオブジェクトが存在することがわかった。一例が以下。

  • 現実改変能力を有した首なし死体。→今は普通のボノボ
  • 女性に対し性行為を誘発する蝉。→これに加えて、相手の男性の海綿体が蝉に変わる
  • 音楽が流れ、救命者がそれに合わせて胸骨圧迫を行うようになるAED。→現在、数百年に及ぶ実験が継続中
  • 奇形児や知的障碍児を材料としたクッション。→実験と書類からこれらの特性が判明したことになった
  • 周辺の文書をラノベにリライトする情報災害特性を持った小説→完結した物語の中で暴れる怪物と、それを封殺する少女の物語に

しかし、変異する前の報告書が存在していることもわかり、なぜどのようにして変異したかは不明である。






追記・修正はカー・オンの口に合うようにお願いします。


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最終更新:2025年06月08日 19:38