人的補償

登録日:2018/11/29 Thu 23:00:40
更新日:2025/04/21 Mon 11:54:25
所要時間:約 10 分で読めます






人的(じんてき)補償(ほしょう)とは、プロ野球においてフリーエージェント(FA)権を行使した移籍選手の補償として、移籍金を低くする代わりに獲得される選手のこと。

解説


野球協約第205条の2に規定されている、FA移籍に関するルール。

FA宣言により他球団に移籍した選手が存在する場合、「戦力低下の補償」という名目で「該当選手の旧年俸の8割or6割」もしくは「同5割or4割+特定選手」を移籍先の球団から獲得することができる。
このうち後者を選んだ場合、「人的補償」と呼ばれる。
ただし2009年以降は、前所属球団での年俸が11位以下の「Cランク」とされる選手の場合は、補償選択が不可能なルールに改定された。

類似点がある為にトレード制度と同一視する勘違いも多いが、あくまでもトレードとは別物である。
違いは「 話し合いで利害関係が一致し、選手や金銭の交換を行う 」のがトレード、「 FA権を行使して移籍した選手の、金銭や代替選手を特定の範囲内で選ばせる 」のが人的補償。
ただし、裏ではトレードのように人的補償の話し合いを密かに行っている球団同士もあるとの噂も密かに囁かれている。

プロテクトリストのルール


FA選手と移籍先球団との選手契約締結がコミッショナーより公示された日を起点とし、2週間以内にまず移籍先球団がプロテクト外の選手名簿を提示。これは移籍元球団のみに提示され、公開されない。

FA選手獲得球団は、規定の人数(現在は28人)内で所属している支配下登録の選手をプロテクト(保護)できる。
人的補償はそのプロテクト枠から漏れた選手の中から選ぶことになる。
コミッショナー提示から40日以内にこれらの補償を完了しなければならない。

支配下登録でない育成選手はプロテクトリストにカウントする必要はなく、人的補償対象とはならない。
かつて西武がソフトバンクに対しての人的補償に育成選手だった頃の千賀滉大を狙ったが、ルール上不可能だったので獲得できなかったという話も流れた。
育成選手が人的対象外になるルールは、人的逃れに育成枠の悪用をする可能性があるのではないかと批判する声もある。
その代表例とも言えるのが2022年の巨人で、11人もの支配下選手を育成選手に降格させ、その中には梶谷隆幸、中川皓太などの主力選手も多数いた。

育成選手は人的補償の対象外となるので、ルールの盲点を突いた常套手段だと非難を浴びた。

育成選手以外にも、「外国人選手」「直近のドラフトでの獲得選手」「外国人枠にカウントされない日本人扱いの外国人」も補償対象外になる。
ただし、前年度のドラフト獲得選手は補償対象外にはならず、実際に人的補償となった例が発生した。

人的補償として選ばれた選手が移籍を拒否した場合、その選手は資格停止選手となり処分が解除されるまで試合出場不可の引退状態となる。
このような展開が起きた場合、人的補償獲得球団の補償は金銭補償と同等の補償が行われる。
ただし、この罰則には後述のような抜け穴が後々明るみとなる。

人的補償選手の移籍後の活躍について


人的補償で移籍した選手には活躍する選手も少なくなく、中にはFA選手よりも実績を上げたパターンもある。

有名な例としては、大竹寛の人的補償として選ばれた一岡竜司(巨人→広島)だろう。
移籍前は二軍で好成績を残しながらも一軍昇格はなかったが、移籍後にリリーフとしての才能を一気に開花させ、広島の中継ぎの主力としてチームを支えた。
大竹も決して活躍しなかったという訳ではないが、一岡の活躍っぷりから「実質トレード」と言われてしまった。
結果論とは言え、同一リーグの戦力強化に繋がってしまった巨人フロントは戦略ミスになったと言える*1
ただし、大竹自身は2019年から中継ぎ投手として活躍し、チームの連覇に貢献した。逆に一岡は2019年から登板数が減ってきており、2021年は初の登板ゼロでシーズンを終えている。

この他小田幸平(巨人→中日)も一岡と並び実績を上げたと言えるだろう。
小田は現役時代に放ったホームランはたったの2本(巨人時代と中日時代にそれぞれ1本ずつ)、通算打率も2割を切っているが、落合博満監督の下、黄金期を迎えた中日で谷繁元信に次ぐ第二捕手として活躍。また、明るい性格からチームのムードメーカーとしてファンからも人気を集め、「ムードメーカーとしての活躍も年俸に入っている」と言われるほどチームに馴染んだ存在となった。
また交換側の野口茂樹は中日では左腕エースとしてノーヒッターを達成したり、リーグMVPを獲得する活躍をするも、巨人移籍後は衰えからか鳴かず飛ばずに終わってしまったことも小田の高評価に拍車をかけている。

この他、スーパーキャッチで一躍時の人になった赤松真人(阪神→広島)、盗塁王を獲得するなどベテランながらリードオフマンとして輝きを見せた福地寿樹(西武→ヤクルト)なども移籍先で大きな活躍を見せている。
尤も赤松と福地はそれぞれのFA選手が新井貴浩石井一久で、この2人も移籍先で活躍しているのだが。
その後新井も広島に出戻りしたので自分の人的補償で移籍した赤松と同じチームになるという珍事も発生した。

人的補償選手がFAを獲得し、別球団に移籍してしまった事もある。
これは片岡治大の補償選手だった脇谷亮太(巨人→西武→巨人)が有名で、脇谷は人的補償として出された球団に戻った格好となる。
脇谷は西武時代は数少ないベテランとして、また勝負強さを活かし主軸として活躍したこともあり、西武ファンを中心に一部からは脇谷を「恩知らず」という声もあるが、よく考えれば人的補償は好きで出される訳ではないので、脇谷を責めるのは筋違いである。
こちらもFA選手と人的補償選手が同チームになった例である。

しかし、全体として見ると「活躍する」選手は存在するが、やはり「FA移籍した選手と同等かそれ以上に、長年活躍する」選手は少ない。

所詮は人的補償は28人の枠から漏れた存在でしかなく、言わば編成から「いなくなっても良し」と判断された選手でしかない。
そのため、実力的には主力級の選手と言える人的補償はあまりおらず、FAでいなくなった選手の戦力的な穴を完全に埋められた例は僅かと言える。
「移籍した選手よりも活躍した選手」ともなると相当に数が少ない。移籍した選手が怪我などの理由でほとんど働けなかった例くらいしかない。

近年はベテラン選手がプロテクト外になる事も少なくはない。

また、人的補償なしの金銭補償はランクなどで差もあるが、FA選手の旧年俸の最低0.3倍は確保される。
Bランク以上のFA選手となれば億プレイヤーなことも多く、人的を選択しなければ数千万と言う資金を貰える事が多い。
そのため、人的よりもその数千万の金銭補償費用で外国人選手を補強したほうが、補強策としては有効な可能性もある。

ちなみに、人的補償選手は基本的に過大評価されがちな傾向があるとも言われる。
FA選手自体が年齢的に宣言時はベテランの域になるため、人的補償はFA選手よりも若くなりやすく、そこから過大評価に繋がる。
心情的な面で「FAで出ていった選手よりも活躍するかもと言うファンの強がり」という面も否定はできない。


人的補償によるFA取得球団に発生した騒動


稀に「渡した選手に活躍された」という点以外で、騒ぎが起こることがある。

有名な例としては2012年の寺原隼人(オリックス→ソフトバンク)に発生した人的補償騒動だろう。
寺原隼人を獲得したソフトバンクは、人的補償として馬原孝浩をオリックス側に引き渡した。

馬原は2012年シーズンは以前に痛めた肩の負傷で初めて一軍登板なしに終わった。
年齢的にも若くないために成長の見込みは薄く、その状態で年俸も1億円超えという状態だった。
ソフトバンクはそれらのマイナス要素を計算し、獲られないとプロテクトを外したと言われる。

しかし、功労者のベテランが人的補償で渡されてしまった事に、ファンの間で大きな悲痛の叫びが起きた。
ソフトバンク側も、小林至が公式にこの人的補償選択が予想外だったとの声明を出してしまった。
オリックス側は当初野手獲得を匂わせるコメントを出しており、情報戦での敗北を露呈する形になった。

この人的補償によって、当時の九州共立大学が蜜月の関係だったソフトバンクを出禁にしたとの噂も流れた*2
この噂も本当だとすると、ソフトバンクはFA獲得以上に損害を出した結果となる。

同じような例として、2013年オフにFA行使の上で阪神から横浜DeNAに移籍してきた久保康友の人的補償として、この年捕手として最多の出場数、また一度トレードで他球団放出となるもFAで出戻りした鶴岡一成が選ばれた事例がある。
この際は出戻り選手のベテランである鶴岡をあろうことかプロテクトから漏らしたフロントへの批難が一部で上がった。

人的補償でプロ1年目を終えたばかりの選手が放出され、騒ぎとなることもある。
相川亮二(ヤクルト→巨人)に対する奥村展征、前田大和(阪神→DeNA)に対する尾仲祐哉が有名な例であり、特に奥村に至っては高卒であった為、若手軽視、育成軽視などの声もあった。
このような事例があるとドラフトに影響がありそうなものだが、やはり粗雑に扱っても良いドラフト下位や弱小高出身がプロテクト外になりやすいとされる。
上記の一岡も「沖データコンピュータ教育学院硬式野球部」という正直マイナーな学校出身であった。

また、先述した福地も広島から西武へのトレードを経てレギュラー定着しつつあったものの、石井が西武に入団したタイミングがちょうど渡辺久信監督へと交代した時期で、渡辺がチームの若返りを目指していたためプロテクトから漏れヤクルトに選択された、と言われている。

この他、江藤智(巨人→西武)、工藤公康、藤井秀悟(巨人→横浜)のように「過去にFAで取ってきた選手が人的補償で放出」という例もある。
前者2人については放出前数年間あまり活躍できず台頭する若手選手に追い抜かれていったことや、そもそも藤井は日本ハムから「FAという名の戦力外」でやってきた選手だったことも大きいのだが・・・


人的補償の問題点


人的補償は以下のような点で批判される事がある。

選手の流動性の阻害

そもそも人的補償と言う制度自体が、移籍による選手の流動性の活発化を阻害しているという批判がある。

「ドラフト時に入団する球団を決められない代わりに、長期に渡って活躍すれば好きな球団に移籍する権利を得られる」というのがFAの主題である。
また所属先でレギュラーを取れずに燻っている選手が、トレードなどではない自らの意志で別の球団で活躍の場を求められる権利でもある。

しかし、人的補償を出す必要がある選手はその分他球団が獲得に消極的になってしまうため、選手の移籍の可能性を減らしてしまう危険性がある。
基本的に主力級であるAランク選手やそもそも補償のいらないCランクの選手はともかく、Cランクとの瀬戸際であるBランク選手にとっては問題となってくる。
選手が他球団へのトレードを直訴するにしても、基本的にFA権利持ちはトレードに手が挙がりにくい*3
「Bランク選手はプロテクト可能人数をAランクより増やすべき」といった意見も出ている。
また、FA権を入手するであろう選手に対して、CランクからBランクになるように年俸調整をする球団もある。

尤も2007年以前は全FA取得者の移籍で人的補償発生の可能性があったため、これでも以前よりかは改善されている部分ではある。

「実質構想外」の屈辱

上述したが、人的補償は球団の選んだ28人の枠から漏れた存在なので、編成が「いなくなってもよい」と判断した価値の選手となる。

人的補償で選ばれた選手は「29番目の選手」などと言われる事があるが、プロテクト外の選手は見方によっては「実質的な戦力外」の扱いというのは否定できない。
トレード自体にも言える話だが、「いらない」という判子を押された選手やその選手のファンからしたら複雑な心境だろう。
このような人的補償による屈辱的心理の問題点は、元プロ野球選手である小宮山悟氏が指摘している。

尤も、人的補償で選ばれた場合は、選んだ側の球団からは「戦力として必要」と判断されたということなので一概にネガティブではない。
プロテクト外なのに引き抜かれなかった場合の方が余程屈辱と言える。
実際前述の尾仲に対して今永は「(プロテクト28人以外で)29番目に良い選手と、そういう判断を相手球団にしてもらったのは良いことだと思う」とエールを送った。

これに関わる問題として帆足和幸獲得時における騒動がある。
埼玉西武ライオンズに所属していた帆足は、2011年オフにFA権を行使して福岡ソフトバンクホークスに移籍した。Bランクだった帆足の移籍に伴い補償が発生する。
ホークスは当然ライオンズにプロテクト外を提示するのだが、これは本来公開されないものである。
ところが一部スポーツ紙が「松中信彦がプロテクト外になっている」という記事を飛ばしたのだ*4
当時の松中は長年の怪我から不調を極めており、また起用法を巡って首脳陣と対立したこともあった。よってそのような記事が出たのだと思われる。
しかし松中は、ダイエーホークス時代からの生え抜きベテラン。ダイハード打線の4番バッターとして三冠王を獲得し、他の主力選手がFAやトレードなどで移籍していく中でチームを支え続けた大黒柱である。本来なら幹部候補であり、流出は阻止しようとするだろう。

結果としてライオンズは金銭を選んだので実際に松中がプロテクト外にされたのか、それの真否を本人が知っていたのかなどは不明である。
しかし「プロテクト外にされたかもしれない=球団に不要な選手とされたかもしれない」というのは、後年の首脳陣との対立に影響したとも言われている*5

人的補償制度の罰則ルールの抜け穴

大野奨太

2017年オフの大野奨太(日本ハム→中日)のFA移籍の際に囁かれた噂から指摘された人的補償の問題。

この時期の日本ハムは、中日から大野のFA移籍に伴うプロテクトリストを受け取った際に「ファイターズとしてインパクトがあるリスト」というコメントを残した。
ところが、かなりの時間をかけて出した結論は金銭補償。この時点では特に騒ぎにはならなかった。
しかし、突如として東京スポーツが衝撃的な記事を報道する。
なんと、当時兼任コーチだった岩瀬仁紀が「人的補償での日本ハム移籍を引退覚悟で拒否した」という内容だった。

記事を要約すると、「兼任コーチは人的補償にしないのが球界の暗黙の常識なので中日は岩瀬をプロテクト外にしたのに、日本ハムが人的補償として指名しようとした。すると岩瀬本人が人的補償になったら引退すると拒否したため日本ハムは諦めて金銭補償に切り替えた」ということである。
これらの報道は以下のような問題点を浮き彫りにして提示している。


  • 兼任コーチへの暗黙の了解が本当の場合、主力に兼任コーチの肩書を与えれば実質29人以上をプロテクト可能になる
  • 選手が人的補償を拒否すれば資格停止処分など重い処罰が下される上、金銭補償分の支払いも義務付けられるのだが、移籍した後についての規定は存在しない
  • ↑のルールを利用して、移籍した直後に引退してしまえば罰則の対象にならない
  • ↑のルールを盾に人的補償選手が移籍を拒んた場合、獲得先は嫌でも他の選手か金銭補償への切り替えを余儀なくされる可能性がある


ただし注意しておくべきなのは、この噂自体の信憑性は相当怪しいところ。
当初の報道以降これといった続報を出せていない上、飛ばし記事が日常茶飯事なスポーツ紙の報道である事、さらに東京スポーツは日頃から中日を煽るような記事を乱発している事*6などから簡単に信じられる話ではない。
また他のスポーツ紙もこの問題に触れておらず、どの球団からも言及も一切ない。
ただし、後に元日本ハムの岩本勉がこの話題に関して岩瀬を強く批判している*7

この報道の信憑性とは別に「人的補償のルールの抜け穴」を提示したという点では、考察の価値はあると言える。

上原浩治

2018年オフ、FAで広島から丸佳浩、西武から炭谷銀仁朗を獲得するなど大型補強に走った巨人だったのだが、
その際に膝の手術を終えたばかりの上原浩治が来季も現役でプレー出来る保証が無いと言う理由から、一旦上原を自由契約にすると発表。
膝の回復具合を見て来季も戦力になりそうなら再契約するとしたのだが、ここまでなら特に大きな騒ぎにはならなかった。

ところがその後、丸と炭谷の前所属球団である広島と西武の2球団に、人的補償の為のプロテクトリストを提出したのだが、
その直後に巨人は上原と「来季も戦力になる目途が立った」という理由から再契約を行った。
当然プロテクト外選手の中にも自由契約となった選手は入っていない為、これも実質29人目のプロテクト枠を作ったのではないかと指摘する記事が出ている。

この上原の件に関しては、

「事故で〇〇が右腕を複雑骨折して選手生命絶望になっちまった。一旦〇〇を自由契約にする。」

と嘘の情報を流しておき、万が一他球団がそれを承知の上で獲得を申し出ても当該選手が頑なにそれを固辞し、プロテクトリスト提出後に

「あ、うちのチームドクターの誤診だった。ただの軽い捻挫だったから再契約するわ。テペペロッ(爆笑)」

とでも球団が主張して再契約してしまえば、実質29人以上のプロテクトが可能になるという問題点や抜け道が指摘されている。いやまあ巨人のチームドクターはみんなヤブ医者って噂もまったく別個で存在するんだが…*8
ただし上原は自由契約になっている間も、巨人以外のチームから獲得の申し出が全く無かったと主張。
もし獲得の意思を示す球団があれば応じていたかもしれないとした上で、上記の思惑があった事を否定している。
また、上原自身はこの時点で44歳の中継ぎ投手で前年の成績も別に飛びぬけて良い成績ではなかったことから、別に他球団も単純に選手枠を使ってまで欲しいと思うような選手ではないという意見も見られた。
それでも「あまりにも再契約の時期が悪過ぎた」故に起きてしまった疑惑である事は、一考の余地があるのではないだろうか。

その後西武は炭谷の人的補償として内海哲也を、広島は丸の人的補償として長野久義を獲得したのだが、こちらもこちらで

「他球団からのドラフト1位指名を蹴ってまで入団してくれた、しかもあれだけ球団に貢献してくれた生え抜きの選手を、こんなに簡単に手放すのか」

などと別の意味で騒ぎになってしまっていたりする。
ただし、これ自体は別に巨人以外でも良くある反応(上述のソフトバンクの馬原放出などもほぼ同じ反応があった)である。
巨人は昔から「原則として生え抜きかつ巨人一筋の選手しか監督にできない」と噂されており*9、監督候補が2人も抜けたと認識されたことも騒動の原因だろう。

結果としてFAした炭谷、丸は巨人でも数値と弁当プロデュース能力を残しており、ベテランの放出という判断もチームの若返りと言う意味では効果が見られた。
そして補償で移籍した2人だが、内海は年齢と怪我のせいで満足の行く結果を残せずに2022年に引退。
長野は移籍時の紳士的なコメントが話題になったりそれなりに活躍したりなんかもう完全にカープに染め上がったりしているが丸の代わりには少し足らず、成績結果だけ見ればこの人的補償は巨人の勝ちと言えるだろう。
以上の事から騒ぎが大きく尾を引くことはなく、長野も広島のオーナーの計らいにより、無償トレードで2023年から巨人復帰が決定している。

なお、上原は前述の通り再び巨人と支配下選手として契約を結んだものの、その後は一度も一軍に上がる事が出来ないまま、2019年シーズン途中に現役を引退した。
一方の巨人はその後もFAで獲得した梶谷隆幸をシーズンオフに育成選手にするなどしてFA戦線に乗り出しているが、契約に至らず未遂に終わっている。

余談

2021年、中日はFAでソフトバンクに移籍した又吉克樹の人的補償として、ソフトバンクから岩嵜翔を獲得したのだが、岩嵜は2007年のドラフトでソフトバンクと中日が1位指名で競合しており、抽選の結果ソフトバンクが交渉権を得たという経歴がある。
つまり中日にとっては「かつてソフトバンクとの抽選に敗れて獲得出来なかった選手を14年の年月を経て、ソフトバンクから人的補償で獲得した」という珍妙な縁がある選手なのである。
ちなみに2022年に近藤健介の人的補償でファイターズに来た田中正義も、かつて日ハムが2015年10月実施のドラフトで抽選に負け、交渉権が得られなかった選手である。


歴代人的補償リスト


年度 人的補償選手 前所属球団 移籍先球団 FA選手 FA選手のランク 備考
1995 川邉忠義 巨人 日本ハム 河野博文 ランク制度存在せず 初の人的補償移籍選手
2001 平松一宏 巨人 中日 前田幸長
ユウキ 近鉄 オリックス 加藤伸一 近鉄にとっては最初で最後の人的補償
2005 小田幸平 巨人 中日 野口茂樹
2006 江藤智 巨人 西武 豊田清 初のFA移籍入団選手が人的補償で放出
吉武真太郎 ソフトバンク 巨人 小久保裕紀 過去所属球団へ復帰した初のFA移籍による初の人的補償
2007 工藤公康 巨人 横浜 門倉健 FA移籍入団選手が人的補償で放出
2008 赤松真人 阪神 広島 新井貴浩 決まった当時の赤松本人のブログでは、人的補償についてよくわかっていない部分が散見された
福地寿樹 西武 ヤクルト 石井一久
岡本真也 中日 西武 和田一浩 年俸ランク制度導入以前の最後の人的補償
2011 高濱卓也 阪神 ロッテ 小林宏之 A
2012 藤井秀悟 巨人 DeNA 村田修一 A FA移籍入団選手が人的補償で放出
高口隆行 ロッテ 巨人 大村三郎(サブロー) B
2013 高宮和也 オリックス 阪神 平野恵一 B
馬原孝浩 ソフトバンク オリックス 寺原隼人 B
一岡竜司 巨人 広島 大竹寛 A
藤岡好明 ソフトバンク 日本ハム 鶴岡慎也 B
2014 鶴岡一成 DeNA 阪神 久保康友 B 初の出戻りFA移籍入団選手が人的補償で放出
脇谷亮太 巨人 西武 片岡治大 B 人的補償後、初のFAで人的補償として出された球団に出戻りFA移籍
中郷大樹 ロッテ 西武 涌井秀章 A
2015 奥村展征 巨人 ヤクルト 相川亮二 B 史上最年少補償選手/初のプロ2年目で人的補償、初の高卒2年目人的補償
2016 金田和之 阪神 オリックス 糸井嘉男 B
2017 平良拳太郎 巨人 DeNA 山口俊 B
尾仲祐哉 DeNA 阪神 前田大和 B プロ2年目で人的補償/初の大卒2年目人的補償
高木勇人 巨人 西武 野上亮磨 B
2018 内海哲也 巨人 西武 炭谷銀仁朗 B
竹安大知 阪神 オリックス 西勇輝 B
2019 長野久義 巨人 広島 丸佳浩 A 平成最後の人的補償
酒居知史 ロッテ 楽天 美馬学 B 令和最初の人的補償
ロッテと楽天同士でBランク以上のFA移籍が交互に発生。補償も同日発表になった
小野郁 楽天 ロッテ 鈴木大地 B
2020 田中俊太 巨人 DeNA 梶谷隆幸 B
2021 岩嵜翔 ソフトバンク 中日 又吉克樹 B 独立リーグ出身選手としては史上初のFA
2022 張奕 オリックス 西武 森友哉 B
田中正義 ソフトバンク 日本ハム 近藤健介 A
2023 日高暖巳 オリックス 広島 西川龍馬 B
甲斐野央 ソフトバンク 西武 山川穂高 A 当初はプロテクトから外れた和田毅を獲得するという情報が流れた
2024 小森航大郎 ヤクルト 楽天 茂木栄五郎 B
伊藤優輔 巨人 ソフトバンク 甲斐拓也 B

追記・修正は人的補償になってからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 補償
  • プロ野球
  • 人的補償
  • 移籍
  • FA
  • フリーエージェント
  • FA宣言
  • FA移籍
  • プロテクト
  • お払い箱←という訳でもない
  • 野球協約
  • 実質的な戦力外
  • 戦力外予備軍
  • 29人目の選手
  • トレードではない
最終更新:2025年04月21日 11:54

*1 先発投手と救援投手では貢献度が違うという論もあるがおいておく

*2 ソフトバンクが翌年のドラフトで九州共立大出身の大瀬良大地を指名しなかったことが、この件を裏付けると推論を述べるファンもいる。

*3 理由としては、FA権持ちをトレードで獲得しても、場合によってはすぐに移籍されてしまう可能性があるため。トレードできた選手がオフに宣言残留するにしても、球団側から見たら再契約費用を出費させられる可能性がある。

*4 そもそもプロテクトリストは球団外へは非公開とするルールになっているため、多かれ少なかれ「○○選手はプロテクトに入ってない」は飛ばし記事になってしまう部分はあるが、今回はさすがに事態が大きくなるものなのは言わずもがなだろう

*5 この影響が現在も続いているのか、松中はホークスではコーチ経験はなく、2025年からは中日ドラゴンズのコーチに就任している。

*6 ある関係者が語るという体の噂の域を出ないレベルから、後に誤報と明らかになったものまで多岐に渡っており、所謂「目を付けられている」状態。NPBファンの間でもここだけはケツを拭く紙程度にしか扱わないことも多々ある

*7 これに関しても、岩本氏は日ハムOBではあるものの当時は外部の人間であり、発言自体もあくまで噂を聞いての感想なのか、何らかのルートで確実な情報を掴んでの発言なのか判然とはしていない点は留意が必要である。また岩本自体良くも悪くも「古巣相手でもズバッと言う」性格のフシもあるため(上沢直之の騒ぎの際に「ルール上問題ない、という言い訳が正しいこと自体は認めないといけない」「ちゃんと『残留』を引き出せるだけの金銭を積まなかった日ハムにも原因はあった」と述べたケースが著名)、この時も岩瀬・中日を批判するのもそこまでおかしくはない人でもある

*8 それもかなり昔から流れており、クロマティのころには氏本人が「チームドクターに捻挫だって言われたけど明らかに重かったので、自費でよその病院に事情を話して診てもらった。そっちの先生も不審がったので念のためレントゲン撮ったら骨にヒビが入っていた」とヤブっぷりを言及している

*9 実際にそもそもそういう候補者の少ない黎明期を除けば、これらを満たしていない一軍監督は球団史に一人も存在しない(2025年シーズンの阿部監督時点)。