恐怖の社長室(米米CLUB)

登録日:2018/12/05 (水曜日) 15:29:04
更新日:2025/02/19 Wed 12:28:14
所要時間:約 7 分で読めます





恐怖の社長室」とは、日本の音楽グループ「米米CLUB」が、1991年のライブツアー『ANTI SHARISHARISM』「SANO編」内にて行った中編コントである。
ちなみに題名は公式本『一人芸』(1995年)に掲載されたものであり、作中では無題。
またライブ時には通しで演じられたのだが、ビデオ『右脳と左脳の恋物語』収録時にはなぜか曲間のブリッジ映像とされ、各パートごとに分割して流されていた。









以下、ネタバレ及び下ネタを大いに含みます。










●ストーリー

戦後のどさくさに紛れて創業し大企業となった「小野田商事」。
だが社内にはなぜか「社内恋愛禁止令」が発布されており、またなぜか創業した小野田社長の顔を見た者は誰もいなかった。
本作はそんな企業内で起こるドタバタを描くオフィスラブコメディである。



●登場人物

役名はビデオ版の紹介画像から。
なお会社員役の男性陣組は全員青いスーツ(このライブでのバンド衣装)にカツラ風の帽子と眼鏡を掛けていた。

  • 国府田満(国府田満)
コントのオープニングに登場した米米CLUBのマネージャー
観客に本作の基本設定の説明をした。
ちなみに米米のライブでは、本来は裏方ながら1990年頃からサブMCとしてゲスト参加していた。




  • 河合わかば(河合わかば)
社員の一人。同僚の下神に社内恋愛禁止令の注意喚起と禁を破った末路について説明した。
本人曰く(もし禁を破っても)慶応卒だからまだ大丈夫じゃないかと予測していたり。

リアルでは米米御用達のホーンセクションユニット「Big Horns Bee」のトロンボーン奏者。

  • ヒマラヤン下神(ヒマラヤン下神)
社員の一人。新婚さんだが、隣の会社の女性と結婚したため禁には触れなかった。

リアルでは「Big Horns Bee」のトランペット奏者で、当時実際に新婚だったのとガチの中退大学を河合に言われる羽目に…。

  • 織田昇太(オリタ・ノボッタ)
定年近いのに社内恋愛禁止令を破ったせいで未だに平社員。
河合曰く、これでも東大卒なだけましらしい。
また新入社員の石井に「社長の恐怖」を言い聞かせようとするも。思い出しても止まらぬトラウマでニワトリ化してしまった。

リアルでは「Big Horns Bee」のアルトサックス奏者。

  • 石井美奈子(MINAKO)
経理課所属の眼鏡OL。
「お局様」的キャラで、後輩の真利共々大久保課長のラブコールにうんざりしている。

リアルでは米米内のダンスデュオ「SUE CREAM SUE(シュークリームシュ)」の一人で、ボーカルの一人カールスモーキー石井のである(役名も真利共々本名)。

  • 天ヶ谷真利(MARI)
総務課所属のOL。
若々しい後輩キャラだが、大久保課長の手紙やら粘着質な付きまといに(社内恋愛禁止令抵触も込みで)うんざりしている。

リアルではシュークリームシュの一人。

  • 大久保ん太(BON)
人事課課長。
真利にしつこくつきまとい勝手に待ち合わせ約束までするも、社内恋愛禁止令に触れたせいで…。
ちなみにその後石井が彼の恋文を発見し朗読するも、どうも誤字混じりの汚い字だったらしい。

リアルでは米米CLUBのリーダーでベーシスト。役名の名字はリアルでの本名からとったものである。

  • 坂口政二(RYO-J)
妙にテンションの高い営業一課課長。
「チクリ魔の坂口課長」と真利達から陰口を叩かれるくらいの太鼓持ち属性であり、
早速禁に触れた大久保課長を部下に拘束させ、社長室に連行した。

リアルでは米米CLUBのドラムスで、こっちも名字は本名なら。なおこのライブ後の1991年末、米米のライブにゲスト参加した事のある女性ボーカルユニット「AMAZONS」メンバーの一人と結婚している。

  • 小林汗一(フッシー小林)
坂口の部下で、拘束した大久保に社長の恐ろしさをアピールした。

リアルでは「Big Horns Bee」のトランペット奏者。

  • 林部直樹(BE)
坂口の部下その2。大久保の拘束時なぜか「死の舞い」を踊った。

リアルでは米米CLUBのサポートギタリストで、2006年の再結成後は正規メンバーとなった。

  • ジョブリン得能(ジョブリン得能)
経理課社員。
真智子からのお弁当を食べていた所を坂口課長に見られ懊悩し、しかもその途中で坂口課長にもう一回イヤミを言われる羽目に…。

リアルでは米米CLUBのギタリスト兼キーボード奏者。

  • 野がすり真智子(MACHIKO)
社内電話交換手。
得能との禁断の恋とその発覚に泣き崩れるも、彼から心中を薦められた際には逃げ出した。

リアルでは米米CLUBのサポートコーラス(元事務所スタッフ)。ちなみにこの「ANTI SHARISHARISM」ツアーが彼女のコーラスデビューの舞台だった。

  • 石井新一(カールスモーキー石井)
日●大卒の新入社員。
社内の決まりも知らずに社内恋愛でハッピーライフを目指し燃え、織田の忠告もよく理解できなかったが、
やる気を「スカッドミサイル」に例えていたら坂口課長に見つかり、石井のノリに合わせトマホーク発射なんて答えを返した課長から「『ミサイルよりも大きい大陸弾道弾ミサイル、いやロケット』を社長がくれる」・「社長は若くてぴちぴちした『トンネル』が好き」等と意味不明な事を言われ、無理やり社長室に連行。





…そして真っ暗闇の社長室の中、明らかにみだらな煩悩に燃えている社長に襲われ(この時点では声のみ)、石井の絶叫が暗闇に浮かぶ「JAMES ONODA」と刻まれた輪を持つ土星型物体にこだまするのだった…
+ 果たして彼の運命は…
社長登場がひと段落付いた後、何やらカマっぽい様子で(カツラ帽子と眼鏡を外したままで)再び登場。
どうも社長に抱かれたせいで「社長のオンナ」になり、一変して社長LOVEとなった模様。だがそんな彼の前に現れた社長は…

リアルでは米米CLUBのボーカル兼MCであり、イケメン…なのだが、本作では彼の「勢いにノるとすちゃらかになる」面が打ち出されていた。
ちなみにリーダーのBONとは1991年のNHKBSの単発番組『音楽達人倶楽部』(米米CLUB編)*1内のコント『宇宙ってすげーや!』、2021年の配信ライブ『自由の扉』のOP・EDで普通のサラリーマンコンビ役を演じていた。



  • 金子良造(フラッシュ金子)
  • 三沢魔太郎(三沢またろう)
  • 金子マリ(金子マリ)
以上3人はビデオ版で紹介画像が出るも、コントには参加しなかった面々。
それぞれ金子はサックス兼キーボード奏者で「Big Horns Bee」のリーダー・またろうはサポートパーカッション奏者・金子マリ氏はゲスト参加した先輩歌手に当たる。
恐らくフラッシュ金子とまたろうは、セットの後ろでコント中のBGM演奏を担当していたものと思われる。金子女史は…まあ先輩でゲストをこんな事に巻き込むのは流石に気が引けたのだろう。
またフラッシュ金子はリアルでは1992年にMINAKOと結婚しており(つまり広義の社内恋愛)、恐らく交際中の時期と思われる1990年のライブ『SHARISHARISM ART WORK work-up編』では、労働組合設定のシュプレヒコール合戦で「職場内恋愛は許さないぞー!」と言って他から袋叩きにされていた。













…石井の惨劇(?)終了後、「石井新一」役から通常のキャラに戻ったカールスモーキー石井のコールにより、ついに社長が降臨した





  • 小野田平八郎(ジェームス小野田)
国府田マネージャーから「日々室内で加持祈祷に明け暮れている」とも噂され、社員からは魑魅魍魎の如く思われていた、会社を統べる社長。
しかしてその実態は、千手観音の如き白塗りの怪人(なお「千手観音パーツ」は着脱可能で、頭部の被りものも二パターン存在)。ちなみに『ザ・プレジデントマン』なるテーマ曲持ち。
どうも「生きのいい若いの」に目が無いらしく、作中では石井が餌食となっている。
このため社内恋愛禁止令の実態は、「社長による社員喰い放題の正当化」という恐ろしいセクハラ…令和の現代なら「性加害」と呼ばれてもおかしくなかった所業をやりやすくするためのものだった可能性が高いと思われる。

リアルでは米米CLUBのボーカルであり、米米のライブにおいて、彼が石井の煽りで盛大に途中から登場するのはお約束である。
また後世では、似た様な人がある世界2号ライダーの最後に立ち向かう相手として現れていたガチ特撮での敵役衣装の方が本作よりずっと大人しいのはなんでだろうね…








+ かくして石井をモノにしたのだが…

なんと愛する社長を待つ石井の前に、

髪を降ろし眼鏡を外した美奈子と、大人のムードでいちゃつきながら登場。



…どうも若ければ男女問わない、文字通り千手観音の如く手の早いナンパ野郎だった社長が、美奈子(石井のリアル妹)と楽しくデュエット曲『愛ズレー恋ズレー』*2を歌う様子に嫉妬する石井は剣や斧で2人に襲い掛かり、
それが回避されても纏いやら竹馬やら大きな動きで熱烈にアピールするも、2人の世界に入り切った彼らには届かず、結局一曲全部謳われてしまう羽目に。
歌い終わって美奈子が去った後、当然社長に怒る石井だったが、どうも社長の方も「石井君」を失いたくなかったらしく、最後はちゃんと仲直り。
会社員設定から普通のミュージシャンに戻った他メンバーに石井が演奏やデュエット時と同じスモークを無理やり依頼し、ライブだけのオリジナル曲『ひっぷくらっしゅ』で盛大に愛を歌い上げ(歌詞は著作権の都合上記さないが、画面に菊模様が咲いていた)、コントは無事?幕を閉じた…。


…このライブの「ボーナスショータイム」(アンコール)ラストでは、石井と社長(小野田)によるいちゃコラ曲『愛の歯ブラシセット』*3が披露され、
社長が登場時に背負う千手観音を担いで楽しそうに逃げる石井と、それを追う社長を映してライブ映像は終了。
そしてビデオ『右脳と左脳の恋物語』全体のブリッジ映像とエンディングでは、2人が楽しそうにダブルベッドで仲良く寝ていたのであった…。





●余談

本作の『一人芸』内リストでの正式名称は『オフィスラブ劇・恐怖の社長室ー彼と彼氏はできていた』。
ちなみに米米CLUBは本作後、明確に「男同士の愛」をテーマにした楽曲『スノー・ボール』(アルバム『聖米夜』)・『男同士-POSTホモ伝説』(アルバム『SORRY MUSIC ENTERTAINMENT』)を発表した。
その後、1993年の武道館ライブ『SHARISHARISM ACE』で『愛の歯ブラシセット』が歌われた際も、この時の「石井君と小野田社長」設定が使われていた。
また2013年のライブ『大天然祭』で『愛ズレー恋ズレー』が披露された際、歌の後のMINAKOに対して小野田がゲイをカミングアウトし、偶々その場に居合わせた兄石井が小野田の彼氏と判明するなんて本作を意識した様なネタが行われていた。
こっちでは「兄の俺に手を出しながら、旦那(金子)の前で妹といちゃつきやがって(意訳)」という怒りも入っていたが。

ライブの途中で割りと長めのコントが展開されるという異色の展開であったが、公式書籍『米の器』『一人芸』によると、米米はかつて(1987年・1989年)通しの日替わりコントを主軸にしたライブミニシリーズ「ロコ公演」をやった事があったという。
またライブビデオ自体には未収録にはなったものの、『ANTI SHARISHARISM』のもう一つのセットリスト「UNO編」ではカールスモーキー石井による一人芝居「夢の中へ」が展開され(『一人芸』に台本収録)、ビデオ内にもその前振りとなるフラッシュ金子とMARIの寸劇が記録された。
そして本作から29年後の2020年、無観客配信ライブ『a K2C ENTERTAINMENT 2020 -OMUSUBI-』内のブリッジ映像として、サポート含めたメンバー全員出演ショートムービー『男はつらいぜ~辰次郎故郷に帰る』が登場。
最もこっちは松竹に許可を取り柴又寅さん記念館でロケを行っての『男はつらいよ』パロディだったため、普通に下ネタ0で下町コメディが描かれていたが。

…ちなみに、カールスモーキー石井×ジェームズ小野田のカップリングはあくまでライブ上のみのネタであり、リアルでの石井氏と小野田氏は後にそれぞれちゃんと女性と結婚し、子供を得たことを追記しておく。
さらに余談だが、石井と小野田は本作の4年後のアルバム『SORRY MUSIC ENTERTAINMENT』内の曲『サマーラブストーリー』にて、女性との「ドッキング」を目論む野郎二人を演じていた。


追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 米米CLUB
  • やらないか
  • 衝撃のラスト
  • 下ネタ
  • 社長
  • 社長室
  • コント
  • 千手観音
  • 公式が病気
  • 恐怖の社長室
  • ANTI SHARISHARISM
  • 右脳と左脳の恋物語
  • カールスモーキー石井
  • ジェームス小野田
  • オフィスラブ
  • 限りなくアウトに近いアウト
最終更新:2025年02月19日 12:28

*1 横浜市の放送ライブラリーで視聴可能。

*2 1991年のシングル『ひとすじになれない』のカップリング曲。

*3 アルバム『米米CLUB』収録曲。ちなみにアンコール時の衣装も『米米CLUB』初回限定版ブックレットと同じ衣装となっていた。