SCP-800-JP-J

登録日:2019/01/26 (土曜日) 23:10:34
更新日:2025/02/15 Sat 06:37:48
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嘘を喰らい、嘘に喰われる。




SCP-800-JP-Jは怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部に登場するオブジェクトである。
項目名は「虚竜」オブジェクトクラスは「Keter」→「Neutralized」
末尾のJが示す通り、ジョークオブジェクトである。

…体裁上は。


ジョークオブジェクト

さて、SCPにおけるジョークオブジェクトとは、財団、引いては執筆者のお遊びである。
通常の記事ではできない財団の暴走、悪ふざけ、盛大なメタネタなどさまざまである。
しかし、ただただふざければいいわけではない。それ相応の「SCP」である必要性や一捻りなど、一般のSCP以上に書くのは難しいとされる。
下手な人型Keter実体よりも難しいとも。
だが、本質は「笑う」面白さ。よいジョークオブジェクトは頭を空っぽにして笑い転げるだろう。

そのジョーク記事の1つであるSCP-800-JP-J。断言しよう、笑う要素はない。
考える、どこかモヤモヤする、そこが面白さのだいぶジョークとかけ離れた要素の多い記事である。
執筆者も「ジョーク記事の皮を被った正規ナンバーの記事」と断言してる。
なぜジョークオブジェクトなのか。記事の冒頭を引用しよう。
このオブジェクトはジョークオブジェクトです。実際のSCP財団、または財団が保有するオブジェクトには一切の関わりがありません。
明確に財団内で作られたと断言してる。隠したいなにかがあるのか?否。そろそろ説明に入ろう。


特別収容プロトコル

Neutralizedであるため、特別収容プロトコルには無力化済みと書かれ、以前のアーカイブが貼られてる。以前のプロトコルは、
SCP-800-JP-Jが活性化している限り、情報統制による収容は不可能です。O5からの許可が通達され次第機動部隊う-0"天邪鬼"による無力化作戦が実施されます。SCP-800-JP-Jの無力化が確認され次第、大規模なカバーストーリーと記憶処理作戦の実行が予定されています。
と、Keterらしく収容不可、無力化作戦を実施待ちとある。
が、無力化作戦自体は失敗。そもそも効果なかったと言うべきか。ではどうしてNeutralizedとなったのか説明する。


説明

SCP-800-JP-Jは恐竜に近い生命体で、最初は骨格の一部が見えるのみだが、成長するにつれ巨大化及び部位がどんどん見えてくる。
各部位は全て違う恐竜の部位で、デイノケイルスの腕にトリケラトプスの頭、デイノニクスの脚とスピノサウルスの胴体、アンキロサウルスの尾にプテラノドンの翼を持つ。いろんな恐竜のいいとこ取りというわけだ。
骨格が完成すると内臓、それから皮膚とだいぶグロテスクな実体の仕方をする。

このキメラ恐竜最大の特徴、それは虚偽を喰らうこと。要するにニセモノの情報や事象を食べるのである。
もっとも、小説やドラマやアニメも対象なため、あらゆるフィクションを食べるとも言える。
捕食した「虚偽」は虚偽としての効力を失うよう現実改変する。白紙になったり虚偽が撤回されたり正しい情報が流失したりとバラツキはあるが。
財団にとっての虚偽の情報、思い当たるのは多々あるかもしれないが、それらは主にこう呼ばれる。

カバーストーリー

財団は民間の目からオブジェクトの存在を隠すため、虚偽の情報であるカバーストーリーを流すことが多々ある。
それらが効果を失ったら?
無論大規模収容違反は確実、というかこの恐竜のせいで既に起こってる。
たちが悪いことにこいつの一定範囲内は「虚偽」が通用しない。要するにカバーストーリーが通用しない。即座に捕食されたとみられる。
成長するごとに範囲は拡大し、食べる情報の規模は大きくなる。Keterは伊達ではない。
どうして無力化したのか?どうしてジョークオブジェクトなのか?それは下記のタイムラインに書かれてる。


タイムライン

  • 20██/11/20 17:34
██県██市████博物館において、「デイノケイルスの腕の化石が動いている」と通報が入る。
機動部隊が捕縛するが、カバーストーリー「ボヤ騒ぎ」を捕食され、機動部隊がカバーストーリーを撤回する事態に。
さらに機動部隊が見物客をなだめる為についた嘘も捕食。全長5メートルになり拘束が外れてしまう。トリケラトプスの頭部が出現。

  • 18:17
逃げ出したSCP-800-JP-Jに発砲するも効果なし。市街地に脱走して書店の本の内容を捕食する。
胴体と脚部が出現し、全高15メートルに巨大化。半径5キロメートルの創作物を全て捕食した。

  • 18:42
SCP-800-JP-Jが南下を開始。財団はなんとこの時点で異常性を断定した。
情報統制は不可能なため無力化作戦を財団本部に提出。おそらく最初のプロトコルはこの時点で創られたのだろう。

  • 19:07
尾が出現し全高30メートルまでに巨大化。歩くだけで被害がでるように。
半径25キロメートルでのドラマやテレビアニメが視聴できなくなる。テレ東だな

  • 20:12
無力化作戦認可。機動部隊う-0"天邪鬼"が編成される。
しかし機動部隊の抵抗を振り切るとSCP-800-JP-J はSCP-███-JPの収容区画に侵入する。カバーストーリーを捕食した結果収容違反発生し、死傷者がでてしまった。
プテラノドンの翼が出現。全高50メートル。どうやらこの時点ではまだ現実の兵器は効果があったようだ。

  • 21:46
山口県に到達。ここまでに██件のオブジェクトが収容違反する。
全高70メートルになり、全身に筋繊維が出現。超大型巨竜
そして翼を使って九州に到達する。

  • 21:53
SCP-800-JP-Jは全高100メートルを突破し頭部に眼が出現する。
影響はついに日本各地に拡大。ネット上の情報が多数捕食・改変され、全国で収容違反が相次ぐ。
なお、九州から北海道までの半径なら韓国やフィリピンも易々入るが、なぜか影響は日本のみにとどまった模様。

  • 22:20
全高150メートルに。そして熊本県██市で進行を停止。周囲を見渡す行動を取る。
どうやらいままでそのような行動は取らなかったようだ。

  • 22:31
SCP-800-JP-Jが咆哮を行い、周囲を破壊し始める。
財団は各地のオブジェクトの収容の為無力化を試みるが…

  • 22:46
金色の皮膚と鱗が覆い始め、全高が約200メートルに到達。
物理的攻撃が効かなくなる。銃弾は着弾と同時に消失するようだ。
さらには破壊された建築物から帳簿や日記帳など、虚偽ではない情報も捕食し始める。
嘘を喰らう竜はついに現実を喰らい始めた。

ここまで約5時間。もはや打つ手はないのか?その矢先…




  • 23:07
SCP-800-JP-Jが進行を再開。鹿児島県██市に所在する財団研究施設が襲撃される。同時に、SCP-800-JP-Jが消滅。
SCP-800-JP-J出現時から発生した被害全てが元通りに修復され、収容違反したオブジェクトも全て再収容された。

SCP-800-JP-Jが消失。同時に日本及び財団は全て元通りに。
翌日6時にはNeutralizedに定められた。
一体なにが起こったのか?ある博士は見解を示す。それを掻い摘むと、
  • 最後に襲撃した財団施設にはこの報告書があった。
  • SCP-800-JP-Jは報告書を捕食し、自身を架空のジョークオブジェクトにしてしまった。
  • そのため一連の出来事も架空となった。嘘であったかのように元通りになった。
しかし、虚偽を喰らうこのオブジェクトがなぜ虚偽でない報告書を捕食したのか。なぜ事実が虚偽となったのか。██博士の推測では、
  • SCP-800-JP-Jは成長していき強大に進化する。
  • 最終的には虚偽でない情報や事象すら捕食した。
  • 進化の結果虚偽以外の概念も捕食できるようになった。
  • 自身の特異性による自滅では?

喰らった虚偽の内容の改変はさまざまだった。本だって白紙になる本と塗り潰される本の2種類あった。
カバーストーリーだったらさらにさまざまに改変されててもおかしくない。
工事のカバーストーリーなら本当にただの工事になるケースもあれば、工事自体が行われないケースもあるかもしれない。
捕食した現実も改変されただろう。いや、そうでなければおかしい。
しかし、嘘を喰らい嘘を改変する存在が現実を改変する力を得たらどうなるだろうか?
マイナス×マイナスはプラスとなる。しかしマイナス×プラスはマイナスだ。
嘘を喰らう竜は自身の現実を捕食した結果、自身が嘘となってしまったのでは?


ところで、O5からメッセージが届いてる。それはこのオブジェクトの根本を揺さぶる。



当報告書にも記されているとおり、このオブジェクトはジョークオブジェクトであり、財団職員が娯楽のために創作した報告書である。財団本部にはそのような記録は存在せず、SCP-800-JP-Jというオブジェクトの収容違反も全て架空のものである。以降、本報告書における本部への質問は全て禁止とする。
O5-2

O5は無力化作戦を日本支部から提出され、目を通したはずだ。存在したオブジェクトなら知ってないわけがない。
SCP-800-JP-Jは最初から虚偽なのか?娯楽ならもっと面白く創るはず…それを見越しての愉快犯?




SCP-800-JP-J 虚竜



ごちそうさまでした。


余談

本オブジェクトはベンチャーコンテスト2018の執筆作である。
ちなみに優勝は もこもこしてるだろ 牙が目に入らねえのか 謎(?)のキメラのジョークオブジェクト

SCP-2615-Jとは関連性がよく指摘されるが、あちらは「ジョーク記事で真相を隠す」に対し、こちらは「本来の記事がジョークとなり、真相があやふや」となかなか対照的である。
なお、「通常のジョークオブジェクトは架空のもの」というのはおそらく同一のヘッドカノンであろう。

腕骨格を構成しているデイノケイルスとは、白亜紀に生息していた草食恐竜である。
人間の丈を超えるサイズの腕から、「恐ろしい手(Deinocheirus)」と名付けられた。
発見当初はあまりに巨大な腕と鋭い鉤爪から「ティラノサウルスをも超える肉食恐竜ではないか」と考察された時期もあった*1が、2000年代に全身骨格が発見されたことで、実は草食恐竜だったことが判明している。

追記修正お願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP- 800-JP-J
by ksk-accel
http://ja.scp-wiki.net/scp-800-jp-j

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最終更新:2025年02月15日 06:37

*1 肉食にしては腕が細すぎるため、この時点で草食恐竜ではないかという説もあった