刺身

登録日:2012/01/04(水) 21:31:14
更新日:2020/05/31 Sun 19:16:46
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刺身とは、食材を生で食する日本料理である。

食物を生食する習慣は、人類発祥の時点より存在していたが、火を使い始めた事により、ある場所では消滅し、そして、ある場所では残った。
そして、日本は、四方を海に囲まれた環境もあり、世界有数に生食文化が発達した国なのである。

この刺身とは、狭義では生の食材を薄切りにしたもの、更に狭義には、魚のそれを指す。

名前の由来は、切り身にした魚の種類を見分ける為、その魚の尾鰭を切り身に刺して判断した事による。

切り身と言う言葉を不吉と考え、刺し身と称したと言う説もある。


■主な種類

◆魚
日本で刺身と言えば、普通は海魚である。
大根を細切りにしたツマを添え、わさび醤油で食べるのが一般的。
ただ辛子酢味噌、ポン酢ニンニク大根おろし生姜、茗荷などバリエーションは結構豊富。
中にはマグロ・カツオのような血の気の濃い魚にマヨネーズをつけて食べるところもある。


  • 白身魚
身にヘモグロビンを含まない魚。
鯛や鮃、等。
比較的サッパリとした味わいだが、の仲間のように脂がのっているものもある。
また、もヘモグロビン由来の赤みでは無いので白身魚である。
てっさ(フグサシ)のように、全く脂の無い、純粋にタンパク質の分解由来の旨味を持つ例もある。
鯛の場合、熱い湯をかけて霜降り(湯霜)にしたり、ヒラメなどは昆布に挟んで寝かせて味を移すこぶ締めにしたりも。
水で身を引き締め、あっさりした味わいにする「洗い」もある。が有名だが、白身魚全般で可能。

  • 赤身魚
マグロに代表される、ヘモグロビン由来の赤みを持つ魚。
関東ではマグロこそが高級魚。
ハラミのトロと呼ばれる部位には脂がのって実に美味い。マグロ以外にはカツオ等が存在する。醤油に漬け込むヅケにした時、一番美味いのが赤身だろう。
軽く焙ったり、カツオなどは表面を焦がしてタタキにしたりすることも。

  • 酢締め(光物)
イワシ・サバ・コハダ・アジなど青みがかった魚を中心にを酢や塩などの中で寝かせて味を移したもの。
職人の力量が如実に出るし若干好き嫌いが分かれるが、好きな人は本当に好き。

◆その他魚介類

ホタテの貝柱や、新鮮プリプリなイセエビ等も、ああ、たまらない美味しさ。

  • イカ
イカそうめんでお馴染み。醤油に付けて召し上がれ。
私を食べようとするなんてヒドいじゃなイカ…
本当に新鮮なイカを生きたままさばいた場合、身はほとんど透き通っており非常に美しく、
ワタ(ゴロ)と呼ばれる部分も生のまま食すことが可能。ウニのような濃厚な旨味が口に広がる。

  • 川魚
イワナ等。
水で濯ぎ、「あらい」にして、酢味噌で食べると非常に美味。
ただし、淡水魚は海水魚より寄生虫の問題が起こりやすい傾向にあるため調理の際は注意が必要である。

  • かまぼこ
いわゆる板わさ。

◆獣肉
肉類もしばしば刺身で食される。

牛刺。上等なものは口の中でトロけて美味。
食中毒事件以来見かけないが、復活を求む。
火を入れての殺菌が義務づけされた。(湯煎・加熱時間等)

馬は体温が高い為、生でも比較的安心。
筋肉がしなやかなので、脂身も少なく、柔らかな赤身肉を楽しめる。
生姜醤油との相性に魅せられた者数知れず。

鶏のタタキは九州名産。

皮目のみに火を通せば、サクサクの鶏皮と、その下のジューシーなお肉を楽しめる。
ササミも柔らかで美味。

まずお目にかかれない一品ではないだろうか。
淡白だが、噛めば噛むほど旨みが出る。脂も殆ど気にならない。

…刺身用が見当たらないからといってスーパーで売ってるバラ肉とかを生で食べたりしないこと。
無菌環境で育てた豚は刺身で食えなくもない(らしい)が、超高コストでスーパーなどに並ぶ代物ではないのだ。

◆レバ刺
牛や馬、鶏のレバーをそぎ切りにしたもの。トロトロ美味しい。
ゴマ油と塩で召し上がれ。
規制が解除される事を願ったが、全面禁止が確定。


意外とスーパーとかでもお手頃価格で売っていたりする。馬刺しほどではないが地域によってはメジャー。
古来より続く鯨漁の伝統を思いながら食べてみてはいかがだろうか?
昔は保存技術が今一つで高齢の方には抵抗のある方も多いが、現在の保存技術なら非常にうまい。 

◆野菜

  • コンニャク
上等なコンニャクをそぎ切りにし、酢味噌で食べれば、サッパリとした美味しさ。
上顎に心地よい感触。
また、肉や魚といった所謂生臭ものを使えない精進料理や一般的なお供え膳に
魚の刺身の代わりに並べられることも多い。

  • タケノコ
朝早く竹林に行った者にしか許されない味。
まだ土から出ていない内のものを、先端をそぎ切りにして食べよう。
瑞々しい味わいのあとに、タケノコの濃厚な風味が、ふわっと広がる。

ご存じ「森のバター」。
刺身はマグロのトロの食感と言われている。わさび醤油に付けて召し上がれ。
因みに、すしネタでもあり、回る寿司屋では人気メニューの一つ。

  • ヤシの実
まさかの果物の刺身。生臭もの厳禁の精進料理で使われる。
イカのような質感。

食材を生で食べることは、本来ならば野蛮とされる行為である。
しかし、我々の祖先は、そこに価値を見いだし、今日まで刺身と言うものを洗練してくれた。
実際、食材は生で食べるのが一番栄養を効率よく摂取出来る食べ方である場合が多い。

そして現在、海外においても、生食できる食材の鮮度を、SASHIMIqualityとすら呼ぶようになっている。

ちなみに韓国にもフェと呼ばれる刺身はあるが、日本で言うところのぶつ切りに相当するものであり、日本のように見栄えを重視した並べ方もしない。

(切っていないため刺し身ではないが)生牡蠣は明治時代にヨーロッパから伝来した西洋料理である。
日本では加熱して食べるのが長く一般的で、生食が西洋由来のものは珍しい。

時折、ただ魚などを薄く切って盛りつけただけの刺身を料理といえるのだろうかと疑問を投げかけ議論を呼ぶことがあるが
「刺身は料理である」と断言したい。
無論、シロウトが切れ味の悪い包丁でグズグズにぶった切りテキトーに並べただけのシロモノと
一流の腕を持つ玄人が素晴らしい切れ味の刺身包丁でさばき、美しく盛りつけたものを一緒に語りたいとは思わない。
ぐずぐずにぶった切ると美味なエキスが流れ出てしまう上に舌触りまで悪くなり、とても美味しくならない。
調理する者の技術とその技術を反映する適切な包丁があってはじめて刺身は料理となりえるのである。

また、刺身をはじめとする生食は美味ではあるが食中毒や寄生虫のリスクは最大になる。
更に、調理した方が味も摂取効率も良くなる例も多々ある。生だとかさが多すぎて大量に食べられない葉物野菜等が典型例。
ニンニクやキノコ類のように加熱すればOKだが生はダメという食材もある。
刺身は冷蔵や輸送の技術・食材についての正しい知識がなければ、単に美味しくないを通り越して危険な料理でもあるのだ。
「おいしそうだから」で安易に刺身にしようとするのではなく、先達の知識を頼った上で刺身を楽しもう。


追記、修正は、我々の祖先に、さらには刺身になった動物達に感謝と尊敬の意を示した方がお願いします。

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