SCP-1781

登録日: 2020/02/09 Sun 19:54:25
更新日:2022/01/30 Sun 22:50:43
所要時間:約 7分で読めます





気にもとめない怪異ほど、気づいた時に厄介なものもない。



SCP-1781はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスはSafe。
項目名は『ムーンライトシアタープレゼンツ:ヒューゴ・ウィーヴィング』。

ここで登場するヒューゴ・ウィーヴィングとは、実在するオーストラリアの映画俳優であり、代表作として『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のレッド・スカル役、『マトリックス』のエージェント・スミス、声優としては映画版『トランスフォーマー』シリーズのメガトロン役などが有名である。


SCP-1781はインディアナ州のとある場所に位置するドライブインシアターである。
なのだが、日本ではそもそもドライブインシアターを知らない人のほうが多いと思われるため、先に簡単に説明させていただく。


ドライブインシアターってなに?

広い駐車場に巨大なスクリーンを設置することで、車に乗ったまま映画を観賞することが出来る、アメリカ発祥の上映施設のこと。映画の音声は駐車場のスピーカーから聞く方法と、車内のラジオから受信する方法が存在する。

利点として、子供が騒いでも他の観客を気にする必要もなく、子供を留守番させるためのベビーシッターを雇う必要がない。何より家族揃って映画を楽しむこと自体が昔は最高の娯楽と考えられていた。

しかし1970年代以降は、車のトランクに忍び込んで映画をタダ見する客が増えたり、子供の顧客が少ない時間帯を見計らってポルノ映画を上映する施設が出たりと世間から冷たい目で見られはじめ、追い討ちをかけるようにカラーテレビやビデオテープといった家で番組や映画を簡単に見ることが出来るようになったことで、現在では数は軒並み減ってしまった。

時は流れ新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延した2020年、情勢と感染防止策の一環で映画館は来場客が激減し閉店を余儀なくされる店舗も増えるなかで「他者と隔離された実質的な個室シアター」といった側面が注目され、世界各地で新たなドライブインシアターの開場や無料上映の実施などが行われている。


日本では1962年に初めてドライブインシアター専門の施設が開業し、急激な産業の発展によって車が民間に普及し始めたと同時期にヒットし、1990年代までにピークを迎えた。

しかし、元々天候などで上映が出来なくなったり、そもそも夕方以降にしか上映出来ないなどの理由で顧客は年々減少し、2010年には国内全てのドライブインシアターが閉鎖することに。

しかし、2018年に熊本地震からの復興支援の1つとして『Drive in Theater Aso』がオープン。現在、国内唯一の常設ドライブインシアターとして存在している。

改めて概要

見た目は普通の広い駐車場にコンクリート製の映写室、巨大スクリーン、「ムーンライトシアター」と表示された入り口付近にある看板で構成された、至って普通の施設である。

1つ目の異常は、勝手に映画がランダムで上映されること。
2つ目は、映写室は、映画が上映している時を除いて侵入することが出来るが、上映中になると外からも内からも、物理的に外へ開けることが不可能となること。上映が終われば、再侵入及び映写室を出ることは可能。
また、上映中に中にいた人物は映画が上映している間は時間が経過していない状態となる(上映中は、外と映写室内の時間がずれていると考えられる)。

しかしながら、このオブジェクトの最大の異常はそこではない。それは上映される映画に影響するのである。ではその異常とはなにか。




















上映される映画内の人物・動物・物品といった『役』のいずれかが、ヒューゴ・ウィーヴィングへと入れ替わる






たったコレだけ。
念を押しておくが、別に人を傷つけたり、恐怖を与えたりはしない。ガチで無害極まりないオブジェクトである。
もちろんヒューゴ氏がそれらの映画に出演した事実は何処にもない。


但し、登場人物や動物、車両や木々などがヒューゴ・ウィーヴィングに入れ替わっていることで物語本来の内容から大きく離れることがしばしば。しかし映画を視聴している一般の客は、なぜか気づかない。


また、映写室の掲示板に貼ってあった小さなメモ曰く、


あれが何なのかなんて知らないし、どーでもいい。計算してみた。あの男が現れる映画を上映すると入場者の数が最低15%は増えるんだ。それだけじゃない、ポップコーンの売上も上がる。平均でなんと22%だ! 俺たちはどんなクソ映画にだって彼が現れる方法を見つけなきゃいけない、絶対にな。誰かハリウッドの映画学科の学生に渡りを付けてくれ。

  • ジョン


なぜかヒューゴ氏が入れ替わって登場する映画の売上が上がったと記載されてる。尚、これを書いたと思われる施設の人間は見つかっていない。


こんなヘンテコな異常ではあるが、誰かがネットなどにあげたら面倒なことになるのは目に見えている。そんなわけでSCP-1781に通じる車道の近辺は封鎖し、周辺には境界フェンスが敷かれた。フェンスを越えたあらゆる人物は収容され、クラスA記録処理を施した後に███████████市警に引き渡すことに。




ヒューゴ・ウィーヴィングをさがせ!!

以下はヒューゴ・ウィーヴィングが入れ替わりを実験で観察した結果である薬物や機器で異常性を打ち消していたのだろうか?

観察記録:14/07/08
タイトル:ブルース・オールマイティ(2003)
役柄:神。本来はモーガン・フリーマンが演じていた。
変化:役柄を除き、殆ど変化無し。



この上記の作品は、通常の映画と殆ど内容が変わらない。
問題(ヘンテコ)なのは次の3つ。


観察記録:14/07/10
タイトル:X-Men(2000)
役柄:プロフェッサーXの車椅子
変化:ヒューゴ・ウィーヴィングが、大きな「X」が刻まれた銀色のジャンプスーツを着用し、背中にパトリック・スチュワートを乗せてあちらこちらへ這って運ぶ。
移動する間「ウィーン」という音を静かに口ずさんでいるというオマケつき。
パトリック・スチュワートのキャラクターが長距離を移動するシーンに至っては、明らかに本来よりも長くかかっていた当たり前だ


普通に車椅子使ったほうが早いだろ................。



観察記録:14/07/12
タイトル:ヘラクレス(1997)
役柄:ヒドラ
変化:ヘラクレスとの対決シーンで頭部を切断されるが、やっぱり切断された首から素早く新たな2つの頭部が生えてきた(この第二の頭部はキャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーで演じたレッドスカルのメイクが施されている)。更には頭部を切り落とすたび、ヒューゴ・ウィーヴィングが別の映画で演じた別の登場人物に似た頭部が続々と発生。
ヒドラがヘラクレスを飲み込むシーンに至っては、増えた頭部の重量のせいで動き辛そうなヒューゴがヘラクレスの方へ近づき飲み込もうとするも、口のサイズが原因で失敗。頭を執拗に噛むという手段しかなかった。このしょうもない攻撃が20秒ちょっと続いた後、ヘラクレスがヒューゴ・ウィーヴィングの胃を刺して出番終了。


車椅子役はともかく、ヒドラ役に至っては内容が大きく解離してしまっている。
そして最後の1つ、恐らく一番訳が分からん内容である。



観察記録:14/07/14
タイトル:皇帝ペンギン(2005)
役柄:ペンギンの卵
変化:産卵する南極ペンギンを映している場面で、その中の1羽のペンギンが特に苦しんでいる場面。ナレーター(モーガン・フリーマン)がこれについてコメントした後にペンギンの容態が急変し、やがて倒れたペンギンが甲高い叫び声を上げると同時に、お尻から素っ裸のヒューゴ・ウィーヴィングが登場。
最後は誕生したばかりのペンギンの卵(ヒューゴ・ウィーヴィング)と母ペンギン(間違いなく死亡済み)の姿が遠くに映って出番は終了。




「(゚д゚)」

皆の反応は間違いなく正しい。そりゃペンギンの体から成人男性並みの質量が出てきたら何も言えない。



忘れずに何度も記述するが、ドライブインシアター内の映画鑑賞者は、映画本編の内容の変化について、一切気づかず視聴し続ける



その他の記録


観察記録:不明
タイトル:風と共に去りぬ(1932年)
役柄:レット・バトラー。本来はクラーク・ゲーブルが演じていた。
変化:役柄を除き、殆ど変化無し。


観察記録:不明
タイトル:英国王のスピーチ(2010年)
役柄:群衆に紛れるモブ。
変化:殆ど無し。そもそも当初は入れ替わってないと思われていたが、後に群衆が移るシーンの中(モブ)に紛れていたことが判明したよく見つけられたな








追記・修正はヒューゴ・ウィーヴィングを見つけてからお願いします。


SCP-1781 - Moonlight Theater Presents: Hugo Weaving
by djkaktus
http://www.scp-wiki.net/scp-1781
http://ja.scp-wiki.net/scp-1781(翻訳)
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最終更新:2022年01月30日 22:50