羽根(ラブライブ!)

登録日:2020/05/15 Fri 17:17:58
更新日:2022/07/06 Wed 11:49:20
所要時間:約 8 分で読めます



本項ではラブライブ!シリーズの映像作品において時折登場する、"演出としての「羽根」"について解説する。
※本項にはシリーズ各作品の重大なネタバレが含まれています。注意の上読み進めて下さい。

概要

『ラブライブ!』シリーズにおいては、印象的なシーンによく鳥や鳥の羽根を用いた演出が用いられている。
この羽根が何であるかは(ただの視覚的演出に過ぎないこともあって)作中で明言されることはないものの、本編ではいずれも非常に重要なシーンで登場しており、「夢」「目標」「スクールアイドルの象徴」といったものとしてファンに受け取られることが多い。
善子ヨハネ!の頭に刺さっているアレ? ……あれは本項の主題とはちょっと逸れるので後述。

ラブライブ!(無印)

無印においては白い羽根が用いられている。
といってもテレビアニメ本編に登場することはあまりなく、おそらく印象深いのは第2期ED『どんなときもずっと』映像中ではないだろうか。
サビの終わり際に空から大量の羽根が降ってくる中、μ'sメンバーのうち一人がその羽根の一枚をキャッチし、その後微笑む。
そして音ノ木坂の屋上に水で大きく描かれたμ'sの文字が映されて締めくくられる……というもの。

この羽根を掴むメンバーは各話によって異なり、そのリストは以下の通り。
推しの見せる笑顔に心を撃ち抜かれたり、「次は誰だろう」と毎回楽しみにしていたラブライバー諸氏も多いはず。

2話:高坂穂乃果
3話:園田海未*1
4話:矢澤にこ
5話:星空凛
6話:西木野真姫
7話:小泉花陽
8話:東條希
10話:南ことり
11話:絢瀬絵里

なお1話、9話、12話以降はそもそもこのEDが使用されていないためこの演出も登場しない。

このあるシーンに、各話によって違うメンバーが登場する、という演出は、『ラブライブ!サンシャイン!!』のEDでも使われており、そちらでは、バスから降りたキャラが各話によって変わる、という演出になっている。

また、羽根そのものではないが、μ'sの楽曲には鳥になぞらえた歌詞が多くあり、
『START:DASH!!』における「うぶ毛の小鳥たちも いつか空に羽ばたく」が代表的か。




そして劇場版。
μ's最後のライブにて『僕たちはひとつの光』を披露したのち、曲の途中で映像はエンドロールに移行する。
そのエンドロールの背景は脱ぎ捨てられたμ'sメンバー達の練習着なのだが、その最後に穂乃果の「ほ」Tシャツの上に一枚の羽根が落ちてくる。
しかし、それを拾う人は誰も現れず、物語は幕を閉じる。

羽根の意味を「夢」と捉えるならば、彼女達はもはや夢を受け取る存在ではなく、人々に夢を与え、振りまく存在になったことを示唆している……と受け取れる。
劇中でも描かれたように、ラブライブ!で優勝を果たしたμ'sは全国にその名を轟かせ、スクールアイドルの象徴そのものとして、伝説として語り継がれてゆく。
しかし、彼女達はもう過去の存在。
うぶ毛の小鳥たちもいつかはその翼が大きくなり、大空へと旅立つのだ。

そして数年が経ったのち、彼女達が振りまいた羽根のひとつが、一人の少女の元に落ちる。

ラブライブ!サンシャイン!!

本作ではテレビアニメ・楽曲PV共にたびたび本編中に登場するように。

アニメPV『君のこころは輝いてるかい?』の冒頭。
一羽の大きな鳥が海辺に立つ千歌の頭上を飛び去り、いくつかの白い羽根を落としていく。
しかし千歌はその羽根を拾うことはなく、微笑んだのち浦の星女学院へと駆け出してゆく。


テレビアニメでは、第1期1話『輝きたい!!』から登場。
内浦の海に潜ろうと、埠頭から飛び込もうとした梨子を止めようと飛びつき、一緒に海に落ちた、という衝撃的(?)な出会いをした千歌と梨子
一息ついた後、千歌は梨子にスクールアイドルについて教え、その思いを熱く語る。「自分も(スクールアイドルになって)輝きたい」と。
その言葉に梨子も共感を示し、「なれるといいわね」と励ましの言葉を贈る。
そしてお互いに自己紹介をしあう二人の前に白い羽根が舞い降り、そして梨子の畳んだ制服にふわりと落ちる。
これはもしかしたら、梨子もAqoursに入り、スクールアイドルとして輝く、という暗示だったのかもしれない。

第1期12話『はばたきのとき』ラストシーンにも登場。
μ'sが解散を宣言した海岸で、穂乃果に向けて「μ'sの背中を追いかけるAqours」からの脱却を宣言する千歌。
そんな彼女の頭上に、いつかのように*2鳥が落としていった羽根が。
「あ……」
思わず走り寄り、その羽根をキャッチ出来た千歌は笑みを浮かべるのだった。

「μ'sからの脱却を決めた千歌がなぜこのタイミングで羽根を?」という疑問を浮かべた視聴者も多いだろうが、
羽根を「μ'sの象徴」ではなく「自分だけの夢、目標」「"私達だけの輝き"」と考えれば納得がいく。
誰かの背中ではなく、誰も通ったことのない道を誰よりも自由に駆け抜けたからこそ、μ'sは輝いていた。
それを理解出来たからこそ、千歌は羽根を掴むことが出来たのだ。
サブタイトル通り、この時初めてAqoursははばたく時を得たと言えよう。


第2期では、第7話『残された時間』にて登場。
渾身の新曲『MIRACLE WAVE』を披露し、ラブライブ!予選突破という奇跡を成し遂げたAqours。
しかし浦の星の入学希望者は増えることなく、示された結果は「98人で募集終了="廃校の決定"」という非情なものだった。
最大の目標だった「廃校阻止」の頓挫という過去最大の挫折を前に、千歌は目の前が真っ暗になってしまう。
他の8人が立ち直り、ラブライブ決勝に向けて結束し始めてもなお、彼女の心は折れたままだった。

「……見つからない。
だってこれで優勝しても、学校はなくなっちゃうんだよ。
奇跡を起こして、学校を救って。だから輝けたんだ。
学校が救えなかったのに、輝きが見つけられるなんて思えない!」

「私ね、今はラブライブ!なんてどうでもよくなってる。私達の輝きなんてどうでもいい。
学校を救いたい!! みんなと一緒に頑張ってここを……」

「じゃあ救ってよ!!」

目標を失い学校の屋上で慟哭する千歌の耳に、声が届く。
それはいつの間にか中庭に集まっていた、浦の星の生徒達の声だった。

「私達、みんなに聞いたよ。
 千歌達にどうして欲しいか、どうなったら嬉しいか。」
「みんな一緒だった。ラブライブ!で優勝して欲しい。
 千歌達の為だけじゃない、私達の為に。学校の為に。この学校の名前を残してきて欲しい」
「浦の星女学院スクールアイドル・Aqours。その名前をラブライブ!の歴史に、あの舞台に永遠に残して欲しい!」

千歌は誤解していた。
学校を救う。それは「廃校を阻止する」ことでも確かに達成されるが、二つは必ずしもイコールではない。
極論を言ってしまえば、生徒達が「救われた」と思うことが出来るのなら、手段は何だっていいのである。
そして廃校が決定してしまった今、浦の星女学院のスクールアイドルとしてAqoursにしか出来ない事は一つ。

「優勝して、学校の名前を……」
「ラブライブに……!」
「千歌ちゃん、や・め・る?」
「やめるわけないじゃん……! 決まってんじゃん……!
決まってんじゃん決まってんじゃん!!
優勝する! ぶっちぎりで優勝する!
相手なんか関係ない! アキバドームも、決勝も関係ない!! 優勝する!!
優勝して、この学校の名前を、一生消えない思い出を作ろう!!」

千歌は、Aqoursは、新たな目標を胸に完全復活していた。
一つになった想いを胸に、屋上を後にするメンバー。最後に階段へと向かおうとした千歌の横を、風に流された羽根が飛んでいく。
その羽根は、千歌の目の前で青色に変わっていった……。


劇場版では、ラブライブ!決勝を自分のミスで逃したという自責の念と上手くいかない新スクールアイドルのメンバー探しという2つの重荷に押し潰されそうになっていた理亞の為にとルビィの提案した「ラブライブ!決勝延長戦」のシーンで登場。
Saint Snowが「もしも決勝に出ることができたら」と用意していた曲、『Believe again』を全身全霊で披露し、
「思い出は消えない。Saint Snowは理亞の心にずっと残っている。理亞が目指すのはSaint Snowではなく、理亞だけのスクールアイドル」というメッセージを聖良の言葉と共に受け取った理亞。二人の傍で、紫色の羽根が飛んでいく。
そしてその羽根は、遠く離れた沼津でライブを見ていたAqoursのもとへ。メッセージを確かに受け取った9人のもとに羽根が辿り着いた時、羽根は青色へと変化した……。


また、同じ劇場版では、類似の演出として「紙飛行機」が用いられる。
これはテレビアニメ版最終話で語られた、幼少期の千歌が上手く飛ばせずに投げ出してしまったというもの。
しかし、輝きを見つけた千歌が飛ばしたそれは、鳥に姿を変え、虹の向こうへと飛んでいった……。

そして、エンドロール後のラストシーン。
Aqoursに憧れ、内浦までやってきた少女達の声に引かれるように落ちてきた紙飛行機。
砂浜に彼女達の書いた「Aqours」の文字の傍に落ちたそれは、かつて東京のイベントで9人に突き付けられた「0」の紙で折られていた*3

ラブライブ!スーパースター!!

1話にて登場。
可可からスクールアイドル活動を誘われるも、人前で歌えなくて、それで何度も失敗していることがトラウマになっているかのんは、『自分にも他人にも失望されるのはもう嫌』と、それを断ってしまう。
可可から、『歌えるようになるまで諦めないと約束する』と説得されるも、それでも自信が持てず、一度はその場を離れてしまう。
だが、彼女の言葉に心を打たれたかのんは、『自分の歌を好きと言ってる人がいるのにこのままでいいのか』と自問自答し、その末に踵を返して、チラシを拾っている可可のもとへ走る。その彼女のもとに白い羽がふわりふわりと舞い降り、彼女の背負っていたかばんのポケットにそっと入る。
そして彼女は叫ぶ。

やっぱり私……歌が好きだ!!

余談:ヨハネの頭に刺さっているアレ

善子善子言うなヨハネ!が「堕天使ヨハネ」としての自分を見せる際に頭のシニヨンに刺さっている黒い羽根。
本編で演出として登場する羽根とは関係ない、単なる彼女のアイコンではあるのだが、ある意味ではこれも「堕天使ヨハネの象徴」でもある。
どうも一種のスイッチのような役割を果たしているようで、ずら丸が羽根を善子の頭に刺すと堕天使モードに切り替わる。
第1期5話では他の堕天使グッズとともに処分しようとしていた中、千歌が拾った一つを手渡され、Aqours加入を決めている。
またスピンオフ漫画『幻日のヨハネ』の「占い師ヨハネ」も黒・赤・白の羽根の様な飾りをシニヨンに付けており、デフォルトでファンタジーの住人な占い師版を特徴付けているのかも知れない。


追記・修正は空から降ってきた羽根を手に取れた方にお願いします。
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最終更新:2022年07月06日 11:49

*1 CD付属のEDはこの回の映像を使用しているため、彼女が映る

*2 ラブライブはパラレル時空であるため、『君ここ』の出来事をアニメ版の千歌も経験しているとは限らないが

*3 なお、この紙は千歌が決勝直前まで大事に持ち続けていたが、「勝ちたい」決意を誓うとともに風に煽られて紛失したはずのもの。その後千歌の手に戻ったのか、それとももう一枚あったのかは定かではないが、いずれにせよ彼女にはもう必要のないものである。